枯野瑛のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「どうしようもないハッピーエンド」
『終末なにしてますか?~』で描かれた、一人の少女の物語を言葉で表そうとすると、そんな言葉になるような気がします。
絶望的な戦力差、世界が生き延びるための犠牲とならざるを得なかった少女。そして奪われていく大切な記憶と、失われていく自分。
妖精兵の少女クトリと、その少女を見守るヴィレムを中心にした物語。お互いがそれぞれに失った怖さや、失ってしまうかもしれない、という怖さ。
そして失っていく怖さを知っているからこそ、二人の想いというのは、迂遠な逃げ道を排し描かれていったように思います。
そしてそうした逃げ道のなさというのは、終末の世界においてはあまりにも美 -
ネタバレ
未来に託す終末物語
壮大な物語でした。三巻でクトリが亡くなり、四巻でヴィレムがケモノとなり、最終巻はどの様な結末になるのか気になって仕方ありませんでした。ここまで読んで、ようやくこの儚くも美しい物語の本質が分かった気がします。終わりかけの世界で、終わりかけの命で、終わりかかけの時間の中で、リーリァやクトリ、ヴィレムは、好きな人に恋をして、愛情を与え、戦い、自らの幸せとして納得する形で終末を迎えていました。そして、好きな人達に未来を託していきました。何より、そこに至るまでの物語の構成が本当に素晴らしかったです。心温まる人間ドラマ、徐々に明らかになる真実、終わりへと向かう世界や日常、そして最期の舞台等、巻数は少ない中
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新たな終末物語
アニメは3巻までで、ここからが真なる物語の始まりです。いよいよ佳境に入ります。ケモノの真実、ヴィレムの過去が明らかになります。過去の話は物語を深掘りするには最適ですが、停滞します。しかし、本作では物語を停滞せず、先の展開を設け、次巻に繋げています。巻を追うごとに精錬されていく物語の構成は見事です。そして、何度も驚きと悲しみと感動を与えてくれた巻でした。一つの巻でこれほど密度の濃い展開は中々無いと思います。特に、ケモノの正体を知った時には衝撃を受けました。どうやら、叶わぬ想いというのが、この作品の肝要なのでしょう。思わぬ形で終末を迎えましたが、この後どうなるのでしょうか。非常にこの先の展開が気に
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美しくも儚い物語
この巻はクトリとヴィレムの美しくも儚い恋物語がメインです。妖精兵器とされながらも普通の年頃の少女として、恋をして精一杯生き、大切な人を想う美しさが物語にありました。残された時間を想い人のために使い、ささやかながらも幸せを感じて散っていく。切ない話でありますが、その少女はきっと幸せだったのでしょう。人の幸せとは何だろうかと考えさせる作品でした。寂しい気持ちとどこか満たされるような、究極の恋物語を見た気がします。
ここまでがアニメの内容で、良くも悪くも物語の転換、あるいは一つの終焉といったところです。ここからが物語の本筋に入っていくのでしょう。私はこの作品の世界観と人物が凄く好きなので、次巻に期 -
物語に面白みが出てきた
全巻よりも主人公を取り巻く環境に変化が出てきます。家族として振る舞うビレム、子供と思われるのを嫌がるクトリ、この二人の関係が少しずつ変わっていくのを感じます。前巻では感情を表に出さずに、気取った感じのビレムと素直になれないクトリでしたが、お互い少しずつ素直になり、惹かれて始めています。これが、文章から伝わってきました。また、過去の知り合いとの再会で、この物語の本筋に近づいています。前巻では淡白な文章と展開の少なさにやや退屈さを感じていましたが、少しづつ面白くなってきました。アニメでは前巻の印象が強く、小説では物足りなさを感じていました。しかし、小説では徐々に物語が解き明かされていくのと、人物の
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序章
アニメを見て原作を購入しました。平易な文体で読みやすく、いかにもラノベです。滅びた地上世界の生き残りである主人公の成り立ち、過去から始まり68番島で勤務するところまでアニメ版とほぼ同じです。ただ、レグルエレや聖剣等の細かな設定については詳しく書かれているため、理解しやすいです。改めて読むと、過去と葛藤する主人公、家族とも呼べる人たちとの日常といった温かさを感じ、決して悲しいだけの物語ではないと感じました。まだ序章で、ラノベとしての展開は以降の方が面白いので本作が好きな人は試してみるのも良いでしょう。逆に序章であれだけの演出をして惹き込んだアニメの完成度も改めて素晴らしいと思います。ラノベでは一
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数巻前から活躍が待たれていた彼が遂に表舞台に立つ第8巻。
まあ、その中身はとても予想外な状態だったわけですが
本作は終わりかけた世界の中で既に終わってしまった物語を持つ主人公が終わりに立ち向かう少女達を支援する物語なわけだけど。
そんな中で登場(?)した黒瑪瑙の彼は守りたいものを守れなかった直後の状態なのか。それは何と意地の悪い運命なのだろうね
ヴィレムをベースにしている黒瑪瑙の彼はヴィレムっぽくはあるんだけど、妖精倉庫での記憶が無かったりフェオドールが混じっていたりと妖精たちが知るヴィレムとはかなり異なる人物
このどっちつかずな彼に対するナイグラートとアイセアのリアクションが色々と微笑まし -
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「絶対粉砕おとーさんパンチ」って実在したんかい!この巻では心にグサリと突き刺さるような驚愕が色々と有ったけど、これはこれで別ベクトルのぶっ飛んだ驚きだったよ!
コリナディルーチェ編完結。そして一人の嘘つき堕鬼種の顛末も描かれる。彼についてはしばらく前から丈夫でもない身体を酷使するような行動ばかり取っていたから長生きすることはないだろうと思っていたけど、こんなに早く終焉が訪れるなんて……
この巻で描かれるフェオドールの有り様はかつてのクトリやヴィレムを思わせるもの。
頭の中に別人の心を持ち命を磨り潰しながらも大切な人のために行動する姿はクトリを思わせるし、大切な者達に対してちっとも正直になる -
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あの元気の塊のようなコロンが泣き崩れるかのような表紙……!それだけでこの巻の内容がヤバイと伝わってくる
そして、その直感を裏切ることのない内容がもう……
冒頭の口絵の時点で変わり果ててしまったラキシュの形相が披露されるのだからキツイ。つまりそういうことなのかと理解させられる
リンゴの喪失、ラキシュの昏睡。自分を守るために二人がそうなってしまった事態と向き合うことが出来ずいつも異常に仮面を被るフェオドールが痛々しい痛々しい。そんな状況でもまだ小さいマシュマロ改めリィエルはフェオドールに構って構ってと纏わりついてくるわけで
捻くれていて嘘つきで、でも根っこの所は正直者で聡明なフェオドール。彼から -
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うああ……、ラストには思わず「止めてくれ!」と言いたくなるくらい衝撃的な展開が……。黄金妖精の「あの件」については前シリーズの第一巻から触れられてきた要素なんだけど、結局作中で実行する者が居ないままになっていた。この作品のことだからいずれ誰かが実行するのだろうとは思っていたけど、まさかこのタイミングであの娘が実行するなんて微塵も思っていなかったよ……
そんな読んでいるこちらの精神を凄まじい勢いで揺さぶってくるこの巻だけど、最大の清涼剤となってくれているのがアイセアの再登場か
あのちょっと幼い感じもあったアイセアが口絵ではとんでもない美人さんに成長なされて……。アイセアってひょうきんな見た目や -
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3巻ラストから4巻序盤にかけてヒロインのクトリがあんなことになって、更に4巻ラストでは主人公のヴィレムまで悲惨な目に。
それでも物語はまだ続いて。この巻では一体何が描かれるのかと思っていたが、そういうことなのか……
本来は約500年前に悔いを残したままで終わっていたはずのヴィレムの人生をきちんと終わらせるための物語だったと今更ながらに理解。だからといってヴィレムの選んだ道が正しいとは到底思えないのだけど。
3巻で描かれたクトリの覚悟と同じように誰かを幸せにしたいと心から思って、大切な誰かのために命を張ろうと覚悟して。リーリァもクトリもヴィレムも結局は同じ道を選んでしまったんだね
サイドストー -
Posted by ブクログ
この物語は何と呼んだら良いのだろう……。単純にクトリが陥った境遇だけを見ればバッドエンドとしか見えない。だけど、クトリの発言やラーントルクの言葉を借りるならこの物語はハッピーエンドということになる
でも、ハッピーエンドであるならばもっと喜ばしい気分になれるはずなのに、全くそんな気になれない。
本当にこの物語は何と呼んだら良いのだろう……
本編序盤ではヴィレムに依るクトリおかえりバターケーキが描かれる。そういえば、クトリ出撃って第一巻の出来事で帰還は第二巻だけど、なんやかんやあってきちんとおかえり、ただいまって言えてなかったんだっけ
その時間の分だけ、2つの言葉の背景にあるものはとても重い意 -
Posted by ブクログ
前巻時点ではクトリ出撃について余裕な態度を崩さなかったヴィレム。だというのに第二巻では半月経っても戻ってこない状況に遂に弱音を上げたようで(笑)
ヴィレムって養育院で父親代わりをしていた過去や、復活後の死んだような生活、そして今は妖精倉庫の管理人として過ごしているせいも有ってか物事を斜めに見て何事にも動じない姿勢を見せるんだけど、芯の部分は普通に弱いんだよなぁと思い知らされる描写。
ナイグラートが分析しているように自分が冷静になれる要素がある状況なら虚勢を張れるんだけど、そうでなければとことん駄目になってしまうタイプ。思い出せば復活後に何も考えなくて良いように重労働ばかりしていたのはそういう -
Posted by ブクログ
アニメを視聴した当時、あまりにも心の全てを揺さぶってくるような内容にいつか原作読もうと思っていたのだけど、随分遅くなってしまったな
世界観は人類が滅びそれ以外の種族が跋扈するようになった世の中。そして主人公のヴィレムは最後の人間。ヒロインのクトリや他の少女達は兵器として命を使い潰される存在
だからここからヴィレムやクトリがハッピーエンドを手にするなんてありえない。出来るのは限りある生命をどこまで楽しいものに出来るのか。そして最後の瞬間まで自分の生命を諦めないで居られるか
そういった部分が話の中心にあるために作品のノリはそこまで明るくない。
しかも現在のヴィレムは戦闘能力が皆無なものだからヴィ -
購入済み
間違いなく
秀逸の作品。
3巻が出るかどうかわからなかったと作者はあとがきに記載してあるが、ぜひ最後まで完走してもらいたい。
この作品に出会えてよかった。どんな終末が訪れたとしても、最後まで、私は見届けます。 -
ネタバレ 購入済み
三人なら砂上の楼閣には非ず…?
何となく20世紀、もう少し絞り込むと70~80年代を想起させるテイストと言った感じですかね…。
SNSとか、ネットワーク環境とか、その他諸々、その時代背景にしてしまうと色々と成り立たなくなってしまうんですが…。
そもそも、江間宗史は荒事が得意じゃないという設定は、終盤で何処に行ってしまったのか…?
また、舞台が芳賀峰市という海沿いの街だけ、真倉沙希未、江間宗史、篠木孝太郎、梧桐薫といった主だった面々の過去の因縁が妙に繋がり過ぎているのも、何か舞台演劇を観ているような感覚になりました。
さて、読み始めに思った事は、アルジャーノンは沙希未に成り代わってしまったのではと想像しましたが、読み進めてい