新庄嘉章のレビュー一覧
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あらすじだけを言えば、まだ十代の若い男が人妻であるマルトと不倫関係に陥り、最終的にはマルトが不倫でできたと思われる子供の出産のせいで死ぬという悲劇的なもの。この話自体で何が言いたかったのかよく分からないが、内容それ自体よりも、その過程の描き方や心情の分析が鋭く、良い作品にしている。
この作品は筆者が若干17~18歳の時の作品であるということに驚く。内容や筆遣いがそのくらいの年齢の人物によって書かれたと思えないものである。印象的なのは、婚約し同棲する夫との寝室の家具をマルトと主人公が選ぶところである。主人公は結婚するマルトの夫に対して嫉妬を覚えるが、マルトとその夫の家具の趣味を否定し、彼ら -
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ネタバレ最初のあたりは、主人公ジャーヌの少女的な表現の連発にちょっと読むのが大変でしたが、
そこを越えるとわかりやすい描写でするすると読むことができました。
全体の3/4くらいまでは、主人公ジャーヌに対して気の毒に思いながらも、
「全てに対して受身だから、どんどん悲惨な状況になっていってしまっている。幸い資産家の娘なのだし、あまりにも最悪なジュリアンには見切りをつけて、次の幸せを探すべきでは?」と、行動を起こさないジャーヌに対しての怒りもありました。
でもよく考えてみると、この時代、離婚などは有り得ないことで、
そもそもそれを考えのひとつに入れられるようには教育されていなかったのだろうと気づき、深 -
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恋に夢中になる気持ち
周りの助言から耳が遠くなっていく気持ち
嫉妬で気が狂いそうになる気持ち
夜中相手の考えを想像して眠れない気持ち
プライドを守って相手を傷つけて満足しようとする気持ち
相手のために苦しみを受け入れる気持ち
恋にまつわるあらゆる感情をこんなに事細かに描いている小説は初めてでダイレクトに心に届いてくる感じだった。
頭で考えて固く誓ったつもりでも相手の前に立つと全部吹っ飛んじゃうような感覚、それこそが愛だと信じる感覚、めっちゃ共感
こんな昔の話なのに今も共感しちゃうって、恋をした人間の行動は昔から変わらないものなんだな。
また何年後かに読み返したい。
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Posted by ブクログ
大学のフランス文学講義の予習で読みました。
フランス文学は人間の内面を緻密に表象していくのが特徴的ですが、「肉体の悪魔」では感情をどこか俯瞰したような機械的な描写で内容が濃かったです。
マルトと僕のお互いのバランスの駆け引きが一文で記されたりしますが、何倍も時間をかけてじっくり読みました。
主人公「僕」もそんな語り方の癖を自覚しているかのように、このように語っているのが面白いです。
『父の首尾一貫しない行動の理由を知りたいという人のために、僕が3行で要約してあげよう。最初は僕を好き勝手に行動させておいた。次にそのことを恥じて、僕よりむしろ自分に腹が立ち、僕を脅した。だが結局、怒りに流さ