童門冬二のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
上杉鷹山といえば、一昔前随分とブームになり、もてはやされたことがある。本書も1990年の発行だから、たぶんその頃に書かれたものなのだろう。
著者の童門冬二氏は東京都の職員として局長級を経て、のち、作家となった。歴史の中から現代の素材を探すのが得意だそうだ。本書は同氏の「小説 上杉鷹山」から、現代のビジネスに通じるエッセンスを集め凝縮されているそうだ。
かつてアメリカのJ・F・ケネディ大統領が尊敬する日本人は誰かと問われて、「ウエスギ・ヨウザン」と答え日本人記者たちを当惑させたというエピソードがあるそうだ。以前はそれほどまでに鷹山はマイナーな存在だった。
しかし、江戸時代中期に米沢 -
Posted by ブクログ
数日前、治憲は米沢藩の藩主の座を相続した。まだ十七才の青年藩主である。
だが、米沢藩は困窮に喘いでいた。借金を頼みに行った色部照長は不首尾に終わったことを告げた。そして、一つだけ策があるという。それは藩を幕府に返上することである。それ程までに追詰められていた。
米沢はもともと、藩祖・上杉景勝の家臣・直江兼続の領地であった。景勝は家来の国に転がり込んだのだ。そのとき、所領が減ったにもかかわらず、家臣の人員整理を行わなかった。景勝の死後数代たち、さらに減封される出来事が起きた。その結果、米沢藩は収入の約九割が人件費として支出される異常な状態になってしまった。
だが、治憲は藩を返上しないことを決意し -
Posted by ブクログ
文句無しの星5つです! 実は今まで不勉強だったことが情けなくなりました。上杉家に養子に入り17歳からの藩政改革。というより、経営改革。まったく希望のなくなってしまっている山形の地に、後に火種組と呼ばれる改革への賛同者をわずかな人数から広げ、改革を推進していく。若殿は周りの抵抗勢力にも決してめげず、想いを語りかけ、決して怒らず、すこしずつ推進していく。
パナソニックの中村前会長が、経営危機の子会社の対応時に読まれたとのことで、まさに経営改革を歴史にあてはめて小説とした、すごい本。
小説なので、今で言う、という注釈もあったりで歴史小説ではなく、ビジネス小説だったのが大きな誤算でこれからも堂門さんの -
Posted by ブクログ
ネタバレ久しぶりの再読。
やっぱり何度読んでも良い。
この作品がというより、この「上杉鷹山」という人物がなのかもしれないが、読み返すたびに爽やかな気持ちになる。
企業再生に通じるので、ビジネス書としてもかなり面白いと言えそう。
後半、鷹山と共に改革を進めてきた家老が、惰性・結果を急ぐなどの理由で道を踏み外していったり、改革メンバーが鷹山への気遣いや家老への複雑な思いから、真実を鷹山に伝えられなかったり、迷いにとらわれる中、鷹山はまっすぐに清廉な道を進む。
それは、あくまでも民の幸せが改革の目的であり、民に対して恥ずべき道は歩まないというブレない強い心を持っているからかと思われる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレチェック項目16箇所。坂本龍馬が殺されたのは先を歩きすぎたために、そこまでついていけなかった連中に殺された。坂本龍馬は先見性、先の読み方が優れている、時代の変化に素早く対応できる。西郷隆盛は優しい人間だったために置き去りにできない、自分と一緒に同時代を生き、同じような次元に立って少しずつ後れていることを知ってながらもどうすることもできない業を背負った人間たちと常に行動を共にしていく。坂本龍馬は天を信じるよりも自分の力を信じる・・・織田信長に共通する。西郷隆盛は天を敬い、一種の運命論を持っていた。日本人は人間関係を技術化することを嫌う。心と心の関係で結びついている人間関係を分かりきった技術で割り