枯野瑛のレビュー一覧
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57Pで出掛けたエマが、夕方になった60Pで、『クァシ・ブレイブじゃないんですか?』って会話に参加してるはずなのに、その後72Pで『ただいまぁ』と帰ってくる。
『遅くなりました。ふふ、おみやげありますよ。』と言ってるあたり、一度帰ってきてもう一度出掛けたわけではなく、60Pにエマが居た事が間違いか。
「戦場の希望となる」というタレントを持つパーチェムがモウルネンを模して造られた可能性に言及されてる。
確かに、人々の希望だけ束ねて力にするのはモウルネンの改良版と言える機能なのか。
プロディトルの「役に立たない」の理由が判明。
銘の意味は「造反者」。
「大事な時に仕事をしない」という特筆能力が常時発動とは。誰がなぜ作ったw
309P、妖精倉庫が76番浮遊島にあるって書いてある。
68番では?
313Pには68番と書いてある。
次巻で完結! -
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最終巻なんだけど、最終巻らしくない。らしくないんだけど、終わりに近づく世界の終わりをどのように迎えるか、という点を突き詰めて描いてきた本作のフィナーレを飾るにはある意味相応しいラストだったのではないかと思えてしまう
結界世界での探索。当初の目的は核として囚われた神様達を救い出す。計算が崩れてからの目的は世界の核となった少年を倒す。そうして結界世界と少年を終わらせることでしか、終わりに近づく浮遊大陸群を救うことは出来ない。
これはある意味、本作において幾度も繰り返されてきた流れだね。一方が生き残るために他方を終わらせないといけない
かつて星神に挑んだ人間達や、妖精たちの為に敵となったヴィレムやフェオドールと同じ構図。対立する敵を倒すことでしか生きる道を選び取れない
本作はそういったジレンマとずっと向き合い続けてきた
その中で新たな息吹となったのが新世代とも呼べるアルミタとユーディアだね
彼女たちは先輩達のお陰で、生きる為に自分の意志を無視して戦わなければならないという立場ではなかった。戦うことも戦わないことも自由に選べる立場になった。その状態で決戦に参加した
そうした新たな意識を持つ彼女らが居なければこの決戦はまた別の模様を見せることになっただろうね
また、意外な役割を見せたのがヨーズア
本物の彼は絶望により他を害する存在となってしまったのだけど、この結界世界では絶望していたが為に同じように絶望していたモーントシャインに新たな道を示すことが出来た
そしてモーントシャインが知った新たな道こそ、他を模倣し侵食する事しか出来ない結界世界に新たな意味を教える事になるわけだね
その流れは他にどうしようもない筈だった状況の中に一つの光明を齎すことになるんだよね。全知となったモーントシャインが知らない者にこそ、救いが有る
でも、その光明すらやはり他にどうしようもない、自分達が生き残るために他を終わらせなければならないという構図からは脱していない。その象徴的シーンが翠釘侯との戦闘シーン
でも新たな世代であるユーディアは戦場の希望になりかけたアルミタをアルミタのご飯を食べたいなんて理由で邪魔してしまう。これは今までのどんな勇者たちも妖精兵たちもしてこなかった行為
でも、犠牲を回避するかのようなこの行動が積もり積もって再び新たな道へ繋がっていくんだよね
いや、それにしてもアルミタに触発されたティアットの行動には驚かされたけども
アレって、目標として考えた時に作戦失敗と表現されても仕方ない事態だよね?もっと納得できる道を、というお題目の下にリスキーな道を採ったものだ……
だからこそ、そんな子供たちの無茶を受け止めるようにヴィレムが控えていたシーンには感動しそうになったね
ずっと前に終わりを迎えた筈だったヴィレム、世界の為には終わらないといけないモーントシャイン。この二人が終わらなければ世界が終わってしまう。なら、そもそも世界から出ていけば良い。いや、発想としては納得できるけどそれを実行するって本当に凄い人達だ(笑)
でも、こうして自分達が生きる為に他を滅ぼすという環から脱してみせた流れは秀逸
そうして残された者達が立つのは、近々終わる世界ではなくいずれ終わる世界。いつの日か終わってしまう点はやっぱり変わらない。島はいずれ落ちるし、地上では変わらず<獣>が跋扈している
でも、終わるまでに幾つもの選択ができる。悩むことが出来る。それはかつての先輩達がどうしても出来なかったこと
このエピソードの中で妖精たちにとって大切な家がある68番浮遊島が落ちたのだけど、それが終わりとして描かれていない点は印象的
長らく妖精たちにとって帰る場所として機能していた妖精倉庫。それが無くなってしまえば帰る場所が無くなってしまったと受け取られても可怪しくない
けれど、あの賑やかで幼い妖精たちはその状況を悲観せず、むしろ新しい土地にはしゃぎ回り、更には保護者であるナイグラートの負担を軽減しようとしている
それはきっと秘匿、保護される立場であった妖精たちが成長した瞬間と呼べるのだろうね
遠い世界へ旅立ったモーントシャインは浮遊大陸群に居るエルクに「いつか、きっと、また会おう」と言葉を残した
浮遊大陸群に居るリィエルは高い空へ旅立った誰かへ向けて「まってろよー!」と叫んだ
モーントシャインやヴィレム達の旅の目的を考えたら再び会える可能性なんて万に一つも無いかもしれない。でも、絶対に無いとは言い切れない
それこそ、周囲に多大な迷惑をかけつつも勝手に死んで、だというのに奇跡みたいな偶然を積み重ねて目を覚ました彼のように再び会えるかもしれない
いや、本当に彼の復活には驚かされた。あの別れ方ならいずれ復活するだろうとは予想していたけど、このように綺麗で後腐れなくて、そしてティアットとマルゴから逃げられなくなった彼はようやく安寧の場所を手に入れられたということなのだろうね
また、それと同じように本作にも再び会えないものかと夢想してしまう。一応は『異伝』があるから、そこでこの物語とは再会できる筈なのだけれど -
Posted by ブクログ
最終決戦場とも言える2番浮遊島に突入する運びとなった妖精兵達。そこではどのような絶望的な光景を目にすることになるのかと思いきや、予想とかなり違った光景が展開されているね
まさか、このタイミングで滅びる直前の地上が登場するとは思わなかった……
ただ、直前は直前でも<最後の獣>と星神による拮抗の結果、奇妙な世界を構成するに至ったのだけど
結界の核を探し、囚われた者を救出する作戦。そう考えれば、妖精兵らにとって人間の黄昏時なんて何の関係もないのだけれど、一方で囚われた者達にとっては抜け出すことが容易でない世界でもある
いわば、ティアット達は虜囚となった彼らに、既に滅んだ世界ではなく、もうすぐ滅びそうな世界を選択させる必要に迫られたエピソードとなるわけだね
中でもアルミタの活躍には眼を見張るものが有るね
彼女は戦う必要に迫られたわけでも、積極的に戦いたい理由があったわけでもなかった。
非常に控えめな対抗心によって決戦に赴くことになった彼女に求められたのは過酷な戦場での戦い。いや、アルミタが降り立った戦場は本当に厳しいものだったと思うよ
戦線はいつ崩壊しても可怪しくなくて、言葉は通じなくて、いつの間にか自分が皆の支えになっていて。その状況でドラゴンと戦うなんて、とてもじゃないが初陣として用意されて良いものじゃない
最終的には先輩の助力を得ての解決となったわけだけど、それまでアルミタは必死に戦いきった。あの戦場を自分にしか出来ない、自分がやらなくちゃと決意して戦えたならそれだけで先輩たちに並べる程の偉業を成し得たと言えるのじゃなかろうか
それとは別に謎の動きをするのがパニバル
結界世界の核を壊すか移動させるかしなければ、浮遊大陸群は滅びる。というか、急がなければ少なからぬ被害が出ることは必定。だというのに、妖精兵としての任務に背くかのような動きをするパニバル
彼女の動きは嘗ての彼のように誰も想像しなかった結果を導き出すことになるのか、それともパニバル以外の誰かが現状に蹴りをつけることになるのか
次巻で本作が完結すると言うけれど、どのような結末が描かれるか全く予想がつかないね
そういや、作中にてヴィレムが準勇者だった頃に持っていた聖剣の効能が示されたのだけど、アレは皮肉な程にヴィレムの本質にとことん合ってるなぁ(笑)
ヴィレムはそもそもリーリァが正規勇者に準じることに納得できず、時には彼女の役柄を奪おうとしたのだけど、それが叶う事はなく終わった。つまり大事な時に仕事ができなかった
ヴィレムとしては認めがたい、けれどヴィレムの本質を突いているかのような聖剣を相棒にせざるを得なかったとはちょっとおもしろい
そして、それを託されたのがアルミタの相棒となるユーディアである点は今後何かしらの意味を持ってくるのかな? -
Posted by ブクログ
ネタバレ妖精兵として戦場に行くか否か。アルミタの迷い。ユーディアの決意。
207ページ、ユーディアのモノローグにある「自分とユーディア」って部分は「自分とアルミタ」の間違いだなー。
量産品以外でヴィレムが使っていたという数少ないカリヨン、「プロディトル」登場。
ヴィレムが使えるので当然格は低く、大したタレントはないらしいけど、ボロクソに言い過ぎじゃない?
頑丈さ以外に褒める所無いっぽい。
元のスペックが低いのに余分なタレントが付いて、さらに量産品と違って現場で改造もできないから駄作って事か。
さてどんな能力なのか。
イグナレオみたいに、ここぞって時に意外な活躍しそう。 -
Posted by ブクログ
最後の最後まで〈想い〉が美しく、だからこそ痛かった話でした。終わる世界と残酷な運命の渦の中で、それでも人を想い続けた少女たちと青年の物語だったと思います。
絶望的な展開だった前巻から物語前半は、比較的穏やかな小康状態が続く。ヴィレムやネフレンといった地上に残された組や、ナイグラートやラーントルク、そして新たに〈兵器〉としての素質が芽生え始めたラキシュやティアットたちのその後が描かれます。
一方で不穏な雰囲気もちらほら。世界全体がこれまでよりも平穏な雰囲気が出てきたことによる、妖精倉庫の解体論や、妖精不要論。そして国同士の軋轢。
「獣」という共通の敵がいたからこそ守られていた、平和が少しずつ乱れていきそして……
権力者や、強国による闘争。このあたりのきな臭さというのは、悔しいけどよくできている。登場人物それぞれの想いの美しさや切なさ、そして一生懸命さがある一方で、こういう強国や権力者の論理が、それを振り回すのを見ているのは、なかなか辛いものがある。
妖精たちの母親的存在であるナイグラート。宿命により、多感な少女の時期に、兵器として死地に向かう妖精たちを想い。だからこそ、妖精たちを兵器としてしか扱わない国や軍部に対し怒りをぶつける。この辺の描写も切ない。
そして物語のクライマックス。ヴィレムが仕掛けたある思惑と、それに応える妖精たちの決戦。
『本気で強く望む未来を持ちながら、その未来が決して手に入らないのだと受け入れた者だけが、この剣を手に、別の未来に手を伸ばすことができるのだ』
変な日本語になるけど三巻のクトリであったり、この巻であったり、この剣の設定が心憎く、そして本当に憎かった。クトリの常識を超えた力の発現であったり、大切な人を守るため、勇者を目指していたヴィレムが最後の最後にたどり着いた皮肉な、どうしようもない最適解であったり。最後まで優しく美しく、そして残酷な決意と悟りの物語だったのだなあと思います。
元々アニメきっかけで手に取った作品で、アニメで描かれていたのは三巻まで。そしてそのアニメ、および三巻の盛り上がりというか、感情のふり幅がとにかく大きかったので、その後の四・五巻はどうなるか、と思ったのですが、四・五を通して、ある意味エピローグというか、
一~三巻までがクトリとヴィレムのW主人公で、四・五がヴィレムの物語の終着点、という印象でした。この世界の謎の一端に触れつつ、この作品らしい、キレイなまとまり方だったと思います。
アニメ後の展開だけ追えればいいかな、と軽く考えていましたが、意味深なラストシーンはさておいても、普通に第二部以降の展開も気になってきました。また追いかけるシリーズが増える…… -
Posted by ブクログ
奮闘によって齎された穏やかな日々や最終決戦前の静けさが混ざり合う不思議な構成になっている巻
この巻は主に2つの短編を軸にして構成されているね。
猶予が生まれたことによって起きた帝国内の内紛に関するエピソードと鏃の提供を要請された妖精倉庫のざわめきを描いたエピソード
貴翼帝国が舞台となる短編はこれまでのお話で存在した静かなる絶望といったものは存在しないけれど、代わりにティアットが見聞きしてきたあれやこれやに似た存在や想いが形を変えて登場しているのは面白いね
その境遇故に死を受け入れる他なかった妖精達に似た覚悟を抱いていたジオレッタ、フェオドールのように憎しみを一身に背負ったヴェーラ、そしてそんな二人の陰謀を邪魔してやると口にしたベノウ
これらはティアットが体験してきたどうしようもない現実をなぞるようでありつつも、ティアットとフェオドール程は絶望的な境遇でないためにどうにかする余地が生じた境遇であったのは印象的
他人を救っておきながら自分を救わなかったフェオドールとそれに巻き込まれたティアットの関係性。けれど、此処で描かれたベノウとジオレッタの関係性はこの作品にはまだハッピーエンドを迎えられる余地があるのだと示唆しているようで小さな楽しみを味わえる内容だったな
そうした話が有りつつ、メインとなるのは妖精倉庫が舞台となる短編だね
8巻ラストの台詞からどれだけ絶望的な展開が描かれるかと思いきや、意外とほんわかした展開に。まさしく猶予期間と言った所か
これまでの妖精達に戦わないという選択肢はなかった。終わりかけた世界のため、幼い後輩たちのため、戦いたくないなんて思う瞬間すら許されなかった
それが今のアルミタやユーディア、更に下の妖精達の日常を形作り、穏やかな日々を生み出した
そういった意味では鏃の提供を要請されたとは言え、無理して戦闘経験のない彼女らが連いて行く必要はない。
だから、この短編においてアルミタとユーディアに訪れたのは「自分達はどうしたい?」という単純で難しい問い掛け
思わず、このような世代が登場するようになったのかと感慨深い気持ちになってしまう
戦闘に参加する必要はないし、参加は自分たちの意思で決められる。こんなのクトリ世代やティアット世代には無かったもの
これはいわば先輩たちが作り上げた新しい環境であり、その第一世代といえるアルミタとユーディアが自分の意志で世界を終わらせないための戦いに赴くことになったというのは非常に印象的な短編だった
そういや、ヴィレムは目出度く『生きていると勘違いした死体』から『動く死体』にチェンジしたわけだけど、これってもしかして別の意味で不老不死のような状態なのか?
という事は既に存在が妖精から限り無く離れてしまったネフレンの傍にずっと居てやれるということなんだろうか…… -
購入済み
大きな話が終わって次ぎ
へ向かう途中な2編の言ってみれば挿話、でいいのかな?深刻さがない分、楽しく読めました。基本的に救いのない話だと思うので・・・最後の獣ってのがあんまり悲劇にならないといいなあ。
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Posted by ブクログ
1巻のレビューを書いてから約1年半が経ち、ようやくこの2巻のレビュー。そして相変わらずのタイトルとの落差……。
アニメ版を観ているので、話の流れは大体分かってはいるものの、それでも切ない気持ちになります。
地上世界が「獣」と呼ばれる謎の生物に支配されたため、空中に浮かぶ浮遊都市に逃げた生き残った人々。
しかし獣は時折その浮遊都市近くにも姿を現し、彼らを倒せる武器を使えるのは「妖精族」である一部の少女たちだけ、という世界観のファンタジー。
獣との戦いのため死ぬ覚悟を決めつつあったクトリという少女。そんな少女が出会ったのは、人間種族として唯一の生き残りとされるヴィレムという青年でした。そしてクトリは徐々にヴィレムに惹かれていくものの……
戦いのため自分の命がどうなるか分からない。だからこそクトリの恋愛感情は、どこまでも真っ直ぐに描かれます。
「遠回しなやり方はしない」そう語るクトリの心情は本当に意地らしいな、と思う反面、その裏には、明日がどうなるか分からない、そうした悲壮な考えがあるからこその言葉なのだと思うと、また切なくもあり……
そしてヴィレムの想いもまた切ない。かつては地上で戦いつつも、今は少女たちに戦い方を教えるくらいしかできず、戦いに向かう彼女たちをただ待つことしかできない。そうした心の揺れが、しっかりと描かれます。
そして妖精たちを待つのは、戦いの過酷さだけではありません。この巻になって新たに明かされる妖精たちの真実は、戦いの結果うんぬんを超えた残酷なものでもありました。
クトリが脈絡のないイメージに囚われていく描写は、読んでいるこちらも不安になるような不気味さと、戻れないところに進み始めている、という予感を抱かせます。
人類が(ほぼ)滅亡し、妖精やゴブリン、トロール、あるいは獣人といった種族が暮らすという世界観なのですが、彼らの文化や政治といったものが、正義のありかたといった深遠なものを浮かび上がらせているのも、また好印象。
大筋のストーリーは悲恋ものなのですが、世界観はタイトルに合わず(?)きっちり練られている印象なので、細かいエピソードもしっかりと読ませます。
最近のラノベレーベルのファンタジーシリーズには珍しい、しっとりと展開する作品。この後の展開も既に知っているのですが、それでもやはり読み込んでしまいます。 -
ネタバレ 購入済み
ひとまず完結?
相変わらず通して読まないと理解できない(通して読んでもハッキリしないところがある)作品ですが前作のキャラがどうなったかも含めてある程度区切りをつけてくれたのは良かったと思います。ただ前作『すかすか』のヴィレム帰還エンドに繋がっていないのとあとがきからまだまだ続くのかなと。
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Posted by ブクログ
正規勇者リーリァが主役の異伝。
今刊行されている「すかもか」では人間が居た500年前の時代に関係する人が居ないため、自然とリーリァや勇者関係の話が展開されなくなったんだよね。それを考えるとこの時代が描かれるのはかなり久しぶりか
この異伝で描かれるリーリァはまだ13歳。「すかすか」で描かれた頃より少し幼い……筈だけど、既に正規勇者として求められる在り方は完成されている印象。
むしろ同時に登場しているヴィレムの幼さの方が目立ってしまう
こういう書き方をしてしまうとリーリァが規格外に思えるけど、そもそも作中での各種描写がリーリァが持つ異端とも言える在り方をこれでもかと強調しているようにも思える
作中で言及されているように正規勇者って普通の人間の枠で捉えることがそもそも間違っているんだろうな。それは「人間としての努力をやりすぎると、せっかく『人間離れしてる部分が薄れてくる』とのセリフに表れている
今回登場するリーリァは不調のまま活動している。身体に約4万7千人を殺す呪詛を抱え、聖剣セニオリスも汚されている。そういった前提があれば普通は活動に制限が付きそうなものだけど、リーリァはそんな事お構いなしに正規勇者として求められる仕事をする
普通とか当然とか関係なしに救世の英雄として巨悪を討つ
どこまでも規格外な存在
ただ、そんな規格外なリーリァにも苦手なことが有るというのは面白い。まあ、苦手というか求められた役割ではないと言うか
人類の危機とか国の存亡などの事態には滅法に強い。その代わりに誰か一人や二人だけ守るみたいな行為は苦手とする。大勢を救うことは出来ても本当に守りたい人だけは守れない
それはとても悲劇的な在り方だけど、その在り方が正規勇者としてのリーリァを支えているというのは何とも皮肉なこと
でも、それはリーリァだけで事態に対処しようとした場合の話で、今回のようにシリルが居ればリーリァの足りない部分を補ってくれるし、ヴィレムだってリーリァが救えなかった人を救うことが出来る。
特に何度もリーリァが救えなかった少数を救ってきたヴィレムという存在はリーリァにとって、とても特別な存在であるというのも見えてくる。最終目標としてリーリァを救うことすらヴィレムは考えているし
ただ、それが逆にリーリァが正規勇者を辞められない理由にもなってしまうのは何とも言えなくなるけど
本作ではリーリァの物語の他に初代正規勇者と聖剣セニオリスの曰くについても描かれている
望んだものが手に入らず、守りたいとものを守れずそれでも前に進み続ける宿命を持つ勇者。そんな勇者にとって何も望まなければ傍に要てくれる存在というのはどれだけ有り難い存在だったのだろう。
そしてその身を使って尚勇者と共に歩むと決めた行為がどれだけ尊かったことか
このセニオリスが後々に様々な勇者たちと共に有り続けたことを考えると、これからはセニオリスの描写を読む時はまた違った心境で読むことになりそうだ
そういえば作者も後書きで触れてるけど、まだまだ500年前の時代について描かれてないことって幾らでもあるんだよね。ただ、先にも述べたけど「すかもか」ではこの時代に関係する人が居ないものだから本編中で描かれる可能性はほぼ無いわけで……
既に終わってしまった時代の話だから、本編を進める上では描く必要が無いのだろうけど、どうにも「一体何が有ったのか」という部分がどうにも気になってしまうことが多すぎますよ…… -
Posted by ブクログ
前巻でフェオドールのしたことはコリナディルーチェで起きていた問題を解決し、妖精たちの未来を開くものだと認識していたけど、ここまでのものとは……
まさか彼があれほどまでに緻密な根回しをしているとは思わなかったよ…。そうか、フェオドールは完膚なきまでにティアット達の邪魔をしてしまったんだなぁ
ただ、一方でそれは自分の死をトリガーとして計画したものであり、計画が完遂されればティアットが望んだ「フェオドールの邪魔」は叶うことが無くなるわけで。
やはりティアットは、ティアットだけはフェオドールのしたことを怒る権利があるように思うな
この巻で舞台はコリナディルーチェから38番浮遊島に移り、表紙になっているパニバルがメインとなる
パニバルって4人組の中では前シリーズの時点からちょっと子供らしからぬ言動を繰り返し、本シリーズにおいても達観した目で他の事物を見ていたキャラクターであるように思えたのだけど、この巻を読んで少し印象が変わった気がする。パニバルの本質はどちらかというと、感情の起伏が少ないことにより自己理解が進まず他者にばかり目を向けてしまった結果達観しているように見えるキャラクターなのかな?
だから、ちゃんと自分の感情に目を向ければ違う面が見えてくる。フェオドールの喪失を落ち着いて受け止めているふりをして実際はかなりのダメージが有ったのでは?と推察できるシーンも有ったし、自分の命を惜しむシーンも有った
ただ、一方でその曖昧な達観さが光明を齎すことも有る。クロワイヤンスの中で起こした悪戯心があのような結果を呼ぶとはかなり予想外。
獣ってああいう方法でも倒せるのか…?
この巻において2つの集団意思が対比となっているような構成はかなり好き
悪が倒され平和となったコリナディルーチェに対して、ライエルは今にも悪に押しつぶされかねない悪夢のような状況。だからか、黄金妖精に対する群衆の姿勢も違ってコリナディルーチェでは妖精を英雄と扱い、ライエルでは敵意を向けられる
モウルネンは集団の意志を合わせた事で目的が発生するのに対し、クロワイヤンスは集団の意志を纏め上げることを目的とした存在
特に群衆の意志の分かれ方は印象的。どちらも公が発表した情報を単純に受け取っている。受け取った上で感じ方がまっぷたつに分かれている。それは環境によるものが大きいのかな。そしてそれが一番判りやすく描かれていたのがコードB。
彼は受け取った情報を自分に都合よく解釈しそれ以外の考えを持とうとしない。結局彼は暴走に暴走を重ねた上で都合のいい夢を見て終わる。
また、エルピス残党派との戦いの中でアイセアに訪れた選択はとても衝撃的で残酷
軍や戦力を指揮する立場になり獣以外も敵としなければならない状況があればいずれは訪れる機会。
一方でエルバとナサニアのときとは違う残酷さはこの場面においては敵対勢力の皆殺しがどうあっても正しい選択肢である点。目の前の獣を退治するにも、自分たちが生き残るためにもコロンに皆殺しを命じなければならない
以前、それを理由として親友と道を分かつことになった過去を持つアイセアにとってはどうあっても辛い選択肢。だけど、今のアイセアの立場はそれを選ぶしか無くて…
ここでコロンがアイセアの想いを越えて、誰も殺さずに済むかもしれない道を見つけ出したのは本当に素晴らしいシーン。そりゃアイセアだって柄にもなく泣いてしまうというものだよ!
これまで怪しさ抜群で裏で全ての事件の黒幕として存在していたような雰囲気すらあったオデット
彼女の思惑はフェオドールより幾らか進んだものであろうことは以前から示唆されていたが、その思惑が少し見えてきたね
こうして見ると、浮遊大陸群の危機を真っ先に知ってしまった彼女が考えたことってとても単純なものだったのか。こういう部分を見ると何だかんだあのフェオドールの姉なのだなと思えてしまう。
ただ、フェオドールが妖精への執着を優先したのに対し、オデットは浮遊大陸群の未来を考えた
その違いは黄金妖精たちに何を齎すことになるのかな?
ティアットが纏め上げた希望の力、オデットによって知らされた新たな形の絶望
そんなさなかで遂に正体を表した”おばけ”
これらがどのように絡み合って物語が展開されていくのか全く想像できないね -
Posted by ブクログ
巻が進むごとに登場人物たちの境遇が悲惨なものになっていく本作。この第5巻もその流れは変わらず
唯一の清涼剤は笑顔で壁を引き開いたお姉さんくらいなもんだよ!……言葉にしてみると意味が判らないね。何だろう、壁を引き開くって……
この巻で登場人物たちを翻弄するのは遺跡兵装モウルネン。前の巻でちらっと名前が出ていたけど、結局正体は判らないまま。判らないからそれを巡って様々な謀略が張り巡らされる
それだけではなく、謀略の周りではそれに振り回される人々や関わる者達の想いも渦巻いていく
特にフェオドールと行動を共にしても正体を明かさないマルゴがあまりに不憫で……
お互いが大切だから生きていたと知って言葉に出来ないほど嬉しいのだけど、大切な相手だからこそあの頃とあまりに変わり血腥い事に手を染め続けている自分の姿を見せたくないと互いに思ってしまうフェオドールとマルゴ。
何年も離れていたのに同じようなことを考えている二人はとても似ている。似ているから互いが何故正体に言及しないかも判ってしまう。判ってしまったら相手の意志を尊重するため尚更言及できなくなる。
そういった描写からは二人が今も強い絆を持っているのだろうと判るのだけど、だからといって正体を明かさずに接するマルゴの様子は見ているこちらとしてはあまりにもどかしいばかり
また、ラキシュの状態も厳しいものに
前巻で本来の自分を思い出してしまった彼女はそれでも尚、フェオドールの傍に居ようとする。いずれ消えてしまうつもりでも、その瞬間までは彼の隣で幸せを享受したいと思っていた。けれど、この巻で明かされた事実によってそれも難しくなってしまう
今のフェオドールを最も理解してくれるのがラキシュであり、同時に今のラキシュを最も理解できるのはフェオドールだった
相手の思惑を理解できて、その上で自分も相手も幸せにしたいと思う。でも近くにいればフェオドールの負担となって命すら削ってしまう。ならラキシュに取れる方法は一つしか無いわけで
どんどん悲惨さを増すフェオドールの近くからまたもや彼を理解してくれる人が去ってしまったのはあまりにも寂しい事態だし、ラキシュにとっても辛いこと
ラキシュに付いていくことを選んだマルゴはその辛さをどこまで埋めてやれるのかな?そしてマルゴ自身も癒されることは有るのだろうか?
また、謀略とは別ベクトルで今回明かされるのが大賢者の行方。
前シリーズで重要なポジションを締めていた彼が新シリーズになって音沙汰無くなって、ネフレンの行方も判らなくなってと少しもどかしい気持ちが有ったんだけど、明かされた事情が割ととんでもない……
大賢者、星神、地神が揃って居なくなり、浮遊大陸群を守る者が居なくなったという衝撃的な事実。
以前、フェオドールは自分たちが奇跡の上に守られていると気付いていない人達を判らせるために大陸群を落とすんだと息巻いていた。しかし、その実自分自身も守られていると理解しきれていなかった。
ここに来て、更にフェオドールがまだまだ判っていなかったことが判明してしまう。
フェオドールが何をしようと2年程度で沈むとされる大陸群。この事実を知った時にフェオドールがどのような覚悟を固めなければならないかが気になってしまう
また、この事実を知って尚、謀略を張り巡らせているオデッドの真意も気になるね
話を聞く分には彼女ってフェオドールよりも堕鬼種らしい堕鬼種なんだけど、全く感情がないわけじゃなくて。その点はフェオドールと似ていて、嘘はついて周囲は騙していても自分が思うほど周囲は騙されてくれないという状況。それでも尚、何か恐ろしいことを隠しているから彼女も恐ろしい存在になるんだけど
この巻では様々な謎が明かされたけど、全てではない。特に過去の闇に潜んだままのモウルネンの謎の全容は見えてこない
また、主要人物達の内側に潜んだ存在が何故そのように潜んでいるのかという部分も見えてこないまま
次巻で明かされるだろうそれらが齎すものが果たして希望となるのか、絶望となるのか恐ろしいばかり -
Posted by ブクログ
相手を救おうとする考え方故に別れて行動することになったフェオドールとティアット。だからこの巻で二人が会話するシーンなんてごく僅かしか無い。それでも互いの理念を理解し合い、尊重した上で邪魔をしようとする関係性はやはり強烈
また、ラストの会話シーンだけでもフェオドールとティアットの間を遮るものなど無いと感じてしまいそうになる
まあ、それにしたって何してんの?と言いたくなる行動をフェオドールはやらかしてるけど。あの場面ですぐに反発されないということはそれだけの感情がそこにあるということなんだけど、人の嘘を見抜くのが得意な筈のフェオドールがその嘘を見抜けないのはちょっと面白可笑しい
この巻ではどちらかというと黄金妖精であるティアットよりもただの堕鬼種でしか無いはずのフェオドールの方がどんどん危うい事態に陥っていく
今のフェオドールは周囲を騙して自分を騙してそして歪な作戦を掲げながら、その裏に隠された信念を成し遂げようとしている。その中での最大の犠牲者であり同時に協力者となっているのが人格が崩壊したラキシュ
今のラキシュを支えているものはフェオドールによって植え付けられた「友人としての情」であり、それをラキシュが示せば示すほどフェオドールに罪の意識を自覚させる。けど、同時にその「友人としての情」が今のラキシュを健全に保つ方法でも有って。
フェオドールにとっては何とも辛い展開だけど、当のラキシュがその呪術に因る錯覚を自覚した上でそれでも尚、フェオドールに付いていくつもりで居ることは少し意外だったな
植え付けられた偽物の感情であっても、全ての記憶を無くした今のラキシュにとっては拠り所となる感情なのか。……ラキシュのそんな感覚がちっともフェオドールに届いて無さそうなのは寂しいところだけど
ただ、それにしたってフェオドールとラキシュの関係性はいい感じだね。フェオドールとティアットも終わりかけた世界のヒーローとヒロインとして良い関係性であるけれど、フェオドールとラキシュは目的と行動を同じくするツーカーの仲であるように見える
そして、この巻でフェオドールは黄金妖精全体のために行動しているけど、目下の目標としてまずはラキシュを救うつもりで居る。あの滅多に本心を語ろうとしない、けど、ダダ漏れ気味なフェオドールがマゴメダリに向かってラキシュを助けるためにあそこまで本心を明らかにするとは思わなかったな
あれ、本人は詐術を織り交ぜたとかいつもの調子で思ってそうだけど、端から見る分には全力全開の本音の言葉だよね
それ以上に本心を明かした相手が同じ堕鬼種である姉であったのは印象的な展開
どうやったって嘘と嘘でしか会話できないような姉弟であり、あの姉を出し抜くためには姉以上の嘘を吐かなければならない。でも、フェオドールはあの場面で嘘を吐かなかった
姉が珍しくフェオドールの命を案じるかのような助言をした行為に応じるかのように、またフェオドールも嘘偽りのない本音と理想を語る。その理想はあまりにも無茶苦茶で支離滅裂で、でも大切な誰かを助けたいという想いに溢れていて。まあ、要するに彼を主人公たらしめる充分過ぎる行動理由だった
黄金妖精を兵器として扱う者であるなら護翼軍、貴翼帝国、そして助ける対象の黄金妖精だろうと全て自分の敵だと宣言したフェオドール。
彼がここからどれほどの大業をなせるのか、ちょっと期待したくなってきた
フェオドールに混じり合ったヴィレムや獣の思念。これがフェオドールにどのような影響を齎すことになるのかな?何やら思念の方は矢鱈と物騒なことを言っているけれど