小熊英二のレビュー一覧

  • 基礎からわかる 論文の書き方

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    論文を書く技術を「説得の技法」として体系的に解説した一冊。古代ギリシャの弁論術に基づく論文の型は、主題設定から論証、再構成までが料理のレシピのように整理されている。図解はないが、しっかり理解すると科学的思考の本質に迫る内容だ。初心者には難解かもしれないが、論文を書く意味や方法論の理解に役立つ。社会人の報告書作成にも応用可能で、実務的な側面もある。論文を単なる文章ではなく、相手を説得するための対話と捉える視点が新鮮で、読後には書く力向上を期待できる良書。
    欲を言えば、大学入学前に読みたかった。

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    2025年10月31日
  • 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学

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    日本の雇用慣行がどのように形成されてきたのかを、アメリカやドイツと比較しながら検討した結果、「はじめに人ありき」であることが分かった。アメリカは「はじめにジョブありき」。
    明治の大学卒が少数だった時代〜戦中〜高度成長までは雇入を増やしても、人不足/組織拡大で経営が維持できた。しかし高度成長が頭打ちになってからは大企業の正社員数も頭打ちになり、パートタイム労働や女子社員ないし非正規雇用を雇用のクッションとして扱い、新たな雇用の二重性が形成されてきた。
    日本の社会保障制度は、会社(正社員)or地域で囲われており、どちらにも当てはまらない残余型が約1/3存在する。厚生年金で比較的厚く保護される会社型

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    2025年10月10日
  • 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学

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    あとがきにあるように、『日本社会のしくみ』と言いつつ実質的には雇用慣行に限定した内容だが、逆にこのことは日本社会の構造がいかに会社というコミュニティに依存しているかの裏返しである。自分はかれこれ30年ほどこの主題を追っているが、そのきっかけは入社してすぐ導入された『目標管理制度(MBO)』に疑問を持ったからだった。こんなの絶対にうまく行く訳ないと思っていたら、案の定その後も目標管理の方法を無駄に精緻化したり、役職と報酬を一致させる役割給を導入したりして迷走を続けたものの、結局もとの職能等級制度から一歩も脱することはできなかった。
    雇用政策一つを取っても、教育、福祉政策など日本社会の構造と深く連

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    2025年08月11日
  • 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学

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    イメージで捉えられる日本社会の「しくみ」の解明に、雇用と労働の側面から挑む。
    西欧やアメリカとの比較で、「これだから日本は…それと比べて…」とよく言われますが、他社会を当て嵌めるのではなく、両者の背景や形作られる過程を分析し、両者の長短を踏まえた冷静な分析がなされます。慣習からなる「しくみ」の変革に対するおぐおぐの言葉も示唆的。

    昨今は過激な主張をする/正義を振りかざす政治勢力が台頭し、「日本は…現状は…」という安易な言説が選挙に向けて高まっていますが、誰もが組み込まれている「しくみ」を頭ごなしに否定するのではなく、合意をはかって、我々の手で社会をつくることが必要です。

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    2025年06月19日
  • 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学

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    ・仕事内容が違うのに、Aという部署とBという部署の給料が同じ。
    ・大卒社員と高卒社員の初任給が同じ。

    「それって変じゃない?」って、
    なんとなく違和感があるのだが、これは「社員の平等」という話。これに異議を唱えても、「まぁでも、日本は『社員の平等』だからねぇ」という話。

    「自分の学歴と現在の仕事内容が、釣り合っていないと感じる」━━こういう人が増えているという。
    つまり、「大学を出たのに、それに見合った仕事をしていない」「雑務をしている自分に納得がいっていない」と。
    しかしそれは昔からそうだったわけではない。
    「なぜそういう時代になったのか?」、本書を読めばその歴史がわかる。

    ***

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    2025年06月07日
  • 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学

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    個人的に非常に興味深い内容であった。日本社会は、明治に入り国家が強力に近代化を進めてきたことにより、民間にも「官僚制の移植」が行われたため他国と異なる雇用性質を持っているという。これは他国と比べ違いが大きかった。現在も残る多くの大企業は元々国が運営していた会社も少なくない。官僚制とは、一言で言えば「企業を超えた横断的基準の不在」といえる。米独などの諸外国では、歴史的に「官僚制の移植」は経験してきているが、職種別労働運動などによって日本よりも影響が小さくなっている。
    最後の著者の指摘がわかりやすかった。日本型雇用の慣行を打破するには、「透明性の向上」が必要不可欠であるということ。つまり、採用や昇

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    2025年02月21日
  • 基礎からわかる 論文の書き方

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    経営学専攻の大学院1年生である。当然に修士論文を書かなければいけない。修論の提出締め切りは、2026年の1月であり、実は、あと1年ちょっとということだ。
    私の所属している大学院・研究室での修士1年生のうちの修論準備のスケジュールは、おおよそ下記の通りである。
    ■入学前に「研究計画書」を提出し、入学に際して、筆記試験と同時に、「研究計画書」についてを中心とした面接試験がある
    ■4月に学期が始まって以降、ゼミ内で論文の書き方についての担当教授の説明がある
    ■学期が始まって2カ月後くらいに、「研究計画書」の修正版の発表を求められる
    ■夏休み中にゼミ合宿があり、修論の進捗状況の報告を求められる
    ■12

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    2024年12月05日
  • 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学

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    男女雇用機会均等法1期生→3号→非正規雇用→正規雇用→定年、年金受給までの再雇用(非正規)
    自分は学士
    子どもたちは十分な?学位
    いろんなことを考え、振り返らせてくれるだけでなく、最後の問が良い。
    audible(29冊目)だったけど、紙の本でも読まなきゃだ!

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    2024年12月02日
  • 生きて帰ってきた男 ある日本兵の戦争と戦後

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    著者の父親を題材として、オーラルヒストリーの手法をとって戦前、戦後の日本の歴史を知識層ではない層から見たものとして記述。
    中国派兵、シベリヤ抑留の後に日本に帰国して結核で片肺を失いながらも運と時勢をつかんでき、戦争時の体験をベースに元日本植民地の徴兵後の保証に関する社会運動に晩年は携わる。時代にほんろうされつつも生きる逞しさおよび世の中の流れを社会学者としてわかりやすく背景描写を重ねている一級の資料。

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    2024年05月23日
  • 基礎からわかる 論文の書き方

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    論文の書き方のみならず、その歴史的変遷や存在意義も含めて広く議論していてとても面白い。ジャーナリストの書く記事は、良し悪しはともかく出典が明記されておらず(インタビュイーの個人情報保護などのため)、読者が追試可能なようにはそもそも書かれていないことを理解する必要がある。ここを理解していないと、ジャーナリズムに対して引用が無いとか根拠が無いみたいな無意味な突っ込みどころに気を取られてしまう。相対して、論文は追検証可能性が大事ということになる。
    論文の章構成としてはほぼ思考停止で、アブスト・イントロ・方法論・結果と考察・結論という風に認識していたが、それはそもそもIMRAD形式と名前が付いていて、

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    2024年02月29日
  • 基礎からわかる 論文の書き方

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    まだ小熊本と下記で出てくる上野本は途中までしか読めていないが、両方ともためになるしおもしろい。

    ちくまから出た上野本と一緒に読み進めると、小熊本はどちらかというと論文の大まかな型を述べているのに対し、上野本はより実践的な研究の進め方を書いている印象。

    どちらも書いてあることは重複する部分が多いけど、受け取る情報は違うと思う。そして両方とも違った良さがある。

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    2024年02月26日
  • 生きて帰ってきた男 ある日本兵の戦争と戦後

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    古本屋で何気なく手にして読み始めた。
    小熊英二が社会学の英知を傾けて描いた父親の『自分史』である。社会状況や経験した事実を丹念に聴き取り丁寧に書いている、視点や文調が独特で新鮮だ。
    戦争に明け暮れた昭和の混乱期、逆境を這いながら地道に生きた父親の人生を口承で辿った一人息子の計らいに共感を持って読むことができた。
    小熊謙二の自分史であると同時に、日本が太平洋戦争に向かう時期から、敗戦、戦後の高度成長へ、そして現在までの推移を、一国民の目を通して語り表現した『社会史』でもある。
    彼は敗色濃い満州に徴兵され、敗戦になり捕虜でシベリアに抑留され、帰国して結核で隔離病棟生活を経てスポーツ用品店の経営者と

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    2024年02月09日
  • 生きて帰ってきた男 ある日本兵の戦争と戦後

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    戦前・戦中・戦後を生きた一人の国民の人生を、それぞれの時代の社会背景を交えながら綴った歴史書であると言える。

    記述の対象は、小熊英二先生の父親である小熊謙二氏。
    先の戦争に学徒兵として徴兵され、満州にて終戦を迎える。その後、ソ連軍の捕虜となってシベリアに3年間抑留された。
    帰国後もなかなか安定した生活基盤を築くことができず、「死の病」と言われた結核にかかるなど、不運は続く。
    サナトリウムからの退所後、職を転々とする中でスポーツ用品の販売会社に就職し、サラリーマン生活を送る。
    結婚し子をもうけ、「一億総中流」の日本社会の一員として戦後日本を生きることになる。

    こう要約してみるとなかなか分かり

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    2024年01月31日
  • 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学

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    読み返してみたら、ジョブ型や同一労働同一賃金の議論につながる歴史的背景が解説されてた。雇用慣行は、長年の積み重ねがあり、新しい制度を導入するには、時間がかかるのが分かる。でも、雇用慣行への挑戦は、必ずパラダイムシフトが起こすだろう。という希望につながる一冊だった。

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    2023年12月03日
  • 基礎からわかる 論文の書き方

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    ネタバレ

    2023/11/18 ジュンク堂三宮駅前店にて購入。
    2025/2/7〜2/14

    論文をどのように書けば良いか、を詳細に解説した内容。論文に限らず、説得力のある文章を書く際にとても参考になる。文章が苦手な人にはぜひ読んで欲しい本だが、そういう人に限って、「本を読まない」という何とももどかしい状況もある。何とかならんかなぁ。

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    2025年02月14日
  • 基礎からわかる 論文の書き方

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    単なるマニュアル本ではなく、論文とはそもそもどのようなものか、さらには科学的思考法まで学ぶことができる。

    文系・理系を問わず、すべての大学生にとって必読の本だと思う。

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    2023年10月27日
  • 基礎からわかる 論文の書き方

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    読みやすい。大学に入る前にこの本を読んでいれば……と悔やまれる。

    そもそも学問における「論文」とはなんなのかを述べた上で、どんな文章で組み立てるか、を書いている。

    確かに学生時代、「論文の書き方」みたいなプチ講座を受けたけど、大体、注釈の書き方とか参考文献の書き方、とかそんなことしか印象に残ってなかったので、なぜそれが必要なのか、が全く分かっていないままだった。

    つまるところ、論文は「科学的思考」に基づいて書く必要がある。(お互いが共有する公理を前提にし、その上に根拠と論理を積み上げて論証し、追検証する。そして進歩していく。)主題がなんなのかをを明確にした上で、先行研究を探し、対象を絞

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    2023年10月01日
  • 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学

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    某大学の社会学教授とお話しする機会があり、軽い気持ちで「まったくの素人にお薦めの社会学の本を教えてください」とお願いした。するとしばらくして、「悩みました」とメールがあり、数冊の本を紹介してくださった。これはそのうちの一冊である。

    かつて司馬遼太郎は「この国のかたち」という表現で、日本とはどういう国なのかを問い続けた。この、シンプルだが妙に頭に残るフレーズは、広く人口に膾炙して今に至る。そして、気鋭の社会学者である著者は、本書で「しくみ」という、これまた絶妙のワードを用いて日本社会を読み取ろうとするのである。

    彼が注目した(あるいはせざるを得なかった)のは近代日本の雇用・教育・福祉、なかで

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    2023年08月09日
  • 基礎からわかる 論文の書き方

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    【星:♾】
    いやー、読み応えがあった。論文の書き方の決定版と言ってもいいんじゃないでしょうか?

    ここまで分かりやすく、基礎的なことを網羅しつつも奥深く論文の書き方を書いてくれる本はもうでないんじゃないだろうか?

    論文の書き方は当然として、そもそも学問をするとはどういうことか、科学とはなんなのかということまで優しく語りかけてくれる。

    さらにビジネスにも十分役立つ内容である。

    本当に素晴らしい!!

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    2023年07月26日
  • 基礎からわかる 論文の書き方

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    2022年講談社現代新書。
    理系の農学部出身から社会学に転じた学者が、そもそも論文とは何なのかというところから検討して課題の設定から参考文献の記し方まで、それこそ註を大量に記して丁寧に説く。良書だ。

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    2023年03月11日