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Posted by ブクログ
筆者の橋本長道は、元奨励会員。将棋の奨励会は、プロ棋士を目指す人間の集まり。多くの人間は小学生の頃に入会し、同じ奨励会員との将棋の勝負を繰り返していく。好成績をあげるとルールに沿って昇級・昇段をしていく。好成績をあげる者がいるということは、そうではない者もいるということで、昇級・昇段できない者、更には降級していく者もいるということだ。
プロ棋士とは、4段以上の者のことを言う。4段になるためには、奨励会での3段リーグを勝ち抜く必要がある。奨励会の3段リーグは、年に2回の開催であり、各回の上位2名、従って年に4名のみがプロ棋士になれる。前期の3段リーグ参加者は36名、その内の上位2名に入ることは、大変なことなのである。3段になっている者は、それまでの奨励会の中の戦いの勝者であり、勝者のみ36名が集まったリーグ戦を勝ち抜くことが如何に大変なことか。
これまで、中学生の内にプロ棋士になったのは、5人しかいない。多くの者は、中学を卒業しても、棋士になる夢を追い続ける。一方で、奨励会には年齢制限がある。26歳時点でプロになれなかった者は、戦いの場から去らなければならない。
筆者の橋本は、そういった過酷な奨励会の経験者。プロ棋士にはなれず、途中で退会している。そういった過酷な経験が、作品の中に織り込まれている。それは、他者の才能に対する嫉妬であったり、自らの才能に対する絶望であったり、そもそも、才能とは何かという問いであったり。作品中、将棋ライターの、「橋元」という人物が登場する。自らの名前、「橋本」を「橋元」に替えて、将棋の世界に登場させるということは、筆者は、まだまだ将棋というものに対して、良かれ悪しかれ、相当の思い入れを持っているということなのだろう。
題名に含まれる、香車は、将棋の駒の一種類。将棋の駒は、駒ごとに動き方が決まっている。香車は、縦にしか進めない。
将棋を指したことのある人間であれば、香車に対して、「柔らかな」という表現を使うことに違和感を感じるだろう。どちらかと言えば、融通の効かない、柔軟さのない駒というイメージを持つはずだ。
筆者は、敢えて「柔らかな香車」という表現を使うことで、主人公のサラが、これまでの将棋の常識を壊す可能性のある存在であることを示したかったということなのだろう。
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