都筑道夫のレビュー一覧
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著者がさまざまな雑誌などに発表した短編をまとめた本です。ミステリではなく、著者のことばで「ふしぎ小説」、いわゆる怪奇小説と呼ばれる作風のものばかりで、ロジカルな解決策があたえられるわけではありませんが、本作のかもし出す不思議な雰囲気をたのしむことができました。
ただ、著者がミステリ作家として高名だということもあって、「あるいは叙述トリックのような仕掛けがあるかもしれない」と身構えながら読んでしまったため、本作の雰囲気を堪能するというところにまでは行き着けなかったという思いがあります。どちらかというと、乙一のホラー小説のように、もうすこし肩の力を抜いて読むことのできる内容だったように感じました -
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紙幣づくりに使われる紙が大量に強奪された。
これが意味するものをいち早く察知し動き出した近藤だが、ライバルの土方も同じく動き出していた。
二人はある家の前で鉢合わせ。家の主人は坂本という老人で、彫金の名人である。
というはじまり。
軽やかに男や女が金を目当てに入り乱れて、誰が追って誰が追われているのやら、その間にもふざけた会話が飛び交って、まぁまぁの死人も出るというのにコミカルな仕上がり。ただし、書かれた1978年という時代を反映して風俗を表す言葉が古くてよくわからないのが難。映像で見るとちょっとしゃれた軽いノリがかっこよく表現されるのだろうなと思っていたら、どうやら映像化されている模様。
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「マンション探偵滝沢紅子」シリーズの長編第3弾。
美智留のクラスメイトだった寺西徳治(てらにし・とくじ)という少年が、メゾン多摩由良近くの工場内の密室で殺害されるという事件が起こります。彼は死の直前に美智留に会っており、彼女に小さな紙包を預けていました。一方、徳治の兄の寺西慶太(てらにし・けいた)はタミイの後輩で、彼に事件の解決を依頼したことで、彼は俄然捜査に熱を入れて事件の解決へ向かって猛進します。
今回は紅子がメゾン多摩由良を出てどこかへ行ってしまい、タミイ、春江、美智留らの視点を交代しつつ物語が語られていきます。となると、叙述トリックが用意されているのではないかと身構える読者が多いの -
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「マンション探偵滝沢紅子」シリーズの長編第2弾。
メゾン多摩由良の空き室を訪れた不動産屋と客二人が死体を発見しますが、彼らが警備主任に連絡して部屋にもどってみると、忽然と死体は消え失せていました。さらに、マンションの住人の兼坂という男や平岡民雄までもが、死体を見かけるもほんのわずかな時間その場所を離れているあいだに死体が消えてしまうという出来事がつづきます。
直感猛進のタミイ、国文学研究者の春江、天才美少女の美智留といった主要なキャラクターが魅力的で、ユーモア・ミステリ寄りの作風ですが、随所にミステリ史や文学作品などへの言及が見られるのもたのしみのひとつです。 -
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引越しのバタバタで、読書状況が滞っちゃってます… 生活必需品ではないから、書棚の整理は手付かずの状態。そんな中、片手間に読めそうな薄い本ってことで、これをとりあえず手元に置いといてみた。サラッと読み流せるからではなく、全然ピンとこなくて急ぎ読み。「ドグラマグラ」は途中で挫折したけど、それと同じ匂いがして、いわゆる”奇書”かな、って思いながら読んでたけど、解説見て『やっぱり』って感じ。こちらは短いから読破できたけど、正直、読み続けることに抵抗を覚えることしきり。どんな世界にも独創的な世界は存在するし、そういうものに魅力を覚える向きも、それはそれでアリだとは思うけど、少なくとも自分には必要のない世
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ネタバレ『手のひらの夜』
兄嫁と関係することをやめるように言う女の訪問を受けた雄治。身に覚えのない雄治と関係を持つ女。翌日失踪した兄嫁。兄嫁の訪問と八鉢合わせた恋人の絹子。
『還魂記』
長屋に住む藤六が酒をのみ倒れた直後に記憶をなくしたと相談をうけた如月源三郎。自分を大商人の田丸屋の藤六だと言う長屋の藤六。死んだ田丸屋の魂が長屋の藤六に入り込んだとなった事件。長屋の藤六の告白
『憎しみ花』
会社の金を横領して自殺した恋人。横領のきっかけになった女を飲み屋で知り合った緒方と言う男に殺すように依頼した女。緒方が請け負ったもうひとつの仕事。
『携帯電話』
電車で携帯電話での会話を聞かれた清水長太郎とな -
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気づいたら、夜の森を歩いていた。空には月が見える。
足裏にしめった土の感覚がある。存外暗い中でも歩けるもので、ふらふらと、森の中に進んでいく。
なぜ森の中を歩いているのか?
理由はさっぱり分からないけれど、暗く恐ろしい森の奥に何かがあるような気がするし、月明かりも足下まで届く。逆に引き返すことのほうが恐ろしいように感じる。
べたり、足下が粘つく。
足首まで泥の中に埋まっていた。
あたりは暗い。
指先に何かが触れた。
……
というような、気がついたら抜き差しならないところに追いやられるホラー小説。いや幻想小説なんだろうか。
馬鹿な作り話だなぁと読み始められるのに -
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柳田國男著「遠野物語」で有名な遠野が舞台。
私もいつか必ず行ってみたい所なんですよん。
なので興味深く都筑氏の語る遠野の街を読んでは想像していた次第です。
お恥ずかしながら、主人公である滝沢紅子&春江さんのシリーズ、読んだことがないんです。
本書を読み、こりゃこのコンビの本を読まなきゃ~と思った次第です。
二人の息がぴったりなんです、まるでホームズ&ワトソン。
さすが都筑氏だなぁ~と改めて感服させられました。
遠野物語からの引用や遠野の景観の描写、ミステリに関する薀蓄などが様々なところに使われていて、ますます遠野に行ってみたくなりました。
本書の中でもうま~く隠されたプロットが積み重なり、最後