【感想・ネタバレ】本格小説(下)(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

生涯の恋に破れ、陰惨なまなざしのままアメリカに渡った東太郎。再び日本に現れた時には大富豪となっていた彼の出現で、よう子の、そして三枝家の、絵のように美しく完結した平穏な日々が少しずつひずんで行く。その様を淡々と語る冨美子との邂逅も、祐介にとってはもはや運命だったような……。数十年にわたる想いが帰結する、悲劇の日。静かで深い感動が心を満たす超恋愛小説。

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Posted by ブクログ

内容を忘れた頃に読み返しますが、いつも物語の展開に引き込まれます。
ところどころ写真が挿絵のように入って、ドキュメンタリー風なのがちょっと風変わりです。文章も淡々と登場人物たちの波瀾万丈な人生を綴っていくのです。
歴史小説好きの連れ合いもかなり面白かったと言っておりました。

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2023年06月30日

Posted by ブクログ

心震える恋愛小説か怪談話を読みたいと、10年の積ん読を経て人を食ったようなタイトルの恋愛大河小説を読んで心震わす。後にNYの大富豪になった満洲引き揚げ者の貧しい少年東太郎と裕福な隣家の娘よう子の幼い恋心から始まる幸福と悲劇、そして一族の栄枯盛衰が昭和の軽井沢を舞台に何十年にも渡り繰り広げられる。一人ひとりの行動の積み重ねが人の心に影響を与え、その結果がまた人それぞれに違う意味を持つ。それぞれが自分の居場所を探す話であり誰が幸せで誰が不幸せだったのかさえつかみきれぬまま恋愛の大河に呑み込まれる。今の日本はある人には良くなりある人には悪くなった。40年前の軽井沢ってこうだったよね、などと思いながら。

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2020年11月22日

Posted by ブクログ

軽井沢に別荘を持つ昭和のお金持ちたちの独特の世界観にどっぷりはまった。

アメリカに渡り大成功して大富豪になった不幸な生い立ちの男と、優雅な金持ちの家族の対比によって、豊かさとは?幸福とは?と考えさせられた。

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2020年05月25日

Posted by ブクログ

この作者の第一作が『続・明暗』であるうえこの題名
手をつけるのにかなりの読書意欲を必要としたので買って2年も寝かせたが
意外にとても読みやすかった
題材からの連想でサマセット・モーム「平明な文体と巧妙な筋書き」みたいな感じかしらん
物語の面白さで読み始めたら止まらない内容

題名の「本格小説」は作中の作者から説明あるように「小説のような話」を指して
小説である以上は作者の知ることの中で書かれているから(広義の)「私小説」であり
では「私小説」でない「小説のような話」はどうなるか
みたいな感じらしい
なるほど
そういうわけで『嵐が丘』を戦後日本へ置き換えたような筋書きを
作中の作者を複数の話し手と聞き手の中に織り交ぜ
山場がいくつもある多重ミステリのような仕掛け
内容分類てきには「昭和日本のお金持ちと使用人」な「時代」を生きたひとたちの記録
みたいな感じか
「ミステリ」の舞台が現代日本か19世紀イギリスかでの分類のように
この作品には意味のない分け方だけれども

そもそも『嵐が丘』自体読んだのがわりと昔な上に
まず「がらかめ」の絵が載って
さらにクリスティのミステリでないのとか
『秘密の花園』とかダイアナ・ウィン・ジョーンズとか
極めつけに「あんざろ」で上書きされてよくわからないことになっていて
そういうエンタメな味わいと比較してしまうわけだが
さすがに最初の作品に『続・明暗』持ってきて評価されている作者だけに
どんな方向からのつっつきに綿密な構成で答えて
『虚無への供物』みたいな積み上げっぷり

そういうわけでどこで満足して本置いたらよいかわからない
細部まで抜かりなく豪勢な作品だが
そういうどこまでも閉じてない感じが
「私小説」でないふうなところなのか

「小説のような話」には「私」たる主人公がなく
といって(社会(人間関係)が主人公の)群像劇というわけでもなく
時代のふんいきというのも『嵐が丘』と対比するまでもなく舞台だてなのだし
結局「小説のような話」というのは
「巧妙な筋立てによるお話の面白さというもの」というところへ
行き着くものなのかもしれない

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2018年12月09日

Posted by ブクログ

下巻です。
期待を裏切らず、最後まで深みのある恋愛小説で、どっぷりと美しい世界観に浸りました。
(著者は嵐が丘のような話と言っていますが、私は谷崎の細雪、小池真理子の恋がよぎり、再読したくなりました。特に恋の主人公は同名フミコ!)

そんな中ラストの冨美子の件は、一瞬小説全体の美しさを汚された気がしましたが、そういう事情のお蔭で彼女の語りには包容する力があり愛があるわけですから、生々しさも許容しなきゃな、という気持ちに変わりました。

また、上巻で感じていた三枝家や重光家等の名家の品格を、時を経て現代の富裕層である久保家には少しも感じず(だからと言って決して下品という意味ではなく)、現代日本への寂しさを感じました。
あの時代を生きた人々が、現代の、小粒で薄っぺらい人材と世の中を嘆く様を見て、確かに現実の経営者や政治家には気迫も個性も足りないかも、と考えたりもしました。松下幸之助や田中角栄に匹敵する今の人、思いつかないもの…
恋愛小説なのにそれ以上のことを考えさせられる、とても素晴らしい作品です。読んでよかった☆

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2018年08月31日

Posted by ブクログ

小説は、主観的な内的な心象風景を物語で紡ぎながら、その中に美しさとそれから生まれる哀しみがあらわされれているもの・・かなと。
どの時代でも、文化、社会の中で人が思うようには生きていけない辛さみたいなものが澱んで、人が巻き込まれ、自分からまきついていくような人がいて、そういう時代に翻弄される劇的な物語を、人は惹かれるものである。

この本の主人公が登場しているとき、嵐が丘の冷たい暗い風がいつも感じられる。この小説が「嵐が丘」を意識していることは、最初から感じられるのだが、嵐が丘を感じながらも、この小説の舞台は戦後である。貧しい家族に恵まれない辛い子供時代を過ごした主人公は、時代背景が嵐が丘とは違うがその主人公太郎の立ち位置がヒースクリフが非常に似ているためそのように感じるのだろう。

この本の好きなところはいろいろあるが、ラストの意外性がすごいと感じさせた。嵐が丘を意識しながら、全く別の次元のものに昇華したと感じた。

小説とは、これを言うのだなと感じさせてくれる本である。

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2015年11月16日

Posted by ブクログ

これを読み終わった知人の勧める言葉があまりに熱烈だったので、惹かれて手に取る。
まず普段翻訳ミステリばかり読んでいる目に、古風で流麗な日本語が気持ちよく、そちらにうっとりする。
そしてまた、著者の自伝らしきまえがきも面白く、これがこんなに面白いのに、本編がどのように始まるのだろうかと思っていたら。
これがもう、面白くておもしろくて、ただ、こればかりを読みふけるわけにもいかないので遅々としてページが進まない(通勤電車に持って歩くには重かった)のが何とももどかしく…。休み時間に読んだ小説の続きが気になって仕方ない授業中、のような感覚。寝ても覚めても、どこかがこの小説の世界とつながっているような感覚をずっと持っていた。
斉藤美奈子氏によると、すべてを読み終えてから冒頭を再読すべきとのこと。さあ、読み終わった今、ふたたびその楽しみに浸ることとしよう。
これからは、数十年前に読んだきりで、しかも内容をおそらくさっぱり理解していない『嵐が丘』を読み、水村さんのほかの著書を読むことを楽しみとして読書計画を進めていくことにする。
この本を教えてくれた知人にはひたすら感謝である。

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2014年01月07日

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まさに「嵐ヶ丘」!
面白かった
読み終わったのが寂しい(´・_・`)
もっとこの雰囲気を味わい続けていたい

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2013年12月08日

Posted by ブクログ

誰一人として満たされ尽くすことなく、時代に翻弄される。救いようのない話ではある。

とはいえその救いようのなさとそれゆえの感動を、冗長さを感じさせずにここまで喚起出来るのは、さすがの名作ゆえんか。

小田急線に乗るのが、ちょっと楽しみになるかも。

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2013年06月02日

Posted by ブクログ

果たして東太郎は実在するのか、架空の人物なのか。

著者が最初に断っているように、これは私小説ではない。本筋に入るまでの長い話は私小説の形式を取っているようだが、これはあくまで後半の本格小説への導入部と考えるべきである。
著者はおそらく、どこまでもフィクションのリアリティを表現することにこだわった。導入部の私小説に架空の人物を紛れこませることで、煙が形を持って実体化するように、その人物があたかも実在したかのように読者に錯覚させる。
そして後半の本格小説に突入する。仮に、これが東太郎の目線で語られる話だったら、リアリズムは逆に薄れてしまったであろう。旅行者、女中と話し手を介することによって、彼の壮絶な人生を巧妙に描き出すことに成功している。
もちろん、著者の美しい描写力があってこその手法なのだろうが。

戦後の古き良き時代。家督を享受して優雅に暮らす三姉妹と、どん底からはいあがる少年。その凄絶さに惹かれた少女、少女の成熟を守りつづけた青年。そして女中という身分を懸命に果たした女性。様々な人生が交錯するさまは、一大叙事詩を眺めているようでした。いつまでも心に残る、よい小説です。

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2013年01月20日

Posted by ブクログ

下巻も前半は典雅な展開が続くが、よう子と太郎の恋愛が隠せなくなってきてから、話も激しく動くようになる。また、語り部である女中のフミ子が、次第に存在感を増し、それが「信頼できない語り手」となる様は、本家の嵐が丘と比べても見劣りしないレベルだ。

総じて見ればよくできた小説だが、改めて「嵐が丘」という150年以上前に書かれた小説の凄みを感じさせるものでもあった。

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2012年04月22日

Posted by ブクログ

下巻に入るともう一気読み。そして読み終わるのがもったいなくて、いつまでもいつまでも読んでいたいと思うような。単なる恋愛ものではなく、もうこれは戦後日本のすべてというものがつまっているような感じがした。それとさまざまな人たちのさまざまな人生。人生とは、と考えさせられるような。ものすごく読みごたえがあって。まさに本格小説。すごく客観的に人やものごとをながめられる女中フミさんの語りで、人ひとりひとりの人生全体をながめられるような感じ。フミさんの、人生なんてそんなもの、っていう感じ方に共感するような。人生は、はかない。「本格小説が始まる前の長い長い話」からずっと、著者が、将来がひらけているかどうか、未来があるかどうか、とか、そして結局どんな人生だったか、なにを得られたのか、みたいなことをずっと考えている感じが好きだった。なんだかすばらしすぎて感想がうまく書けない……。

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2011年09月18日

Posted by ブクログ

数年前の夏、仕事で軽井沢に住んでた時に、運命的に出会った一冊。
この本をあの環境で読めたことは、いま考えても本当に幸せなできごとでした。

大げさだ昼メロだ、という人もいるかもしれないけれど、わたしは何度読んでも感情を揺さぶられてしかたない。
物語のとてつもない力を感じさせる、まさに自分好みの作品です。

土屋富美子の人生って何だったんだろう?生きる意味なんてものを、危うく考えてしまいそうになる。
ラスト近くで太郎が言う、日本人は「浅薄と言うよりむしろ希薄」という言葉には、束芋の作品(特に団地をモチーフにしたもの)を連想しました。

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2010年06月20日

Posted by ブクログ

よう子ちゃん、雅之さんの情愛の深さ、太郎ちゃんの子供のままの激しく深い愛情に何度も読む手を止めて感慨に浸りました。
語り手が変わるごとに登場人物の思いの深さがさらに加わり、ページを戻ります。
最後のフミ子さんの事実に腑に落ちます。
「日本人が希薄になった」は作者の感でもあるのでしょう。
作者のあとがきで現代に戻ってきますが、しばらく余韻が抜けませんでした。

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2010年01月16日

Posted by ブクログ

水村さんの仕事を一つずつ丁寧に検証していきたいと思わせてくれた一冊です。彼女を称して、「寡作な小説家」と言う人がありますが、これは現代において最高の敬称だと思います。彼女の作品を眺めると、単に物語るだけでなく、小説の可能性を常に模索し続けている姿勢が伺えます。そこに学問的な姿勢を感じてしまうのは私だけでしょうか。

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2009年10月07日

Posted by ブクログ

やっぱり不思議。
登場人物のすべてが、どこかで私の記憶や祖母や両親の記憶とつながるような気がする。
懐かしい思い出が蘇るようで、せつなくてたまらない気持ちになる。

嵐が丘の翻案小説でテーマ自体はきわめて一般的なはず。
なのに、自分自身のルーツを強く意識させられる。
祖母と母と私との紐帯を思い起こさせる。
ワイルドスワンを読んでもこんな風には感じなかった。

日本自体が希薄になったとはいえ、私もやはり日本人だということだろうか。
堪えきれない何かをぐっと噛み締めるような横顔や、
黄色い灯の下でのささやかな微笑みを見ながら、私も育ってきた。

作者はきっと、異国の地で母国の香りを何度も何度も繰り返し蒸留して濃縮してきたのだろう。
ここまで濃縮しなければ感知できないほど、無色透明な都会の生活の中で私の日本人としての感覚は鈍くなっているのかもしれない。



愛が人生を左右することは知っている。
でも、それが人生に幸福をもたらすのか、私にはわからない。
それは、太郎やよう子や冨美子や雅之が幸福なのかどうか、当人にすらわからないことと同じ問題だ。

死ぬ間際に死を意識してはじめて、ああ私の人生は幸福だったと思う、幸福はただそれだけのことなのかもしれない。
あるいは、死ぬ間際に死にたくないと思う、それが唯一の幸福の証なのかもしれない。

しかし、よう子が幸福でないとすれば、ふみ子はどうなるのだろう。
太郎のよう子への愛は常にふみ子への罪に転じるのであり、よう子の幸福の裏返しがふみ子なのだとすれば?

いずれにしろ、幸福も愛も望みどおりにいくことが全てではない。
生は死によって照らし出されるのであり、身分の際が二人の濃厚な世界を際立たせ、純粋であればあるほど残酷きわまることになる。

経済的な富に自らのルーツを断絶され希薄化してしまった日本人は、なんでも望みどおりに手に入るような気になって、表面上の幸福や愛を語ることしかできないから、自分自身が何を求めてよいのかわからずさまよっているのかもしれない。
だから結局、合理的で狡猾になり下がるしかないのかもしれない。

愛が何かわからなければ、愛されることはおろか、愛することすらできないというのに。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

余韻のある恋愛小説でした。どうでもいいことですが、主要登場人物が大体優雅で美男美女と言う設定ながら、主人公の女性が、その中ではブスっていうは作者の好みなんでしょうか。

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2011年07月17日

Posted by ブクログ

すごいタイトルだと思って、気になっていた本。
・本編が始まるまでに200P以上も不要ではないか
・中途半端な実写の写真を挿れる必要はないのではないか
・私小説でも本格小説でもないのではないか
とか思いながらも面白かった。

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2021年06月27日

Posted by ブクログ

「山荘」だとか、「アメリカ」だとか、全く縁のないキーワードばかりでした。土屋富美子さんの語り口が、ですます調が、お上品でした。

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2015年12月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

その当時に生きた人にしか感じられなかった惨めさと華やかさ
いまの時代では想像できない世界が同じ日本だったんんだ
苦しくも悲しくも悔しくもあるんだけど
読み始めると、先が気になり、どんどん読み進め
最後の最後には、単純に夢のように浮かれていた気持ちが
びっくりするほど水を浴びせられたような気分になり
すごい小説を読んでしまったなぁという気持ち
でも、水村さんの他の小説、すぐに読みたいとは思えない
衝撃が強すぎる

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2015年05月10日

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成城に屋敷を構え、夏は軽井沢で過ごす上流階級の家庭に生まれた女たちと、身分の違いすぎる男太郎の、半世紀に渡る運命の物語。
「太郎ちゃんなんかと結婚したら、ミ・ラ・イ・エ・イ・ゴ・ウなんの夢もない。恥ずかしくて死んでしまう。」と言い放ちながら、死ぬまで太郎を愛し続けたよう子。
生涯他の女性を愛する事なく、アメリカに渡り、億万長者になった太郎。
でも、ふたりが結ばれる事はなく、あまりにあっけない別れが悔しい。
周りの雑音が多すぎて、ドラマチックな盛り上がりに欠けるのだけど、人生なんてそんなものかもしれない。
太郎を子供の頃から支えてきた、女中の冨美子の目線で語られるが、最後に驚きの事実が。

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2015年01月19日

Posted by ブクログ

かなり長い話でしたが、話の世界にどっぷりと浸ることができました。
女中の視点で語られる三枝家と重光家、太郎とよう子の関係も面白かったし、舞台になっている軽井沢や小田急沿線も馴染のある場所だけに情景がすんなりと思い浮かんで、ぐいぐいと引き込まれました。
よう子視点での話も読んでみたかったけど、ここは想像するしかないといったところが残念。
冨美子視点からだと、よう子が何故そこまで雅之と太郎といった2人の極上の男性に溺愛されるのか、そこまで魅力が伝わらないのだが、そこは冨美子のよう子に対する嫉妬心みたいなものが含まれていて魅力が伝わる描写になっていないのかな、と思った。

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2015年01月14日

Posted by ブクログ

主体としての「I」が育たなかった日本で、「私」を主語に本格小説を書いた著者の姿勢に圧倒される。
主体としての「I」を書こうとすれば、自分がとるに足らないことも受け入れられる。と言いながら、これだけの量、精密さ、言葉の崇高さを維持して書きあげるって、どんなモチベーションなんだろうか。登場人物は、そこまで私であることに自覚的に暮らしているようには見えないし。主体としての「私」とは何か、何度か読み直さないといけない本。

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2014年07月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

水村版「嵐が丘」の下巻。

本編のストーリーに関して言えば、正直なところ私は白けた目で見てしまっていてどうにも入り込めなかった。
見た目も性根も大して美しくない(失礼な言いぐさだけど本当にそういう設定なので仕方ない)女性に対して、とてつもなくレベルの高い男2人(しかも、片やどこまでも優しい生粋のお坊ちゃま、かたや己の実力だけで成り上がったワイルドな青年…だなんて、今どき少女マンガにも登場しなさそうな完璧度合)が共に心を寄せて、しかもその3人の不思議な不倫関係は一層の仲の良さで保たれる…とか…一部の女性の理想かもしれないけれど、私には現実感が無くてイマイチ乗り切れなかった。

ただ、最後の最後に舞台を現代に戻した時、このストーリーに一つとてつもない隠し事があったことが明らかにされる。
そのことに関しては私は全く思い至らなかったので、ここは作者の鮮やかな手口にまんまと騙されてしまった。
読み終わってから考えてみると、「本格小説の始まる前の長い長い話」は、「今から始まる話には一切の隠し事もウラも存在しませんよ」という暗示をかける効果があったということか。

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2012年09月17日

Posted by ブクログ

ニューヨークで、運転手から実力で大金持ちになった伝説の男の数十年にも及ぶ悲恋の物語。
愛するということに切なくてやりきれない気持ちになります。

読後も余韻の残る物語でした。所々に差し挟まれた写真が想像力を一層広げてくれます。

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2011年10月04日

Posted by ブクログ

上巻から引き続き、東太郎のこれまでが語られます。
下巻も一気に読んでしまいました。

戦後から平成まで、日本がどう変わってきたのか、日本人がどう変わってきたのか、が描かれています。
『嵐が丘』を日本の戦後を舞台に書いてみた、そこから浮き上がってくる「日本」の姿、というのでしょうか。
変わってしまった日本を考えて、まだ消化不良です。

久しぶりに読みごたえのある小説を読みました。

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2011年03月29日

Posted by ブクログ

しっかりどっしりとした小説で、その重厚な世界観に引き込まれる。
もっともっと色んな人の語りを聞きたかった。

写真が挟まれているせいか映像をとても想像しやすいけれど、物語が軽くなってしまうのは怖いから小説のままでいてほしいような気もする。

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2011年01月04日

Posted by ブクログ

推理小説慣れしてしまったわたしの頭には
かなり刺激の少ない本だった。
ただ刺激が少ないからといって
面白くないというわけではない。

軽井沢の自然や東京の昔の町並みのなかで
話は展開する。

祐介の友達が嫂やその妹のことで
カルい会話をするところなんかは現実に引き戻される。

東太郎の人生が語られ始めるとあっという間に読める。
冨美子がずっとメインで語っていたのに、
最後に冬絵の登場で冨美子が語る立場から
小説の登場人物へと代わる。
ここで冨美子の悲しさ、
現実がどっとあふれ出てくる。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

『本格小説』は、嵐が丘のオマージュというからにはやっぱり語り手が女中さんだったというか、そのひとが主人公のような小説であった。

 タイトルが日本近代文学『本格小説』とちょっと仰々しいけど、おもしろく読める。戦後から昭和の時代、平成に入ったところを背景に、突き抜けた人物達が織り成すドラマはわたしたちがたどった時代を振り返らせてくれ懐かしく、また歴史風俗の変遷を思う。

 この小説では戦後もすぐ、集団就職の時代にお手伝いさんと呼び名が変わったにもかかわらず女中になってしまったひとと、零落しつつもそのことに執着した家族と、貧しさから這い上がらなければならなかった青年のとの三つ巴のドラマがすさまじい。

 その女中さんで思い出すことがある。

 わたしが結婚してからだから、姑50代なかばわたし20代のころのこと。姑がよく「おちぶれた」が口癖にしていたが、もうひとつわたしはふに落ちなかった。

 義母は父親がある県の名家の医者、広い敷地に大きなお屋敷、人手がたくさんのお嬢様、女学校を卒業してからも専門学校へいったそうな、つまり今の女子大卒と同じ。その後、行儀見習いとして行った先は華族のお屋敷。結婚しても女中さんが居た子育てだったという話をたくさん聞かされた。

 ところが夫が39歳で早死にしてしまい、そのころ戦争も始まって実家に疎開するのだが、女中さんにもひまをだして、苦労の連続になってしまったのが気の毒だったのだった。

 それから十数年、戦後の日本を皆と同じように大変な生き方をしただろうに、何かにつけて「おちぶれた」というのが、わたしにはわからない。「何をご大層な」とむしろ反感さえ持った。だって仕方がないじゃない、日本中が民主主義だの平等主義だのになってしまったのだから。

 わたしなどは何もないのが普通、女中さんが(お手伝いさんが)居たら居心地悪いものと思うけども、母に聞けばやはり居たという。母が結婚してわたしが生まれた時、妹が生まれた時実家から来てもらったという。

 わたしの「おちぶれた」という言葉への違和感は、何もなかった時代の子として幸いにしてその怨念のようなものを、味わわなくて済んだということだと思うとありがたい。

 良かった時代に執着したり、上昇志向に執着したりそれが活力になればいいのかもしれないが、時代とのずれがあると摩擦がおこるものだ。

 しかしわたしがよる年波でいまはお手伝いさんが欲しいよ~。というのも本音(笑)

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2020年12月23日

Posted by ブクログ

上下巻とかなりのボリュームを頑張って読み進めると、最後の最後に大どんでん返しがあり読後感は面白かった…が、正直年配の女性が延々話してることをそのまま記述してあるような小説のため、やや読むのに骨が折れた。

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2020年07月28日

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