小熊英二のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「新書大賞2013」を受賞した作品。だけどそこまでよい作品とも思えなかった。なぜなら、あまりにも理想論、建前論に寄りすぎているからだ。内容は大半が社会運動史の概説に近く、理論的なことをダラダラと述べているだけの部分も多い。歴史や方法を知ることが社会を変えることの第1歩なのはそのとおりかもしれないが、しかしいくら高邁な理想を掲げていても、できうるかぎりの方策を講じてみても、じっさいには限界があってなかなか社会は変えられないのである。その好例が、著者がたびたび言及している原発問題だろう。あの事故いらいスッカリ日本じゅうに原発を嫌悪するムードが漂い、世論調査においてもつねに反対派が多数派を占めるようになった。それでも現在の安倍政権は、再稼働に向けて着着と準備を始めている。社会を変えようとアレだけデモをしても、けっきょくなにひとつ変わっていないではないか。理想と現実が異なるのもまたあたりまえのことであり、それで著者を責めるのも酷かもしれないが、そのことにたいするエクスキューズはもうすこし言及してほしかった。また、内容の信憑性も微妙。安保闘争などにかんするくだりは、伝聞なども多い。体系的な先行研究がすくないのかもしれないが、ならば厖大な参考文献をつくるなどして、内容の真実性を担保すべき。内容についていえば、2012年の刊行ということもあって、現在でみるとどうなのかなと思う部分があった。社会を変えようと思うことはよいことかもしれないし、その方法を学ぶことに意義はあるだろうが、本作を読んだだけではかえって絶望感だけが強まりかねない。