水村美苗のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
帰国子女ベストセラー作家が書いた愛国主義的な片手間エッセイだと本書のことを想像していた。
実際、執拗に長い前半部分の「若い頃体験記」は軽薄な印象で、本書を途中で投げ出す寸前にまで動揺した。
しかし中盤ぐらいからの言語学や、果ては文明論まで持ち出した考察は興味深い。
内容は、英語の言語大流行によってもたらされる文化禍への警告である。英語ネイティブの無邪気、無自覚、無神経を非難する。
後半からはその考察をベースに日本近代文学論のようにもなっていき、漱石の『三四郎』を日本での先見性という一般的評価だけでなく、当時の世界での位置や「大学→翻訳→国語→日本近代文学」という歴史的シンクロとして解説する。本 -
Posted by ブクログ
ある小説が絶筆になって、その先が知りたいほどおもしろいなら、
書き継がれるものはおもしろくなくてはならない。
とおっしゃる作者、説得力がある。
読者は何を期待するかというと、登場人物がこのさきどうなったかということと、
途絶したストーリーの先を知りたいということ。
登場人物の性格が変わってほしいのでもなく、雰囲気が違ってもほしくない。
人間のエゴイズムを追求している意図ならば、急に勧善懲悪を期待するのでもない。
さて読んでの感想は
「答えはすでに漱石の作品の中にあるのである」
ということをまざまざと見せてくれるね。
『明暗』と『続 明暗』通して読んでみて、むしろ違和感がないのが怖い -
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母と娘って、ありますよね。。
独特の何かが。
きっと "父と息子"にも
あるのだろうけど。
私自身は 父親との方が
性格も似ているし
話も合って 仲が良いのですが
不思議なことに
『母の死』を 想像した時の方が
途轍もない 喪失感に襲われます。
母と娘って もちろん
一括りには出来ませんが
お互いに 値踏みしている感じが
ありますよね。
それでいて 目に見えないところで
囚われているというか。。
帯の惹句にもなった
『ママ、いったい
いつになったら死んでくれるの?』は
いろんな想いが入り混ざった一言。
女性が 様々な経験を通して
少しずつ成長して強くな -
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中年のおっさんが主人公の小説ってけっこうあると思ってて、
ハードボイルド小説といえばかなりの確率でおっさんだし、
まぁおっさんの定義にもよるけど、40代、50代でも特に
おかしくない感じで。
じゃあおばさんは、っていうと、まぁおばさんの定義は
おっさんの定義に対して極めて難しい問題をはらんでいるので
ぶっちゃけ分からんのだけども、確かにおばさん主人公の
小説ってあんまないのかな。
じゃあって感じで今回なんだけども、
小説の中にも出てきているように、まさにおばさんの
シンデレラストーリー、ただしややしみったれたバージョン。
でもしみったれた分だけ現実感があって、
でもそこそこあり得ないだろって感 -
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村上春樹が訳したスコット・フィッツジェラルドの小説「グレート・ギャッツビー」を思い出した。グレート・ギャッツビーは1920年代、ニューヨーク郊外のロングアイランドの豪邸を舞台に、毎夜盛大なパーティーを開催する若き富豪の物語。この水村美苗の「本格小説」は1950年代後半以降の東京と軽井沢を主な舞台とした日本の富豪を巡る物語だ。華やかな軽井沢の富豪の別荘に出入りするようになった少年東太郎が、自らの出自や貧しさを振り切るため10代で渡米し米国で大富豪になっていく。20代、30代を米国で仕事に全力を注ぎ金銭的には十分に成功するが、実は軽井沢で出入りしていた富豪の家の娘と果たせぬ恋に落ちたまま、満たされ
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ネタバレ予想以上に自然な繋がり方だった。原作と最も自然な繋がり方を探った、とあとがきにあったが、よくここまで再現できたな、という感想である。
何度も滝へ身投げした女性の描写があるので、お延の運命を暗示しているのかと単純に思わせておいて、最後はお延の自然に身を委ねる、吹っ切れた姿で終わるのがなんとも清々しくて良い。
あとがきにあった通り、漱石は文明論を登場人物に語らせるので、どうしてもストーリーへの興味が失せがちだったのが、続明暗では、そのくだりが全くなかったので、漱石のストーリー性と人物描写の巧みさを抽出して読んだかのようで、とっつきやすかった。 -
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夏目漱石の未完の大作で遺作となった、「明暗」の続きを書こうと試みるもの。小学校から大学院までアメリカで過ごした著者、水村氏は、日本語への思い入れが人一倍強い。
日本を代表する小説家が残した小説の続きを書くというのは、当然批判もされるだろうし、とても勇気が要ることだろう。漱石の明暗を読めば、彼がどうやって物語を終わらせしょうとしていたのかは読者一人一人が想像するところだろう。
「明暗」に比べればやや読みやすく、それなりにハラハラさせられる展開もある。これはこれで楽しめた。明治時代の結婚というものは、本当に現在と全く姿が違うものだと改めて驚かされた。漱石の小説の登場人物では、ろくに仕事もしないで優 -
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2012年に単行本で出た際に、読んでいるんです。
2017年現在からみると、たったの5年前。
最近、電子書籍で再度購入。
「母の遺産」水村美苗さん。中公文庫、上下巻。
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50代の女性がいて、結婚していて子供はいない。
父はもう亡く、老いた母がいる。
この母が、色々面倒ばかりかけ、たいへんにしんどい。
コレという判りやすい被害がある訳ではないけれど、とにかく気持ちに負担をかけてくる。手間暇をかけさせる。
ただでさえ自分も体調が悪いのに。重ねて、介護の手間が厚塗りされる。地獄のような疲弊感。誰とも分け合えない苦労。誰も褒めてくれない重労働。
そして、夫が不貞をしていたことが分かる。若 -
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何かの雑誌で林真理子がオススメしてたので積読リストに入れてました。
著者の作品は初めてだったのですが、あーマリコさんが好きそうだな、というのが第一印象です。
親の介護の話を主軸としながら、更年期、老後資金・・・などなど現実的な問題が山積みでいつかは私も向き合うことなんだ、と漠然とですが感じるものがありました。
登場する姉妹が母の死を待ち望みながらも、母の老いが進むのに合わせて母が不幸にならずに寿命をまっとう出来るよう努力して快適にしようと努める姿がリアルで、救われるようでもあり、切なくもありました。
切ないといえば、母親が日に日に老いてゆく姿の描写がかなり切なかったです。
我儘ですごい人な -
Posted by ブクログ
ネタバレわがままな母から解放され、つましく生きるには十分な遺産を得て、浮気している夫を捨てる。50代での再出発。これだけ聞けば「最高やんか!!」と思う。
しかし、この決断に至るまでが長い。後半は失速してしまった。箱根の芦ノ湖畔の仄暗いホテルで、過去を正視し、老後資金の計算をし、葛藤する。最後は明るい終わりで本当によかった。
世の中には、暴力とか、犯罪とか、絶対してはいけないことをするような「本物の毒親」もいるだろうけど、ほとんどの場合良い面と悪い面を持つ親ばかりなんだろう。私も自分の親って毒親なんじゃないの?と思って色々調べていた時、自分の親は毒親ではない、だけど、この苦しみは自分にしかわから