新庄嘉章のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「朝ドラ」ことNHK『連続テレビ小説』題材によくある
「波乱万丈な女性主人公の半生」もの
小説分野でいうなら女性が主役の教養小説
というものの古典
フランスの田舎の田園に生きたある女性の半生
書かれたのは1880年くらい
なので「女性」というものの扱いが現在とはいろいろ違うと思われる
題名の『女の一生』は大正二年に和訳されたとき付けられたらしいが
現在だったらこの題名にはならないのでなかろうか
「女性の生涯とはだいたいこのようなものであるとして、作者から客観的に外からながめられている」
というように解説には書いてある
ほほう
「朝ドラ」のようなものは小説の分野でいうなら何にあたるのだろうか
主人公が男性の場合だったらどうか
主材料における「仕事」「家庭」の割合の違いの他に
男性と女性はそれほど明確にわけられるものだろうか
この作品では「ある1人の女性の半生」を
「だいたいこのようなもの」と表現するには不十分
修道院時代がまるきり空白であるし
解説にあるように本編も短編の断片のつながりでしかなく
主人公の家族に向ける視点しか書かれていない
都会へのあこがれはなく田園に住みたがるのだが
新婚旅行はイタリアに行きたがるのである
主人公の行状に「だいたいこのような」とみられる
すなわち「朝ドラ」のような一面は確かにあるものの
それは男性側である彼女の夫も彼女の両親のどちらにも変わらずあるものだ
この時代のある「生涯」がこの小説のようで
それが100年後にも「だいたいこのような」普遍性を持つのは確かでも
「女性の」だけ
であることにはかなり疑問
同じように教養小説といったら男性のもので
女性は「少女」「娘」の次は「妻」で「母」で上がりであるのは
だいたいそうかもしれないが
男だっていつの時代でも家庭においてはだいたいそのようなものである
外では仕事で名誉で英雄で事跡で歴史で蹉跌で諦観で教養小説なのかもしれないが
家庭のなかだけだって仕事とだいたい同じようなものではないか
演じるひとは同じなのだから
と(この題名をよしとする)解説に文句を書いたが
内容には特になし
この前に読んだ武者小路せんせいの『友情』と比べると
どちらが「古い」のかわかったものではない
その時代を描くことの結果が
どの時代でも変わらぬひとの在りかたでなければならなく
そのほうが偉くて高くで良い
というわけではもちろんないが
100年後も読まれるのがどちらかは明らかである -
Posted by ブクログ
某作家さんがオススメしていたので、ずっと気にはなっていたけれど、内容もラディゲという作家も知らず、今の今まで。もっと早くに読みたかった!という思いと、今でないと理解できなかったところが多数あるのではという思いが混在しています。
恋愛心理をここまで冷静に書けること自体が、異様というか偉業というか。恋愛に陥っている人間の心理を描写すること自体はどこまで珍しくもないと思いますが、全編を通して感じる、どこか冷めた視線がおそろしい。
好きだとか愛しているだとか、好きだから触れたいだとか愛しているから守りたいだとか、そういう単純な仕組みになっていない人間の心の構造をよくぞここまでという風に説明されて、正直ぞっとしました。
不道徳だとか、そういう次元では最早ない。
他人の不幸が蜜の味だとか、そんなシンプルなことでもない。
意地悪だとか崇高だとか、肉欲的だとか清廉だとか、そんな言葉では到底表せない、心の移り変わりをものすごく良く捕らえています。
久々にがつんと脳天をやってくれる本に出会えて、空恐ろしいやら幸せやら。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初のあたりは、主人公ジャーヌの少女的な表現の連発にちょっと読むのが大変でしたが、
そこを越えるとわかりやすい描写でするすると読むことができました。
全体の3/4くらいまでは、主人公ジャーヌに対して気の毒に思いながらも、
「全てに対して受身だから、どんどん悲惨な状況になっていってしまっている。幸い資産家の娘なのだし、あまりにも最悪なジュリアンには見切りをつけて、次の幸せを探すべきでは?」と、行動を起こさないジャーヌに対しての怒りもありました。
でもよく考えてみると、この時代、離婚などは有り得ないことで、
そもそもそれを考えのひとつに入れられるようには教育されていなかったのだろうと気づき、深く考えさせられました。
誰もが自分で考え、努力すれば道を切り開くことができる世界になれば良いと、心から思いました。
結末に関して言えば、孫と一緒に生活できるようになり、本当に良かったです…。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公の少年は裕福かつ教育熱心な家庭で育ってきて言葉も早熟だから主体的に愛人・マルトを懐柔しているかのように表現がされているけど、実態はマルトが主人公からの自分への情熱をよく理解していて支配欲を満たさせているかのように見せながら思いのままに操縦しているのかと思った。
欲求不満と言うよりも承認欲求を満たしているかのような。
マルトが戦地に赴いている夫に手紙をしたためている場面は特に顕著。本心じゃ無い言葉は書きたくないと言いながらも主人公に言われるがままに夫への愛の言葉を連ねていくけど、気持ちの揺らぎを見せることで悲劇の妻を演じているのではという印象だったし。たぶん後ろめたいなんて思っていない。
終盤、主人公の子を妊娠したけど時期的に夫の子かもしれないなんて言い出す始末だし結論は分からないまま文字通り墓場まで持って行ってしまうし。
主人公は大人びた思考をしているようでやっぱり中身は年相応に子供なのには違いなかった。思春期特有の拗らせ。都合が悪くなれば大人に押し付けちゃえってところとか。
そんな子供を自らの思うままにコントロールして夫の不在で出来た隙間を埋めていくのは悪魔じゃなきゃ出来ない。既に周囲には少年との関係が知れ渡っていても夫に対しては従順な妻でいることを貫いて見せるグロテスクさ。
だから『肉体の悪魔』なのだと。 -
Posted by ブクログ
恋に夢中になる気持ち
周りの助言から耳が遠くなっていく気持ち
嫉妬で気が狂いそうになる気持ち
夜中相手の考えを想像して眠れない気持ち
プライドを守って相手を傷つけて満足しようとする気持ち
相手のために苦しみを受け入れる気持ち
恋にまつわるあらゆる感情をこんなに事細かに描いている小説は初めてでダイレクトに心に届いてくる感じだった。
頭で考えて固く誓ったつもりでも相手の前に立つと全部吹っ飛んじゃうような感覚、それこそが愛だと信じる感覚、めっちゃ共感
こんな昔の話なのに今も共感しちゃうって、恋をした人間の行動は昔から変わらないものなんだな。
また何年後かに読み返したい。