あらすじ
生涯の恋に破れ、陰惨なまなざしのままアメリカに渡った東太郎。再び日本に現れた時には大富豪となっていた彼の出現で、よう子の、そして三枝家の、絵のように美しく完結した平穏な日々が少しずつひずんで行く。その様を淡々と語る冨美子との邂逅も、祐介にとってはもはや運命だったような……。数十年にわたる想いが帰結する、悲劇の日。静かで深い感動が心を満たす超恋愛小説。
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Posted by ブクログ
その当時に生きた人にしか感じられなかった惨めさと華やかさ
いまの時代では想像できない世界が同じ日本だったんんだ
苦しくも悲しくも悔しくもあるんだけど
読み始めると、先が気になり、どんどん読み進め
最後の最後には、単純に夢のように浮かれていた気持ちが
びっくりするほど水を浴びせられたような気分になり
すごい小説を読んでしまったなぁという気持ち
でも、水村さんの他の小説、すぐに読みたいとは思えない
衝撃が強すぎる
Posted by ブクログ
水村版「嵐が丘」の下巻。
本編のストーリーに関して言えば、正直なところ私は白けた目で見てしまっていてどうにも入り込めなかった。
見た目も性根も大して美しくない(失礼な言いぐさだけど本当にそういう設定なので仕方ない)女性に対して、とてつもなくレベルの高い男2人(しかも、片やどこまでも優しい生粋のお坊ちゃま、かたや己の実力だけで成り上がったワイルドな青年…だなんて、今どき少女マンガにも登場しなさそうな完璧度合)が共に心を寄せて、しかもその3人の不思議な不倫関係は一層の仲の良さで保たれる…とか…一部の女性の理想かもしれないけれど、私には現実感が無くてイマイチ乗り切れなかった。
ただ、最後の最後に舞台を現代に戻した時、このストーリーに一つとてつもない隠し事があったことが明らかにされる。
そのことに関しては私は全く思い至らなかったので、ここは作者の鮮やかな手口にまんまと騙されてしまった。
読み終わってから考えてみると、「本格小説の始まる前の長い長い話」は、「今から始まる話には一切の隠し事もウラも存在しませんよ」という暗示をかける効果があったということか。