あらすじ
事件は、商産省の組合の秘密闘争計画が、省側に筒抜けになっていて、スパイが発見されたことが発端だった。裏切り者の組合員と、彼の内縁の妻と誤認された女性が殺された。二つの事件の容疑者も事故で死んだ。事件全体に釈然としないものを感じた警部補。鉄壁のアリバイ。密室で姿を消した凶器。乱歩賞次席ながら世に出た、笹沢推理文学の輝ける出発点。
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Posted by ブクログ
問題編となる「事件」と、推理編の「特別上申書」の二部構成になっている。前半のルポや事件のあらましは社会派という印象にも見受けられるが、暗号やアリバイ・トリック、凶器の消失など、中身はガチガチの本格である。後半に入ってからの刑事の追求が凄まじい。些細なきっかけからある人物が一気にクローズ・アップされる様は、鮎川哲也を彷彿とさせる。捜査の方向性もわかりやすく、ターゲットをひとつひとつ潰していくシーンは、地味ながら読み応えがあった。二部構成にしたことがストーリーに生かされており、全体のバランスも非常にいい。ただ、トリックを支えるネタに微妙な違和感を感じてしまったのが残念。
Posted by ブクログ
20年くらいの積読本。初版は1960年(デビュー作)ってことなので60年も前の作品。丁寧な証拠固めと論理展開は、松本清張『点と線』を連想した(時期的にはおおよそ同じくらいの時代)。第一部の、小説風ではない関係資料のような書き方は、たしかに若干の退屈さを感じるけれど、これがもし主観ありの記述で書かれていたら(たとえば東野圭吾さんを連想)、長くなってしまいそうだなと思う。本作に関しては、適度な長さに収まってよかったと思う。スーツを質屋に出すみたいな発送は、昭和の時代はよくあったのかもしれず、今となっては違和感を感じるけれど、そういう特殊設定ものだと思って読めば、古さが引っ込むことに気がついた。そういう意味ではSFとも似ているのかな。