あらすじ
江戸は天保末期、深川を東西に流れる小名木川のほとりには、春をひさぐ女が多くあった。彼女たちにとって、川は哀しみの涙をあつめて流れる“女泣川”だった。旗本の左文字小弥太は、苦界で懸命に生きる売女たちの姿に胸をうたれ、屋敷を飛び出し、用心棒を買って出た。竹光だが、斬れ味鋭い“べらぼう村正”を振るって難事に挑む酔狂な剣客の活躍を描いた連作集!
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べらぼう村正は死なず
左文字がカートキャノンだと思えてきて、お関さんの周りにいるのは、マノンちゃんたち、仁丹塔は伊助親分かな。都筑道夫のハードボイルド風時代劇。これ、映像化して欲しいけど、俺等の頭じゃ、昔の東映か大映、日活の役者さんしかキャスティングできない。左文字は市川雷蔵、お関さんは左幸子かな。とにかく、筋立ては謎解き、アクションのサービスが一杯だけど、それ以上に江戸は深川あたりの情景描写を味わえる小説です。文章のお手本だよ。酔えるよ。
Posted by ブクログ
読み応えがありました。
短編が13編。人情噺もちらほら入れつつ、ハードボイルドだなあ、と思います。
実際にこのような長屋があったかどうかは虚構の世界だから別にして、このような雰囲気を湛えた長屋は江戸のあちらこちらにあったのではないかと思わせる筆の冴えです。主人公と若侍3人の関係性も作中での変化も、江戸の市街ではよくあったのではないだろうかと思わせます。実際には起こりえないことだとも思いますけれども。
若い頃の田村高廣に演じさせたくなる主人公。これは私の勝手なイメージなのですけれども。
ハードボイルドな雰囲気で進みながらも最後はとても抒情的。いや、抒情的だからこそハードボイルドなのかな、とも考えます。
この人も上手な作者だったなあ、としみじみ思います。
他のシリーズも読み直したくなる本でした。