関口尚のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
2018033
四国のお遍路を通じて出会う7人。記憶を取り戻そうとする玲と、辛い記憶を消したい花凛、父親の言い付けでいやいや参加する剣也、失恋を断ち切りたい真っ直ぐな性格の太陽ら。
ギクシャクした7人だったけど、話が進んでいくうちに、途中で仲間の離脱もあったけど、気持ちがひとつになっていくのが妙に心地よい。
記憶はそのひと自身を形作るものであり土台だと思う。その土台がなければ、ひとは気持ちもふらふらするだろう。一方で、辛い記憶しかなければ、それを捨て去りたいと思うかもしれない。
玲の自分の弱い部分を笑って繕うと言う部分は自分と重ねる部分もあり、自分のことの様に読みきることができました。
口の悪い剣也だけど、こいつが1番素直でかわいいやつかもしれません。
いつか四国をお遍路してみたいと思えてしまう良書です。 -
Posted by ブクログ
簡単なあらすじとしてはミカンアルバイターとして愛媛にやってきた譲とそこで出会ったシンガーソングライターのリンとの物語。もうこの取り合わせだけでわくわくしないか。譲は自らをイエスマン田中と称し、リンは才能を生かせず燻るシンガーソングライター。この二人が紡ぎだす一つの物語っていうのはきっと生きてみたかった現実が描き出されるんだろうなって感じた。
話の内容もさることながらなにせこの関口さんの話の書き方っていうのは話の中に飛び込み、その世界に自分がいるかのように感じさせるものがある。文字で僕らの気持ちを表してくれるのだ。だからこそ、どこか心の中でしてやられたとクスッときてしまうものがあるんじゃないかな。
そもそも最初に背表紙の紹介を見たときに、ここまで胸が躍らせれるのは初めてだった。なんせ、自分が書きたかった話が突然目の前に出てきたようなもんだったからな。夢が現実になったってのはこのことじゃないかって思った。同時にやっぱり悔しくも思った。なんでこんな話を書くことができなかったんだろうかってね。それこそ、譲が千春に感じてた感情そのものがこの本と出合った時に僕の中に芽生えていたのかもしれない。
-
Posted by ブクログ
廃校が決定した中学校が舞台のトライアスロンの物語。
自治体の合併に伴う廃校で、美里村とか南郷町とか出てきて、少しだけ宮城県風。
そんなわけで、宮城県民は入り込みやすいかも!?
トライアスロンという扱いにくそうな材料だが、分かりやすく描けている。
丁寧な取材をしていることもうかがえる。
ただし、丁寧過ぎてくどい部分もあるけど・・・
たとえば、ブルホーンバーを見て、「水牛の角のような」と思う人は少ない。
題材のせいで、少し発想やメタファーの部分で制約がかかったのかもしれない。
まあ、トライアスロンの認知度を考えると、まだ話が盛り上がる前にある程度説明口調になるのは仕方ない気もするね。
そして、クライマックスシーンはテンポよく描けており、スピード感も十分。
なので、上のような点は大きな問題ではないだろう。
ストーリー展開や、伏線の貼り方も自分にはグッときた。
ジャンプ系漫画のような展開だが、節々でオリジナリティがよく出ている(特に、エピローグがいい)。
また、夏の青春、恋愛、思春期のジレンマ、・・・など共感できるシーンを現代の文脈でしっかり描けてる。
そして、3人で事に当たるという点もとてもいい。
3人いれば、そのうちだれか一人ぐらいには強く共感できる人がいるだろうから、話に入り込みやすい。
俺もトライアスロンやりてぇー!って気分になる。
文庫以外はあとがきや解説を先に読んでもいいと思うけど、文庫は読んでしまうと台無しになることがある。
この本は、解説は後に読んだ方がいい。
青春時代の、淡いけど大切な何かを思い返させてくれる傑作。