桐谷知未のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
第一次世界大戦後にドイツが体験したハイパーインフレについて書かれた本。デフレ慣れした現代では想像できないが、インフレの恐ろしさが理解できる。初期の頃は、個人消費は活発になり、失業率は低下して株高になるなど見せかけの繁栄となるが、最後は社会がガタガタに崩壊し、あらゆる悪が助長され、病気や貧困がはびこる状況となる。時間が経過するたびに、インフレが猛烈な勢いで進んでいくので、読んでいるこちらも麻痺してしまう。終戦時に5000億個の卵が買えた値段で、その5年後には卵1個しか買えなくなったと表現されている。しかし、不平等が拡大した大混乱の社会を、うまく乗り切った人々も存在し、将来のインフレ時にとるべき行動のヒントになると思われる。
-
Posted by ブクログ
ヒューゴー賞、ネビュラ賞ほか英米SF賞8冠・いまアメリカで一番人気のSF作家という宣伝文句に惹かれ一応最後まで読んだ。 人との繋がりの心温まる話やファンタジー寄りの作品が読みたい人には良いと思う。でもそれなら日本人作家の方が読みやすいしな、、とも思うので誰におすすめかと言われると難しい。 「報酬は猫の写真で」は割と好きだったので長編版が翻訳されたら読んでみたい。
◯よかった
・世界の流行が知れた
・陽の光が消えた街で(2024年度ヒューゴー賞・ネビュラ賞中編小説部門W受賞)
・海を見渡す四姉妹(2025年度ヒューゴー賞中編小説部門受賞)
・報酬は猫の写真で(2016年度ヒューゴー賞・ローカス賞短編小説部門受賞)
△微妙
・SF要素、驚き、感動は少ない(個人的感想)
・物語の本筋とは別の部分で読みにくかった(精神疾患の薬の種類や登場人物名の多さとか)
・値段が高いので人に薦めづらい(¥2970) -
Posted by ブクログ
面白いけれど予想の範疇を出ない終盤に少し残念な気持ちにさせられた。
熱帯雨林のような地域に中世の世界観を持ってくる試みは面白い。リヴァイアサンという巨獣がもたらす副産物を使い、改変=遺伝子操作をし様々な能力をもった人間を作り出すという設定も、現代的な視座と感覚を上手くマッチさせている。
気になったのは「オフィス」「スタッフ」という用語が挟み込まれる点。中世ヨーロッパを彷彿させるような世界観の中に現代的な印象の強い言葉が出てくるのは違和感があった。
この世界のライフラインははっきりと明示されていないと認識しているが、少なくとも電気や上下水道はない様子だ(メイ・ランタンという蛍みたいな虫で明かりを得、蒸し風呂の用意に使用人がバケツで水を運ぶという描写がある)
体を改造できる技術を持ちながら上記のライフラインがないことにも違和感が残った。
続編があるらしいので、その辺で補足があるかもしれないが、そこまで評価される程の作品のようには思えなかった。 -
Posted by ブクログ
ファンタジー×ミステリな感じ。
神聖カナム大帝国は、海から襲い来る巨獣リヴァイアサンの襲撃を阻止せんため、高度な生体改変技術を発展させている。その辺境のある豪邸で、技術省高官が体から巨大な木を生やした奇妙な姿で死んでいるのが発見された。
設定というか世界観がなんとも魅力的。。。のわりにミステリ部分にはそれほど生かされてないようにも感じてしまった。いや要所要所ではその特殊な技能がキーになっていたりもするんだけど、そういうファンタジーなパートとミステリなそれとは分かれてしまっているような印象でした。今はミステリ部分、今はファンタジーみたいな。
というか日本語タイトルにもなっているように完全記憶能力者である「記銘師」であるディンの捜査なり活躍が面白いところ。最終的な真相は安楽椅子探偵であるアナが解き明かすわけだけども、解き明かすための手がかり収集こそがこの小説のみどころかもしれない。戦闘から隠密からなにからなにまでこなす有能すぎるワトソン役ディンの活躍がなんともいえず爽快。
続編もあるっぽい終わり方だったので期待。 -
Posted by ブクログ
原題は「When Money Dies The Nightmare of The Weimar Hyper-Inflation」、副題は「ドイツ「国家破綻の歴史」は警告する」。
1923年にドイツはハイパーインフレに見舞われるが、これは突然起きたのではなく1914年から1918年まで続いた第一次世界大戦の頃から徐々に進行していった結果だという。著者は、
「単純に貧しくなっただけなら、みんなで協力して問題を解決しようという気持ちが強まっただろう。 インフレ下では、そうはならなかった。インフレには差別意識を駆り立てる性質があり、そのせいで誰もが自分の最も悪い部分を引き出された」
と言う。経済格差と貧富の差が時間と共に拡大し、嫉妬や憎悪といった人間の負の面が助長されていく世の中になるということだろう。
本書は1975年に刊行され、2008年のリーマン・ショックでウォーレン・バフェットが知人に「必読の書」と紹介したと伝えられたために、人気に火がついて2010年に再出版された。 -
Posted by ブクログ
同性愛は犯罪で、人種差別、女性蔑視が蔓延る18世紀。美男子の主人公は、伯爵の長男にして放蕩息子。密かに恋する相手は、自分とは肌色の異なる同性の親友。
その親友と、仲の悪い妹とともに自由を謳歌するはずのグランド・ツアー(周遊旅行)で、思わぬ大事件に巻き込まれていく。
いやはや、主人公がほんっとうにどうしようもない! 人生は配られたカードで勝負するしかない、というのは他のドラマで知った言葉だけれども、もう少し他者への思いやりがあっても……いや、分からないのか……と愕然としてしまう。
親友の言葉を引用↓
「人にどう思われようと気にしないっていうぜいたくは、誰にでもできることじゃないからだ」
しかしこの主人公だからこそ、差別や蔑視を受けながらもまっすぐな親友や妹の生き方が引き立っていたともいえるし、そんな彼らがなんだかんだ主人公を憎めないでいるところに、一面だけで人を語ることはできない、ということなのかもしれない。時代の歪さもある。
どうっしようもない主人公だと思ったけれど、どうか幸せになってほしいというのも本音。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ過酷な氷河期に見舞われている地球上で越冬のため冬眠するようになった人類。越冬期間であっても、厳しい冬それ自体を含め様々な危険があるため、数%の人は眠らずに冬を越す。主人公チャーリー・ワーシングはそんな眠らず冬を越す冬期取締官の見習いとなる。見習い仕事として、越冬に失敗したナイトウォーカー(ゾンビみたいなもん)を運ぶことになったチャーリーは、その仕事を終えた後今まで見たことがなかった「夢」を見る…。
タイトルと挿絵と裏表紙のあらすじで持っていこうとしている話の方向とかなりずれた本筋だった。確かに少年の成長譚の部分もあるが、どっちかというと巻き込まれ系迷惑トラブル被り男子が実は世界を救う系。
これを甘いひと夏の初恋物語のように誘導するのは詐欺に近い売り込み方じゃないか?きちんと読めばそれなりに面白いSF小説なのに、余計な印象が先行してるので情報が邪魔して楽しめなかった。残念