無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
すごく良かった。西加奈子さんの解説にあるように、東直子さんの本は、人間の危うさを描いている気がする。それを彼女は「こわさ」と言っている。
この本の主人公のきいちゃんを観ていると、昔の自分を見ているようで、自分でもよくわからない断崖絶壁をきいちゃんがフラフラと渡り歩いている様は、ハラハラした。
きいちゃんは、ゆうちゃんと出会って、支えてもらって、大切にされて、少しずつ足りなかった何かを取り戻していくようだった。
でも、それでも、それが心から漏れていくスピードの方がずっと早くて、きいちゃんはいつも何かに飢えている。それは愛情だったり、死だったり、孤独だったり、いろんな形で、ゆうちゃんの物語に溢れているのだ。
深い愛情に支えられて、きいちゃんは真っ暗な闇の中で、立ち直りたいと願うけど、結局最後の最後に立つことが出来たのは、彼女自身の強さゆえだった。そうしなきゃいけない、という義務感と、そうすれば何かが変わるかもしれないと思える希望が、きいちゃんを奮い立たせる。
それをそっと後ろで見守って、ゆうちゃんも一つ決心するのだ。
本当に昔の私を見ているようだった。この世に万ある本の中で、昔の自分にそっくりな主人公が出てくる本なんて、なかなかない。これもまた巡り合わせなのかもしれないなぁと思った。
きいちゃんほどの修羅場は、私にはなかったけど、それでも、個人的には沢山辛いことがあった。私は彼と乗り越えることを選んだし、それを後悔していない。
きいちゃんには、まだまだこれから辛いことがいっぱいあるだろう。でも、それ以上に素晴らしいことも沢山あるだろう。一つ乗り越えるたびに、彼女を褒めてあげたいと思う。過去の私が、今の私を少しだけ褒めてやりたいのと同じように。
Posted by ブクログ
家を出て
ひょんなことから
ゆうちゃんの家に転がり込むことになった
きいちゃん。
一人暮らし歴が長く
ジャムだって作れる
美容師のゆうちゃん。
少し情緒不安定な
二十歳の女の子・きいちゃんと
困っている人をほっとけない
優し過ぎる青年・ゆうちゃんの
甘く切ない恋模様を描いた
連作短編集です。
ガソリンの匂いと共に食べた晩御飯の思い出、
長生きしたカブトムシの話、
アメリカ帰りの
優しいおばあさんの話、
不思議な転校生・サルコの話、
特撮会社の岩職人、
岩ちゃんの話、
身体が小さくなる病気を患った
先輩美容師ミリさんの話、
など
いつからか眠れなくなったきいちゃんのために
毎晩話してくれる
ゆうちゃんのちょっと不思議で
切ないお話の数々。
このひとつひとつの物語が
本当に面白くて
ついつい引き込まれていく。
(ゆうちゃんの語り口の上手さと
きいちゃんの素直な合いの手の妙!)
優しくはあるけれど
どこかドライで覚めた
ゆうちゃんの言葉と、
深い繋がりをいつも求めている
きいちゃんの想いとの
悲しい温度差。
ほんの僅かな
すれ違いから
次第にギクシャクしてくる二人の関係。
そこから自分の生活を見つめ直し、
ゆうちゃんに依存した
楽だけどふわふわしただけの場所から、
自分の足で歩いていこうと
もがき続けるきいちゃんの姿に
なんか共感してしまいました。
それにしても
切なさを内包した
キラキラとした言葉や、
本業が歌人である東さんだけに、
独特のリズムで進む文章が
妙に心地いい。
劇的な出来事なんてなくても
当たり前に揺れ動く小さな感情を、
壊れ物を扱うように繊細に積み重ねていく
小説に心惹かれます。
その意味でも
この小説はまさにツボで、
夢見るように儚くて
切なく胸に残る、
あたたかい文章に
一気にファンになってしまったくらい
そこに流れる空気感が好きなんです。
二人手を濃い紫色に染めての
ぶどうジャム作り。
二人の指で作った
ほどけない知恵の輪。
微笑ましい
ベッドの中のキツネ遊び。
好きな誰かと過ごす
永遠を感じるひととき。
独り身の人は
二人でいることの自由をうらやましく思うだろうし、
たった一人の理解者と
今を生きている人には
いろいろと参考になる恋愛小説だと思います。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸