真梨幸子のレビュー一覧
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時代を超えて因縁の地…鸚鵡楼とその跡地で起きる殺人事件。
冒頭のエピソードはどこに繋がるのかと思っていたら、「そうきたか!」というところへと繋がっていた。
設定など多少違和感を感じるところもあったけれど、女性の陰湿さや愚かさ、くだらないことにこだわる歪んだ執着心や方向性の間違ったプライドなど、女性の嫌な面を描かせたらさすがに上手い。
もっとも理解しづらかったのは沙保里の精神状態だ。
いくら過去の男がトラウマになっているからといって、あれほど実の息子を愛せないものだろうか。
妄想もあそこまでいくともはや病気の域だと思う。
それとも、沙保里は潜在的に精神的な何かを患っているという設定だったのだろうか。
読み取れなかったのは読む側であるこちらの責任かもしれないけれど…。
残念だったのはこれはミスリードだな、と途中で気づいてしまったこと。
事件の鍵を握る重要な人物が唐突に登場したこと。
過激な描写が一部にあるので、ある程度年齢がいっていないと読みづらい箇所があること。
鸚鵡楼という名称のインパクトが強かった。
物語の展開には直接関係してはいないけれど、鸚鵡の使い方がうまいなと感じた。 -
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誰もが認める美貌を持って生まれてきた有利子。
けれど、有利子が幸せになるためには何の手助けにもならなかった。
ファム・ファタール(男たちを破滅させる女)として描かれている有利子は、結局のところ寂しい女性だっただけかもしれない。
地道な努力や他者への思いやりなど、有利子からは一番遠いところにあるものだ。
彼女の中には背徳への後ろめたさなど欠片もない。
贅沢に、自由に、思うがままに。
ただそれだけが有利子の願いだった。
啓介と出会うまでは・・・。
一般的に考えられる純愛とは形は違ったけれど、有利子の啓介への思いも歪んだ純愛だったのかもしれない。
ほとんどの人が有利子は相手に不幸をもたらす悪女だと思うだろう。
人としての道を外れ、坂道を転がるように転落していく男たちはその犠牲者にしか見えないのかもしれない。
有利子を拒絶しなかった、利用した多くの男たち。
彼らは被害者という立場に自分を置いて、すべての責任を有利子に押し付けているだけのように見えてしまうのは間違いなのだろうか。
最後の最後まで啓介を愛していた有利子。
啓介を一途に思う有利子に人生を賭けて尽くす篠原。
若気の至り・・・そんな言葉で有利子を切り捨てた啓介。
いったい誰が本当に被害者だというのだろう。
リヤカーでたった二人。
全国をあてもなく彷徨い続けた日々を思うと、有利子という存在の哀れさがしみてくる。
タイトルの「深く深く、砂に埋めて」の意味は、あまりにも悲しく切ない。 -
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2016年、7冊目は昨年も良く読み、年始にまとめ買いしてきた真梨幸子。
家電メーカーの派遣社員、岩代彰子、彼女の母・久仁枝は、久仁枝の意思で、伯父であるアマチュア画家、岩代彰夫の遺品を探している。一方、世界的流行作家、ジョー・コモリの死をきっかけに、広告代理店の深田喜代美、プランナーの嶋元ミチルは彼の空白の一年を追いかけるようになる。そこに関係していたのは、岩代彰夫であった。
四人の女性の視点を中心に、そして、もう一つ、イントロダクションで登場する、語りべ的◯◯の俯瞰的視点が絡み、物語は展開していく。
今作は、他の、真梨幸子流イヤミスとは、一味違う。真梨幸子が描く、女性特有の粘着質のドロリとした部分はあるものの、作品全体としての印象、読後感はソレ程重いモノではない。この辺が評価の分かれ目。個人的には、ストーリー展開のドライブ感、読者を引き付ける力は健在も、オチが少し弱いし、語りべ的◯◯が馴染めないという部分で、可もなく、不可もなくってトコロ。評価は★★★☆☆。
もちろん、タイトルの『クロク、ヌレ!』はローリング・ストーンズの曲からだし、ブライアン・ジョーンズの死も味付け的に使われている。ただ、それだけで手を出すコト、この作品だけで作家を判断するコト、それは避けていただきたいかな。 -
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評判ほどのイヤミスとは思えなかった。悲劇の連鎖が生む悲しい物語ではあるが、嫌な気分は残らなかった。私自身、他者とは少し琴線が異なるのかも・・・
あらすじ(背表紙より)
一九六二年、西新宿。十二社の花街に建つ洋館「鸚鵡楼」で惨殺事件が発生する。しかし、その記録は闇に葬られた。時は流れて、バブル全盛の一九九一年。鸚鵡楼の跡地に建った高級マンションでセレブライフを送る人気エッセイストの蜂塚沙保里は、強い恐怖にとらわれていた。「私は将来、息子に殺される」―それは、沙保里の人生唯一の汚点とも言える男の呪縛だった。二〇一三年まで半世にわたり、因縁の地で繰り返し起きる忌まわしき事件。その全貌が明らかになる時、驚愕と戦慄に襲われる!! -
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ネタバレかつて一世を風靡した美貌の女優・野崎有利子。
奔放な彼女に魅了された男たちは彼女の為に浪費し朽ち果てる。
そんな男たちの一人が、殺人と詐欺の容疑で逮捕された。はたして有利子は悪女か、それとも聖女なのか…?
あいかわらず、どろどろの人間関係を錯綜させる真梨幸子劇場の通常営業です。
絶世の美女の有利子に翻弄される周囲の人たちの視点で話は進んでいきます。
有利子にかかわると周りの人間はほぼ全員、人生のバランスを欠き、どこか歪んでいってしまいます。
人を狂わす磁場のような有利子なのですが、彼女視点の語りは無いので真の思惑がわからず、結局彼女が無自覚だったのか悪女だったのか謎のまま。
女の不自由な生きざまが哀しく、侘しい。
終盤は展開が急すぎて、なんだか雑。
つっぱしる筆の走りに読者が置いてけぼりに。
先に『女ともだち』を読んでおかないと意味不明な部分があるらしく、まだ未読だった私は残念でした。 -
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ネタバレ4編からなる連作短編集。
パワースポットをモチーフに据えた短編集ですが、どの登場人物もパワーをもらうのではなく逆にパワーを奪われ誰も幸せにならないという、著者らしい毒がちりばめられたブラックな趣向となっています。
パワースポットなのにマイナスの効用があるという非常に後味の悪い短編集です。
各短編はキャラクターやエピソードがリンクしており、そのつながりに気づいた瞬間はイヤな汗をかきました。
一番印象に残ったのは表題作の「カンタベリー・テイルズ」。
イギリスのカンタベリー・テイルズに行く電車のホームで会った四人の日本人観光客が、成り行き上、到着までにそれぞれのとっておきの話をするというお話。
彼らが披露する怪談話や都市伝説めいた話はなんだかリアルで、日常から逸脱した狂気に不安を覚えながらもワクワクしてしまいました。
ラストの短編「シップ・オブ・テセウス」も良かったです。
作中の登場人物が書いたという作中作なのですが、いつもの女性たちの醜いドロドロ話ではなく、少年達が遺伝子操作に翻弄されるというSF仕立ての短いお話になっています。
諦念と虚無感にふちどられた抒情の豊かさがとても意外で、真梨さんってこんなお話も描くんだなあと新鮮でした。
こんな、気持ちが逆撫でされない真梨作品をまた読んでみたいです。 -
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2016年、22冊目は、個人的読書コードを破って(途中読み始めた本を隙間読書用に回したのもあったが)、の真梨幸子連読み。
かつて、美少女CMタレント、美貌の女優として活躍していた、野崎有利子。彼女の周りにはスキャンダルの香りが漂っていた。エリートサラリーマン、斉藤啓介が殺人と詐欺の容疑で逮捕される。彼もまた、有利子に魅せられた一人だった。そして、休暇中の篠原賢一は偶然、その二人を旅行代理店で見かけていた。
ページを繰らせる力は相変わらずだが、今回は違和感があった。注意深く読んでいれば分かるコトだが、全編が基本、男性の一人語りということ。途中でそのコトが意識から外れてしまっていたので、違和感を感じたのだろう。つまり違和感の正体は、個人的に、男性一人語りと、真梨幸子節との、微妙な相性の悪さなのだと思う。
《以下、少々ネタバレ要素あり》
他力本願な芸能ママ風、辰子のキャラが、実に作者らしかっただけに、有利子の男を惑わす魔性の(?)魅力のようなモノは伝わりニクい。わざと、男女の視点の違い、マスコミによって作られたスキャンダラスな悪女のイメージとの差を表したかったのかなぁ……。一方、少々、作者らしからぬ、藤田弁護士のキャラは、逆に引き立ってた。
展開は悪くないが、オチもこの作者にしては弱かったのが残念。『女ともだち』の続編とは言い難いが、ソチラを読んでいると、「おぉっ」という強烈なスパイスが効いてます。週刊になってるし……。 -
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5編収録の短編集。『聖地巡礼』の改題なのだが、はしがきによれば、元々が『カンタベリー・テイルズ』というタイトルだったらしい。
真梨幸子は読み手を程良く不快にさせるツボを心得ているようだ。文章の中に散りばめられる不快な言葉、何とも遣る瀬無い描写が、程良さの理由だろうか。
さて、本作だが、初期の作品ということもあってか、他の作品に比べると些か面白さに欠ける。最初の『グリーンスリーブス』は面白かったが、他は平凡な作品ばかりだった。
『グリーンスリーブス』『カンタベリー・テイルズ』『ドッペルゲンガー』『ジョン・ドゥ』『シップ・オブ・テセウス』を収録。 -
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1962年、鸚鵡楼と呼ばれる洋館で殺人事件が起きる。
1991年、鸚鵡楼跡地に建つ高級マンションでエッセイスト沙保里は夫と息子と暮らしている。何不自由ないと思われる生活で沙保里が気がかりなことは、息子が別れた恋人に似ていることだ。
似ているわけがないのに。恋人と別れた後に身籠ったのだから。でも、ぴちゃぴちゃと指を吸う癖や妙に頭の良いところ、そっくりだ。そんなことあり得ない。
連続幼女強姦犯である男に似ているなんて。
真梨さんの本を殆ど読んだためか、真梨さんのトラップがわかるようになってしまった。
何に気をつけて読んでいけばいいのか。
登場人物が、誰が誰だかわからなくなるトラップ。
これは誰で、こっちのひとは誰なのか。そういったことをきちんと整理して読めば混乱することはない。
ということで、犯人がわかってしまった。
全編、性に関する描写が多めな気はするが、物語の進行上仕方ないと思える範囲だとは思う。
でも、いくら架空の物語であっても幼女強姦とかは読んでいて気分の良い話題ではない。
本作では、長い時間をかけて物語が進む。
1962年から1991年、最終的には2013年まで。
事件が色々起きるが、それらも整理して読めば混乱しない。
イヤミスの女王と言われて久しい真梨さんだが、今回も嫌なラストと言えなくもない。
それでいて、こう終わらなくてもそれはそれで倫理として問題がありそうだし。
こう終わるところが妥当というところだろう。
主人公沙保里が、読者にとって余り共感を与える人物でないところも真梨さんらしいかもしれない。
普通は主人公に寄り添って読み進めるものだが、何だか共感できない、何か好きになれない、そういった人物を主人公に据えるところが皮肉たっぷりな感じがする。
少し気になることがある。
後半、事件解明に関わる宮野聖子に河上航一のことを話した人物とは一体誰だったのか。確か明らかになっていないように感じる。
同じミステリー作家の作品を多く読むと、作家の癖のようなものがわかってしまうところが残念なところだ。
真梨さんが手口を変えて、そういうことだったかと負けて口惜しがることがまた出来ることを願っている。