あらすじ
「どうすればプロ棋士になれるのか?」
本書はプロ棋士養成機関「奨励会」の実像を描くことで、その問いに答えるものです。
プロ棋士という職業が多大な労力を払ってでも目指す価値のあるものかどうか、という問題から始まり、奨励会の制度、戦い方、勉強法が元奨励会員である著者本人の述懐を交えて語られます。
プロ棋士養成機関「奨励会」とはどんな場所か?
どのくらい強ければプロ棋士になれるのか?
奨励会員の日常とは?
重要なのは努力か? 才能か?
夢破れた退会者のその後は?
そこは青春を捧げる価値のあるところか?
天才少年、天才少女が淘汰される奨励会という沼でもがき苦しんだ姿がそこにはあります。
将棋界に現れた超新星・藤井聡太ですら6連敗を喫したこともある奨励会。
その世界を本書でぜひ覗いてみてください。
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Posted by ブクログ
15歳で奨励会入りし、1級まで在籍した著者がプロ養成機関としての奨励会を始め、プロ棋士とはどういう存在かを記す。
数多の天才たちがプロになれずに去っていく過酷な世界。
一方で奨励会脱退を含め、挫折の連続だった著者の半生の振返りでもある。
職業作家としても活躍し、若手棋士の育成にも携わる著者に幸あれと願う。
Posted by ブクログ
私は将棋は小学校4年で覚え、囲碁は20歳過ぎに覚えました。プロの先生に指導を受けたのは、20代半ば囲碁で星目(9子)置いて3目負け。40代後半将棋で女流棋士に飛車落ちで完敗。囲碁のほんの少しの勝ちにするプロの技。将棋での飛車落ちはまだまだと言う完膚なきまでのご指導。共に忘れられない教訓です。橋本長道「奨励会」、2018.6発行。古稀過ぎた今、藤井五冠、羽生九段の指し手に魅了され、将棋の観戦を楽しんでいます。将棋のプロへの道は本当に厳しいものと存じます。藤井五冠は強い上に、指し手に「華」がありますね!
Posted by ブクログ
奨励会と聞いて将棋を思い浮かべる人は、結構な将棋好きの人だろう。
将棋のプロ棋士とは、四段以上の者をいう。奨励会とは、プロ棋士養成所、6級から三段のプロ棋士を目指す者たちが、戦い続ける場である。21歳までに初段、26歳までに四段、すなわちプロ棋士になれない場合には退会という厳しい規定がある。
筆者は、一時期、奨励会に属していたが、プロ棋士にはなれずに退会したという経験を持つ。
自らの奨励会での経験などをベースに、奨励会ばかりではなく、広い意味での将棋界について語った書。
奨励会経験者でないと語れないことも書かれており、読み物として面白い。
Posted by ブクログ
奨励会について、元奨励会の橋本長道が書いた一冊。
これまでの本と比べて客観性があり、かつ当事者でないとわかりえないことが書いてあり、とても参考になった。
もし今後、子供を奨励会に入れたいと思う親にとっては必読の一冊。
Posted by ブクログ
奨励会員のリアルな日常が分かる。棋士になるためにはどんな努力が必要なのか、どの程度の才能を基盤に頑張っているのか。才能とは何か?将棋の勉強法はどうあるべきか?
「井上門下の兄弟弟子の中には、奨励会退会後、まだ一度も井上先生に顔を合わせることができていない者もいる。彼は井上先生に強い恩義を感じているのだが、なんとなく合わせる顔がない。会うことを先送り、先送りして、師匠に顔を見せることが人生の宿題になりつつある。井上先生も彼には愛着を持っており、なんとかしてやりたいと思っているようだが強く踏み込めずにいる。両思いなのにお互いの距離感が分からず、なかなかくっつかないカップルを見ているようでやきもきする。」
勉強法 1日10時間の勉強を3年間続けると1万時間になる。何事も1万時間集中して取り組むと一流になる(マルコム・グラッドウェル)。
将棋の勉強法は、詰将棋、棋譜並べ、実戦、次の一手、将棋ソフトとほぼ確立されて来ている。この勉強法を1万時間すれば一流になる。いろんな部門に当てはまるのでは。
また「天才の一言は凡人の一冊よりも重い」という言葉もまた真実かと思う。だから藤井聡太の活躍はワクワクする。
Posted by ブクログ
努力すれば必ず報われるわけじゃないけど、成功した人はみんな努力してるってやつだなーと。
常に順位付けられる世界に向いてる人、向いてない人も当然いる。
Posted by ブクログ
『覇王の譜』が面白く、著者は元奨励会員とのことで、タイトルだけで奨励会をテーマにした小説かエッセイかなと読んだら子どもを将棋棋士にするか否かが真正面から書かれていた。
将棋指しになりたい有望な子を持つ親にとっては唯一無二の“参考書”だと思う。ニッチ過ぎて他にないということだけど笑
面白かったのは記録を取りたい順番。早指しの人が人気と名前まで出てて笑ってしまった。
江戸時代の盤面と全く同じものが羽生ー渡辺戦で出てきたというのには鳥肌が立った。(現代的な使い方で怖いわけではない、念のため)
『覇王の譜』以前の本なので本人はダメを自認しているんだけど、奨励会員だったというだけで突き抜けたものがあって(この時も指導できるレベル)、大学に落ちたと言っても神戸大卒、小説は賞を取り、やはり凡人とは違うなと。
いや、将棋ファンとそう思いたいだけかもしれませんが。
これからも期待しています。
Posted by ブクログ
元奨励会員で、小説家である著者が、奨励会について書いた本。2018年発刊。
小学生の息子が将棋にハマっているので興味があり手にとってみた。
糸谷先生が奨励会の級位時代は負けるとその場で泣き勝つと鼻歌を歌う人だった(今では将棋界で一二の人格者らしいです)とか、豊島先生は本当に「とよぴー」って呼ばれてるんだなとか、ファン目線でおもしろいエピソードがいくつかあって嬉しかった。
また、元奨励会員として奨励会にいる友人に「若い子に頭下げて教えをこうたほうがいい」とアドバイスしてしまう、という話からは、永瀬先生がだいぶ年下の藤井聡太先生にVSをお願いしたという話を思い出した。やはりあれってとても珍しいことなんですね。
また、私が常々疑問に思っていた「女流棋士は美人が多いのに、棋士は見た目気にしなさすぎな件」についても、この本を読んで納得した。
私のようなライトファンが目にする(テレビに出てる)女流棋士の方々は、美貌や話術などのタレント性で起用されてることが多い…ということのようだ。女流棋士制度は棋士制度とは違い、実力も大きく違うとのこと。
将棋ファン(超ライトファン)としては、現役棋士の話もありつつ、けっこう楽しく読ました。
そして、普段目にするトップ棋士たちって、すごい雲の上の人たちなんだってことが、改めてわかった。
著者は、必ず勝てるだろう相手のことを「カモ」と本作で表現している。
きっとそれは奨励会で一般的に使われている表現なのでしょう。
しかし私達が目にするトップ棋士達からは、そんな下品な言葉を使うとは到底思えない、どんな相手でも礼儀を尽くし、舐めずに、勝っても驕らない人達に見える。どちらが本当の姿なのかは分からないけど、少なくとも将棋盤と相手に向き合っている時の真剣な姿は、本当なのだと私は思う。だからトップ棋士達はすごいのだ。
この本のコンセプトである、プロを目指したい子やその親に向けて、という点では、ご自身の経験を語ることで、厳しい現実を見せてもらったと思います。
他方で、奨励会に入って将棋一筋の人たちしかいないのだろうと思っていたら、パチスロや麻雀にハマるという堕落した大学生みたいな人もいるらしい。私は職業柄アンチギャンブルなので、我が子が奨励会でパチンコスロット覚えてそっちに夢中になったら嫌だなぁ、最悪だな。と思った。
この本の中で、著者はプロ棋士という職業は2018年の時点で子どもに職業としてお勧めできる、と結論づけているものの、この本全体を読む限り、本当にそう思ってるのかな?という疑問を感じました。
藤井聡太さんのような才能を発掘するためには将棋人口の裾野を広げる必要は大いにあるのは分かるし、将棋指導者の視点からは、より幼い子に将棋を初めて欲しいだろう。
だけど、奨励会員ですら、著者のように「プロを目指しきれない人」も多数いるのが現実(プライドから年下の子に教えを請えない、パチンコスロットにハマるなどして、ガムシャラに勉強するわけではない層)なわけで、そういう子が今後も生まれると知っていて、安易にお勧めできるのだろうか。
んー…、だから「プロになれるなら」お勧め、と言ってるのかな。ただそれは元奨励会員でなくてもファンとして棋士達を見てればわかる意見なので、やはり元奨励会員として、プロを目指すプロセス込みでお勧めできるのか、ということを知りたかったな。
この著者は、奨励会、国立大経済学部、金融機関勤務、小説家・・・という経歴だから、この職業の中だったらプロになれるなら棋士がおすすめなのかもしれない。
しかし、週に数回しか対局しなくて良いからコスパ良いということがおすすめ理由であれば、もっと楽になれて、それほど命削らなくても糧を得られる職業はある(たとえば弁護士とか。プロ棋士になるより、格段に楽になれる。)。
因みにこの作者は、もし戻れてもプロ棋士は目指さないらしい。私には、それが答えのような気がする。
この著者には、狭き世界に入る実力はあるが、その先を続けられない、いう特徴があるように思った。
なにごとも、努力し続けられるかどうか。将棋においては特にそれが顕著なのだろう。そう考えると、一度入り込んでしまえばそんなに努力しなくても続けていける業界、仕事って世の中にたくさんあるよなぁ。