菊池光のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読んだことはなかったが、二文字の競馬ミステリの背文字は本屋さんでもお馴染みだった。本好き仲間が言うことには「へぇぇ、あれを一度も読んでないの? 一冊も?」
作者は2010年に亡くなってしまったけど息子さんが書き継ぐそうで。
もうそんなになるのか訃報は新聞で読んだが。
まぁ元気を出して!!ミステリは競馬だけでないし、最近は自転車も、宇宙船も、あれもこれも何処もかしこも殺人や詐欺や、誘拐で大騒ぎなのに。と言いながらも、元気づけのために読んでみた。
う~~ん、これはやはり初期作品のハードボイルド。でも読んでいって、いつの間にかフランシスさんの手の内に取り込まれた。
歴史と階級の英国、競馬界も -
Posted by ブクログ
もう何十年前になるのでしょうかその位前からお気に入りの一作です。
舞台は第二次世界大戦のドイツとイギリスです。戦局が思わしくない事から英国首相チャーチル氏の誘拐もしくは殺害を企てます。しかし、それはヒトラーからの指示ではなく親衛隊長官による秘密の作戦となります。
国防軍情報部に務める隻腕・隻眼のベテラン士官ラードル中佐は親衛隊ヒムラー長官によってこの突拍子もない作戦を実施するよう強要されます。
計画を遂行する為には優秀な指揮官が必要ということで白羽の矢が立てられたのはクルトシュタイナ中佐です。彼も開戦から戦って来たベテランです。本国へ帰国する際に立ち寄ったポーランドにてユダヤ人少女を助けた事 -
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文句なしに面白い!とはこの小説のことだろう。
第二次世界大戦中のドイツ軍落下傘部隊による英国本土でのチャーチル誘拐、という暴挙とも言える作戦に、
作戦を指揮するドイツ軍将校も落下傘部隊の歴戦の勇士も諦観の域で死に場所を求めるかのように、士気高く遂行していく。
抗いきれない立場であろうとも、自分の意思に信念を持って行動することこそが人間の最も優れた価値であることを極上に面白い娯楽小説の形で明朗に伝える。
なんといっても魅力あふれる登場人物の面々。男も女も皆とにかくヒロイックで、自分の思っていることを闊達にシニカルに語る。そして例え獄中であっても決して信念を曲げない。
また航空機、船艇、小火器など -
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冒険小説を読みたくなって、とりあえず傑作といわれる本書を読んでみた。第二次世界大戦中にドイツ軍が英国のチャーチル首相を誘拐(または殺害)を企てて実行するまでの物語。登場人物が実在の人なのでとてもリアリティーに満ちた展開となっている。一方で、史実ではチャーチル首相が誘拐されたり殺害されたりしたことはないので、作戦が失敗することも分かっている状態で読み進めることになる。普通は結末が分かっていたら楽しく読めないものだが、本書は登場人物の内面を含めて丁寧に描写することで、その結末に至った過程をドキドキさせながら読ませてくれる。ドイツ軍と英国の人びとをどちらが敵かという観点で描いていないのがいい。純粋に
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ネタバレ第二次世界大戦の最中、ドイツ軍は落下傘部隊を英国本土に降下させ、時の首相チャーチルを誘拐する作戦を立案します。
この荒唐無稽で無謀な作戦に参加することになったのが、シュタイナ中佐率いる部隊。
歴戦で活躍した英雄ながら、ある事件でユダヤ人少女を庇った格好になり、部隊ごと危険任務につかされ冷遇されていたシュタイナは、「自分は冒険家だ」の言葉とともに、この空前絶後の任務に挑みます。
作戦決行のその日まで、厳しい訓練を繰り返し結束を固めるシュタイナと部下、作戦に関わる他のメンバーの姿に、手に汗握り胸を熱くしながら「がんばれ、がんばれ」とエールを送っている自分がいました。
「鷲は舞い降りた」
部隊が -
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ディック・フランシス競馬シリーズ34作目(全44作)の主人公は、唯一3度目登場のシッド・ハレー。
馬の脚が切断される残忍な事件が相次ぎ、容疑者として浮かび上がったのは、なんと騎手時代の好敵手で親友でもあるエリス・クイントだった…。
冒頭というかカバー背表紙で既に読者には犯人が判明しているのだが、それでも事件発生から真相に迫るまでの過程が面白く、全然飽きない。
今作でもやはりハレーはどん底に突き落とされるのだが、これまでの作品とはまた異なる地獄である。
犯人に気付いたハレーは苦悩と葛藤の末エリスを告発するのだが、エリスは今や国民的タレントであるので、逆に世間から執拗になじられるのだった。親し -
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今作の主人公は、ディック・フランシス競馬シリーズの中では珍しく2回目登場のシッド・ハレー。
前作で生ける屍だった彼は絶望の中から自分を取り戻し、今作ではフリーの敏腕調査員となっている。とはいえ、やはり輝かしい騎手時代への未練は捨てきれないようだ。
次々とレース生命を絶たれていく競走馬&競走馬のシンジケートに関する不正を追う中で、凶暴な悪党から壮絶な脅迫を受けるハレー。本作はそんなハレーの恐怖を軸にストーリーが展開していく。
なぜタイトルが「利腕」なのかを理解できた時、ページを読み進める手が進まなくなるほど恐ろしかった。
なんと、本作では不屈のヒーロー・ハレーが恐怖におののき悪党から一度は尻 -
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私が初めてディック・フランシスの作品に触れた記念すべき一冊。
冒頭、腹を撃たれている主人公が目を覚ます場面からぐいぐい話に引き込まれ、寝る間も惜しんで最後まで貪り読んだ。
とにかく、主人公シッド・ハレーの内面の描写が秀逸なのである。
ストイックな不屈のヒーローではあるのだが、後ろ向きな感情の生々しい描写によって生身の人間以上の人間臭さを与えられている。
例えば、
競馬レース中の事故で失った左手の機能とチャンピオン騎手人生に対する執着や、人生への絶望・無気力。五体満足でない自分自身に対する恥辱の念。執拗に自分へ危害を加えようとする黒幕への恐怖…など。
周囲の人々との関わりの中で少しずつ魂の苦し -
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私は冒険小説は嫌いだと信じ込んでいた。
そんな思い込みを覆してくれたのが、同じくドイツ在住で私のミステリファン仲間のY子ちゃんなのであります。
今回、手術後、家で療養すると聞いたY子ちゃん。「いいから何も言わず読みなさい!」と送ってくれたのであります。(感謝してるよん、Y子ちゃん)
それにナチが出てくるし、著者はイギリス人でしょ~っていうことはどうせドイツ人が悪者で・・・と思いながら読み始めると~メチャ面白いのよ!
ナチかぶれの非人道的なドイツ人ばかりじゃないということを書いてくれて、私はとってもうれしかったのであります。
極秘で遂行されたチャーチル誘拐作戦。
念には念を入れて計画されたことだ -
Posted by ブクログ
ディック・フランシスのエンタテインメント「競馬ミステリ・シリーズ」
後期の充実した一作といえるでしょう。
今回の主人公は、英国ジョッキー・クラブの保安員トー・ケルジイ。
まだ29歳のイギリス人だが、18で財産を継いだと同時に天涯孤独となった大金持ちで、世界中を放浪し、馬に関係のある仕事を転々としてきた後に、スカウトされた。
競馬界を管理する権威ある組織に属する諜報部員のような存在。
もともとあまり目立たない外見で、少し変装するだけでまったく人に気づかれない特技を持つ。
イギリスで大きな不正を行ったと思われる危険人物フィルマーが、裁判では無罪となった。
フィルマーがカナダの競馬界に食い込もう