萩原朔太郎のレビュー一覧
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乙女の本棚シリーズから、萩原朔太郎さんとしきみさんのコラボ作品の「猫町」です。このなんとも不思議な印象を抱かせる表紙、これもまた期待できそうっ♪
主人公は、耳の三半規管の疾病によるものか、薬物による影響か、よく道に迷う私…。迷い込んだ先には別世界が広がる…。ある日、温泉場に逗留していた私は、猫神に支配され住民は魚しか食べない地域があるらしいという言い伝えを聞くが…気に留めることなく、迷い込んだ町は居心地のいい洗練された風情のある町並みと、温和で満ち足りたように見える住民…それが一変し、どこを見ても猫だらけの猫町に…!!思わず驚愕したが…次の瞬間そこには見慣れたいつもの町並みが…。一貫し -
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「猫町」という作品自体がとても好きだと感じたのだけどそれだけではなくて、巻末エッセイの最果タヒさんの言葉にも惹かれた。
言葉を読むあいだ、遠いものと近いものとがぐるぐると回転をしながら目の前を通り過ぎていくような感覚に溺れる。
自分の体内に消化が難しい食べ物が急に飛び込んできたような感覚。
知っている、とすら思い、自分の「知っている」という感想に、あとでちょっと首をかしげる。
そんな経験はないのに、そんな経験を思い出したような心地がした。
描写された音もされない音も、私には聞こえているとどうしてか思いこんでいて…
読書っていうのは言葉を追いかけ回すことではないのかもしれないな。 -
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萩原朔太郎の詩集ですね。
萩原朔太郎の詩集を見たのは久しぶりにでしたが、飄々としたイメージがあったかのように感じていたのが、一変しました。
森鴎外も認めた才能は確かだと思います。今の時代に読んでみてもさほどの古さを感じないように思います。
解説の高橋順子さんも「近代詩と現代の、美果がともにみられよう。」と述べられています。
朔太郎は『詩は人間の言葉で説明することの出来ないものまでも説明する。詩は言葉以上の言葉である』と《月に吠える》の序文で語っています。
読んでいてかなり内省が激しく、時として無力感の投げ出しのような言葉で綴られて虚無感を感じさせられます。が、美しい言葉使いもあり、詩の表現にか -
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ネタバレ乙女の本棚シリーズ。
萩原朔太郎は初めて読んだ気がする。小難しい言葉や言い回しが多いかなという印象。
普段見慣れている景色でも、場所や方角や時間帯等その時の状況によっては全く未知の場所に来たように感じる不思議な感覚。
私も子供の頃に家から割と近場で迷ったことがあるからその感覚はわからないでもない。
でもこのお話についての猫の町は果たして実在したのか幻なのか…?
作者が元々麻薬を常用していたり上記のような近場での迷子もよくあったといったことから考えるとまた幻覚でも見たのではと一蹴されるのがオチだろうけど、
同じものでもみる視点を変えることで受ける印象がガラリと変わる多面性に関して言うなら、一見 -
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萩原朔太郎、室生犀星いずれも昭和前半期のビッグネームだが、これほどまでに深い友情で結ばれていたとは知らなかった。詩はほとんど読まないので、室生犀星が詩人として出発したことすら知らなかったし、『抒情小曲集』としてまとめられる詩を読んで朔太郎が感動し、ファンレター的な手紙を出して交わりを求めたことなど、本書で初めて知った。
本書では、犀星との交流や犀星論を語る朔太郎の文章と、犀星が朔太郎との交流や朔太郎の性格などについて語った文章、それぞれの詩集に寄せた序文などが収録されているが、お互いの性格が文章から窺われるところが読み比べていて愉しい。殊に朔太郎の犀星に寄せる文章が実に熱いのに対して、犀 -
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口語自由詩の完成者(国語便覧より)
萩原朔太郎文学忌、死因は急性肺炎。
散文詩風小説
幻想的で夢幻的、加えて人外の世界観
距離と時間の移動から 異空間への移動
猫町へのいざない
薬物からの幻影なのか
作家としての創作なのか
あるいは、作者にとっての現実なのか
村上春樹さんの1Q84で紛れ込んだ「猫町」を
思い出します
あちらは海外文学に着想があるらしいけれど
いつもの街角からふと入り込む猫町
幻想と現実の狭間 危うげな均衡
共通点は多いと思う
イラストはしきみさん
彷徨える男がねずみとして表現されていて
猫町からの対比からなのかしら
そうすると村上春樹さんの初期作品に出てくるねずみ男も -
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萩原朔太郎が詩以外の小説を書いているとは知らなかったので、まず、そこに驚いた。
旅した気分になるために、モルヒネやコカインを使ってエクスタシイを感じるという日常は、朔太郎自身もしていたものなのだろうか。
今いる町が、左右反転しただけで、非日常にうつるというのは、私もどこかで感じたことがある。例えば、普段見ている漢字の文字が、急に知らない記号に見えてくる、そんな感じとか。
猫だらけの町というのは、なにかのアニメ映画で数本見た記憶がある。この作品がモチーフになっていたりするのだろうか。不思議な世界観が後世の作品にもたらした影響や、作者の薬物歴などが、妙に気になった作品だった。