橋本長道のレビュー一覧
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「覇王の譜」の続編。
直江大、剛力英明、江籠紗香、懐かしい面々がまた。前作から二年後、確執を抱え隔たっていた三人がまた近づいていく。
普段将棋を見ていても知ることができない棋士のが内面の細かい描写が興味深い。自分の将棋の形を変えてでも目の前の一勝を取りに行くのか、大局観に立って自分の将棋を貫いて行くのかで悩む直江。自信をなくし自分の将棋を見失っている弟子に師匠である師村が自らの棋士人生を賭けて示したこと。
師村の内面を描くシーンで、振り飛車党の師村が居飛車を指したその本当の理由がわかるとき胸が熱くなる。
三木と師村、師村と直江、直江と拓未、それぞれの師匠と弟子の関係はそれぞれに違ってどれもいい。
次作では女性棋士江籠の誕生と、蒔野の成長を見たいです。
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Posted by ブクログ
『覇王の譜』が面白く、著者は元奨励会員とのことで、タイトルだけで奨励会をテーマにした小説かエッセイかなと読んだら子どもを将棋棋士にするか否かが真正面から書かれていた。
将棋指しになりたい有望な子を持つ親にとっては唯一無二の“参考書”だと思う。ニッチ過ぎて他にないということだけど笑
面白かったのは記録を取りたい順番。早指しの人が人気と名前まで出てて笑ってしまった。
江戸時代の盤面と全く同じものが羽生ー渡辺戦で出てきたというのには鳥肌が立った。(現代的な使い方で怖いわけではない、念のため)
『覇王の譜』以前の本なので本人はダメを自認しているんだけど、奨励会員だったというだけで突き抜けたものがあって(この時も指導できるレベル)、大学に落ちたと言っても神戸大卒、小説は賞を取り、やはり凡人とは違うなと。
いや、将棋ファンとそう思いたいだけかもしれませんが。
これからも期待しています。 -
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『将棋は決断のゲームである…決断をテーマに書かれた一挙8編の短編集』という紹介文に惹かれて読みました。
将棋は子供の頃に親に教えてもらって2、3度指したことがある程度でほぼルールも難しいことも分からない状態で読みました。分かってた方が面白いんだろうなぁと思う物語もありましたが、全体的に、話の筋に関わる程度に上手に解説が挟まっていて、あまり調べたりせずに理解でき、読み進めることが出来ました。
強く印象に残ったのは、葉真中顕さんの『マルチンゲールの罠』、白井智之さんの『誰も読めない』でした。
『マルチンゲールの罠』は、最後の最後で、見えている世界がグルンとひっくり返るような感覚がお見事で、読み終わった瞬間、ほわ〜!と感嘆の声が出て、脱力するほどでした。
『誰も読めない』は、読み始めは方言になれなくて、読むスピードと意味を汲み取るスピードが合わずに少し苦労しましたが、途中から気にならなくなるほど引き込まれてドキドキしました。最後は、良かった〜!と安堵。クライマックスへの引き込まれ方が凄かったです。
決断がテーマ、という意味では、青山美智子さんの『授かり物』が、あまり将棋慣れしていない私には一番親しみやすく、また、決断に対しての心の流れに共感して最後は少しウルウルしました。
全体を通して、将棋の世界の厳しさと奥深さにも触れられて、とても興味深く感じた短編集でした。 -
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ネタバレ元奨励会員で、小説家である著者が、奨励会について書いた本。2018年発刊。
小学生の息子が将棋にハマっているので興味があり手にとってみた。
糸谷先生が奨励会の級位時代は負けるとその場で泣き勝つと鼻歌を歌う人だった(今では将棋界で一二の人格者らしいです)とか、豊島先生は本当に「とよぴー」って呼ばれてるんだなとか、ファン目線でおもしろいエピソードがいくつかあって嬉しかった。
また、元奨励会員として奨励会にいる友人に「若い子に頭下げて教えをこうたほうがいい」とアドバイスしてしまう、という話からは、永瀬先生がだいぶ年下の藤井聡太先生にVSをお願いしたという話を思い出した。やはりあれってとても珍しいことなんですね。
また、私が常々疑問に思っていた「女流棋士は美人が多いのに、棋士は見た目気にしなさすぎな件」についても、この本を読んで納得した。
私のようなライトファンが目にする(テレビに出てる)女流棋士の方々は、美貌や話術などのタレント性で起用されてることが多い…ということのようだ。女流棋士制度は棋士制度とは違い、実力も大きく違うとのこと。
将棋ファン(超ライトファン)としては、現役棋士の話もありつつ、けっこう楽しく読ました。
そして、普段目にするトップ棋士たちって、すごい雲の上の人たちなんだってことが、改めてわかった。
著者は、必ず勝てるだろう相手のことを「カモ」と本作で表現している。
きっとそれは奨励会で一般的に使われている表現なのでしょう。
しかし私達が目にするトップ棋士達からは、そんな下品な言葉を使うとは到底思えない、どんな相手でも礼儀を尽くし、舐めずに、勝っても驕らない人達に見える。どちらが本当の姿なのかは分からないけど、少なくとも将棋盤と相手に向き合っている時の真剣な姿は、本当なのだと私は思う。だからトップ棋士達はすごいのだ。
この本のコンセプトである、プロを目指したい子やその親に向けて、という点では、ご自身の経験を語ることで、厳しい現実を見せてもらったと思います。
他方で、奨励会に入って将棋一筋の人たちしかいないのだろうと思っていたら、パチスロや麻雀にハマるという堕落した大学生みたいな人もいるらしい。私は職業柄アンチギャンブルなので、我が子が奨励会でパチンコスロット覚えてそっちに夢中になったら嫌だなぁ、最悪だな。と思った。
この本の中で、著者はプロ棋士という職業は2018年の時点で子どもに職業としてお勧めできる、と結論づけているものの、この本全体を読む限り、本当にそう思ってるのかな?という疑問を感じました。
藤井聡太さんのような才能を発掘するためには将棋人口の裾野を広げる必要は大いにあるのは分かるし、将棋指導者の視点からは、より幼い子に将棋を初めて欲しいだろう。
だけど、奨励会員ですら、著者のように「プロを目指しきれない人」も多数いるのが現実(プライドから年下の子に教えを請えない、パチンコスロットにハマるなどして、ガムシャラに勉強するわけではない層)なわけで、そういう子が今後も生まれると知っていて、安易にお勧めできるのだろうか。
んー…、だから「プロになれるなら」お勧め、と言ってるのかな。ただそれは元奨励会員でなくてもファンとして棋士達を見てればわかる意見なので、やはり元奨励会員として、プロを目指すプロセス込みでお勧めできるのか、ということを知りたかったな。
この著者は、奨励会、国立大経済学部、金融機関勤務、小説家・・・という経歴だから、この職業の中だったらプロになれるなら棋士がおすすめなのかもしれない。
しかし、週に数回しか対局しなくて良いからコスパ良いということがおすすめ理由であれば、もっと楽になれて、それほど命削らなくても糧を得られる職業はある(たとえば弁護士とか。プロ棋士になるより、格段に楽になれる。)。
因みにこの作者は、もし戻れてもプロ棋士は目指さないらしい。私には、それが答えのような気がする。
この著者には、狭き世界に入る実力はあるが、その先を続けられない、いう特徴があるように思った。
なにごとも、努力し続けられるかどうか。将棋においては特にそれが顕著なのだろう。そう考えると、一度入り込んでしまえばそんなに努力しなくても続けていける業界、仕事って世の中にたくさんあるよなぁ。 -
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粗削りの良さ
「覇王の譜」を先に読んだので、比べると粗さが目についてしまいます。途中まで物語というよりはドキュメンタリーぽい書き方で、散漫な内容でしたが、終盤の方は物語の強い力を感じました。サラの一人称の語りをきいてみたくなりました。続きも読んでみたいと思います。