小熊英二のレビュー一覧
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ちょっと覗いただけで、まだ読んでいない。
本書よりも先に、浅羽通明氏の『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』(ちくま新書、2016)と小熊英二氏の『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』(講談社現代新書、2019)を読んでおくほうがよいと感じる。特に浅羽氏の『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』を先に読んでおきたい。
余談だが、最近、倉持麟太郎氏の『リベラルの敵はリベラルにあり』(ちくま新書、2020)という本があるのを知った。その本の宣伝コピーに<「フェイク」リベラルの語る「ハリボテ」立憲民主主義ではもう闘えない。保守をも包摂するリベラルの再生こそが、現実政治の突破口だ!>とある。「保守をも包摂するリベラル」とは面白そうである。昨今、「リベラル保守」は、「リベラル左翼」と同様、神通力を失いつつある。「保守をも包摂するリベラル」が衰退しつつある「リベラル保守」を再生してくれるから、「リベラル保守」の石破茂氏が「健全な民主主義のための努力が、ここにある」と大いに期待しているわけだ。
しかし、「保守をも包摂するリベラル」は、新しい衣装に変っても、結局、実体は旧来のカネまみれの「ムジナの保守」に収斂していくような気がする。「悪貨は良貨を駆逐する」の喩えよろしく、良質な「リベラル保守」が駆逐されることは、現在の石破茂氏が置かれている境遇を見ればわかる。
とにかく、我等がジャパンは安易・安逸・快楽を求めてひたすら漂流しているようだから、いずれ「ゆでガエルのように、気がついたら皆くたばっていた」という冗談にもならない事態が待っているような気がする。そういう妄想を癒すためにも、『リベラルの敵はリベラルにあり』は一読の価値があるかもしれないな。後は読んでからのお楽しみだ。
お終い -
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日本の雇用慣行がどのように形成されてきたのかを、アメリカやドイツと比較しながら検討した結果、「はじめに人ありき」であることが分かった。アメリカは「はじめにジョブありき」。
明治の大学卒が少数だった時代〜戦中〜高度成長までは雇入を増やしても、人不足/組織拡大で経営が維持できた。しかし高度成長が頭打ちになってからは大企業の正社員数も頭打ちになり、パートタイム労働や女子社員ないし非正規雇用を雇用のクッションとして扱い、新たな雇用の二重性が形成されてきた。
日本の社会保障制度は、会社(正社員)or地域で囲われており、どちらにも当てはまらない残余型が約1/3存在する。厚生年金で比較的厚く保護される会社型、それと比較すると保障は薄いが地域のつながりでカバーする地域型、どちらにも属せず社会制度から溢れやすい残余型という構成になっている。
社会の仕組みは合意形成の積み重ねであるため、パッチを当てることはできるが、根本的な改革は大きな痛みを伴う。加えて完璧な仕組みは存在せず一長一短である。「日本社会のしくみ」を改善するなら、「透明性を高める」ことから始めるべきだと著者は述べている。人事評価の透明性を高めることは、既に日本社会で働いている人の満足度を上げることにもなり、これからアメリカ型やドイツ型のような国からやってくる外国人を雇用する上でも有利になる。
という日本の雇用慣行を概観した。
個人的には少なくない残余型の人たちがいかに幸福に生きられるかを、社会がどう担保するかについての議論に興味がある。 -
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あとがきにあるように、『日本社会のしくみ』と言いつつ実質的には雇用慣行に限定した内容だが、逆にこのことは日本社会の構造がいかに会社というコミュニティに依存しているかの裏返しである。自分はかれこれ30年ほどこの主題を追っているが、そのきっかけは入社してすぐ導入された『目標管理制度(MBO)』に疑問を持ったからだった。こんなの絶対にうまく行く訳ないと思っていたら、案の定その後も目標管理の方法を無駄に精緻化したり、役職と報酬を一致させる役割給を導入したりして迷走を続けたものの、結局もとの職能等級制度から一歩も脱することはできなかった。
雇用政策一つを取っても、教育、福祉政策など日本社会の構造と深く連関しており、それらと整合しないポリシーは仮に私企業のローカルな仕組みであっても機能しないということだ。著者の言う『つまみ食い』は許されない。特に今は史上初めて労働力人口が減少して、相対的に労働者のパワーが増えている。日本は言語バリアが非常に高いから、他国のように外国から安い労働力を入れることも容易ではない。今までの『雇ってやる』感覚の経営者は痛い目を見るだろう。早く労働者(組合)もこの構造変化に気づいて声を上げて欲しいと思う。
長年この問題を追ってきて得られた知見と、自身の会社員経験から得られた感覚は本書の内容と完全に合致しており特に新しい発見はなかったが、こうして網羅的にまとまった資料は頭の整理になって有益だった。 -
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イメージで捉えられる日本社会の「しくみ」の解明に、雇用と労働の側面から挑む。
西欧やアメリカとの比較で、「これだから日本は…それと比べて…」とよく言われますが、他社会を当て嵌めるのではなく、両者の背景や形作られる過程を分析し、両者の長短を踏まえた冷静な分析がなされます。慣習からなる「しくみ」の変革に対するおぐおぐの言葉も示唆的。
昨今は過激な主張をする/正義を振りかざす政治勢力が台頭し、「日本は…現状は…」という安易な言説が選挙に向けて高まっていますが、誰もが組み込まれている「しくみ」を頭ごなしに否定するのではなく、合意をはかって、我々の手で社会をつくることが必要です。 -
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・仕事内容が違うのに、Aという部署とBという部署の給料が同じ。
・大卒社員と高卒社員の初任給が同じ。
「それって変じゃない?」って、
なんとなく違和感があるのだが、これは「社員の平等」という話。これに異議を唱えても、「まぁでも、日本は『社員の平等』だからねぇ」という話。
「自分の学歴と現在の仕事内容が、釣り合っていないと感じる」━━こういう人が増えているという。
つまり、「大学を出たのに、それに見合った仕事をしていない」「雑務をしている自分に納得がいっていない」と。
しかしそれは昔からそうだったわけではない。
「なぜそういう時代になったのか?」、本書を読めばその歴史がわかる。
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『日本社会のしくみ』というタイトルではあるが、主に、“雇用”の話が中心だと感じた。
「新卒一括採用」「定期異動」「定年」「学歴採用」……など、労働や雇用の仕組み、その歴史について学べる。
自営業の方よりも、いわゆる“大企業”というところに勤めている人のほうが、実感をもって理解ができるのではないかと思う。
分厚い本で、読み応えがあり。
「難しい」とか「読みにくい」とか、そういうのはない。
知らないことをたくさん知ることができて、読んでよかった。
「どのへんがよかったの?」と聞かれても、内容がたっぷりなので、抜粋するのが難しい。要約するにしても、同様。 -
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個人的に非常に興味深い内容であった。日本社会は、明治に入り国家が強力に近代化を進めてきたことにより、民間にも「官僚制の移植」が行われたため他国と異なる雇用性質を持っているという。これは他国と比べ違いが大きかった。現在も残る多くの大企業は元々国が運営していた会社も少なくない。官僚制とは、一言で言えば「企業を超えた横断的基準の不在」といえる。米独などの諸外国では、歴史的に「官僚制の移植」は経験してきているが、職種別労働運動などによって日本よりも影響が小さくなっている。
最後の著者の指摘がわかりやすかった。日本型雇用の慣行を打破するには、「透明性の向上」が必要不可欠であるということ。つまり、採用や昇進、人事異動や査定などは、結果だけでなく、基準や過程を明確に公表し、選考過程を少なくとも当人に通知すること。さらにこれを社内/社外の公募制と組み合わせることができれば効果的、という。こうした透明性や公開性が確保されれば、横断的な労働市場、男女の平等、大学院進学率の向上などは改善されやすくなるだろう。これまでこうした諸点が改善されにくかったのは、勤続年数や「努力」を評価対象とする賃金体系と相性が悪かったため。近年では勤続年数重視の傾向が低下しているが、それでも上記諸点が改善されないのは、採用や査定などにいまだに不透明な基準が多いことが一因である。
著者は、このような日本型雇用の成り立ちに日本の国民性や宗教観は影響を及ぼしていないとの考えであったが、個人的には日本人にありがちなはっきり決めずもやもやにしたままにする国民性も多分に影響があるような気がしてならない。 -
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経営学専攻の大学院1年生である。当然に修士論文を書かなければいけない。修論の提出締め切りは、2026年の1月であり、実は、あと1年ちょっとということだ。
私の所属している大学院・研究室での修士1年生のうちの修論準備のスケジュールは、おおよそ下記の通りである。
■入学前に「研究計画書」を提出し、入学に際して、筆記試験と同時に、「研究計画書」についてを中心とした面接試験がある
■4月に学期が始まって以降、ゼミ内で論文の書き方についての担当教授の説明がある
■学期が始まって2カ月後くらいに、「研究計画書」の修正版の発表を求められる
■夏休み中にゼミ合宿があり、修論の進捗状況の報告を求められる
■12月になり、再度、修論の進捗状況についての報告を求められる
■2-3月にかけて、担当教授との修論に関しての、個別面談・指導がある
■4月に、経営学研究科の修士全員による修論案の発表会がある
まだ1年生なので、これまでは少しゆったりと構えていたが、これから春までの間に、論文の骨子を固め、以降、調査・研究を行うことになる。
かなり昔に学部を卒業した際に、「卒業論文」は書いたが、今考えると、宿題レポートに毛の生えたものでしかなく、本格的な論文を書くのは、今回が初めての経験と言って良い。
書いたことがないので、当たり前であるが、書き方が分からず、「論文の書き方」的な本を何冊か読んでみた。その中では、今のところ、これがベストだと思う。
「論文を書く」と言う時の意味は、大きく2つに分かれる。
1つは、「何を」書くのかということ。どんなことをテーマに選ぶのか、研究仮説は何で、何を明らかにしようとしているのか。これについても、「テーマの育て方」「リサーチクエスチョンの設定の仕方」等に関して解説した本がかなりある。
もう1つは、「どのように」書くのかという内容。本書は、こちらに属する。これをテーマにした本も数多く出版されているが、上記の通り、私が読んだ本の中では、本書が、これまででベスト。
分かりやすい、とか、色々と本書の良いところはあるが、私がもっとも気に入ったのは、くどいくらいに、同じ内容を、別の角度から何度も説明をしてくれている点である。そうしてもらえることによって、「書き方」についての理解が立体的となる。
ただ、この本を1年前、大学院入学前に読んでいたとしても、ピンとは来なかったと思う。論文のことを考え、構想を練り、途中経過報告のためのレポートを書いたことにより、論文とはどういうものなのかを肌感覚で知ることが出来るようになって初めて、本書のような解説本が理解できるようになるのである。
これからも試行錯誤を続けながら、作業と並行して、本書を読み返すことにより、論文の書き方がすこしずつ上手くなっていくのだろう(と期待している)。 -
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論文の書き方のみならず、その歴史的変遷や存在意義も含めて広く議論していてとても面白い。ジャーナリストの書く記事は、良し悪しはともかく出典が明記されておらず(インタビュイーの個人情報保護などのため)、読者が追試可能なようにはそもそも書かれていないことを理解する必要がある。ここを理解していないと、ジャーナリズムに対して引用が無いとか根拠が無いみたいな無意味な突っ込みどころに気を取られてしまう。相対して、論文は追検証可能性が大事ということになる。
論文の章構成としてはほぼ思考停止で、アブスト・イントロ・方法論・結果と考察・結論という風に認識していたが、それはそもそもIMRAD形式と名前が付いていて、自然科学でよく用いられるが、種々の論文スタイルの一つでしかないことを初めて知った。
著者は自然科学系を経験した社会科学者という背景のため、文理の論文スタイルを両方経験してきている。文系のより多様な論文スタイルは実際に読み込んでみたい。面白そう。 -
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古本屋で何気なく手にして読み始めた。
小熊英二が社会学の英知を傾けて描いた父親の『自分史』である。社会状況や経験した事実を丹念に聴き取り丁寧に書いている、視点や文調が独特で新鮮だ。
戦争に明け暮れた昭和の混乱期、逆境を這いながら地道に生きた父親の人生を口承で辿った一人息子の計らいに共感を持って読むことができた。
小熊謙二の自分史であると同時に、日本が太平洋戦争に向かう時期から、敗戦、戦後の高度成長へ、そして現在までの推移を、一国民の目を通して語り表現した『社会史』でもある。
彼は敗色濃い満州に徴兵され、敗戦になり捕虜でシベリアに抑留され、帰国して結核で隔離病棟生活を経てスポーツ用品店の経営者となり、結婚し四人家族の長男に死なれ、残った一人息子の英二を育てる。
貧困と不運が重なり、人に迷惑をかけず補償など国には頼らず、波乱のなかを実直に生きた父の生涯を感情を抑えて冷静に描写している。
あの時代を生きた生活者への讃歌である。
小林秀雄賞の受賞は宜なるかなであり、自分も星五つの評価をした。
読みながら、地方の没落家系に育ち大企業の技術者から出征後零細事業者になり、妻や祖母と貧困に苦労し一人の娘を失い、事業税を払い続け軍人恩給の受給を拒み、子供たちを大学まで出した自分の父の切実な人生を思い胸を締め付けられた。 -
Posted by ブクログ
戦前・戦中・戦後を生きた一人の国民の人生を、それぞれの時代の社会背景を交えながら綴った歴史書であると言える。
記述の対象は、小熊英二先生の父親である小熊謙二氏。
先の戦争に学徒兵として徴兵され、満州にて終戦を迎える。その後、ソ連軍の捕虜となってシベリアに3年間抑留された。
帰国後もなかなか安定した生活基盤を築くことができず、「死の病」と言われた結核にかかるなど、不運は続く。
サナトリウムからの退所後、職を転々とする中でスポーツ用品の販売会社に就職し、サラリーマン生活を送る。
結婚し子をもうけ、「一億総中流」の日本社会の一員として戦後日本を生きることになる。
こう要約してみるとなかなか分かりにくいが、興味深く戦後史を学ぶことができる良書だと思います。
分量が多く、読み応えあり。 -
Posted by ブクログ
読みやすい。大学に入る前にこの本を読んでいれば……と悔やまれる。
そもそも学問における「論文」とはなんなのかを述べた上で、どんな文章で組み立てるか、を書いている。
確かに学生時代、「論文の書き方」みたいなプチ講座を受けたけど、大体、注釈の書き方とか参考文献の書き方、とかそんなことしか印象に残ってなかったので、なぜそれが必要なのか、が全く分かっていないままだった。
つまるところ、論文は「科学的思考」に基づいて書く必要がある。(お互いが共有する公理を前提にし、その上に根拠と論理を積み上げて論証し、追検証する。そして進歩していく。)主題がなんなのかをを明確にした上で、先行研究を探し、対象を絞り込み、根拠と論理を積み上げて、論証し、追検証出来るようにし、方法論を組み立て、必要な調査方法を使用する。そして、そのためにパラグラフライティングなどの技術を使用する。
随所で、理科の実験の例えや、料理の例えが出てくる事で、イメージしやすい。
あと、本書で筆者は大量の参考文献をあげているので、次に読みたい本がどんどん溜まっていく。筆者は、学問においての「プライマリ」「かかりつけ医」としての役割を学校で果たしているようだが、大学をすでに卒業した自分からしても、こんなに大量の参考文献をあげてもらえると、次にとっつくべき本がどんどん広がっていくので、まさに「プライマリ」の役割を果たしていただいた。