小島英俊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「日本の鉄道関係技術が辿った経過」を概観する一冊である。例えば電気のことや、幾つかの装置の仕組みなど、やや専門的なことへの言及も在るが、表や図が適宜配され、技術に明るいでもない読者も或る程度内容は判る。実際、私自身も技術に明るいでもないが、「なるほど、そういうことか…」と愉しむことが出来た。著者も技術者や工学研究者ということでもないようで、であるからこそ、新旧の様々な技術を「判り易い」を目指して、丁寧であると同時に簡潔に説いてくれていると思う。
或いは「かなり“マニア”な鉄道ファンが読む本?」と思われてしまうかもしれないが、これは“鉄道”を切り口にした、産業と社会の広い分野に亘ることを考えら -
Posted by ブクログ
鉄道好きにとって、趣味性と社会性を絶妙なバランスで両立させた良著です。
鉄道史なんて手垢がついた分野だと思ってましたが、本著の工夫に溢れたテーマ選定や構成には唸らされました。著者の広い分野にわたる造詣の深さがしっかり結実しているという印象です。
例えば、高速鉄道の章では、新幹線賛歌に終わることなく、最新の各国の状況や技術論に触れつつ、最後は中国の一帯一路政策に繋げていく展開はなかなか見事。
単に「へー」情報の羅列というトリビアで終わることなく、ストーリー感のある、一つ上のレイヤ感のある学びが得られた気持ちになれます。
写真、図画や表も活用してわかりやすく、豊富なデータで定量的に説明している -
Posted by ブクログ
現代でも首都圏の通勤電車の混雑は苦痛で
あって、快適からは程遠いです。
コロナ騒ぎでようやく普通になった、という
程度でしょうか。
しかし150年ほど前に開発された鉄道は、
これでも信じられないレベルで進化を遂げて
きたのです。
何となく分かりますよね。蒸気機関から
電車に進化しただけでも冷静に考えれば
ものすごいイノベーションです。
これを読むと将来は通勤の混雑も劇的な
改善がなされると思ってしまいますがl
それはないでしょう。
むしろ人々のライフスタイルが変わるのが
先であるのが最近のコロナ騒動です。
しかしそれでも昨今の鉄道の進化は目覚し
いです。それを知るだけでも楽しい一冊 -
Posted by ブクログ
丁寧に技術面から見た日本の鉄道史をまとめた良著。
鉄道マニアとしては非常に読みやすい本でしたが、普通の人にはそもそも読むモチベーションが理解できないのではと。
しかし、この本を読んでいて実感したのは、鉄道の技術は総合技術勝負的な面があって、線路は測量から始まって橋を架けたりトンネルを掘ったり。レールは製鉄技術が必要だし、車両も(黎明期は)木でできたウワモノと、鉄の台車と。伸び盛りの明治日本がスポンジのように吸収して、自分のものにしていった様子が読んで取れます。この「追いつけ追い越せ」的な高揚感は、マニアでなくてもわかってもらえるのでは。
昔は欧米からとにかく物を買って、そこから学ぶ流れだった -
Posted by ブクログ
コロナ後初の出張のおともに本書を持っていく。
著者は交通史の専門家(といっても、商社などで長く勤務したビジネスパーソンだった方)。
本書は「読んで楽しくわかりやすく」をモットーに書かれたものだ。
漱石の生涯をたどりつつ、発達していく交通機関の状況を説明していく。
・学生時代の旅で利用した蒸気船と蒸気機関車
・松山・熊本時代の地方の鉄道
・留学時の欧州航路とイギリスの鉄道・地下鉄
・満州訪問時の特別列車やトロッコ
・東京の人力車、馬車、自転車
・路面電車、郊外電車
ざっとこんな感じだった。
これまでにも小池滋さんの著作や、漱石の研究者の人たちの本でも、割と交通関係の論文があったような気がする -
Posted by ブクログ
書名から「鉄道マニア向け?」と思われがちですが、決してそうではないです。鉄道技術と言うとつい車両や、特に新幹線などに注目が集まりますが、本書ではそれらを特別視するのではなく、列車を安全に運行させるために必要な技術全般について、その発達の経緯を分かりやすく説明しています。
トンネルの工法(NATMやシールド)や、送電する手法(直流や交流)、車両の技術(SLの技術革新やモーターの発達、省エネの技術)、制御方法(ATSやATC)、そして新幹線から超伝導リニアにおよぶまで、ほとんど数式などを駆使せず、予備知識の無い読者が本書を手にとっても十分に分かるレベルの深さに説明を抑え、その分「日本史」とあるよう