菊池光のレビュー一覧
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ネタバレ神父が最後に語った衝撃の事実。まさかのチャーチルが替え玉だったとは。もし仮にあそこで彼を撃ったとしても、歴史的には何も変わらないということ。そしてその替え玉を狙ってドイツ軍もそうだし、イギリス軍もそうだし、たくさんの命が失われた。
しかもである。その事実はイギリス軍側にも伝えられていなかったということか。イギリス側の方が一枚上手で、その策略にドイツ側が踊らされた。これはまさにどんでん返しだな。最後にすごい。
これがなかったら、いわゆる戦争ものというか冒険もので、戦争ものの主体を中心としたドイツ軍兵士たちの活躍というか、なんというか、生々しい戦場を描いた話だったんだけど、最後にこれが来ることによって、そもそも戦争ってなんだろうかというか、何かを信じて戦って命をなくすということがなんだろうかというようなところに、ちょっと考えが行く。
正しいと思っていたものが正しくなかったっていうか、そういったのは最後にちょっとびっくりさせられて面白かった。星3.3くらいかな。
シュタイナーとデブリンとモリーのストーリー、その他いろんな人たちのストーリー。でもやっぱり登場人物が多すぎて、途中でなんだかわからなくなってしまったけれども。 -
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真冬の寒い日、レース場で起きた惨劇に観客たちは凍りついた。目の前で騎手が落馬し、馬に押しつぶされて死亡したのだ。友の突然の死に、哀しみにくれるガラス職人のローガンだったが、まもなく彼のもとに一本のビデオテープが届く。それは友が命を賭して彼に遺したものだった。が、中身をたしかめる間もなく、押し入った何者かにより、テープが強奪されてしまう。謎を秘めたテープをめぐり、熾烈な争奪戦が今はじまる。
シリーズ第39作。19年ぶりに再読。ストーリー展開がややギクシャクしているように感じた。ジャケット写真のVHSテープ、そのうちに何なのかわからなくなる日が来るかもしれない。 -
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ディック・フランシスの競馬シリーズの最大の魅力は競馬関連の漢字二文字の邦題にある(おい!)
『重賞』や『大穴』のように直接的な競馬用語のときもあれば『興奮』や本作『罰金』のような競馬を連想させるようなものもありと様々だ
もうこんなことされたら全作集めたくなるよね!
もちろん原題が漢字二文字のはずがないので(おそらくイギリスには漢字文化はないと思われる)これはもう早川書房の商売がうまいということだ!馬だけに
『罰金』取られてもおかしないオチ
そして本作も『罰金』とられてもおかしくない結末でした
もう大昔の男尊女卑の考え方がどスレートに出てる男にとってだけのハッピーエンド
昔はそれを表現しちゃうことが当たり前でむしろ称賛されてたと思うと悪寒が凄いんだけど
その当たり前を知るということはそれはそれで意味があるのかなと思ったりもしました
あ、でもディック・フランシスは不朽の傑作のほうが圧倒的に多いのでやっぱりたくさんの人に読んでほしいなぁ -
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物語が始まってしばらくの間は、作品の方向性がよく分からず楽しめなかった。主人公が映画監督というのは面白いし、彼が撮影している映画が昔の事件を題材としていて、その映画化が過去になったはずの事件を再起動させてしまうという趣向は、なかなか良くできていると思う。
ただ、全体としてごちゃごちゃしてしまっているし、過去の事件そのものが後味があまり良くない出来事なので、なんか読んでいてスッキリしないのだ。主人公が過去の事件に首を突っ込んでいくあたりも、なんとなく動機が曖昧で、探求型としても巻き込まれ型としてもピンとこない。そのために、「良い映画=売れる映画を作る」ためにあれこれ動いているだけのようで、主人公にもう一つ魅力が感じられないような気がする。
映画づくりの話題は、個人的にも興味があって面白かった。さまざまな能力や、思い入れを持つ人たちが、監督やオーナーのもとで、ちょっとギスギスしながらも協力して作品作りに挑む人間模様は悪くない。まあ、ちょっとマニアックになってしまっている感じで、読者を選ぶかもしれない。 -
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1983年発表の競馬シリーズ第22弾。後にフォーサイスが「ネゴシエイター」でも題材とした誘拐交渉人を主人公とする。
犠牲/被害を最小限に抑えるべく、如何に行動し解決へと導くか。その心理的な駆け引きが最大の読みどころとなるが、本作のミソは交渉人が誘拐対策企業に勤める派遣スタッフの一人に過ぎないという点にある。通常は防衛策を施すサポートに徹し、不幸にも誘拐となった場合には犯人との交渉、奪回まで責任を負う。要人を対象とする誘拐事件は国内外問わず発生する恐れがあるため、ネットワークを駆使できる専門企業の創出は、リアリティを持たせる上でも不可欠だったのだろう。
当然、警察や関係者らとの連携/折衝など、瞬時の処理能力と大胆且つ柔軟な交渉術が求められるため、心身共にタフでなければならない。フランシスの着想は当を得ており、これまでのストイックで頑強な精神を持つヒーロー像は、そのまま本作に於いても生彩を放つこととなる。
卑劣で狡猾な誘拐をテーマとする物語は、やや中弛みはありながらも結末まで緊張感を失うことはない。特に終盤に於ける「逆転劇」は周到で、流石はベテランといったところ。最後の最後で間抜けな失策を犯す誘拐犯の腰砕けぶりには脱力したが。 -
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ネタバレ3
ヒトラーの密命で、劣勢のドイツ軍の落下傘部隊がイギリスに降り立ち、休暇予定のチャーチルを誘拐しようとする話。落下傘部隊シュタイナ中佐やIRAのデヴリンなどを通して使命達成に賭ける人間を描いている。著者曰く50%は証拠書類がある史実らしいが、どこまでかは不明。話の詳細までついて行けない部分も。スパイ活動も交えて着々と準備を進めていくあたりや著者のルポの様子が冒頭と最後にあるあたり、モリィのデヴリンへの想いによる言動などなかなか面白い。続編も気になるところ。シュタイナのチャーチルまでたどり着くも打てなかったあたりと、実は影武者だったりあたりもなかなか面白い。アメリカに亡命したデヴリンの子を産んだモリィは別の人と結婚してるのは現実感。 -
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仕事場の方にすすめていただいて読みました。
競馬の話と聞き少し身構えましたが、読んでみたら意外とハマるものですね。
会計士として働く傍らアマチュア騎士の活動を続ける主人公は、夢だった多舞台のレースに出場し奇跡の大勝利をおさめた直後、何者かに誘拐されてしまう。
何とか逃げ出したものの、自分に迫る影におびえながら生活せざるを得なくなった主人公は、現状を打開する為に事件解決のために尽力する。
競馬界の闇に、正義を貫く会計士が挑む。
イギリスの作品らしい、独特の皮肉めいた文調が特徴的です。
わたしは小気味よく読むことができましたが、人によってはくどいと感じるかもしれません。
競馬に関する内容ではありますが、競馬のことをよく知らなくても楽しめるかと思います。
全体を通して非常にテンポがよく、読んでいてわくわくする素敵な作品だと思います。 -
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外交官の休暇中の冒険ということで、少し盛り上がりに欠けるような気がした。外交官という職業にあるやや皮肉な職業上の能力や、前任地が日本であったことから、日本人やその文化に関する言及があったりで、興味深い面もたくさんある。が、仕込みが多いわりには全体としてそれらが妙に細かくて、迫力がないのである。
医療関係の話というのは珍しいし、また被害者の巻き込まれる災禍は、想像すると頭が痛くなるようなものだと思う。そういう被害者を救う主人公という図式は、今までにもなんどかあったと思う。その被害者が実の兄だったり、親戚だったりあれこれだけど、ここまで「他人の不幸に首を突っ込む」的な流れだと、僕はちょっと素直に入り込めなかった。まあこのあたりも、外交官という職業に伴う主人公の性格の為なのかもしれない。
かなり凶悪な人間も登場するので、どうなるかと思いながら読んでいた。結末は割合あっさりしていて、そういったことも、盛り上がりに欠けるという印象の原因なのかもしれない。ラストの方の緊張感はなかなかなのだけど。
主人公の職業の生かしたとか、事件への巻き込まれ方とか、前作との共通点が多いように思う。そして、僕の個人的な感想では、どちらももう一つ成功していないように思う。
もっとも、フランシスの凡作は、他の作家の傑作のレベル以上だったりするのであるが。 -
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フランシスの作品としては、どちらかというと地味である。スタンダードな犯人捜しミステリなんだけど、その方法が、容疑者たちの心理分析、特に現在の人格がどのように形成されていったかを検証することとなっている。地味ではあるけれど、人間ドラマとして深みがある。
大金持ちの父親がいて、何人もの母、たくさんの兄弟たちがいる。父親と心を通わせることができる唯一の息子である主人公は、義母の一人を殺し、父親の命をねらう犯人を、まさに家族の中から捜さなければならない。財産目当てに父親に媚びを売っているとの蔑み、憎しみ、妬みの渦の中で。
ミステリとしては地味、小説としては深みがある。
エリート階級の多いフランシスの登場人物中でも、この父親はトップクラスだ。海外も含め、華やかな競馬場のシーンは印象的である。激しいお金の使い方も。もっとも、金持ちなのは父親であって、主人公はそれほど注目を集めていないアマチュアの騎士であるが。そのあたりで、妙に親子関係が予定調和しすぎている気がしてならない。もっと葛藤があるんじゃないかな。
また、ちらりと登場する主人公の恋人(愛人?)は強い印象を残すけど、なんだか唐突で、ぽつんと他から切り離されているような感じがして、少し不思議だった。 -
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読み終わって驚いたのは、実にシンプルでオーソドックスな犯罪捜査の物語であることだ。事件が起き、犯罪の専門家が呼ばれ、粘り強い捜査の結果的、真相と犯人を探り出す。まさに王道で、どちらかといえば、探偵ものというより、警察小説のような雰囲気がある。フランシスのファンとしてはそのあたりに物足りなさが残るのか、シリーズの中では評価が高くない作品だけど、なかなかどうして、すっきりしていて悪くない。
ただし「よい」と言えるかと言えばやっぱり言いづらく、いろいろな要素が軽く流れていってしまっている感は否めない。北欧が舞台ということで寒さが大きな要素になるんだけど、たとえばモスクアの話には迫力でかなわない。何人かのステキな女性が現れ彼女らに対する主人公の眼差しに身を乗り出すのだけど、「名門」のような切なさには届かない。友情も父子関係の相克も名誉や権力や名声の話も、つまりフランシスがシリーズで取り上げる様々なテーマがあふれているのだけど、全部が「ちょいみせ」という感じで物足りない。もうひとつつっこんでくれれば、名作になる要素はたくさんあるのにな。
だけど、犯罪捜査小説としては、十分水準に達しているし、最後の方の話の運びは、あとからじーんと心の奥にしみてくるような趣きで、正直言ってちょっと見直したのである。 -
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「競馬シリーズ」と一言で言っても、全作品にまたがる共通点は、競馬がテーマであることと主人公の性格くらいだろうか。あるいは、水準以上の作品揃いであることも共通点のひとつといってもいい。でも、共通点がそのくらいであるといいたいくらい、多様な物語が展開されている。
この作品は、なんとコンゲームである。敵の方は遠慮なく暴力を振るう連中であるが、主人公は頭脳の働きで勝負し、まるで詐欺師のような策略で見事に敵にいっぱいくわすのである。そのあたりの動きはなかなか痛快だし、愉快である。
主人公の職業がおもちゃ屋さんであるというのもいい。大金持ちだから描き方によっては嫌みになってしまう可能性もあったのだろうと思うけれど、ぎりぎりのところで踏みとどまっている感じがする。自分が成功者であることを本人が自覚していて、そのために受ける逆差別を皮肉な目で見つつも懸命に耐えている感じが伝わってくるからだろう。
恋愛がらみの話は、いつになく定石通り。一目惚れから始まってデートにこぎつけ、さらに発展していくあたりは、筆が沈着冷静なだけにかえってワクワクしている感じが伝わってくる。ただし、むしろこちらの部分に、ああこの人金持ちなのね、と読んでいて皮肉な気持ちになってしまうのは、たぶん僕が心の狭い人間だからだろう。
フランシス作品としてはまあまあ。読んでいておもしろいのは保証する。でも、息が詰まるようなサスペンスを期待するよりも、のんびりとした気持ちで楽しんだ方がいい本だと思う。