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【第24回小説すばる新人賞受賞作】プロ棋士になる夢に破れた瀬尾は、毎日公園に一人でいる金髪碧眼の少女サラに出会う。言葉のやりとりが不自由な彼女に対し、瀬尾は将棋を教え込む。すると、彼女は盤上に映る“景色”を見る能力を開花させ――。棋界に新たな風を送るサラ、将棋に人生を捧げてきたスター・塔子、数多の輝く才能を持つ七海の三人を巡り、厳しくも豊かな勝負の世界を描く青春長編。
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Posted by ブクログ
将棋の事はほとんど知らないけど、すごく胸が熱くなった本だった。 何かに全てをかけて打ち込むことがすごくかっこ良く思える。一方で夢が破れた先の現実にも向かい合う必要がある。この両方が体験できる本だった。
不思議な感じがする小説だった。でもグングン読み進められた。ヒカルの碁を彷彿とさせる内容で、みたくなった。探してみようかな。もっともっと続きが読みたくなる本だった。続編があったらいいな
筆者の橋本長道は、元奨励会員。将棋の奨励会は、プロ棋士を目指す人間の集まり。多くの人間は小学生の頃に入会し、同じ奨励会員との将棋の勝負を繰り返していく。好成績をあげるとルールに沿って昇級・昇段をしていく。好成績をあげる者がいるということは、そうではない者もいるということで、昇級・昇段できない者、更に...続きを読むは降級していく者もいるということだ。 プロ棋士とは、4段以上の者のことを言う。4段になるためには、奨励会での3段リーグを勝ち抜く必要がある。奨励会の3段リーグは、年に2回の開催であり、各回の上位2名、従って年に4名のみがプロ棋士になれる。前期の3段リーグ参加者は36名、その内の上位2名に入ることは、大変なことなのである。3段になっている者は、それまでの奨励会の中の戦いの勝者であり、勝者のみ36名が集まったリーグ戦を勝ち抜くことが如何に大変なことか。 これまで、中学生の内にプロ棋士になったのは、5人しかいない。多くの者は、中学を卒業しても、棋士になる夢を追い続ける。一方で、奨励会には年齢制限がある。26歳時点でプロになれなかった者は、戦いの場から去らなければならない。 筆者の橋本は、そういった過酷な奨励会の経験者。プロ棋士にはなれず、途中で退会している。そういった過酷な経験が、作品の中に織り込まれている。それは、他者の才能に対する嫉妬であったり、自らの才能に対する絶望であったり、そもそも、才能とは何かという問いであったり。作品中、将棋ライターの、「橋元」という人物が登場する。自らの名前、「橋本」を「橋元」に替えて、将棋の世界に登場させるということは、筆者は、まだまだ将棋というものに対して、良かれ悪しかれ、相当の思い入れを持っているということなのだろう。 題名に含まれる、香車は、将棋の駒の一種類。将棋の駒は、駒ごとに動き方が決まっている。香車は、縦にしか進めない。 将棋を指したことのある人間であれば、香車に対して、「柔らかな」という表現を使うことに違和感を感じるだろう。どちらかと言えば、融通の効かない、柔軟さのない駒というイメージを持つはずだ。 筆者は、敢えて「柔らかな香車」という表現を使うことで、主人公のサラが、これまでの将棋の常識を壊す可能性のある存在であることを示したかったということなのだろう。
あまり作品が多いとは言えないジャンル、将棋小説/ 奨励会を抜けられなかったという元天才児たちの憂鬱/ 才能とはなにか、天才とはなにか/ とても面白いし、胸に刺さるものもある/ しかし、個人的にはサラはもう少しコミュニケートできる方が面白いんじゃないかという気がする/ ほとんどファンタジーになってしま...続きを読むう/ 「――プロになったら一緒に暮らして毎日将棋を指して過ごさないか」というくだりがとても良い/ 将棋以外は不器用な二人にそんな素敵な生活があればいいのにと本当に思ってしまう/ しかし、結末は秒速五センチメートルほども悲しい/
将棋関連小説ということでジャケ買い 文庫版解説にあるように柔らかい香車ってどういうこっとゃ?と思った。 将棋の深さはハチワンやライオンのような表現もあるがやはり文字だけの方がより深く感じられる。 大阪へ向かう新幹線より
将棋を題材にした青春小説は初めてですが、一気に読みました。三人の主人公はいずれも女性棋士ですが、彼女らをサポートする棋士崩れの男性陣が、実は影の主人公で、良い味出してます。
小説すばる新人賞受賞作の文庫化。将棋小説です。面白かった。女性陣の才能の争いもよかったけど、男性陣の挫折がせつない。続編も出てるらしいので、文庫化したらたぶん読みます。
主人公・サラを取り巻く人たちの視点で物語がコロコロ切り替わるけど、読みやすく面白かった。 将棋の知識は全くなく、ひたすら黙々と静かな中で指していくイメージしか持っていなかったけど、読みながら色とりどりの鮮やかな世界が広がっていくようだった。サラが盤上に見ている景色を見てみたい。続編も読みたい。
喋らない彼女に喋りかける将棋。 香車の氷が溶け出したとき 彼女の将棋は生まれ変わる。 時間軸や語り手が複数ある(いる)ものの ストーリーが追いやすかった。 それに物語の中心となるサラが語り手にならないのは面白い。 彼女が何を考え、感じているのかは読者に委ねられているのかもしれない。
同じ作者の『覇王の譜』が良かったので期待したが、そこまでの将棋の熱量はなかった。天才女流棋士の物語で主人公は青い目の少女サラだが、他の登場人物にも同じくらいのボリュームが割かれていて、読んでいて的が絞れなかった。塔子や七海の方がより魅力的で、瀬尾にも存在感があり、肝心のサラが霞んでしまったのが残念。...続きを読む作者に将棋経験がありすぎて破天荒なサラのキャラを生かしきれなかったのだろうか。しかしラストの怒涛の対局シーンはさすが元奨励会の作者だけのことはある。ただそこに至るまでがモタモタして粗さが目立つ。この作品がデビュー作で続編もあるようだ。
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