平山優のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
☆☆☆2025年3月☆☆☆
平山氏の著作は毎度のことながら面白い。「天下分け目の戦い」と言えば一般的には関ヶ原の戦いだが、平山氏は「関ヶ原の戦いは豊臣家内部の権力抗争に過ぎず、小牧長久手の戦いこそが天下分け目の戦いである」と論じる。
織田信長の正当な後継者である織田信雄か、羽柴秀吉か。この戦いにおける徳川家康は信雄の同盟者としての立場であるが、秀吉VS家康の戦争であるかのように語られる事が多い。この戦争について、主戦場の尾張や伊勢だけでなく、信濃や紀伊、四国の状況も幅広く網羅した力作である。合戦の細かい推移はしっかり理解するのは難しいが、そこに生まれる人間ドラマであったり駆け引きはスリリング -
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城郭考古学者の千田さんと歴史学者の平山さん、メディアでもよく見かけるお2人の対談。戦国を通してみるならということで家康が関わった桶狭間合戦と大高城、今川攻めの徳川方諸城、見付城と浜松城、三方原合戦、長篠合戦、天正壬午の乱、小牧長久手合戦それぞれの関連諸城、駿府城、江戸城、家康の天下普請の城、関ヶ原合戦、大坂の陣関連諸城について、それぞれのテーマで2時間以上話し、それを編集者がコンパクトにまとめたもの。ただそれでもボリューミー。
2人の書いたものとか講話とかを知っていたらあまり歴史観が覆るというようなものはないけど、違う方法の専門家が同じテーマに取り組むとこれだけのことがわかるんだなと勉強になる -
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また凄い大作、取り上げた作品が少ない小牧長久手合戦を最新の研究を取り入れ豊富な史料をもとに丁寧に解説している。
徳川家譜代が三方ヶ原、長篠、小牧長久手、大坂の陣を重要な戦いとみなしていた。関ヶ原では多くが秀忠とともに信濃にあり、本戦には参加していなかったし。そして天下分け目の戦いとしても、後知恵で見る関ヶ原と違い、小牧長久手のほうが、織田体制で勝者が天下人になることが明確に予想されていたことから、歴史的な重みがあることがわかった。信雄と秀吉の主従関係がいかに入れ替わったかが理解できた。また、長久手で徳川が戦術的勝利を収め、それが後々天下人になるまで家康のポジションに有利に働いていたが、戦略的に -
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ネタバレ読み応えあり。
当時の資料を丹念に読み解き、そこから想定できる事実を提示し、また、多くの先達の業績にも触れる。
まさに歴史書の名にふさわしい。平山氏は武田氏を専門としていて武田氏や真田氏に関する多くの著を書いており、自分もいくつか読んでいる。
あとがきにもある通り、NHK大河ドラマの時代考証を担当されたのを機に、武田と家康についての研究を進めたことはまことに嬉しい限り。
さて、内容について非常に多くの情報を含んでいるが、その中で、いままで自分が知ったことと違っていて、印象に残った点を以下に記す。
1.信玄と家康が密約して、今川氏真の領国を分割占領した際の有名な話、川を境に東側を武田、西側を徳川 -
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平山さんの本はホント面白い。新たに学ぶこと大であったし、あとがきの歴史研究のセレンディピティの話も面白かった。
どちらかというと甲三同盟に反するようなしたたかな動きをしていたのが家康で信玄の恨みを買っていたこと、三方原合戦は武田軍が浜松城を干上がらせるために海上陸上双方の交通の要衝であった堀江城へ向かう動きを見せたために追跡していた徳川軍が開戦せずにはいられなかったために生起したこと、夜中の合戦であったために徳川織田連合軍の被害が少なく済んだこと、信玄が織田の援軍を警戒していたこと、三方原の合戦の結果足利義昭が動揺して反織田に転じたのであって義昭の反織田の結果の信玄の西上ではなかったことなど。 -
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ネタバレ三方原合戦について最新の説を元に解説。さすが武田氏研究の第一人者である平山先生です。
ただ、するっと入ってこなった部分もあったので何度か読み直してしっかり理解度を深めたいと思います。
武田氏と織田氏の関係はこの合戦以前は良好であった。しかし織田包囲網の形成に信玄が入り大きな重しをなしていた。
それは逆に、織田氏による武田包囲網となって滅亡までの道筋が築き上げられてしまうという皮肉な面も。
信長・家康にとって信玄の死は幸運であった。病で倒れずこの合戦以降も健在であれば戦国史も変わっていた可能性があります。
次に出る、著者の「徳川家康と武田信玄」も読んでおこうと思います。 -
Posted by ブクログ
「御旗・楯無も照覧あれ」何度中井貴一主演の「武田信玄」で見たことか。
なるほど源氏意識の高い一族であったとわかりました。
武田二十四武将の団結力もここから来ていたわけです。
しかし、武田氏滅亡の遠因の一つが義信事件。
そして第四次川中島合戦でも優秀な人材を失っており、その後勝頼へ代替わりをしっかりと行えていないまま
西上途中で信玄が亡くなったのが痛かった。ここは信玄痛恨の極み。
新書なので読みやすい一冊。最新の研究情報を踏まえているので、長篠の合戦についての情報もバージョンアップが必要です。
滅亡間際の浅間山の噴火は何とも不吉だったことか。
平山先生の書かれた角川選書「武田氏滅亡」「天正壬午の