橋本長道のレビュー一覧
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まもなく第84期名人戦7番勝負が始まる。
しばし不調を囁かれ実際に王将戦・棋王戦ではカド番に追い込まれながら、そこから怒涛の5連勝で防衛を果たした名人に、思いがけない結果になった「将棋界の一番長い日」からのプレーオフを制して久々に番勝負に挑む挑戦者。
過去の対戦成績は名人の9勝1敗だが、果たしてどういう戦いになるのか…。
さて、この本、丁度3年前に読んだ「覇王の譜」の続編。前作でライバルとのタイトル戦を制し「蒼天」となった直江と彼の取り巻く人々の、その後の戦いの日々。
前作でも、直江が送る棋士としての(戦いや研究も含む)日常の上に棋士の心理や勝負の機微がよく描かれていたが、今作はそれ以上。とても面白く読んだ。
心理的駆け引きに満ちた剛力との王座戦挑戦者決定戦から始まり、タイトル戦の“魔”によって奈落に突き落とされる北神との王座戦第3局、千々岩が繰り出す複雑な局面に没我の境地で将棋との向き合い方を改めて見出す順位戦9回戦、互いの手を消し殺し合う、まさに順位戦という展開になった蒔野との順位戦最終局…、次々と描かれる直江vs.様々な立場・格の棋士との対局が実戦さながらに面白い。
間に挟まれて描かれる就任式や前夜祭、検分の様子も、勝負飯への言及も、奨励会の試験、例会、ハンデや昇級の仕組みなども、それぞれが興味深い。
攻めっ気が強い本来の棋風と安定した勝ちを得る渋い将棋との間で揺れる江籠や、これまですべての栄冠を勝ち取ってきた振り飛車を捨てて居飛車を指し出した師村を通して、自分の指したい指し方、イコール生きたい生き様だけでは勝負には勝てない、現代将棋ならではの厳しさ難しさが描かれていて、これも一興。
『現代の棋士は毎局自分らしい将棋を指したいという願望と、日々無限に湧き出てくるAI研究を暗記してそれをなぞらなけれな勝てないという相反する立場に立たされている』という文章に、AIとの付き合い方の悩ましさがよく分かる。
AIの活用を不可避としながら、それでもしかし、『土台となる圧倒的棋力がなければ研究を活かせない』と、棋譜を並べ詰将棋を解くという古典的な修行方法も採る、棋士の方々の研究の深さには恐れ入る。
直江が主人公で、その己が何のために将棋指しであるのかという主題を巡った話ではあるのだが、今回のもう一人の主役は振り飛車一辺倒を捨てて戦う師匠の師村の姿。
剛力が選んだ斬り合いの隙を突いたA級順位戦最終局、亡き師匠・三木の衣鉢を継いだ戦い方で北神の追撃を僅かに凌いだ名人戦第6局、その独白で振り飛車採用の理由が明かされる名人戦最終局…、物語の終盤に繰り広げられるギリギリの戦い振りに痺れる。
そこまでにも師村と直江のVSや直江と拓未や江籠との関係を通して、教える者と教えられる者との関係性が描かれていたが、ここに至っては、亡き三木も含めた師弟三代の、つながりの強さとそれそれの人間性と運命の数奇さが浮かび上がり、勝負の行方とも絡んで、とても劇的な終局であった。
『ふと顔を上げると視界の端に弟子がおる。それだけでええんや』
余談ながら、、、将棋以外の違う世界を見るために競馬には素人の直江と江籠が二人して阪神競馬場へ出掛ける場面がある。この作者さん、『あそこは社会と人生の縮図だ』とか『競馬というのは数学や確率ではなく、最早哲学の一種なのだ』とか書いておられて、なんだか嬉し。 -
Posted by ブクログ
盤上で繰り広げられる熱い闘い
ページをめくる手がとまらない
そんじゃそこらの安っぽいスポーツよりも熱くなること間違いなし
棋士にとって棋譜とは人生だ
棋譜からは勝負師としての形や癖を読み取ることができる
棋譜は棋士の命そのものなのである
盤上を生きた証なのだ
棋風は将棋における人間性が表出ると言ってもいい
その棋風を変えてまで勝利のために、タイトルを奪うために将棋と向き合う姿勢に痺れる
そして、読書家にとってのレビューがまさに棋譜、棋風なのである
読書家のみなさん、あなたの生きた証を!人間性を!思う存分に書き綴ってください
( ゚д゚)ハッ!
そしたら、私の生きた証&人間性がテキトーということになってしまう…
ま、いっか
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Posted by ブクログ
熱く、面白かった。
将棋に少しでも知見があれば、一読をお勧めしたい。
若者の生き方や成長。
若手棋士としての姿。求める場所へ到達するための努力・葛藤。心の揺れ動く様の書き方が上手く、のめり込んで読まされてしまう。
実力者と呼ばれる程になっても更に上を目指す生き方。神に沿うのか抗うのか、どうすれば頂上へ近づけるのか。そこに師匠や弟子はどう作用するのか。
もう、様々な人の様々な状況があるが、どれも無駄な事なくとても面白い。
将棋に詳しく無くてもいいです、少しでも知ってるならぜひ読んだほうがいい。
ただ、将棋を全く知らないのであれば読んでも魅力はなかなか伝わらないかもと思いました。 -
Posted by ブクログ
落ち目の将棋棋士の再生への道のり。
最近あまり知らないくせに将棋の話を選ぶ様になってる。3月のライオンで知ってる程度。
はじめ、生意気な拓未がメインとなり直江が支えていくものだと思っていたら直江の再起の話に。
中々将棋用語がついていけずわからない所もあるがそれにしても熱い展開でそれも関係なしに楽しめた。
剛力ははじめは小物感があり嫌な奴だったが棋聖戦から、黒いなりに大物に変貌して印象が良い方へと変わっていった。簡単に仲良くならず当人同士しかわからない関係性が男らしく、いかにも勝負師だ。
最後の一番の終了後、互いの心理描写が細かく出し切った感が迫ってきたが、やはり続編も期待したくなる作品だった。
作者さんはあまり作品を出してないらしいが是非期待したい。
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Posted by ブクログ
最後の対局の場面は手に汗握る…
個人的にはひとにお勧めしたいし、もうちょっと話題になってもいい作品なのでは?とも思う。
展開が読めちゃう…というところはあれど、逆に時々冷静に読めるようになって個人的にはそんなに気にならなかった。
"何者でもなく伸び悩んでいた将棋棋士が覚醒し、何者かに化け、トップへと至る遠い道のりへの第一歩を記した作品"(解説より)
ライバルや師匠、弟子も全部キャラが濃く、それぞれのサイドストーリーもみたいくらい。
また、対局の描写が丁寧だけど読みやすくて、臨場感があった。
日本将棋連盟の政治も…
これはフィクションだけど、いろんな連盟でこんないざこざはあるんだろうなと思ってしまった。
将棋は小学生の時クラブ活動で齧っただけだが、やはり奥深そうで魅力的で。
もう少し詳しくなりたいと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『盤上の向日葵』に続く2冊目の将棋小説。盤上の向日葵が将棋をモチーフにしているが真剣師の生き様を描いているものに対し、こちらは、元奨励会員の作者が描く将棋棋士。
ストーリーとしては、天才といわれた棋士が奨励会同期に敗れたことをきっかけに、一人はタイトルホルダーへ。もう一人は下位で燻る棋士へと。
その彼との繋がりを断ち、少年天才棋士や師匠、序列一位の棋士との研究会などを経ることによって実力を高めていくことに。
終盤のタイトル戦の挑決で主人公を負けさせるところなどは、驚いたが、百折不撓を表しており、主人公が強くなっていくところを描いているのかなと感じた。
元奨励会の先生が描いているだけあって、棋士の先生たちがこのような感情や思考で将棋を指しているのか?と想像できてとっても臨場感が出ており良かった。 -
購入済み
素晴らしい
「サラの柔らかな香車」は読みにくい堅苦しい文章だったが、この小説は文体も、ストーリーも良く、最後まで一気に読みました。関西の描写、師匠、弟子、ライバルも目に浮かんで来るようです。最後の息詰まる展開はご自身経験が上手く昇華されたものだと思います。橋本長道先生の今後の作品が楽しみです。