菊池光のレビュー一覧
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ネタバレイギリスの作家、ディック・フランシスの競馬シリーズ第三弾。
オーストラリアで牧場を営むダニエルは、イギリス障害レースの理事であるオクトーバー卿から不正の調査を依頼される。幾度とも絶対に勝てない馬が勝ち、勝ち馬は興奮状態にあったが、薬を打たれた形跡もない。ダニエルは厩務員を装い、色々な厩舎を回るが…
前二作と異なり、今作はサスペンス色は薄まり、一方で非常にスパイ小説の色が濃い。これもまた雰囲気が異なり楽しめる。
何より主人公のダニエルは、不行不屈としか言いようがないほどの忍耐強さを見せる。タフガイとはこういうものかと笑。それほどまでに酷い状況に陥るのだが、全ての逆境を耐え切り、乗り越える姿が -
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高校生のころ読んで以来の再読。
主人公シッド・ハレーの名まえをかろうじて覚えている程度。
最近『利腕』を読んで前日譚の本書が気になった。
50年近く前の作品であるだけに現代との違いを強く意識しながら読んだ。
携帯電話のない時代、外へ出てしまったあとの連絡の取り方やオフィスにいても
回線が少なく電話をするのに回線の空きを待たなければいけないインフラ環境。
急ぎのレポートを社内で手渡しするだけのためにいる坊やなど、そのころすでに
生まれていた私から見ても、なにか戦前のストーリーのように思えて見えた。
現代の多くの人が感じている生きづらさの理由が我々の身体の態勢が環境変化のスピードについていけないか -
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ネタバレ競馬シリーズ33作目。
今回は映画業界のお話で、
調教師の妻が自殺した事件の映画を撮っている映画監督トマスが主人公。
トマスは祖父が調教師であり、自身も以前障害競走の騎手であった。
そのころからの知り合いだった、
元装蹄師で競馬ジャーナリストの老人から死ぬ間際の奇妙な告解を聞くことになる。
記者の死後にやってきた甥は、トマスが書籍を相続すると聞いて明らかに動揺し、
無効だと騒ぎだす。
一方、映画の撮影中にトマスの元に、
映画の作成を中止しろという脅迫がナイフとともに届き、
さらに、主演男優のスタントマンがナイフで切りつけられる…。
撮影の過程にはあまり興味がわかなかったが、
自分が監督を -
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ネタバレ競馬シリーズ26作目。
次から次へと違う主題の話をよく考えつくことができるな、と感心する。
本当に。
主人公イアンの父親の五番目の妻が殺されたところからはじまるが、
その犯人探しよりも、
家や外出先で襲われた父親を守る方に話が進んでいく。
父親は投資家で非常な金持ちとあって、
3人の元妻(1人は事故死した)とイアン以外の8人の子供たちとその配偶者は、
父親の居場所を知りたがっているが、
それは金を求めてのことなのか、
それと殺そうとしてのことなのか。
イアンはアマチュアの障害騎手で調教師の職を辞めたばかり、
父親のガードマンとして、探偵役として、
家族ならぬ部族への渉外役として働く。
父 -
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ネタバレ競馬シリーズ23作目。
本当に次から次へと、面白い主題を見つけてくる。
しかも、上手に競馬を絡ませてくる。
今回はワイン。
素人でも聞いたことがある銘柄の名前が出てきて、
なんかそれだけで楽しくなってくる。
少年のころから目隠ししたままチョコレートも銘柄を当てられた主人公トニイは、
フランス、ボルドーのワイン商の家にホームスティしたことから、
ワインに興味を持ち、味を識別できる訓練を受け、ワイン商となる。
祖父、父と軍人の家に生まれながら、その道へ進むことがなかったトニイは、
しかも、最愛の妻を亡くしたばかりで、
独りで生きる人生に意味を見失っていた…と、かなり興味深い。
しかも、
冒頭 -
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ネタバレ競馬シリーズ22作目。
今回は誘拐がテーマ。
作者によると実在するらしい組織、
誘拐を防いだり解決する会社の社員が主人公だ。
合理的であり我慢強く、誘拐に関する知識も深く、
動揺する家族に寄り添うが感情に流されることはない。
そんなアンドルーが、
イタリア、イギリス、アメリカで誘拐を解決するだけでなく、
誘拐の被害者の女流騎手に恋愛感情を抱いていくところがポイントか。
といっても、
助け出された彼女が当然依存してくるのを利用することなく、
経験からくる理性的助言で体と心の健康を回復するのを助けていく。
その知性的で紳士的な態度が素晴らしい。
元空軍特殊部隊員の同僚トニイとともに、
子供の -
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ネタバレ競馬シリーズ18作目。
「利腕」というタイトルで気が付くべきだった。
ミステリーファンとしては。
障害競馬の元チャンピオンにして、
左腕が義手の探偵ハレーが戻ってきた!
言い訳をさせてもらえば、
この競馬シリーズで今まで主人公が同じ作品は皆無だったので、
全く予想していなかった。
前作「大穴」の最後では、
探偵社を買い取る話になっていたはずだったが、
社長が急死、甥がしゃしゃり出てきて一探偵に戻っていた。
元妻に知らない間に詐欺の片棒を担がせた男を探し、
本命馬が大きなレースで惨敗し、しかも調子を悪くする原因を調査し、
ジョッキィ・クラブの保安部次長を調べ、
と大忙し。
元妻の言動に -
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ネタバレ競馬シリーズ16作目。
会計士でもあるアマチュア騎手のブリトンは、
大レースで運よく優勝したその日に誘拐され船に閉じ込められる。
なんとか逃げ出し泳ぎ着いた岸で、
一人旅の女性に助けられ、家に戻ることができる。
会計士の仕事で不正を暴いた相手なのか。
馬主にブリテンを乗せるなと言っていた調教師なのか。
さらに再度さらわれ、今度はバンに閉じ込められる。
閉じ込められて殺されなかったことからいって、
身近な人物が犯人だろうなー、
しかも狙われたのは騎手としてではなく会計士としてだろう、
とすると共同経営者が怪しい…と導かれていったが、
その通りだった。
助けてくれた女性が、その後閉じ込めら -
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ネタバレ競馬シリーズ11作目。
「骨折」もそうだったが、冒頭の展開が素晴らしい。
いきなり主人公が危険な目に遭っていて引き込まれる。
といっても、
前回の本物の誘拐と違って、
今回は映画のワンシーンだが。
馬に乗ったスタントマンから人気の映画スターになったリンカンは、
母親のように思っていた女性からのお願いで、
南アフリカに不調の競走馬の様子を見に行くことになる。
もちろん映画スターなので、そう簡単にはいかず、
いつもは引き受けないキャンペーンに協力するふりをして、
エージェントや映画会社を驚かせながら。
記者会見の席で録音用マイクの事故が起き、
インタビュアーが死にそうになる。
競走馬の不振と -
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カッコいい!
出てくる人、みんな、カッコいい!
第二次世界大戦中の1943年秋ドイツ、東部戦線の失敗・イタリアの敗北で戦況は悪化するなか、イギリス首相のチャーチルをイギリス本土から誘拐する計画が持ち上がり、ドイツ軍落下傘部隊の精鋭たちが……。
この小説は「歴史小説」ではない。
チャーチルは誘拐されていないし、ドイツは1945年春に降伏する。
ましてや、この物語にある事柄はどこにも記録されていない。
だからと言って「架空戦記」というわけでもない。
歴史とは「紙もしくはそれに準ずるものに書かれた事柄をもとにして推測され、広く認められた過去の出来事」
「記録されていない(認められていない)こと -
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ネタバレ競馬シリーズ4作目。
障害競馬のチャンピオンにまでなったハレーは、
レース中に手を怪我をしたために騎手生命を絶たれ、
現在は探偵社競馬課に籍を置いている。
ただし遅刻しても誰も何も言ってこないような働き方で、デスクも無いのに、
たまたま見張りに出かけて銃で撃たれてしまう。
静養に来なさいと言ってくれたのは妻の父、
ただし妻とは別居中、
しかも義父はひどい罠を仕掛けていた…。
競馬場乗っ取りの謎解きもだが、
生きる目的も家庭も失い、
動かなくなった手をポケットに隠して生きていたハレーが、
人生を取り戻す過程が面白かった。
やはり事故で、顔に傷ができ片眼が義眼の女性秘書と出会い、
お互いの痛 -
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ネタバレ有名な「競馬シリーズ」だったので。
昔、NHKの海外ドラマで、
この競馬シリーズを見た気がするのだが、
そのドラマとは全然違っていたので少し驚いた。
甘く、若く、華やかだった。
後で調べたら、
ドラマは途中で登場する競馬専門の探偵を主人公にしたものだった。
主人公アランは南ローデシア出身の障害競馬の騎手だが、プロではなく、
貿易会社の社長の息子。
と言ってもボンボンではなく、
十歳のころから父に連れられ、ワニ狩りに行っていたとか。
親友であり、その家庭に住まわせてもらっているトップ騎手が、
レース中に目の前で落馬して亡くなる。
アランは走路に針金を見つけ、警察に事故ではないと届けるが、
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“たとえどのようにいわれようと、彼は、勇気のある立派な軍人であった“
もちろんかの悪名高きナチス・ドイツにもいたのです
誇り高く、勇気があり、友情に厚く、公平で、命に真っ直ぐな人物が
そしてもちろん『鷲は舞い降りた』は冒険小説の歴史に燦然と輝く名作でした
3人の主人公とも言えるドイツ落下傘部隊長クルト・シュタイナ中佐、アプヴェールZ部第3課課長マックス・ラードル中佐、IRAの兵士リーアム・デヴリン、この3人がとんでもなく魅力的で、心を鷲掴みなわけです鷲だけに(いらないやつ)
特にシュタイナ中佐はもうめちゃくちゃに格好良くて部下たちが彼のために命を投げ出すのを有無を言わさず納得させられて -
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ネタバレ冒険小説の古典的名作.
物語は,歴史に埋もれた驚愕の出来事の手がかりを,作者であるヒギンスが発見する1章で始まり,ヒギンスが主人公たちの後日談を知る20章で結ばれる.
劣勢が明らかになってきたドイツ軍が「チャーチル誘拐計画」を立案する.ここに一癖も二癖もある主人公たちが巻き込まれてゆくのだが,ステレオタイプの「ナチ」的な人物は1人もおらず(いや,主人公たちの”邪魔をする”のはヒムラーやSSをはじめとする典型的な悪党なのだが),彼らはみな血が通った普通の格好いい人たちとして描かれている.オルガンが特技だったり,バードウォッチングが趣味だったり,溺れた地元の子供を助けたりするのだ.
チャーチル -
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ネタバレ冒険小説、と言われているが、冒険というより『戦争もの』という表現のほうがやはりしっくりくる本。
そして、第二次世界大戦を扱った小説としての、オールウェイズベスト。星5つ。
なお、評者は「その当時の価値観のとおりに描写してるんだから、女性やら外国人やらへの扱いがアレで何が悪い。ポリコレとかいう歴史改ざんは文化への冒涜」という立場である。
そして本作におけるそういう点は、
「変な改ざんをしてないからGood!」
である。
主人公クルト・シュタイナの「軍人とは何か」という筋の通し方が際立つ。
それはやはり、名脇役リーアム・デヴリンの「俺ぁアイルランド人だから、産まれた時からクレイジーなんだ」とい -
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さぁディック・フランシスだ!
大好きな作家さんでハヤカワ文庫版で全巻持ってたんですよね
本当はブックリストを作りたかったんですが
うろ覚えの状態で3冊選ぶのはちょっと難しいので断念しました
そこでひとまず間違いなくベストの一冊のシッド・ハレー登場作『大穴』を読み直しました
やっぱりすごい面白かったです!
自分がディック・フランシスを読み始めたのは高校生の頃なんですがちょうどその頃競馬にどハマリしてまして(ん?)、もちろん小さい頃からミステリーも大好きで
こんな大好きな競馬+ミステリーって自分のために書かれたようなもんじゃん!と思い手に取ったんですが…自分のために書かれた物語でしたw