水村美苗のレビュー一覧

  • 続 明暗

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    非常に読み応えのある作品だった。
    主人公津田はいつまでも自分の人生を正面からぶつかろうとしない態度、
    素直な感情の発露よりそれと同時に現れる下らない理性による体面ばかりを気にする態度によりどうしようもない人間となってしまう。
    津田の妻であるお延も初めはそんな主人を無理やり信じながら(心のどこかで疑っていたが)生きてきたが、津田の元恋人の存在に気づき、
    半狂乱におちいる。しかしながら、最後には生きていく決意を見出す。
    漱石は女性を描くことに関してはあまり評判は良くなかったが、水村氏はとても肌理細かく女性の揺れる心を表現したと思う。
    漱石の『明暗』のあとを引き継ぐ名作であった。

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    2009年10月07日
  • 本格小説(下)(新潮文庫)

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    やっぱり不思議。
    登場人物のすべてが、どこかで私の記憶や祖母や両親の記憶とつながるような気がする。
    懐かしい思い出が蘇るようで、せつなくてたまらない気持ちになる。

    嵐が丘の翻案小説でテーマ自体はきわめて一般的なはず。
    なのに、自分自身のルーツを強く意識させられる。
    祖母と母と私との紐帯を思い起こさせる。
    ワイルドスワンを読んでもこんな風には感じなかった。

    日本自体が希薄になったとはいえ、私もやはり日本人だということだろうか。
    堪えきれない何かをぐっと噛み締めるような横顔や、
    黄色い灯の下でのささやかな微笑みを見ながら、私も育ってきた。

    作者はきっと、異国の地で母国の香りを何度も何度も繰り

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    2009年10月04日
  • 本格小説(下)(新潮文庫)

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    余韻のある恋愛小説でした。どうでもいいことですが、主要登場人物が大体優雅で美男美女と言う設定ながら、主人公の女性が、その中ではブスっていうは作者の好みなんでしょうか。

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    2011年07月17日
  • 本格小説(上)(新潮文庫)

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    読みたかった物語がここにはある。久々に恋愛で胸がぐっと来る。冒頭作者は偶然聞いた「小説のような話」が天からの啓示のように日本語で書かれた「近代小説」を書きはじめたとある。そしてそれに続く「本格小説の始まる前の長い話」で物語の主人公となる男東太郎との出会いと12歳で渡米して以来半生を送ったニューヨークで聞く彼の話が作家の私小説的な物語の中で書かれている。そして後の物語への伏線となっている。カルフォルニアの大学で働く彼女の元に一人の若い男加藤祐介が尋ねてくる。「東太郎」の話がしたいと。そして彼から聞いた「本当の話」こそ真の小説のような話であり、日本近代文学の元となった嵐が丘のような作り話という「本

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    2011年07月16日
  • 続 明暗

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    未完の漱石の晩年の作品「明暗」を読んで、次に読んだのが、この本です。
    「則天去私」、最後の場面、小林の言葉と延子のふるまい、水村美苗さんの落とし所、漱石も「明暗」を書いていたなら、同じように結末になったのでしょうか。
    男女・夫婦・それにまつわる色んな人間関係。
    言葉のやりとり、心の動き、微妙な変化をこれでもかと続けます。
    文豪漱石の未完の作品の続編を書く勇気、覚悟を決めて書かれたのでしょう。
    「則天去私」、今後の人生の指針です。

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    2026年02月13日
  • 大使とその妻 上

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    静かに物語が進んでいく、だけど引き込まれていく。言葉、文字の使い方でちょっとしたニュアンスや感覚の違いが伝わって面白い。今まであまりなかった小説。

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    2026年02月13日
  • 本格小説(下)(新潮文庫)

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    上巻はゆるゆると時間をかけて読んでいたが、下巻はすぐに読み終わってしまった。
    小説を読んでいる時は、他人の人生を覗くような気持ちで読んでいるが、本格小説は殊更その気持ちが強かった。
    人間の感情って複雑だな、と思わせる小説。太郎のその後を想像させるような終わり方もよかった。

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    2026年01月04日
  • 無駄にしたくなかった話

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    「日本語が滅びるとき――英語の世紀の中で」を読んで水村美苗さんのことを知ったのですが、その後、作品を出版されなかったのですが、この本を読んでその理由が解りました。
    1951年生まれの水村さんのと同年代の私ですが、経験されてきたことは月とすっぽんの違いです。
    加藤周一さんとの出会い、日本の文豪の評価、お母さん、お姉さんのこと、最近書かれた小説のこと、日々の生活のこと等々、大変興味深く読めました。
    この本で知ったプルーストの本を読めるかどうか知れませんが、挑戦してみます(笑)。

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    2026年01月04日
  • 大使とその妻 下

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    「本格小説」だった。美しい物語だった。「失われた日本」の美しいところが溢れていた。
    日系ブラジル移民の過酷な生活は、その優美さとは対照的であるが、その移民たちの方が本国が失ってしまった「日本の美しさ」をとどめているのが皮肉だ。
    貴子の過去や突然の音信不通は、ミステリーのようにページをめくる手を早めさせ、小説を読む楽しさを味わわせてもらえた。

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    2025年12月20日
  • 無駄にしたくなかった話

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    水村美苗は『日本語が亡びるとき』で読んで以来。亡びる、での論が面白いなと思ったのは覚えている。

    真っ向して物をいう人だなという印象で、読んでいて快い。不遜な部分もあり、正直が過ぎることもありあまり仲良くはなれないけれど外野で見ている分には面白い。

    水村美苗の考える論はどれも魅力的で惹き込まれる。随所に日記が挿し込まれているが、その内容は市井と何も変わらないただの人だった。特別ではないけれど特別で、普通なんだけれど普通じゃない。

    畢竟、面白かった

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    2025年12月19日
  • 大使とその妻 下

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    上巻とは違いかなり、衝撃の内容。
    貴子の過去が描かれる。貴子の日本人らしい振る舞いの原点を知った時にはかなり驚いてしまった。
    更に衝撃の結末、混乱しすぎてどう解釈していいのかわからなかった。

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    2025年12月19日
  • 大使とその妻 上

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    何なの?この面白さ。
    軽井沢追分の別荘。
    ミステリアスな隣家の妻。
    ゲイだとわかっているから安心して読めるけど、なんかドキドキする。
    上巻最後に妻の素性が明かされる。
    早く下巻読みたい。

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    2025年12月17日
  • 大使とその妻 下

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    水村美苗さんの書籍を初めて読みました。ストーリー展開は終始ゆるやかで驚くような展開はありませんが、選ばれた言葉一つ一つがとても美して読んでいるだけで、教養が身につくようなそんな読書体験でした。源氏物語や百人一首など、日本人なのに学校でほんのさわりを習っただけで、何も知らない。ブラジル移民の話も初めて聞いた内容で学校、親からも習ったこともない。能動的に知ることをしていかないと一生知らないまま。本を通じて、また知りたいことが増えました。面白かった!だけじゃない読書体験ができて良かった。

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    2025年11月28日
  • 無駄にしたくなかった話

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    2009年~2024年に、文芸誌などに掲載されたエッセイや書評や講演、日記など短いものがまとめられている。
    最初に読んで思ったのは、いやーやっぱり、昭和的?な言葉でいうと「ハイソサエティ」で「インテリ」であこがれる、っていうこと。
    あと、たとえば、成金といわれるタイプの人を評する揶揄とか、おしゃれじゃない人に対する観察とか、「(自分が)若い女じゃなくなるとツマンナイ」というところとか、シニカルな率直なもの言いがよい、と。いい人に見られようとしない感じが素敵。

    冒頭の「無駄にしたくなかった話」という旅行記がおもしろかった。ヨーロッパの超お金持ちたちとフランスに滞在したときの話だけど、一緒に滞在

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    2025年10月27日
  • 本格小説(上)(新潮文庫)

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    ▼水村美苗さんは数冊読んでいて、文章がとにかく上手いので信頼しています。長らく積読になっていたもの。

    ▼「嵐が丘」の日本版という売り文句。読み始めるとすぐに、「あ、この男性がヒースクリフかしらん」というのが出てくるのですが、なかなかキャサリンが出てこない。1970年代のニューヨークの日本人界隈の話をしているうちにどんどん進んでしまう。仕舞いには、「おお、上巻全体が前置きなのか・・・?」。

    ▼というわけでいろいろと魅力的なパーツは転がっているのだけど、全体の構図と力感は散漫なので、この上巻だけで言うとそれほど極上でもありませんでした。が、どうやら下巻がかなり疾風怒濤な予感。成程、つまりは嵐が

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    2025年07月14日
  • 大使とその妻 上

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    日本の古典文学の引用が
    随所に散りばめながら、
    美しい日本語で軽井沢の
    四季が描かれる。

    特に劇的な出来事はないけど
    登場人物にとっては大きな出来事へのリアクションに共感できるかどうかで、好き嫌いは分かれるかも。

    貴子の仕舞のシーンは
    鮮やかなイメージが脳裏に
    浮かんだ

    映像化は難しいだろうな

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    2025年06月12日
  • 大使とその妻 下

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    ネタバレ

    後半は大使夫人貴子の生い立ちがほとんどで、彼らがブラジルに戻ってから連絡が途絶えてケヴィンが心配する様子が描かれる。ラストは落ち着くところに落ち着くような光の見える展開でホッとしました。
    軽井沢の蓬生の宿の描写が素晴らしいので、どちらかというと前巻の方が好きです。

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    2025年04月04日
  • 大使とその妻 上

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    ケヴィンと貴子、それぞれの過去から今に至るまで、国を跨ぎ時代を超え、何層にも物語りが織りなされていく。それは、とうの昔に亡くなったかけがえのない者との対話でもある。最後に二人が再会できることを願わずにはいられなかった。

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    2025年03月27日
  • 大使とその妻 下

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    ネタバレ

    うつくしくて静謐な筆致の中に不穏さが見え隠れして、夫妻とケヴィンは一体どうなっていくの…?とドキドキの上巻に続く下巻。「夫人」と出会ってからの貴子の半生が語られていく。
    面白かった。ブラジルの日本人移民のことなんて考えたこともなかった。
    でも、読み終わって気付いたんだけど、私、貴子があんまり好きじゃないのかも。なんでだろう、結局は周りの人を振り回して平気な(またはそれに気づいてない)人みたいな気がしてしまって。

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    2025年03月27日
  • 大使とその妻 上

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    ミステリだと思って読み始めたら、まったく違う内容でした。日本文化に傾倒する、やや変わり者と思われる主人公の外国人。どこの国でも、自国の人よりも外国の人の方がその国の文化に大いに興味を持ってリスペクトするもの。外圧などによって自国の文化の良さを改めて発見することを、「遅れてきた目覚め」と主人公は言います。言い得て妙ですが、どこか上から目線の言葉でもあり、複雑な気持ちにさせます。

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    2026年01月22日