東直子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「晴れ女の耳」 紀ノ国奇譚
著者 東直子
【目次】
イボの神様
ことほぎの家
赤ベベ
晴れ女の耳
先生の瞳
サトシおらんか
あやっぺのために
緑涙
参考文献に『読みがたり 和歌山のむかし話』とありました。
八篇から成る短編集ですが、題材となっているのが、和歌山の民話や実話ということで、古い日本の風習やその土地の文化のようなものが根底に感じられます。人柱や神かくしなど、どのお話にも、そうしなければ生きていけなかった切なさがあります。
どのお話にも、人の想いが込もっている様に感じられました。
表題作、『晴れ女の耳』を出来るだけネタバレのない範囲でご紹介させてください。
『私が外に出る時は必ず晴れる。それは耳の中に住んでいる豆粒ほどの小さなおばあさんのお陰だった。おばあさんに耳の中に住む理由を尋ねると、哀しいおばあさんの遠い昔の記憶が語られます。何の罪もないのに、無実の罪を着せられ、村八分にされた母と兄妹たち。それでも生きることを諦めずに、どんなに辛くとも、子供達のために生きようと頑張った母。、、、。』
ー不覚にも外出中に読み進めてしまい、涙をこらえるのに必死でした。
どのお話も丁寧な語り口調で綴られています。
何にも大切なメッセージが込められています。
気持ちが、苦しくなるお話もあります。
『先生の瞳』、『緑涙』がほんのりと、好きです。
-
Posted by ブクログ
公募ガイドの選歌欄「短歌の時間」のオムニバスですね。
メメさんの本棚登録で知りました。とても素敵な本です。メメさん、ありがとうございました。
雑誌『公募ガイド』連載「東直子の短歌の時間」(2015年4月号~2021年10月号)を纏められた一冊です。七十九のお題で、特選一首、秀逸二首、佳作六首。それぞれに[評]を添えて、[全体評]でまとめ。エッセイのような短歌についてのコラムが寄せられています。
とてもおしゃれで、東さんのイラストも味わい深く華を添えています。
東さんの短歌も私には馴染みやすいのですが、文章も柔らかく親しみやすく、短歌の選も共感を呼ぶものでした。ちょっと嬉しい本です。
やわらかく続いている息、白い息、
飛ぶためにある冬のあおぞら えむ
コンパスの針刺さってる紙の上
静かな円の道があふれる れもん
はるはると二回唱えて春を待つ
遥かに彼方の、チハルのために 睦月くらげ
姉さんの顔をつけない平泳ぎ
ただそれだけの春のいちにち えむ
夜の野に鈴を鳴らせば透きとおる
星をならしてくださるあなた 月館桜夜子
海の泡、泡に写れるひるの月に
やはらかき木のいかりをおろす 塚本邦雄
てのひらに てのひらをおくほつほつと
小さなほのお ともれば眠る 東 直子
巻貝の眠りの中に入り込み
思い出すのよボタンの在りか 水鳥
ときにあなた、砂とは美しいものね
さくりさくりと沈んでゆきぬ 東 直子
朝よりもやさしい夜の鞄かな
横抱きにしてバスに眠れば 小島なお
さよなら、と螺旋階段の重心に
シュークリームを投げ込めば冬 青山 蛹
あかるいと言われるたびに胸にある
八百屋に並ぶ枇杷六つ入り 工藤玲音
迷いつつ空を目指していく樫の
履歴をたどって登る子供ら 有村鹿乃子
投稿短歌とコラムの中の気に入った短歌を選んでみました。あくまでも私の好みです。
本の装丁も良く、お気に入りの本ですね。
-
Posted by ブクログ
文章には人柄が出るということがわかった。それぞれの作者(何人かの本は読んだことがあるけど)の素性は一切わからないけど、質問に答えていく回答文自体が自己紹介をしているようだった。
そして、私が普段よく思っていることが、忠実に言語化されていて勝手に爽快な自分を味わった。
個人的には、「人と人とが関係を結ぶときは、もしかしたら美点によってかもしれない。けれどその関係を深めていくのは、美点ではなく欠点なのではなかろうか。また、私たちが人間くささを感じるのは、どういうわけだか美点ではなく欠点である。」
「私は今現在『早めに終わらせ、夏休み最後まで何度も見直す派』なのだが、もちろんそんなことは言わない。そんな模範的な回答、まわりの人たちは白けるだけなのだ。『もちろんぎりぎり派だよ』、これは会話のマナー。」
の2つはまさに私の脳内の言葉をそのまま書き写しているようで驚いた、とともに似た考えを持つ人がいて安心もした。