水村美苗のレビュー一覧
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非常に読み応えのある作品だった。
主人公津田はいつまでも自分の人生を正面からぶつかろうとしない態度、
素直な感情の発露よりそれと同時に現れる下らない理性による体面ばかりを気にする態度によりどうしようもない人間となってしまう。
津田の妻であるお延も初めはそんな主人を無理やり信じながら(心のどこかで疑っていたが)生きてきたが、津田の元恋人の存在に気づき、
半狂乱におちいる。しかしながら、最後には生きていく決意を見出す。
漱石は女性を描くことに関してはあまり評判は良くなかったが、水村氏はとても肌理細かく女性の揺れる心を表現したと思う。
漱石の『明暗』のあとを引き継ぐ名作であった。 -
Posted by ブクログ
やっぱり不思議。
登場人物のすべてが、どこかで私の記憶や祖母や両親の記憶とつながるような気がする。
懐かしい思い出が蘇るようで、せつなくてたまらない気持ちになる。
嵐が丘の翻案小説でテーマ自体はきわめて一般的なはず。
なのに、自分自身のルーツを強く意識させられる。
祖母と母と私との紐帯を思い起こさせる。
ワイルドスワンを読んでもこんな風には感じなかった。
日本自体が希薄になったとはいえ、私もやはり日本人だということだろうか。
堪えきれない何かをぐっと噛み締めるような横顔や、
黄色い灯の下でのささやかな微笑みを見ながら、私も育ってきた。
作者はきっと、異国の地で母国の香りを何度も何度も繰り -
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読みたかった物語がここにはある。久々に恋愛で胸がぐっと来る。冒頭作者は偶然聞いた「小説のような話」が天からの啓示のように日本語で書かれた「近代小説」を書きはじめたとある。そしてそれに続く「本格小説の始まる前の長い話」で物語の主人公となる男東太郎との出会いと12歳で渡米して以来半生を送ったニューヨークで聞く彼の話が作家の私小説的な物語の中で書かれている。そして後の物語への伏線となっている。カルフォルニアの大学で働く彼女の元に一人の若い男加藤祐介が尋ねてくる。「東太郎」の話がしたいと。そして彼から聞いた「本当の話」こそ真の小説のような話であり、日本近代文学の元となった嵐が丘のような作り話という「本
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「上」に書きましたが、こちらは本当に惹きつけられました。
「日本には宗教がない。その代わりに日本文化というものがある」
アメリカ人のケヴィンが「失われた日本を求めて」プロジェクトを立ち上げたように、「日本文化」の良さを理解している人、なくならないように願っているのは、日本人よりむしろ外国人(あるいは外国に暮らす日本人)なのではないかと思います。
「もし日本に戻るとすれば、ついに戻るべき故郷に戻った…昼は日本のお日さまに優しく暖められ、夜は日本のお月さまに静かに慰められ、日本の山に囲まれ、日本の風に吹かれ、日本の小川の瀬音を聞き、もうこのまま死ぬまで日本を絶対に離れない、そして死んだときに -
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『続明暗』を著すというプロジェクトを遂行した水村美苗さんあっぱれだな。しかし読者としては『続々明暗』もほしくなる。それほど、人物たちが生々しく、その後の人生が気になる。
「津田は何時まで経っても女がそんな風に手前勝手に遣れるという事実に馴染めなかった。」
→男女がどうというより、津田は、自分自身も手前勝手に遣れると思ってない人なんじゃなかろうか。自分は女に対しては遣れる、小林に対しても遣れる、でも吉川夫人や父など、対すると自由に遣れない相手、自然となされるがままになってしまう相手がいて、さらに複雑なことに、それでも自分は一人の自立した男だから自由に遣っていると、そう思っているんじゃないか -
Posted by ブクログ
2009年~2024年に、文芸誌などに掲載されたエッセイや書評や講演、日記など短いものがまとめられている。
最初に読んで思ったのは、いやーやっぱり、昭和的?な言葉でいうと「ハイソサエティ」で「インテリ」であこがれる、っていうこと。
あと、たとえば、成金といわれるタイプの人を評する揶揄とか、おしゃれじゃない人に対する観察とか、「(自分が)若い女じゃなくなるとツマンナイ」というところとか、シニカルな率直なもの言いがよい、と。いい人に見られようとしない感じが素敵。
冒頭の「無駄にしたくなかった話」という旅行記がおもしろかった。ヨーロッパの超お金持ちたちとフランスに滞在したときの話だけど、一緒に滞在