笹沢左保のレビュー一覧
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問題編となる「事件」と、推理編の「特別上申書」の二部構成になっている。前半のルポや事件のあらましは社会派という印象にも見受けられるが、暗号やアリバイ・トリック、凶器の消失など、中身はガチガチの本格である。後半に入ってからの刑事の追求が凄まじい。些細なきっかけからある人物が一気にクローズ・アップされる様は、鮎川哲也を彷彿とさせる。捜査の方向性もわかりやすく、ターゲットをひとつひとつ潰していくシーンは、地味ながら読み応えがあった。二部構成にしたことがストーリーに生かされており、全体のバランスも非常にいい。ただ、トリックを支えるネタに微妙な違和感を感じてしまったのが残念。
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笹沢左保の短篇ミステリ作品集『白い悲鳴』を読みました。
笹沢左保の作品は3年近く前に読んだ『お不動さん絹蔵捕物帖』以来ですね。
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陸進不動産の金庫から七百万円が忽然と消えた。
責任を問われ、経理課の酒巻伸次と御木本平吉が解雇される。
金を盗むことができたのは、酒巻含め経理課の六人のみ。
納得いかない酒巻は真犯人を突き止めるべく、巧妙な罠を仕掛けるが―(「白い悲鳴」)。
事件の陰に潜む哀しい人間模様を描いた四篇を収録。
殺人、愛憎、裏切り、復讐…意表を突くどんでん返しのミステリー集。
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2019年(平成31年)に刊行された作品です。
■白い悲鳴
■落日に吼える -
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ネタバレ物語の幕が上がるなり、製パン工場の駐車場で他殺死体が発見される。被害者はバーを経営する女性、十津川英子
荒巻という部長刑事が、自分より若いが階級が上の御影警部補とコンビを組み、容疑者が主張するアリバイの打破に挑むのが前章。荒巻は、8年前に有名な作曲家、船田元を殺しで服役していた、沖圭一郎が出所していることから、沖が復讐のために十津川英子を殺害したと考え、捜査を進める。
御影は、50万円が当たっていた宝くじをなくしてしまい、気になっているという描写がある。これはちょっとした伏線である。
十津川英子は、かつて岬恵子という名の歌手だったが、30歳でオスカル・ロメロというブラジル人と結婚し、日