都筑道夫のレビュー一覧
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ネタバレ安楽椅子探偵ものは多分初めて。お父さんの推理が鋭すぎて面白い。
逮捕に至るまでの後日談がなく、純粋に息子の前で推理を披露するだけというのも潔い。(狂い小町は後日談があった)
「昨日の敵」では、そろそろ都筑道夫の話のコツが掴めてきたようで、推理が大凡当たった笑
「理想的犯人像」で上司の不倫に部屋を貸すというシーンがあったが、これは昔だとあるのか?個人的には絶対有り得ないと思った笑
読み終えて、退職刑事のお父さんのが「ここで一度整理してみよう」と言い出すのが待ちきれなくなるなと感じた。
順番に推理を組み立てていく様が見事。続編も読みたい。
長編ではないのと、後半は半分くらい犯人やトリックの予想がついたので好みとして80点。 -
Posted by ブクログ
最近は一冊を一気に読み通すことがあんまり出来なくて、それはまあ、一冊を読み切ることにあまり重きを置いていないから良いのだけれど、そんななかでもこれは買った翌日に一気読みしていた。小説も物語もとても良かったから。不気味で不穏で一筋縄ではいかない技巧も盛りまくった「怪奇」な怪奇小説。もちろんしっかり怖がれた。
九つある章のなかの一つに「ささやかな推理小説論がふくまれている」ものがあるのだけれど、その論にも納得というか共感していて。
「ぼくが怪奇小説の連載をひきうけたのは、合理的に解決される推理小説ってものに、疑問を持ちだしたからなんだぜ。推理小説というやつは、合理的に解決されるとたんに、なんだかむなしくなってしょうがないんだ。
書いてても、読んでても——解決がなかったら、すばらしい小説になるのにな、と思う
ことがある」
「でも、推理小説は現実を映すものじゃないでしょう?現実はつじつまのあわないこでとだらけ、論理の通用しない世界だから、推理小説が読みたくなるんじゃない?そういう意味では、老年むき、中年むきの小説よ。若いうちは、つじつまがあわなくても、論理が通用しなくても、感覚ではねかえすことができるし、闘いをいどむこともできる。
でも、中年、老年になると、あきらめて、推理小説あたりに慰めを見いだすのね」
わたしもいつも解決がない物語が読みたいと思っているからね。とはいえ、わたしももう中年だから、推理小説にあるような現実を反映しない架空の解決に慰めを見出している、といえなくもない。この本が一気読み出来たのも、これが怪奇小説だとはいえ、謎の解明、解決に向かって進んでいく推理小説仕立の物語の推進力があったからかもしれない。終盤に描かれる謎の解明は本質的には解決とは言えいないのだけれど、それはつまりは解決しない怪奇小説の魅力でもあって……ということはどういうことかと言えば、これもわたしが相反するような二つの面からも読みたかった小説で物語なのだった。それは一気読みもするよね。
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この本を買った帰り道、何気なく道尾秀介さんの「解説」から読んでみたら、これは「解説」というだけでなく、この小説を¥100の古本で買うことで人生も買った、という彼の「物語」でもあってめちゃくちゃ良かった。こういうその人にしか書けない本の話は大好きだ。自分もそんな「物語」れる体験が出来るかもしれない、と思わせてくれるから。わたしも¥132でこの古本を買うと同時に、人生とは言わないけれど、何か別のものも買った気になってみたい。と、読む前に思っていたけれど、たしかに、なにか、別のものも手に入れた気になっている、かもしれない。とりあえず、今度は「道尾」というペンネームの苗字は「道夫」の音から来ているらしい彼の小説も読んでみようと思っている。 -
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この前読んだ倉知 淳作「猫の耳に甘い唄を」は、この作品のオマージュということ。そして、昭和のミステリー作家としてよく名前が挙げられている中、ようやく作品を読むことができた。
徳間文庫が復刊し、粋な表紙(装丁)である。もちろん猫好きとしても猫の配置が絶妙である。
さて、内容。
なるほど、手が込んでいる。久しぶりに遡って読み返しながら、謎解きを反芻した。
登場人物は皆、昭和初期の生まれなのに全く古臭さを感じず異国を思わせるオシャレさ。
有紀子を思うシャイな淡路は、今の時代にあってなんとも魅力的・・・
と、別世界に浸れた古典であり、新ジャンルに触れた時間であった。 -
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レジェンド作家都築氏2作目、この文庫本は令和になって復刊されている。前に読んだ「やぶにらみの時計」と同じく、今後も氏の作品が装丁あらたにして復刊されていくようである。お見事徳間文庫様!
今作は「やぶにらみ~」に続く都築氏の長編2作目である、全作に比べても非常にトリッキーな作風であり、それは書き出しの1文に集約されていた。「私はこの事件の犯人であり、探偵であり、そしてどうやら被害者にもなりそうだ」初版は1961年である。なんとも挑戦的書き出しだと思う、ミステリにおけるトリック、探偵=犯人、書き手=犯人、などはこの時代にはあらかた出揃っていたと思われるが、今作はなんと一人3役である。どうやって成立させるの?思い読み進めていくのだが、中盤では、入れ子構造にまでなってくる。主人公淡路氏の記録として綴られる事件のあらましが、作家都築道夫氏の束見本(本の仕上がり具合を確認するために白紙ページを製本したダミー、解説より)に記されている。つまり読者が読んでいる「猫の舌に釘をうて」は主人公淡路氏の記録であるという構成である。以下ネタバレあります!注意してお進みください。
この主人公淡路氏はいわゆる文筆業で生計をたてていて、自称ミステリ作家である。
そんな彼のカタチにならない恋が事件の大きな柱となっている。最初の事件からドタバタ劇的な「やぶにらみ~」やら映画化された「殺人狂時代」を思い出したが、なんだかんだで書き出しの一文に事件が集約されていき、素直な感想は、お見事!であった。ただ登場人物がやや多く、それぞれのキャラ立ちがやや弱いので、結末部分でページを見返すことが多く、ちょっとモヤっとした感が否めなかった。淡路氏の思い人ヒロインも最終的には殺されてしまうのだが、その過程において、犯人の思いの変化が事件の顛末において変化球なりうる、というくだりは、今作にかけるその時代での都築氏の大いなる挑戦なんだったと思う。
そして解説(法月綸太郎氏)を読んで、都築氏が手掛けたミステリの定石、伏線の数々などにやっと気づけた。そしてお見事加減が上昇することになる。
今から60年以上前の小説なのに、非常に読みやすい、そして昭和30年代の東京の様子が精緻に描写されており、令和の現代とは相当な様変わりをしているのだろうが特筆すべき点である。この物語の背景、当時の東京の風景を見てみたいものである。 -
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ネタバレ● 感想
都筑道夫の「猫の下に釘をうて」の束見本に淡路瑛一の殺人の告白と告発をしたという手記が掲載されているというメタミステリの構成の作品。この構成は面白い。こういう現実世界とリンクさせたメタ的な仕掛けのあるミステリは非常に好み。
「私はこの事件の犯人であり、探偵であり、そしてどうやら、被害者にもなりそうだ。」という文章から始まり、ジャプリゾの「シンデレラの罠」を思わせる。筆者は、ジャプリゾが記憶喪失というイージーな手を使っていると知って、「それだけで勝った」と思ったということ。
確かに、記憶喪失という安易な手を使わず、有紀子という女性の風邪薬を淹れたコーヒーを飲んだ「後藤」という男が死んだことから、自分が実行犯。そして、命を狙われている有紀子と、後藤殺害の真相を知るための探偵役となり、最後は、後藤殺害の真相を隠すために、後藤殺害の真犯人一派に殺害され、被害者になるというプロットそのものは面白い。
そこに、1時代前、昭和風の恋愛小説風の味付けがされる。「あだち充」や「高橋留美子」を思わせるような、なんとも古臭いロマンスをブレンドしている。
ミステリとして見ると、プロットは面白いがトリックはそうでもない。後藤殺害は、カップのすり替え。塚本有紀子殺害もトリックらしいトリックはない。塚本有紀子殺しの犯人を指定する決め手は、手記にはっきりと書かれていないことは何かという点。重要な事項が書かれていないからこそ、書き手の淡路が犯人だと分かるという部分は面白い。
総合的に見るとどうか。とにかく、こういう構成の本が存在するというだけで嬉しくなってしまう。このような遊び心は好きだ。その他の部分は及第点ギリギリ程度のデキだと思う。★4で。
● メモ
私はこの事件の犯人であり、探偵であり、そしてどうやら、被害者にもなりそうだ。という文章から始まる。推理小説その他を書いて生活している、主人公、淡路瑛一。
淡路瑛一は、愛する塚本有紀子と結婚した塚本稔を殺害したかった。しかし、塚本稔を殺害すると有紀子が不幸になる。その殺意を満足させるために、新宿歌舞伎町の喫茶店、サンドリエの常連、塚本稔にどことなく似ている「後藤」という男をターゲットにする。
淡路は、有紀子の風邪薬を後藤に飲ませた。すると、後藤が死んでしまった。誰かが、有紀子を殺そうとしていたのか。
淡路は、後藤を殺害した犯人。そして、有紀子を殺害しようとした人物を探す探偵、そして、有紀子を殺害しようとした人物から殺害されるかもしれない、被害者になるかもしれない人物なのだ。
淡路は、都筑道夫の「猫の下に釘を打て」の束見本に、行動を記録することにした。
後藤の事件の捜査をするのは、村越警部補。後藤は偽名かもしれない謎の人物。出版社の編集長の中沢から、事件を調べてみろと言われる。
淡路と有紀子は同人誌を作っている。気の知れた仲。淡路は有紀子を殺害しようとした人物を捜査する。
貧しい作家の生活記録の上に、事件の進行を二重焼していって、その間に恋の回想を綯いまぜる。わたくし小説でもあり、本格推理小説でもあり、恋愛小説でもあるユニークな小説ができる。そうそぶいて、手記を記載する。
淡路と有紀子との出会いは偶然。淡路は、後藤殺害の捜査も始める。
淡路は、有紀子から恋愛、結婚の相談を頻繁に受けていた。そういう間柄。淡路は有紀子が好きだが有紀子からは恋愛対象とはみられていない。
後藤の家に、謎の男が来て、何かを探していたという。淡路も後藤の家に行き、医学関係の専門書があることに気付く。
淡路は、有紀子の護衛をしつつ、後藤の事件を捜査する。だんだんと疲れてくる。有紀子は、かつて、妻子がある男と心中しようとしたこともあった。
後藤は、病院の習慣等に詳しかったという。後藤は、製薬会社と医者との間のブローカーの仕事をしていた。後藤の部屋を荒らした古川という男も事故死か他殺か分からない形で死亡。刑務所から出たばかりの男だった。ヒロポンの密売をしていた。
村越は、淡路がリハーサルの意味で、後藤を殺害したのではないかと疑っていたと伝える。
淡路の後藤の捜査も上手くいかず、有紀子の身に何も起こらない。淡路の手記はどんどん短くなる。
淡路は、後藤の元妻から、後藤が、塚本の製薬会社の人気商品「ハッタリ」の名づけ親だと言っていたことを聞く。
有紀子が殺害される。
読者への挑戦が挟まれる。淡路は焦る。いったい、だれだ。だれが、こんな推理小説めかした読者への挑戦なんぞを、私の手記へ書き込んだのだろう。
チャレンジャーはなにものだろう。
チャレンジャーは大野木だった。読者への挑戦の筆者は大野木で、読者は淡路。手記の筆者は淡路。大野木は、手記を読み、淡路が信頼できない語り手で、書いていない部分があると見ぬき、有紀子殺害の犯人が淡路であることを見抜く。淡路は、有紀子が小早川と不倫をしていることを知り、殺害した。
大野木は、後藤の殺害も淡路の仕業にし、自殺に見せかけて殺害しようとするが、淡路は後藤殺害の犯人ではない。大野木は小早川の兄で、後藤は塚本稔の兄だった。後藤は塚本稔と似ているとか、塚本稔の兄は死んだとされているとか、伏線はある。
後藤を殺害したのは大野木。淡路が入れたのは単なる風邪薬で、大野木はカップごとすり替えた。
最後、淡路は、束見本に仕掛けをほどこす。数頁白い頁を入れた後、中央部分に真相を書く。この猫の下に釘を打てそのものが、淡路の手記だったというオチ -
Posted by ブクログ
北村薫「ミステリ十二か月」で言及されていたので手に取った。やはり、この人のチョイスに間違いはない。
「シンデレラの罠」の上を行く技巧ミステリ。読みどころは、主人公が犯人・探偵・被害者の3役というだけではない。ミステリで、恋愛小説で、私小説で、さらに懐かしの東京を描く「都市文学」でもあるのだ。
作者あとがきによれば、恋愛小説をストレートに書くのはためらわれ、「てれ性」ゆえの技巧だという。数々の煙幕ゆえ、ミステリか恋愛か、どちらが本意なのかは分からないし、どっちでもいい。本作が名作であることに変わりはない。
ややネタバレになるが、一人称ダメ男のイタい犯罪という点では、「ロートレック荘事件」「倒錯のロンド」に通じると感じた。ややずれるが「葉桜の季節に君を想うということ 」も思い浮かぶ。また、「仮題・中学殺人事件」を読まねば。