YAは時代を切り取ったものである。それは現実的な話に限らず、ファンタジー色の強いものでもそう思います。
読者対象が狭いため、あっという間に世代交代されていくのですね。10代の頃の1年はとても長く、ちょっと前の世相がとても古く感じてしまいます。
だから昔のYAを今の10代が読むとどう感じるのかは気にな
...続きを読むります。
今作は2003年に発表されたもの。実にその時代が鮮やかに切り取られています。今からもう16年も前になるのですね。ああ、確かにそうだった。この時代はこんな感じだった。そんな懐かしさがひしひしと迫ってきます。
そこに生きる高3の少年ふたり。将来の夢、別れたばかりの彼女、父親のリストラと精神状態、映画館窓口の年上の女性への憧憬と恋心、個人サイトの日記、夢を諦めること、がむしゃらになること。その時代ならではのものもあります。でもその状況に対してどう感じるのかどう行動するのかは普遍的なものもあるでしょう。
今の若者は無気力だ。全てを諦めて達観したような顔をしている。ここ20年以上ずっと言われ続けている気がします。そう言われていた若者が、次世代の若者に対しても同じように言っている。それが時代を超えた若者らしさであるかのように。
しかしここに出てくるふたりは、達観しているようなそぶりでいながら、がむしゃらになっています。虚無の世界でしかないようなネットに書かれていることを真っ直ぐに受け取り、そこにぶつかっていきます。よく知らない相手に恋心を抱き、よく知らないまま突き進んで行きます。
そんながむしゃらさもまた、時代を超えて存在する若者らしさなのかも知れません。