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戦争とは、平和とは、戦後日本とは、いったい何だったのか。戦争体験は人々をどのように変えたのか。徴兵、過酷な収容所生活、経済成長と生活苦、平和運動への目覚め……とある一人のシベリア抑留者がたどった人生の軌跡が、それを浮き彫りにする。著者が自らの父・謙二の語りから描き出した、日本の20世紀。
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Posted by ブクログ
著者の父親を題材として、オーラルヒストリーの手法をとって戦前、戦後の日本の歴史を知識層ではない層から見たものとして記述。 中国派兵、シベリヤ抑留の後に日本に帰国して結核で片肺を失いながらも運と時勢をつかんでき、戦争時の体験をベースに元日本植民地の徴兵後の保証に関する社会運動に晩年は携わる。時代にほん...続きを読むろうされつつも生きる逞しさおよび世の中の流れを社会学者としてわかりやすく背景描写を重ねている一級の資料。
古本屋で何気なく手にして読み始めた。 小熊英二が社会学の英知を傾けて描いた父親の『自分史』である。社会状況や経験した事実を丹念に聴き取り丁寧に書いている、視点や文調が独特で新鮮だ。 戦争に明け暮れた昭和の混乱期、逆境を這いながら地道に生きた父親の人生を口承で辿った一人息子の計らいに共感を持って読むこ...続きを読むとができた。 小熊謙二の自分史であると同時に、日本が太平洋戦争に向かう時期から、敗戦、戦後の高度成長へ、そして現在までの推移を、一国民の目を通して語り表現した『社会史』でもある。 彼は敗色濃い満州に徴兵され、敗戦になり捕虜でシベリアに抑留され、帰国して結核で隔離病棟生活を経てスポーツ用品店の経営者となり、結婚し四人家族の長男に死なれ、残った一人息子の英二を育てる。 貧困と不運が重なり、人に迷惑をかけず補償など国には頼らず、波乱のなかを実直に生きた父の生涯を感情を抑えて冷静に描写している。 あの時代を生きた生活者への讃歌である。 小林秀雄賞の受賞は宜なるかなであり、自分も星五つの評価をした。 読みながら、地方の没落家系に育ち大企業の技術者から出征後零細事業者になり、妻や祖母と貧困に苦労し一人の娘を失い、事業税を払い続け軍人恩給の受給を拒み、子供たちを大学まで出した自分の父の切実な人生を思い胸を締め付けられた。
戦前・戦中・戦後を生きた一人の国民の人生を、それぞれの時代の社会背景を交えながら綴った歴史書であると言える。 記述の対象は、小熊英二先生の父親である小熊謙二氏。 先の戦争に学徒兵として徴兵され、満州にて終戦を迎える。その後、ソ連軍の捕虜となってシベリアに3年間抑留された。 帰国後もなかなか安定した...続きを読む生活基盤を築くことができず、「死の病」と言われた結核にかかるなど、不運は続く。 サナトリウムからの退所後、職を転々とする中でスポーツ用品の販売会社に就職し、サラリーマン生活を送る。 結婚し子をもうけ、「一億総中流」の日本社会の一員として戦後日本を生きることになる。 こう要約してみるとなかなか分かりにくいが、興味深く戦後史を学ぶことができる良書だと思います。 分量が多く、読み応えあり。
ある一般市民がどのように戦争に巻き込まれ、戦後を生きたか記録されている。 戦時に始まり、シベリア抑留から帰国するところで終わる本だと思っていたが、彼の両親・祖父母がどのように暮らしていたかから丁寧に紐解かれ、彼がどのようにして徴兵されたか、戦後どのように生計を立て、引退後の生活をどのように過ごした...続きを読むかが克明に記録される。 いままでわたしが触れてきた戦争について描かれている媒体では、戦争中の悲惨なエピソード、玉音放送を聴いて打ちひしがれる国民、という描写に留まるものが多かった。本書を読んで、一般的な市民にとっては、戦争が終わっても、無事生き残っても、必死の思いで生還しても、特に金銭的・物理的な救いがあったわけでもなく、ただ単に戦後の貧しい暮らしが続くだけだったということがわかった。 あとがきにもあるように、個人の体験を残すのはその体験を文章に残すことができる高学歴の者によることが多いから、こんなに素朴というか、「下の下」の人の戦争体験は初めてだった。 あの戦争で国民の日々の暮らしは否応なく変わり、命を失った人までいたにも関わらず、力のある者が声を上げ続けない限り国が補償を行わなかったというのはショックだった。 そしてまた、謙二による裁判での陳述は胸に迫るものがあった。何も間違ったことは言っていないのに、それにもかかわらず請求棄却されたということが、日本人として本当に残念だと感じた。 わたしの祖父母は戦争について語りたがらなかった。わたしの祖父母にも、本書で記録されているような、祖父母たち固有の歴史があると思う。聞くことができなかったのが惜しい。 「昔は水族館だったというアパート」という描写が気になった。
著者の父で、「立川スポーツ」創業者・経営者でもあった小熊謙二の戦争体験・戦後の生活史体験の聞き取りの記録。1925年生まれの小熊謙二は、北海道・佐呂間に生まれ、北海道に残った父と離れて東京の祖父母のもとで育ち、早稲田実業学校卒業後に富士通信機に勤めるが、1944年に徴兵のため召集。電信第17連隊の...続きを読む二等兵として満洲に送られる。敗戦後は牡丹江でソ連軍に投降、シベリア送りとなり、1948年3月に帰国するまでチタの収容所で強制労働を強いられた。 日本敗戦後は貧困にあえぎ、職を転々とする中で結核に罹患。1956年に退所後は東京学芸大で職員として勤務していた妹・秀子を頼り、多摩に向かう。その後、つてをたどって立川ストアに就職、高度成長期にスプロール状に拡大していった住宅地に出来ていく中学校・高等学校にスポーツ用品を売り込むセールスマンとしてようやく生活の安定を得ていった。退職後は地域の住民運動を手伝う傍ら、シベリア抑留のわずかな縁から再会した朝鮮人元日本軍兵士の国賠訴訟を支援、自らも共同原告として裁判に参加した。 「立川スポーツ」という社名には記憶がある。高校教員時代、クラブ活動の関係でお世話になったことがあったかもしれない。小熊は父親の生活史をある種の典型性というレベルで捉えているが、父親のコメントの周囲に当時の文脈や資料を紹介していくというスタイルは、確かに政治史や社会史の記述ではすくい取れない生の実感というか、生きた人間がそこにいる、という感覚を与えてくれる。 しかし、「あまりにもよくできている聞き取りの記録」という気がしないでもない。いかにも典型的な日本敗戦後の社会党支持者という父親のイメージだが、聞く側の姿勢というか、聞く側の質問やコメント(どんな質問をしたかは記録されていない)が引き出される記憶に無視できない作用を及ぼしているとは思う。
歴史を学ぶということは、社会についての知識を増やすということであるが、個人歴史の場合は、自らの生き方を振り返る貴重な機会になりうる。
面白くって2日で読んだわー! 著者の父親の聞き書きを基にした、20世紀前半に生まれた名もない日本人男性のライフヒストリー。 北海道への移住、上京、就学と就職、徴兵。シベリア抑留。帰国後の困難な再就職と結核治療。景気の上昇。結婚と仕事の成功。マイホーム。 昭和初期、小学校を出たら日銭稼ぎでも働くのが当...続きを読むたり前だった。話者は早稲田実業中学に通ったが国公立の滑り止め的存在。月謝を払って高等教育を受けられる人は限られていた。 庶民レベルでは戦争賛美はみんな案外冷ややかだった。学校の先生や一部のインテリは批判的だった シベリアでは零下35度になると、屋外作業が中止になったが冬でもダムの凍結除去など外で働かされた 抗生物質が使えるまでは、結核治療のために肺や肋骨を切除する外科手術が行われていた 1957年までガス、水道なしの下宿暮らしだった 話者は最晩年になって、日本兵として徴兵され、シベリアに連行された朝鮮人の抑留仲間が起こした賠償裁判に協力する。たとえ勝てない裁判と分かっていても、公の場で一言言わせろ。人としての気概を感じた。 著者は日本の近現代社会史の専門家だけれども、戦争や生活の記録として残された書物が、特定の学識層の経験に偏っていたり、個人の感性でバイアスがかかっていることをたびたび感じ、普通の庶民がどう生きたかを残したいと思ったそう。 この本のように、私の家族のライフヒストリーも残したいな、と思った。
昭和を生きた一人の男の生涯の記録。時代背景と庶民の暮らしがバランスよく記述され、大変読みやすい。書いたのがご子息だとは読み終わるまで気がつかず。
小熊謙二の生涯の軌跡をたどっていくことで戦前から戦中、そして戦後の日本の姿を描いている。著者の小熊英二(謙二の息子)があとがきで書いているように、本書が他の戦争体験記と異なるのは次の二点。 ・戦時のみならず戦前と戦後の生活史がカバーされている点 ・個人的な体験記に社会科学的な視点がつけ加えられている...続きを読む点 本書は戦争というものが国だけではなく個人の人生をいかに破壊するかを物語っている。たとえば、謙二が戦前のように水道とガスのある生活に手に入れたのは1959年のことである。終戦から考えても15年近くの歳月を要しているのである。戦争とはかくも悲惨なものであるということは肝に銘じておく必要があるだろう。また、本書の主人公、小熊謙二の「ものを見る目」の鋭さにも注目して読むと面白い。
読む前は一時期話題となったフィリピンの密林から帰ってきた日本兵の話と思っていたが、本書はシベリア抑留から帰還した方の話だった。 私の母方の祖父もシベリア抑留からの生還者であったが、今まで全く知らずに生きてきた。本書を通じてその経験者の生の体験を知ることができ、その過酷さや当時の背景を知ることができ...続きを読むた。特に終戦時に関東軍が労務の提供を申し出ていたというのは驚愕したし、憤りを感じた。 また、帰還後の生活にも多くの紙数を割いており、あまり知ることの無い庶民の戦後の生活を知ることができる。韓国人や台湾人なども強制的に日本兵として動員していたという事実も重い。昨今の軽々と在日排斥を叫ぶ人達はどのくらいこの事実を知っているのだろう。
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