都筑道夫のレビュー一覧
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刑事の息子から事件の詳細を聞き、最終的に真相を引き出すパターンは『ママは何でも知っている』を連想させる。息子に二、三の質問をしたのち論理的に事件を解決してしまう手際の良さも共通しているが、ブロンクスのママがやや劇的なのに対して、この退職刑事はこつこつ型で、どちらかというと地味な印象。でも気がつけば隙もなく推理のプロセスが出来上がっているのだから、その手腕はお見事と言うしかない。同系の国内ミステリがどれくらい存在するのかは知らないが、論理の組立や完成度からいってもトップクラスに入るのは間違いない。 秀作揃いの中でも気に入っているのは『ジャケット背広スーツ』。『九マイルは遠すぎる』を彷彿とさせるこの作品は、“安楽椅子探偵もの”という観点から見れば最も魅力的に思えた。
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連作ミステリー短編集。全7話。
元刑事の父を持つ主人公。彼は、五人いる兄弟の中で唯一父と同じ職業、すなわち刑事となった。そんな彼の所へ、時折遊びにくる父。さりげなく今息子が抱えている難事件を聞き出し、独自に推理を働かせる。さながら安楽椅子探偵のように・・・。
おもしろいよ、これ。続きを是非読みたい。これ読んだときふと、阿刀田高さんの「Aサイズ殺人事件」を思い出した。これも安楽椅子探偵もので、すんごくおもしろかったんだよね〜。
主人公の父が何とも言えずかわいい♪退屈すると息子の家にイソ×2とやってきて、鋭い推理力で事件の絵解きを始めるの。
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ネタバレ● 感想・評価
二人の人物が、誘拐について交互に書いた手記を、都筑道夫が発表しているというスタイルの作品。「あんまり、ありのままに書くと、迷惑する人がいる。だから、適当に嘘を交えて、交替で書くことにする。」として、いわゆる「信頼できない語り手」の作品であることを示している。
かつて、女を襲い、自殺させたこともあるチンピラ三人組に、顔見知り程度の中だったが、麻雀をして意気投合した栗野。この4人が、道路で倒れている女性を見つけているところに、栗野の知人である桑山が現れ、その女性に似た人物を利用した誘拐をでっち上げようという計画。この計画が、実は、栗野による3人のチンピラへの復讐劇と、桑山=茜一郎と千寿子の結婚と家族から金を引き出すための計画が合わさったものだったというのは、意外性こそ、それなりにある。
しかし、信頼できない語り手の手記なので、字の文に嘘があってもいいのだが、千寿子は死んだと書いてあるし、千寿子は妙子と書いてある。桑山が茜一郎であると思わせるような伏線もなく、桑山が玉木刑事ではないかと思わせるミスディレクションはあるものの、あまり効果的でない。
「やられた」という思いがあまりしないのだ。伏線はあるにはあるが、上手い伏線と感じない。千寿子は生きてました。桑山は茜一郎でした、と言われても、そうですかとしか言いようがない。
二人の書き手のうち、一人が千寿子だったという点は意外性はある。ここは素直に驚いた。しかし、それが作品全体に活かされていない。千寿子しか知りようがないことをさらっと書いていたら、「やられた」と感じただろうけど、そういう小技がない。
文体もしっくりこない。場面転換が下手というか、場面が代わったときに、文章に入り込めない。文章のつなぎが下手というか、今、何が起こっているのか分かりにくいことがある。誰が喋っているのかとか、誰と誰があっているのかとかが分かりにくい。説明が過ぎると、それはそれで面白くないが、説明不足。これは、翻訳が多かったという都筑道夫のスタイルなのかもしれない。
サスペンス的な誘拐モノかと思えば、実は、家族を騙すための偽装誘拐と、復讐。関係者二人が交互に手記を書いているスタイル等、大きな構成だけ見ると、もっと面白くなりそうなのに、小技が効いておらず、説明不足で文章に入り込めない。軸となるプロットだけ見れば、もっと面白くなりそうな作品だったと思うが、そこまで面白くないというのが素直な感想。★3で。
● 設定
このミステリは、2人の人物が交互に、実際にあったことをアレンジして書いているという設定となっている。
● 第一歩は盗難車で
二人の人物が、交替で「スリラー」めかした原稿を書くという設定。「あんまり、ありのままに書くと、迷惑する人がいる。だから、適当に嘘を交えて、交替で書くことにする。」と宣言。いわゆる、信頼のできない語り手であるという宣言である。
女が道路に横たわっていた。小島金一(小きん)、大沢虎雄(大虎)、安藤稔(ブタ)と、栗野治郎の4人がその女を見つける。その女は、錦糸町の映画館通りにあるガン・ルームで会った女だった。
反対路線から桑山という男がやってくる。ハンドバックに入っていたものから、「財田千寿子」という名前の女だと分かる。
● 第二歩は外科医の腕で
もう一人の私が書いているという設定。倒れていた女の声を録音する。倒れていた女は死ぬかもしれないが、「お妙」という似ている女に身代わりをさせて、誘拐をしようという計画を立てる。
桑山は千寿子の死体を5つに切ったと言い、「お妙」という女を、千寿子の家に行かせたという。
● 第三歩は被害者の家で
書き手は、一人目に戻る。女が千寿子の家に行ったのは、テストの意味と、誘拐があった日を遅らせるだけでなく、筆跡のあるものの入手と指紋を付けるため。
子きんが、誘拐があったことを千寿子の父、財田徳太郎に伝える。この段階では身代金は500万円
徳太郎は警察に伝え、捜査一課の福本、勿来部長刑事、荒垣刑事、玉木刑事等が来る。
徳太郎の両親は、得造と兼。祖父は徳右衛門。財田家でのお決まりの誘拐事件対策をしている描写の後、犯人から毎朝新聞の社会部に犯行の電話があり、身代金を1000万円にするとの宣言。最後に、あと、しろうと探偵が出てくるとにおわせる。
● 第4歩は前哨基地で
二人目の原稿。毎朝新聞へ犯人から電話があった翌日、財田家に赤西一郎太というしろうと探偵役が登場。自分の車が盗まれ、誘拐に利用されたという。
誘拐犯の前哨基地は栗野の家。この家で栗野が昔、描いた絵が、大虎、小きん、ブタの3人が手を出して自殺をした女に似ていることが分かる。5つにばらした女の死体を入れたという袋を、ばらまきにいく。猟奇殺人の記事で、誘拐をやりやすくしようとする作戦。しかし、小キンが帰ってこない。
● 第五歩はハンドバックで
一人目に戻る。探偵役扱いが気に入らない、赤西一郎太ではなく、茜一郎とする。子どもを利用して、千寿子のハンドバックが届けられる。茜一郎の捜査。玉木刑事は茜一郎を疑うが、玉木刑事もどこか怪しい動きをしている。
● 第六歩はボーリングボールで
小きんは、死体の女の顔が入っているというボーリングバッグを捨てに行き、失敗して交通事故で死ぬ。
二人目は探偵の名を赤西一郎太にこだわる。犯人は、東京駅の待合室に一人で1000万円を持ってくるように指示。しろうと探偵の推理と刑事の捜査。玉木刑事は赤西をうたがい、邪見にする。
● 第七歩は東京駅で
東京駅には多数の刑事が潜む。財田家に犯人から電話。身代金を2000万円に値上げ。警察の捜査。玉木刑事は怪しい動きをしている。
● 第八歩はポラロイド写真で
ハンドバックを財田家近くまで持って行ったのはブタ。財田家に電話したのは大虎。千寿子が無事な証拠をでっち上げる。目立つ壁紙を新聞紙で隠して撮影。ブタが出かけたきり、帰ってこない、
ガン・ルームで大虎、小きん、ブタのことを事務員が目撃していたという。
警察は、小きんが交通事故で死んだことを知る。玉木刑事は赤西を疑うが、同僚の荒垣からは玉木の行動も疑われる。財田家は、警察を信頼せず、赤西を信頼している。事務所に犯人から写真が届けられる。
● 第九歩は中曾禰虎徹で
財田徳右衛門は、愛剣の「中曾禰虎徹」を持って、犯人との取引へ。犯人から再度電話があり、お金の受け取り場所を変えたいとのこと。警察がどっと動く。更に電話。赤西一郎太が出て、対応。赤西は、犯人のアジトに行くという。
徳右衛門も戻り、警察も入り、財田家に結集。赤西は、写真を見て、新聞社に電話をして、輪転機の番号から、犯人のアジトを突き止めたようだが?
● 最後の一歩は意外な方へ
栗野が誘拐計画の全貌を大虎に語る。財田千寿子は死んでいない。栗野が、大虎、小きんに復讐するために、桑野と、ケチな一家から金を引き出そうとした財田千寿子と組んで、、この誘拐計画を立てたのだという。
茜一郎から財田家に電話があり、警察が向かう。ダイナマイトで、栗野、大虎と玉田刑事が死んでいた。茜と千寿子は生還
● 最後
奇数章を書いたのは、赤西一郎太=茜一郎=桑山。偶数章を書いたのは、財田千寿子。赤西は、事情を説明。
もともとは茜と千寿子が結婚と家族から金を引き出すために立てた計画。それに栗野の大虎、小きん、ブタへの復讐を絡めた計画とした。
これを、推理作家に頼んで、その人が創作したものとして発表してもらう。タイトルは誘拐作戦。誘拐をでっち上げ、ふたりの結婚を可能にした作戦という意味
著者による注と茜一郎による注がある。玉木刑事は、たまたま捜査の担当になったから事件に関われたわけであり、栗野が共犯者とするのは論理的ではない、だから玉木刑事は共犯ではあり得ないという考え。論理的な矛盾だが、証拠に裏付けられたものでもない。 -
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ネタバレ● 感想
妻、隣人、兄といったこれまで親しくしていた人が、「きみ」の存在を否定し、見も知らぬ人が「きみ」を会社の社長雨宮毅だと決めつける。極めて不可解で魅力的な謎である。この謎をテーマにしたミステリ
一人称を「きみ」として語り掛ける文体となっている。筆者の都筑道夫自らが実況放送スタイルといった形式だが、この点は別段、いいとも悪いとも思わなかった。しかし、何の脈絡もなく場面転換をしたり、一人称が誰か分からなかったりするなど、短い作品ながら読みにくい部分がある。翻訳モノのミステリでもときおり感じた印象であり、都筑道夫が多くのミステリを翻訳していたことにも関係しているかもしれない。
謎は魅力的だが、真相は組織の品物を金に変え着服した雨宮毅を、組織が処分しようとしているのを知った、浜崎紘太郎が、弟の浜崎誠治を身代わりにしようとしていたというもの。この真相は平凡と言わざるを得ない。仕掛けとしては、雨宮毅は関谷のふりをして浜崎誠治と行動することにより、一緒にいる浜崎が社長と社員から呼ばれているように見せかけた(読者+浜崎へのトリック)。スリッパに木天蓼(またたび)を塗り、まとわりつかせることで、猫のサミイがなついていると見せかけた(浜崎へのトリック)など。これらも平凡
浜崎紘太郎を義理堅い人物と描いているなど、伏線もちらほらある。「幻の女」、「べラム氏の奇妙な事件」、「時間溶解機」等の古典ミステリのうんちくもあり、ナンセンスな登場人物が登場している。こういったミステリとしてのデキ以外の魅力はあるが、それほど好みではない。正直、それほど面白いと思わなかった。★3の低めの方かな。
● メモ
主人公、浜崎誠治は、目が覚めると身に覚えのない家。侑子という女が、自分は、「きみ」の妻だという。きいは、浜崎誠治ではなく、雨宮毅だという。バスで家に帰り、内縁の妻である安藤雅子にあうが、「あんた、どなた」と言われる。
妻だけでなく、隣人の鎌田夫婦も、「きみ」に会ったことがないという。「きみ」は、昨晩飲んだ酒屋に行く。「きみ」と一緒にいた男のことを聞くために、シャウトという喫茶店によくいる「殺し屋」と呼ばれる男に会いに行くことになった。
シャウトでは、モヒカン頭の男から、「殺し屋」と呼ばれる鈴置という男の住処を聞く。「殺し屋」と呼ばれる男は、猫の殺し屋だった。鈴置は画家でもあり、「きみ」と一緒にいた男の似顔絵を書くが、書いた絵はアブストラクトの似顔絵。抽象芸術だった。
「きみ」は浜松に行き、兄に会おうとする。東京駅で社長秘書の平野に会う。雨宮の会社に浜崎誠治の兄、浜崎紘太郎が来ているという。雨宮の会社に行くと、専務の関谷が出迎える。商談をした後、てんぷらの店へ。
「きみ」は専務の関谷が持っていたマッチに書いてある「らぐたいむ」という店に行く。モヒカン頭の男、猪俣と再会。これも縁ということで、猪俣にこれまでのいきさつを話すことに。猪俣は、シャウトのウェイトレスである千沙子と一緒にいた。
猪俣と千沙子は、「きみ」の話を聞いて推理。なぜ、目を覚ますと雨宮になっていたのか。「きみ」を浜崎誠治だと認識できるのは雅子、鎌田夫婦、兄に4人だけ。この4人を買収したと考えられる。雨宮が既に死んでいて、保険金を得るために偽装している説、兄や雅子等、浜崎誠治の性格を知り尽くしている人が、浜崎を雨宮に仕立て上げた説等を語る。
雨宮の秘書の平野が写真が得意であることが分かる。合成写真を作る技術がある。推理をしてから、猪俣と「きみ」はらぐたいむへ行く。
らぐたいむで「きみ」と一緒だったのは関谷専務だったことが分かる。
「きみ」は雨宮の家に戻り、侑子が共犯かどうかを確かめようとする。そこで、庭に探偵がいることに気付く。探偵は、浜崎誠治という人物に頼まれ、「きみ」を尾行していたという。「きみ」と猪俣は、関谷の連絡先を調べ、関谷の家に行こうとする。そこに、本物の殺し屋から連絡がある。殺し屋は雨宮を殺害する。最後にやり残したことをしておけという。
関谷の家に向かう。途中、交通事故を目撃。関谷宅の近くで殺し屋に会う。殺し屋に金を渡し、自分が雨宮でないことを証明すると伝える。
浜崎の家に向かうタクシーの中で、猫のサミイがなついたのは、スリッパに木天蓼(またたび)が塗ってあったのではないかとひらめく。また、雨宮の会社で関谷と名乗っていた人物が、雨宮毅ではないかとひらめく。社員は、「きみ」ではなく、一緒にいた、「きみ」が関谷専務だと思っていた人物のことを「社長」と呼んでいたのだ。
鎌田甚吉を脅し、最終的に、「きみ」が浜崎誠治であること、兄の浜崎紘太郎の頼みで、知らないふりをしていたことを伝える。そこに、千沙子が現れ、雨宮毅が交通事故で死んだと伝える。
真相。シトロエンで「きみ」を監視していた女が雨宮侑子。関谷のふりをしていたのが雨宮毅。関谷宅にいた。雨宮の妻のふりをしていたのは、浜崎紘太郎が東京で世話をしていた女
浜崎紘太郎は、世話になった雨宮毅が、組織の金を使い込み、処分されようとしているのを知り、浜崎誠治を身代わりにするため、この計画を実施した。
殺し屋は、依頼を受けているからとして、「きみ」を殺害しようとする。雨宮紘太郎と殺し屋が双方を殺害し合う。警察に伝え、このことを知った者がどう思うかを考えている場面でエンド -
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桔梗信治(ききょう・しんじ)は、さまざまな殺人方法を研究していた父親が死んだあと、殺し屋として活動をしている父の弟子たちと決闘し、父ののこした「飢えた遺産」をこの世から抹消しようとします。そんな彼が、自動車泥棒の大友や情報収集組織の鶴巻啓子、女スリ師の佐原竜子などの協力者を得て、つぎつぎと奇抜な殺人方法を駆使する相手と戦うエンターテインメント作品です。
著者がミステリ作品を執筆しているということもあって、さまざまな殺人の方法があつかわれているのが読みどころでしょうか。とはいえ、リアリティを重視するよりも、アクション・シーンのおもしろさに重点が置かれています。テンポの良い展開もあいまって、一気に読める内容の作品でした。