菊池光のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
緑色の背表紙のハヤカワ文庫。これがうちにはとてもたくさんあります…
ディック・フランシスの36作目。文庫では2003年発行、原著は97年の作品です。
もう何度読んだのか、わかりません。
フランシスをまだ読んだことのない人はとても幸せだという言葉があります。まったく、その通り〜これから40冊も読める楽しみが残っているのですから!(^^)
フランシスの作品は一作ずつ独立していますが、主人公の男性の一人称で語られるのは共通しています。
職業年齢は様々ですが、意志が強く、思いやりがあり、何らかの専門知識がある所も共通点なのです。30歳前後が一番多いでしょうか。
さて、この作品は主人公のベンが17歳 -
Posted by ブクログ
ディック・フランシスの競馬シリーズの最大の魅力は競馬関連の漢字二文字の邦題にある(おい!)
『重賞』や『大穴』のように直接的な競馬用語のときもあれば『興奮』や本作『罰金』のような競馬を連想させるようなものもありと様々だ
もうこんなことされたら全作集めたくなるよね!
もちろん原題が漢字二文字のはずがないので(おそらくイギリスには漢字文化はないと思われる)これはもう早川書房の商売がうまいということだ!馬だけに
『罰金』取られてもおかしないオチ
そして本作も『罰金』とられてもおかしくない結末でした
もう大昔の男尊女卑の考え方がどスレートに出てる男にとってだけのハッピーエンド
昔はそれを表現し -
Posted by ブクログ
物語が始まってしばらくの間は、作品の方向性がよく分からず楽しめなかった。主人公が映画監督というのは面白いし、彼が撮影している映画が昔の事件を題材としていて、その映画化が過去になったはずの事件を再起動させてしまうという趣向は、なかなか良くできていると思う。
ただ、全体としてごちゃごちゃしてしまっているし、過去の事件そのものが後味があまり良くない出来事なので、なんか読んでいてスッキリしないのだ。主人公が過去の事件に首を突っ込んでいくあたりも、なんとなく動機が曖昧で、探求型としても巻き込まれ型としてもピンとこない。そのために、「良い映画=売れる映画を作る」ためにあれこれ動いているだけのようで、 -
Posted by ブクログ
1983年発表の競馬シリーズ第22弾。後にフォーサイスが「ネゴシエイター」でも題材とした誘拐交渉人を主人公とする。
犠牲/被害を最小限に抑えるべく、如何に行動し解決へと導くか。その心理的な駆け引きが最大の読みどころとなるが、本作のミソは交渉人が誘拐対策企業に勤める派遣スタッフの一人に過ぎないという点にある。通常は防衛策を施すサポートに徹し、不幸にも誘拐となった場合には犯人との交渉、奪回まで責任を負う。要人を対象とする誘拐事件は国内外問わず発生する恐れがあるため、ネットワークを駆使できる専門企業の創出は、リアリティを持たせる上でも不可欠だったのだろう。
当然、警察や関係者らとの連携/折衝など、瞬 -
Posted by ブクログ
仕事場の方にすすめていただいて読みました。
競馬の話と聞き少し身構えましたが、読んでみたら意外とハマるものですね。
会計士として働く傍らアマチュア騎士の活動を続ける主人公は、夢だった多舞台のレースに出場し奇跡の大勝利をおさめた直後、何者かに誘拐されてしまう。
何とか逃げ出したものの、自分に迫る影におびえながら生活せざるを得なくなった主人公は、現状を打開する為に事件解決のために尽力する。
競馬界の闇に、正義を貫く会計士が挑む。
イギリスの作品らしい、独特の皮肉めいた文調が特徴的です。
わたしは小気味よく読むことができましたが、人によってはくどいと感じるかもしれません。
競馬に関する内容ではあ -
Posted by ブクログ
外交官の休暇中の冒険ということで、少し盛り上がりに欠けるような気がした。外交官という職業にあるやや皮肉な職業上の能力や、前任地が日本であったことから、日本人やその文化に関する言及があったりで、興味深い面もたくさんある。が、仕込みが多いわりには全体としてそれらが妙に細かくて、迫力がないのである。
医療関係の話というのは珍しいし、また被害者の巻き込まれる災禍は、想像すると頭が痛くなるようなものだと思う。そういう被害者を救う主人公という図式は、今までにもなんどかあったと思う。その被害者が実の兄だったり、親戚だったりあれこれだけど、ここまで「他人の不幸に首を突っ込む」的な流れだと、僕はちょっと素 -
Posted by ブクログ
フランシスの作品としては、どちらかというと地味である。スタンダードな犯人捜しミステリなんだけど、その方法が、容疑者たちの心理分析、特に現在の人格がどのように形成されていったかを検証することとなっている。地味ではあるけれど、人間ドラマとして深みがある。
大金持ちの父親がいて、何人もの母、たくさんの兄弟たちがいる。父親と心を通わせることができる唯一の息子である主人公は、義母の一人を殺し、父親の命をねらう犯人を、まさに家族の中から捜さなければならない。財産目当てに父親に媚びを売っているとの蔑み、憎しみ、妬みの渦の中で。
ミステリとしては地味、小説としては深みがある。
エリート階級の多いフランシ -
Posted by ブクログ
読み終わって驚いたのは、実にシンプルでオーソドックスな犯罪捜査の物語であることだ。事件が起き、犯罪の専門家が呼ばれ、粘り強い捜査の結果的、真相と犯人を探り出す。まさに王道で、どちらかといえば、探偵ものというより、警察小説のような雰囲気がある。フランシスのファンとしてはそのあたりに物足りなさが残るのか、シリーズの中では評価が高くない作品だけど、なかなかどうして、すっきりしていて悪くない。
ただし「よい」と言えるかと言えばやっぱり言いづらく、いろいろな要素が軽く流れていってしまっている感は否めない。北欧が舞台ということで寒さが大きな要素になるんだけど、たとえばモスクアの話には迫力でかなわない。何 -
Posted by ブクログ
「競馬シリーズ」と一言で言っても、全作品にまたがる共通点は、競馬がテーマであることと主人公の性格くらいだろうか。あるいは、水準以上の作品揃いであることも共通点のひとつといってもいい。でも、共通点がそのくらいであるといいたいくらい、多様な物語が展開されている。
この作品は、なんとコンゲームである。敵の方は遠慮なく暴力を振るう連中であるが、主人公は頭脳の働きで勝負し、まるで詐欺師のような策略で見事に敵にいっぱいくわすのである。そのあたりの動きはなかなか痛快だし、愉快である。
主人公の職業がおもちゃ屋さんであるというのもいい。大金持ちだから描き方によっては嫌みになってしまう可能性もあったのだろう -
Posted by ブクログ
共産主義国家ソ連が地図から消えてずいぶん経つ。冷戦を背景にしたスパイ小説を今読むと、なんとなく現実のことのような気がしなくて不思議だ。むしろ、ファンタジーのような気さえしてくる。
フランシスの小説のいくつかには情報小説的な一面もあって、共産主義国家というものを一般人の視点からレポートしてくれていて、新鮮な驚きがたくさんある。どちらかといえば憂鬱なものが多いのだけど。
そういう憂鬱な、息が詰まるような重苦しい世界の中で、馬を愛する気持ちがいわば心と心をつなげるパスポートになるという設定が美しい。ふたつの異なる世界が出会い敵視があり、その中に小さな共通語を発見し交流が始まる。普遍性を持つ物語な