都筑道夫のレビュー一覧
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中編の「悪意銀行」短編の「NG作戦」「ギャング予備校」の3篇が近藤&土方が活躍する「紙の罠」の続編集。その他にショートショートと落語も入ったユーモア小説のアソートセット。
近藤や土方だけでなく、このシリーズに登場する女性たちはとても魅力的だ。また今ならニューハーフと言われるだろうオヤマーも恐いけど可愛い。その他大勢の野郎共もマヌケで愛おしくなる。
この文庫に、なぜ近藤&土方が初めて登場する「紙の罠」も含めなかったのか疑問だったが、読んでなんとなく分かった。たしかに「紙の罠」は面白いのだけれど本文庫に納めされている「悪意銀行」以降の作品と比較するとかなり差がある。発表は僅か1年の間でしかない -
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解説で道尾秀介さんが言われている通り、まさに「渾沌」の書である。
タイトルからして人を喰っており「怪しげ」であるが、その中身はもっともっと「怪奇」そのものである。
どこへ連れていかれるのかわからない。
どこへ向かっているのかもわからない。
そして今、どこにいるかもわからない。
いわゆる「先が見えない」とはまた違った、この不安定でぼんやりとした読み心地をなんと言おう。
暗闇の中、手探りで進んで行くよりも、もっと曖昧としたこの気持ち。真っ暗ならば見えないのは当たり前。しかし、この小説は全くの暗闇を書いているのとも、また違うのだ。
明るいのかわからない、暗いのかわからない。例えるならば、そんな感 -
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江戸時代の話なのにあまり時代物という感じがしない、と常々思っていたのですが、その理由として武士の心構えがどうこうとか、武士の本分がどうこうとか、このシリーズにはそういうものが出てこないからだと『深川あぶら堀』を読んで初めて気づきました。
むしろ江戸の習俗なんかはたくさんちりばめられているのに。
これまで読んだ時代物のほとんどが武士や大店を抱える町人のように建前だの誇りだのを気にする人たちだったからかな。でもいま出ている時代物のほとんどは武士を扱ったもので、つまり手に取るもの自体偏ってるといえば偏ってる。
話は少し血腥いのが多いかな。どちらかといえば、落語に題材をとったきまぐれ砂絵の方が好きな -
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アウトローっていうのは死語なのかな?砂絵師のセンセーはじめ、なめくじ長屋の連中はまぎれもなくアウトローなんだけど。
捕物帳といったって、お上の手先になるじゃない。岡っ引の下げてくる酒目当て、事件にかかわった金持ちからの礼金目当ての内職がわりと嘯いて、奇妙奇天烈な事件をすっぱり解いてみせてくれる。
砂絵シリーズの最終巻にあたる。
ひさしぶりの再読になるのだけど、やっぱり面白い。タイトルだけ予告されて書かれなかった数編が読めないことが残念でならない。
本格ミステリの謎解きと捕物帳の人情と江戸風情が味わえる、ほんとに贅沢なシリーズだったとしみじみ思う。「伊勢屋稲荷に犬の糞」なんて言葉や地口の面白みも -
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刑事の息子から事件の詳細を聞き、最終的に真相を引き出すパターンは『ママは何でも知っている』を連想させる。息子に二、三の質問をしたのち論理的に事件を解決してしまう手際の良さも共通しているが、ブロンクスのママがやや劇的なのに対して、この退職刑事はこつこつ型で、どちらかというと地味な印象。でも気がつけば隙もなく推理のプロセスが出来上がっているのだから、その手腕はお見事と言うしかない。同系の国内ミステリがどれくらい存在するのかは知らないが、論理の組立や完成度からいってもトップクラスに入るのは間違いない。 秀作揃いの中でも気に入っているのは『ジャケット背広スーツ』。『九マイルは遠すぎる』を彷彿とさせるこ
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連作ミステリー短編集。全7話。
元刑事の父を持つ主人公。彼は、五人いる兄弟の中で唯一父と同じ職業、すなわち刑事となった。そんな彼の所へ、時折遊びにくる父。さりげなく今息子が抱えている難事件を聞き出し、独自に推理を働かせる。さながら安楽椅子探偵のように・・・。
おもしろいよ、これ。続きを是非読みたい。これ読んだときふと、阿刀田高さんの「Aサイズ殺人事件」を思い出した。これも安楽椅子探偵もので、すんごくおもしろかったんだよね〜。
主人公の父が何とも言えずかわいい♪退屈すると息子の家にイソ×2とやってきて、鋭い推理力で事件の絵解きを始めるの。