桐谷知未のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
面白かった!!!意外にも。もっと話題になっても良いのに。不思議な世界観で、ファンタジーだけど、ちゃんとミステリー。探偵バディ物だし、キャラクターもいい。
中世のヨーロッパを思わす架空の世界。雨季になると海から巨大な怪物が襲ってくる。海に隣接する州には強力な壁が築かれ、技師たちや兵士たちが防衛している。この世界では人は身体改変を受けて特殊な能力保持者になっていることがある。主人公ディンはそんな改変を受けた若き「卓越者」の一人で、驚異的な記憶力を持っている。ディンは記銘師として司法省に採用され、かわり者の天才である捜査官アナのもとで働き始める…
このディンが、なんらかの秘密を抱えて終始オドオドしてるかと思いきや、危険な状況で素晴らしい剣さばきの特殊能力を開花させたりして、ワトソン役としてナイスキャラ。
人に迎合せずサバサバした壮年の女性捜査官アナもまた、どんな能力を持ってるのか謎に包まれていて、探偵役として魅力的。
この二人の関係性がバディとして深まっていくのを読み進めるだけでも面白い。
でももちろん主題はミステリー。事件はある高官が不思議な死に方をしたことから始まる。なんと高官の体内から凄まじいスピードで木が育ち、体を突き破りながら成長したのだ。外出ができないアナの代わりに記銘師ディンが現場に派遣され、屋敷のメイドや庭師を調査していく。安楽椅子探偵のアナがディンの報告を聞きながら謎を解き進めるスタイルだが、事件は二転三転してゆく。旅をしたり、容疑者の家に乗り込んだり、何者かに奇襲されたり、帝国の暗部をあぶり出したりと、物語はダイナミックに進んでいく。
ディンとアナ以外の登場人物たちもすごく良い。これで終わっちゃうのはもったいないと思ったが、調べてみると、本国では全5巻のシリーズ物になる予定だそうだ。日本でも来年二冊目の刊行が決定とのこと。朗報だ!出版を楽しみに待つ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ普段あまり触れないSFを読んでみようと手に取ったけれど、予想外に読みやすくすごく面白かった!
星新一さんみたいだな…と思ったけれど、そういえば星新一さんもSF作家に分類されていたなと後から気づいた。
後書きで、SFといっても現代に即している〜といったことが書かれていて、なるほどだからこんなにスッと心に馴染むのかと納得した。
SFというと、もっとハラハラスリル満点!みたいなのを想像していたのだけれど、人と人との繋がりを感じられる心温まる作品が多く良い意味で予想が裏切られた。タイトルにもなっている作品は特に、限界状態のコミュニティで支え合う姿が素晴らしく、他の街から移住を望む青年の言葉が全てを語っていると思った。とても泣けました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいや〜〜これは文句なしに面白い!!めちゃくちゃ贅沢な舞台を作り上げたなぁ。絶対映像化されそうすぎる。映えるもん。Netflixあたりでもう話進んでそう。
厨二病感溢れるルビが振られた職業名や単語の読み方を思い出すのにいちいち5秒くらいかかったけど、世界観に没入するために頑張ってメモにまとめて意地でもルビ通りに読み通したので、なかなか骨が折れた。続刊では全てルビを振ってもらえてることを祈る。
あとがきによると全五部作予定ということで、続刊の邦訳が今から楽しみ!!
え、出るよね……?あのSFなんだかファンタジーなんだか色々詰め込んだ超絶重厚な設定を英語で読み進められる気はしないぞ……ほんとお願いしますよ!!!
↓以降ネタバレ注意
ミステリー部分については終盤まではちょっと弱めかなぁと感じてた。
実行犯、暗殺者、首謀者の中で、前者二名については読んでればわりと素直に分かったから。というか、匂わせ強めだった。
とか思ってたら首謀者はまさかの人物でびっくり!
でもアナの種明かしで納得。ちゃんとヒントあったな〜!!悔しい!!
ディンの能力に関しては、かなりうまい調整だな〜と思った。強すぎないというか、識字障害が良いスパイスになってる。あといい具合にイカれちまってる人間性も非常にいい。筋肉記憶はチートだけど見てて気持ちいい。
アナが傍若無人にディンを振り回してるように見えて、その実大切な相棒として出来る限り護ろうとしてるのも本当に良かった。
恋に関しては、やや唐突に感じたかな。
どの辺から惹かれ合ってたんだろ?煙草一緒に吸ったとこか?この辺の描写は突然キスしだす洋画のあの感じが想起されてちょっと面白かったww
いや〜総じて大満足。早く続刊が読みたい。楽しみ!!! -
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遠い未来や宇宙の話ではなく、一年後くらいにありそうな少しだけ未来で、人々の希望や繋がりの物語。
池澤春菜さんがこの本を「ホープパンク」と表現していて、確かにどの短編も希望を持って戦っている人たちばかりだった。
一番好きだったのは表題作の「陽の光が消えた町で」。
物資もインフラも不安定な中、地区の人々が自分の時間や特技も含めて物々交換をして助け合って暮らしている姿は、「コミュニティ」のつながりの強さと、「コミュニティ」の持つ希望が感じられた。
AIの話2本が入っていて、「デジタル社会の歩き方」で感じた今の時代の問題点が、別角度の解決策を提示されているように感じられた。
読む順番とタイミングが絶妙だったみたい。
「人は意思決定を少なくし、屋外で過ごして、車をなるべく使わず、従来のソーシャルメディアに費やす時間を減らすほど幸せになる。」
この一文に、SNSと距離を置き、スマホから手を離し、アナログな日々の大切さを改めて感じられた。 -
Posted by ブクログ
雨季になると巨獣リヴァイアサンの襲撃に悩まされる神聖カナム大帝国で、技術省高官が謎めいた死を遂げる。それが誰かに仕組まれた殺人であるとして捜査に乗り出したのは、変わり者の捜査官アナと助手で記銘師のディン。二人の活躍により無事事件は解決するものの、同じ手口で十人の技官が殺されていたことが判明する。ファンタジー世界を下地にしたミステリです。
科学や薬学の技術で人間の一部の能力を飛躍的に強化した「卓越者」たちが存在する世界。謎めいた魔法のようなアイテムも多々登場し、それほどここに詳しい説明がなされないのですが(単位などはまったく謎です)。しかしその世界観が読むうちに案外スムーズに馴染んできます。
体内から爆発的に生えた木に殺される、というインパクトのある手口に唖然。しかもそのシーンが目の当たりにされるところもあって、これは衝撃的でした。しかしどうやってそれを仕込んだか、というところなどは完全に本格ミステリ。特殊設定ミステリとしての読みごたえが抜群です。
現場に行かないアナの代わりに状況を記憶し伝達し、さらにとんでもない能力が徐々に明らかになるディンだけれど、何かを抱えているらしいのも読みどころ。アナとのバディとしての活躍も実に楽しいです。これ、続編も書かれているのですね。邦訳が待たれます。 -
Posted by ブクログ
「世界が壊れたら、人間は奪い合う」。SFや映画を見ていると、いつの間にかそんな未来を当たり前だと思っていませんか?
『陽の光が消えた町で』は、その思い込みを気持ちよくひっくり返してくれる短篇集です。
表題作では、陽の光や電力が失われた町で、住民たちが自転車発電や物々交換をしながら生活を立て直していきます。最初は「こんなに善意だけで回るの?」と思いました。しかし読み進めるうちに、危機に直面したとき、人は争うだけでなく助け合うこともできるという未来の方が、むしろ新鮮に感じられてきます。
そして、本書は単純な楽観論でもありません。
印象に残ったのが、AIを描いた短篇です。中でも「報酬は猫の写真で」というタイトルから想像する可愛らしさとは裏腹に、
さらに、AIを描いた2つの短篇(「報酬は猫の写真で」「アルゴリズムでよりよい生活を」)も痺れる面白さです。一見すると人間に害のない親切なAIなのに、いつの間にか人間が巧みに操られているような、ぞっとするホラー的な味わいもあり、「人間らしさとは何か」「自主的な幸福とは何か」を深々と考えさせられます。
絶望する未来だけでなく、協力する未来も想像できる。ディストピアSFに少し疲れた人にこそ手渡したい、人間への見方を更新してくれる一冊です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレとても面白かった!
ファンタジーな世界観と探偵役のアナ・助手で能力者の主人公ディンのキャラクター、そしてミステリーと各要素が魅力的かつ全体として綺麗にまとまっており読みやすい。
巨獣リヴァイアサンの侵入を阻止する防壁を持つ帝国は進撃の巨人っぽい雰囲気。ハードカバーで500ページ近くあり読み応えはあるが、メインとなる殺人事件の軸と、リヴァイアサンによる脅威の軸で二種類の緊張感があるためかなり展開は多く最後まで飽きずに読むことができた。
世界はファンタジーだがかなり生活を感じることができるし、ミステリーへの組み入れ方も巧妙で違和感なく面白い。
章ごとに振り直してはくれているが、省の名称、階級の名称など読み方が覚えられず、人物名も馴染みがない感じで序盤は見返すことも多かった。
(錬薬省〈アポセティカル〉がかっこよくて気に入った。)
内容には関係ないが原題『The Tainted Cup』は「穢れた・毒された杯」というような意味になるらしく、読後に見るとなるほどと思えるタイトルなので、(色々意図はあるのだろうけど…)日本語版のタイトルが少しもったいなく感じてしまった。
個人的にミルジンがとても好きだったので続編でも出て欲しいけど無さそうか…!続編の邦訳にも期待。