“「俺は、お前を信用しない」
「……ッ!」
「モニカが俺の過去を誰かに話したんじゃないか、という疑いも消えたわけじゃない」
抱きしめられると同時に、震えが収まっていたモニカは、その言葉を聞いて悲しくなったが――それでも、言葉が自然と口にでる。
「……うん。いいよ、それでも」
「俺は、お前の事を利用する。それも変わらない」
「うん」
――それでもいいよ。
頷く事まではできる。
――だけど、ううん。だから……。
だが、その先の言葉を口にする事ができない。
――だから、もうどこにも行かないで。
ただそれだけの一言が、どうしても喉から絞り出せない。
モニカは自然と涙がこぼれ、悲しみに心が押しつぶされそうになる。
仮面を失った彼女の泣き顔を守るのものは何もない。
こんな自分の顔をヒューイに見せたくはないと思うも、彼女にはもはやどうする事もできなくなり、彼女は本当に舌でも噛みかねないほどの絶望に包まれかけた。
しかし――
「それでも……モニカの事を、好きになってもいいか?」
「……え?」
モニカは、最初、相手の言葉の意味が解らなかった。
ヒューイはそんな彼女を更に強く抱きしめ、確認するように呟いた。
「俺は、モニカを信じたりしない。だけど、モニカが俺を裏切っていたとしても、俺の敵だったとしても……それでも、モニカの事を好きでいいか?」
「ヒューイ……君」
「俺には、モニカを愛する資格があるか?」”
1705年の念願の続編。
モニカ可愛いよモニカ。
最後の『仮面職人』の活躍とか。
ああいう最後のほうにやってくる成田さん特有のどんでん返しがどうしようもなく好きなのだけど。
だけど、やっぱりこの本の一番最後のどんでん返しは悲しすぎた。
あとがきで、もう書かないといったことを言っておられるのが唯一の救いというか何というか。
モニカとヒューイがあまりにも幸せそう過ぎて可哀想過ぎて。
少し泣ける。
すでに知っていたことではあるけれど、やっぱりモニカの死は切なかった。
“「……」
沈黙するエルマーに、ヒューイは目に狂気にも似た光を滾らせながら語り続けた。
「ああ、俺は、奴らと闘う為に、モニカを救う為に、この街を犠牲にする事も厭わない。ジャンピエール・アッカルドが描いたのはまさに真実だ。俺は、モニカの為ならこの街を火の海にする事も厭わない!」
そして、少しだけ悲しげな色の表情を浮かべ、エルマーの顔を見る。
「だが……俺一人では絶望的だ。だから俺は、今、お前の事も巻き込もうとしている。俺の、俺がモニカを救いたいというエゴの為に、何もかも利用しようとしている!だが、恥を捨てて頼む。どうか――」
その瞬間、エルマーが手を前に出し、ヒューイの言葉を遮った。
「……?」
「んー」
エルマーは、ヒューイの言葉を真剣に聞いていた。
だからこそ、彼は優しく笑った。
真剣に微笑みながら、ヒューイに対して問いかける。
「君は、モニカを助けると嬉しいか?」
「……当たり前だ」
「モニカとまた会えたら、笑うかい?」
「人生最高の笑顔を見せてやる」
即答だった。
エルマーはその答えに満足したようで、ケラケラと笑いながら口を開く。
「最初から、それだけ言えばいいんだよ。俺が協力するには、それで十分だ」”