【感想・ネタバレ】鷲は舞い降りた〔完全版〕のレビュー

あらすじ

首相チャーチルを誘拐せよ! ヒトラーの密命をおびて、シュタイナ中佐ひきいるドイツ落下傘部隊の精鋭はイギリスの片田舎に降り立った。使命達成に命を賭ける男たちの勇気と闘志を謳いあげた戦争冒険小説の最高傑作――初版刊行時には削除されていたさまざまなエピソードが追加され、より完全になった決定版。

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Posted by ブクログ

カッコいい!
出てくる人、みんな、カッコいい!

第二次世界大戦中の1943年秋ドイツ、東部戦線の失敗・イタリアの敗北で戦況は悪化するなか、イギリス首相のチャーチルをイギリス本土から誘拐する計画が持ち上がり、ドイツ軍落下傘部隊の精鋭たちが……。

この小説は「歴史小説」ではない。
チャーチルは誘拐されていないし、ドイツは1945年春に降伏する。
ましてや、この物語にある事柄はどこにも記録されていない。
だからと言って「架空戦記」というわけでもない。

歴史とは「紙もしくはそれに準ずるものに書かれた事柄をもとにして推測され、広く認められた過去の出来事」
「記録されていない(認められていない)こと」が「なかったこと」と同じではないところを、作者は物語の構成で巧みに活用し、「作者自身が取材し集めたレポート」として、巻頭と巻末に挿入することで、とたんに登場人物たちの物語の実存性が高まる。
「もしかしたら、本当にあったかもしれない…」、こう思わせてしまうことですでに作者は成功している。

当時珍しい“ドイツ軍兵士が主役”ではあるが、当然にこの物語も映画化された。
監督は「OK牧場の決闘」「荒野の七人」「大脱走」などで知られるジョン・スタージェス。

この物語も、カッコいい人満載!
ほんと、感想は「カッコいい」に尽きる!

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2023年01月16日

Posted by ブクログ

“たとえどのようにいわれようと、彼は、勇気のある立派な軍人であった“

もちろんかの悪名高きナチス・ドイツにもいたのです
誇り高く、勇気があり、友情に厚く、公平で、命に真っ直ぐな人物が

そしてもちろん『鷲は舞い降りた』は冒険小説の歴史に燦然と輝く名作でした

3人の主人公とも言えるドイツ落下傘部隊長クルト・シュタイナ中佐、アプヴェールZ部第3課課長マックス・ラードル中佐、IRAの兵士リーアム・デヴリン、この3人がとんでもなく魅力的で、心を鷲掴みなわけです鷲だけに(いらないやつ)

特にシュタイナ中佐はもうめちゃくちゃに格好良くて部下たちが彼のために命を投げ出すのを有無を言わさず納得させられてしまうわけです

またラードルの苦悩とそれによって浮かび上がるヒムラーとゲシュタポの不条理な残忍さ

デヴリンが出会う真実の恋と別れ

もう怒ったり、笑ったり、泣いたりと大忙しなわけです

人の持つ全ての感情を揺さぶる名作、それが『鷲は舞い降りた』なわけです

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2022年09月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

冒険小説の古典的名作.

物語は,歴史に埋もれた驚愕の出来事の手がかりを,作者であるヒギンスが発見する1章で始まり,ヒギンスが主人公たちの後日談を知る20章で結ばれる.
劣勢が明らかになってきたドイツ軍が「チャーチル誘拐計画」を立案する.ここに一癖も二癖もある主人公たちが巻き込まれてゆくのだが,ステレオタイプの「ナチ」的な人物は1人もおらず(いや,主人公たちの”邪魔をする”のはヒムラーやSSをはじめとする典型的な悪党なのだが),彼らはみな血が通った普通の格好いい人たちとして描かれている.オルガンが特技だったり,バードウォッチングが趣味だったり,溺れた地元の子供を助けたりするのだ.

チャーチルが誘拐されたことはない,ということは後の世に生きる我々は知っている.従って,作戦が失敗することは我々みんなが知っているのだが(しかも,とんでもない失敗だったことが20章で明かされる),しかし,プロットの巧みさと,登場人物たちの魅力が,本書を腐朽の名作としている.

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2022年09月24日

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ネタバレ

冒険小説、と言われているが、冒険というより『戦争もの』という表現のほうがやはりしっくりくる本。
そして、第二次世界大戦を扱った小説としての、オールウェイズベスト。星5つ。

なお、評者は「その当時の価値観のとおりに描写してるんだから、女性やら外国人やらへの扱いがアレで何が悪い。ポリコレとかいう歴史改ざんは文化への冒涜」という立場である。
そして本作におけるそういう点は、
「変な改ざんをしてないからGood!」
である。

主人公クルト・シュタイナの「軍人とは何か」という筋の通し方が際立つ。
それはやはり、名脇役リーアム・デヴリンの「俺ぁアイルランド人だから、産まれた時からクレイジーなんだ」という人間味(放埓ともいうw)描写があってのことだろう。

次作『鷲は飛び立った』ではほぼリーアムが主役なので、読むのが楽しみである。

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2022年04月28日

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ネタバレ

英本土に空挺降下してチャーチルを誘拐するという、ヒトラーの妄想が現実的になる情報が諜報員から伝達される。
これは史実をモチーフにした話なので結果は既に分かっている。
チャーチル誘拐は失敗しドイツは敗戦する。

小説の大半は空挺降下作戦の準備を描いており、それが上手くいくほどにどうしてこれが失敗するのだろうかという好奇心が湧く。

ヒムラーの横槍と部下の道徳心のために作戦は失敗するのだが、失敗してからのドイツ空挺兵たちが実に潔い。
この時代にドイツ兵を明確な悪役として描かなかったというのがすごい。

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2021年10月22日

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登場人物全員のキャラ立ちが凄い。
一人1冊分の背景が見えるから恐れ入る。
これが現実にあった話かどうかは、
最早どうでもいい。
だって、鷲は舞い降りたのよ?
で、このあと飛び立つのよ。
これでときめかない人は冒険小説読むのやめなさい。
ライトノベルでニャンゴロしとけ。

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2021年07月04日

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やはり泣ける。内藤陳氏が紹介していた当時に以前の版を読んでいて、この完全版が出たことを知って、久しぶりに読んだ。今回は、登場人物等を丁寧にノートに取りながら読んでいった。久しく眠らせていた冒険小説愛が再燃し始めてしまった。

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2020年05月18日

Posted by ブクログ

もう何十年前になるのでしょうかその位前からお気に入りの一作です。

舞台は第二次世界大戦のドイツとイギリスです。戦局が思わしくない事から英国首相チャーチル氏の誘拐もしくは殺害を企てます。しかし、それはヒトラーからの指示ではなく親衛隊長官による秘密の作戦となります。
国防軍情報部に務める隻腕・隻眼のベテラン士官ラードル中佐は親衛隊ヒムラー長官によってこの突拍子もない作戦を実施するよう強要されます。
計画を遂行する為には優秀な指揮官が必要ということで白羽の矢が立てられたのはクルトシュタイナ中佐です。彼も開戦から戦って来たベテランです。本国へ帰国する際に立ち寄ったポーランドにてユダヤ人少女を助けた事から軍法会議に掛けられてしまって懲罰部隊に配属させられます。
国防軍の士官であるシュタイナを親衛隊が好き勝手に出来るのは実は物語的な演出です。実際には軍は親衛隊の告発から身内を守って引き渡さない事が多々ありました。主人公となるシュタイナの悲劇性の演出というべき箇所となります。
懲罰部隊にいるシュタイナをチャーチル誘拐作戦の指揮官とすべくラードル中佐が勧誘に動き生き残りと共に捕獲した輸送機を使ってイギリスへ潜入します。
何もしらないイギリスの田舎町。首相が週末をゆっくりと過したいという事からごく少数の関係者だけが首相の来訪をしっています。
果たして作戦は成功するのでしょうか?

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2019年05月03日

Posted by ブクログ

冒険小説の世界では、間違いなく5本の指に入るであろう名作。

敗戦濃厚なナチス・ドイツ軍が放った作戦は、イギリスの首相チャーチルの誘拐。
イギリス上空から英国の片田舎に侵入し、静かな週末を過ごしに来たチャーチルをかっさらう。
実行部隊の侵入成功を告げる連絡、それこそまさに「鷲は舞い降りた」

戦時中でいつ死ぬかもわからないからこそ、どこまでもクールに、そしてアツい登場人物たちに惹かれない読者なぞ果たしているのだろうか。
冒険小説が好きなら絶対に読むべき。公開することは絶対にない。

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2019年01月12日

Posted by ブクログ

文句なしに面白い!とはこの小説のことだろう。
第二次世界大戦中のドイツ軍落下傘部隊による英国本土でのチャーチル誘拐、という暴挙とも言える作戦に、
作戦を指揮するドイツ軍将校も落下傘部隊の歴戦の勇士も諦観の域で死に場所を求めるかのように、士気高く遂行していく。
抗いきれない立場であろうとも、自分の意思に信念を持って行動することこそが人間の最も優れた価値であることを極上に面白い娯楽小説の形で明朗に伝える。
なんといっても魅力あふれる登場人物の面々。男も女も皆とにかくヒロイックで、自分の思っていることを闊達にシニカルに語る。そして例え獄中であっても決して信念を曲げない。
また航空機、船艇、小火器などの武装から服装や酒、タバコの銘柄までディテールにこだわることでリアリティを演出することに一役買っているが、描写がくどくどしくないのでスピード感に影響させない(もはや馴染みのない機種名や銘柄が登場しても、Google画像検索が楽しみを後押ししてくれる)。
なかでもカバーアートにも描かれているダグラスDC-3がなんといっても印象的。
夢中で読んで「あ!面白かった!」と声に出るほど感嘆した。

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2017年12月12日

Posted by ブクログ

ハードボイルドの古典的名作。
多分、だいぶ昔に読んだような気がしたんですが、現在は家の本棚になく、改めて読みたくなって購入。
さすが「古典的名作」、めちゃめちゃおもしろいです。
また何年か後に再読します。

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2017年08月19日

Posted by ブクログ

冒険小説を読みたくなって、とりあえず傑作といわれる本書を読んでみた。第二次世界大戦中にドイツ軍が英国のチャーチル首相を誘拐(または殺害)を企てて実行するまでの物語。登場人物が実在の人なのでとてもリアリティーに満ちた展開となっている。一方で、史実ではチャーチル首相が誘拐されたり殺害されたりしたことはないので、作戦が失敗することも分かっている状態で読み進めることになる。普通は結末が分かっていたら楽しく読めないものだが、本書は登場人物の内面を含めて丁寧に描写することで、その結末に至った過程をドキドキさせながら読ませてくれる。ドイツ軍と英国の人びとをどちらが敵かという観点で描いていないのがいい。純粋に冒険小説としてフェアに書かれている。戦争なんて悪も正義もないと訴えているようにも感じた。本作品に登場するドイツ軍は当時の論理的な正義で作品を実行したにすぎないのだから。とにかく読みやすくて面白い。傑作といわれる理由は分かる気がする。

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2016年06月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第二次世界大戦の最中、ドイツ軍は落下傘部隊を英国本土に降下させ、時の首相チャーチルを誘拐する作戦を立案します。
この荒唐無稽で無謀な作戦に参加することになったのが、シュタイナ中佐率いる部隊。
歴戦で活躍した英雄ながら、ある事件でユダヤ人少女を庇った格好になり、部隊ごと危険任務につかされ冷遇されていたシュタイナは、「自分は冒険家だ」の言葉とともに、この空前絶後の任務に挑みます。

作戦決行のその日まで、厳しい訓練を繰り返し結束を固めるシュタイナと部下、作戦に関わる他のメンバーの姿に、手に汗握り胸を熱くしながら「がんばれ、がんばれ」とエールを送っている自分がいました。

「鷲は舞い降りた」
部隊が予定どおり、本土への上陸を成功させたという暗号が打電された場面では、思わずガッツポーズを取ったほどです。

ただ、フレデリック・フォーサイスの「ジャッカルの日」で描かれた、フランスのドゴール大統領の暗殺計画同様、チャーチルがドイツ軍に誘拐も暗殺もされなかったのは歴史的事実です。
つまるところ、身も蓋もない言い方をするなら、ここからは「いかに計画が失敗していくのか」という物語なのです。

それでも、彼らの作戦を最後まで読み終えて、どこか清々しい気分で拍手を送りたい気持ちになること請け合いです。

スリルあり、ロマンスあり、人間ドラマありの彼らの冒険を、ぜひとも、多くの方々共有してほしいと思います。

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2016年01月16日

Posted by ブクログ

冒険小説。ナチスが完全なる悪者として描かれていない。個々の信条や正義のもと、未来に希望が無くとも任務を遂行する格好良さがある。戦闘描写や死に様が鮮やかだった。

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2015年10月08日

Posted by ブクログ

私は冒険小説は嫌いだと信じ込んでいた。
そんな思い込みを覆してくれたのが、同じくドイツ在住で私のミステリファン仲間のY子ちゃんなのであります。
今回、手術後、家で療養すると聞いたY子ちゃん。「いいから何も言わず読みなさい!」と送ってくれたのであります。(感謝してるよん、Y子ちゃん)
それにナチが出てくるし、著者はイギリス人でしょ~っていうことはどうせドイツ人が悪者で・・・と思いながら読み始めると~メチャ面白いのよ!
ナチかぶれの非人道的なドイツ人ばかりじゃないということを書いてくれて、私はとってもうれしかったのであります。
極秘で遂行されたチャーチル誘拐作戦。
念には念を入れて計画されたことだったんだけど、ホンの些細なことから計画に狂いが生じてきます。
登場するドイツ兵たちがいい人ばっかりで・・・泣けますよん。
言うまでもありませんが、ヒギンズ作品は初挑戦であります。
続編「鷲は飛び立った」を読まなきゃ~!

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2014年03月30日

Posted by ブクログ

1975年に発表されたベストセラー小説。
1943年ナチスドイツ下落下傘兵精鋭部隊がイギリス首相チャーチルを誘拐する作戦を実行しようとする話。
「イーグルハズランデッド」という言葉だけでもうすでにかっこよすぎる。
登場人物それぞれのキャラクターも無駄なく表現され、シュタイナ中佐もケーニヒもすばらしくかっこよい。残虐なドイツ兵という印象を忘れさせる。
戦争は無意味なことの積み重ねだと思うが、無駄なことだとわかっていながらやらねばならないことを貫くところに、胸をつく話がうまれるのだとあらためて思わせる作品である。

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2014年01月08日

Posted by ブクログ

これは本当におすすめです!
いわゆる冒険小説。チャーチルを誘拐するため、ドイツ軍の落下傘部隊がイギリスの田舎町に降り立つ。無慈悲に描かれることが多いナチスのドイツ兵、そのひとりひとりがなんともいえない味を出す。さらにIRA闘士もそこに絡んで。このジャンルを代表する1冊であることは間違いない。ストーリーで読ませる。登場人物の魅力で引き込む。
タイトルを知りながら、今日まで読んでいなかったことを後悔。
海外小説は翻訳がいまいちだから、とかなんとか言ってる人は本当におもしろい小説がどんどん流れ落ちていくのでしょうね。

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2013年12月29日

Posted by ブクログ

ナチスドイツのあるムチャな作戦を任命された、最強落下傘部隊の話。
ほぼ実話。かっこよく描かれたドイツ兵の小説。すごく面白いです。

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2013年10月12日

Posted by ブクログ

 読むのは何度目くらいになるだろうか。もう自分でも良く思い出せない。初めて読んだのはいつ頃か。大学生の頃か、社会人になった頃か。マクリーンから始まって、冒険小説を読みあさっていた頃に手にした。「深夜+1」を先に読んでいたのだと思う。

 改めて読んでみて、こんなにサービス精神満載の作品だったんだなあとびっくりした。読み始めの展開、つまりノンフィクションとフィクションの境界を曖昧にしながらルポ的に始まるあたりから、作戦の進行をある意味淡々と書いていくあたりは、後のフォーサイスを読んでいるようである。中盤から後半にかけて、サスペンスにあふれる犯罪小説的であったり、アクション満載の戦争小説であったり、ラストのそこはかとなく皮肉な結末まで、実にいろいろな要素を盛りこみながらぐんぐんと読者を引き込んでいく物語の力は、名作と言うにふさわしいものだと感じる。

 登場人物は誰も印象的。作者に愛されている立派な人物が多い中で、はっきり敵役・憎まれ役として描かれている人物が露骨にいて、それが少し残念な感じがする。第二次世界大戦を背景にしているのだがら、逆にこの程度は最小限として認めるべき(むしろドイツ側に素晴らしく魅力的な人物が多いことを考えるなら)なのかもしれない。

 自分なりの正義と美学を貫く力強い軍人に魅力的な人物が多いが、出色なのはアイルランドのテロリストだろう。ただ彼の場合は評価が分かれるところがあるかもしれない。いろんな意味で興味を引かれる人物だし正直かっこいいと思うけれど、こういう作戦をするにはあまりにも雑な部分が多いような気がするし「おいおい、そんなことをやっている場合かよ」とツッコミを入れたくもなる。でもそこが魅力なのも間違いなく、作者自身もとても気に入っていることが読んでいてわかる(実際この後もいろんな作品に再登場したりする)。

 とにかく読み応えがあり、とことん楽しませてもらえる作品である。作者の特色である(と僕は勝手に思っているが)男のロマン、哀愁、誇りといったものもたっぷりと盛りこまれて、さっくりとしたハイボールかと思って吞みはじめたら濃厚で香り高いストレート・ウイスキーだったような印象である。たくさんの人に読まれてほしいし、絶版になどなってほしくない作品である。

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2025年10月13日

Posted by ブクログ

イギリスの作家「ジャック・ヒギンズ」の冒険小説『鷲は舞い降りた(原題:The Eagle Has Landed)〔完全版〕』を読みました。

「ディック・フランシス」、「コリン・デクスター」、「ボブ・ラングレー」に続き、イギリス作家の作品です。

-----story-------------
鷲は舞い降りた!
「ヒトラー」の密命を帯びて、イギリスの東部、ノーフォークの一寒村に降り立ったドイツ落下傘部隊の精鋭たち。
歴戦の勇士「シュタイナ中佐」率いる部隊員たちの使命とは、ここで週末を過ごす予定の「チャーチル首相」の誘拐だった!
イギリス兵になりすました部隊員たちは着々と計画を進行させていく…使命達成に命を賭ける男たちを描く傑作冒険小説―その初版時に削除されていたエピソードを補完した決定版。
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『東西ミステリーベスト100』で海外篇の19位として紹介されていた作品です、、、

「チャーチル首相」を誘拐せよ!という奇想天外な作戦、使命達成に命を賭ける「シュタイナ中佐」率いるドイツ落下傘部隊の精鋭たち、男たちの勇気と闘志を謳いあげた傑作でしたね… 愉しく読めました。


イギリスのノーフォーク北部にある田舎町スタドリ・コンスタブル、この地を取材で訪れた「ジャック・ヒギンズ」は、教会の墓地の片隅に隠匿されていた墓石を発見する… そこには「1943年11月6日に戦死せる「クルト・シュタイナ中佐」とドイツ降下猟兵13名、ここに眠る」と刻まれていた、、、

奇妙な墓碑銘の真実を探す旅を始めた「ヒギンズ」はやがて、かつてドイツ軍が実行したある作戦を知る… 時代は第二次世界大戦まで溯ることに。

1943年、ナチス・ドイツの敗色が濃厚となる中、幽閉されていた「ムッソリーニ」を「オットー・スコルツェニー」が指揮する空軍降下猟兵部隊と親衛隊特殊部隊が救出した一件は「ヒトラー」を狂喜させ、宿敵「チャーチル」の誘拐を口にさせる… 軍情報局長官の「ヴィルヘルム・カナリス提督」は、所詮は総統の思いつきに過ぎない、到底実行不可能なこの考えを、部下の「ラードル中佐」に形だけの検討をさせることにしてうやむやにしようとした、、、

しかしその一週間後、スタドリ・コンスタブルに暮らすボーア人スパイ「ジョウアナ・グレイ」が、「「チャーチル」が村から近いスタドリ・グレインジで休暇を過ごす予定がある」ということを、具体的な日時・宿泊場所と共に連絡してくる… この情報はゲシュタポ長官の「ヒムラー」にも伝わり、「ヒムラー」は反ヒトラー派の「カナリス」には隠密にして、「ラードル」に直接、「チャーチル」の誘拐を実行させることを強要する。

「ラードル」は実行部隊を落下傘降下で潜入・潜伏させ、「チャーチル」確保後に高速艇で回収する計画を立てるが、敵国での潜伏のためには現地の「グレイ」と協力できる工作員が不可欠だった… そこで「ラードル」は、現在はベルリンで保護・監視されている元アイルランド共和軍(IRA)の歴戦の工作員「リーアム・デヴリン」に白羽の矢を立てる、、、

「デヴリン」はいつか来る死を予感しながら、祖国アイルランドの独立を夢見る闘士でもあった… 続いて「ラードル」は、作戦を指揮する落下傘部隊の隊長として「クルト・シュタイナ中佐」を指名する。

「非常に頭が良くて、勇気があって、冷静で、卓越した軍人……そして、ロマンテックな愚か者だ」名も知らぬユダヤ人の少女を助けたがために部隊ごとチャンネル諸島へ追いやられ、人間魚雷を操っている伝説の落下傘部隊長「クルト・シュタイナ中佐」、「ラードル」と「デヴリン」は直接に彼の元を訪れ、彼らを呼び戻す… 英国へ潜入した「デヴリン」に惹かれる少女「モリィ・プライア」を始めとするコンスタブルの人々、、、

闇商人の「ガーヴァルド兄弟」とロンドン警視庁の「ロウガン警部」、降下部隊の輸送役として選ばれたパイロットの「ゲーリケ大尉」… 「ヒムラー」が作戦の監視役として送り込んだイギリス義勇軍の「プレストン少尉」、そして僻地コンスタブルに左遷されたアメリカ軍レインジャー部隊の「シャフトゥ大佐」。

様々な人間の思惑が交錯する中、「ラードル」達は遂に作戦開始日の11月4日を迎える… 悪天候の中ノーフォークへ降下する「シュタイナ」達、、、

降下成功の報を受けた「ラードル」は「ヒムラー」に暗号文を発信する… <鷲は舞い降りた>。

作戦の成就に向け、登場人物たちはそれぞれの思惑に従って己の任務を果たそうとするが、「シュタイナ」の部下が溺れそうになった兄妹を助け、自らは水車に巻き込まれて死んでしまったこと等をきっかけにして計画には綻びが生じていく… 任務を果たすため、強硬手段に出る「シュタイナ」たちだったが、次第に追い詰められていく、、、

全体で600ページ強のボリュームなのですが… <鷲は舞い降りる>のは400ページを過ぎたあたりで、作戦行動までのエピソードが長く、序盤から中盤はやや冗長な感じはしましたが終盤の作戦行動後の展開が盛り上がるのは、中盤までの伏線がしっかりしているからなんですよねぇ。

ホント、愉しく読めました… それにしても「シュタイナ中佐」を始めとする、第一線の将校・兵士達のカッコ良さはハンパないですね、男気あふれる好人物で、不器用な優しさやひたむきさをあわせ持っているんですよね、、、

そして、男としての生き様(死に様)をしっかりと見せてくれます… 史実から、「チャーチル首相」誘拐作戦は失敗に終わることはわかっているんですが、それでも、最後の最後まで「シュタイナ」なら成功してくれるんじゃないか、いや、是非、成功させてほしい と感情移入しちゃうほどの魅力的に描かれていました。

面白かったです♪


以下、主な登場人物です。

「クルト・シュタイナ中佐」
 ドイツ落下傘部隊隊長

「リッター・ノイマン中尉」
 ドイツ落下傘部隊副隊長

「ヴァルター・シュトルム軍曹」
 ドイツ落下傘部隊隊員

「ハーヴィ・プレストン少尉」
 元イギリス自由軍兵士

「カール・シュタイナ少将」
 クルトの父

「ペイター・ゲーリケ大尉」
 ドイツ軍パイロット

「マックス・ラードル中佐」
 ドイツ軍情報局(アプヴェール)Z部隊第3課課長

「カール・ホーファ軍曹」
 ラードルの助手

「ジョウアナ・グレイ」
 ドイツ軍情報局(アプヴェール)の女スパイ

「リーアム・デヴリン」
 IRAの兵士

「フィリップ・ヴェリカ」
 神父

「パミラ・ヴェリカ」
 フィリップの妹

「ジョージ・H・ワイルド」
 スタドリ・アームズの主人

「アーサー・シーマー」
 木こり

「モリイ・プライア」
 ホッブズ・エンドの娘

「サー・ヘンリイ・ウィロビイ」
 退役イギリス海軍中佐

「ベン・ガーヴァルド」
 闇商人

「リーベン・ガーヴァルド」
 闇商人

「ジャック・ロウガン」
 ロンドン警視庁警部

「ファーガス・グラント」
 ロンドン警視庁警部補

「ロバート・E・シャフトゥ大佐」
 アメリカ軍レインジャー部隊隊長

「ハリイ・ケイン少佐」
 アメリカ軍レインジャー部隊隊員

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2023年01月28日

Posted by ブクログ

第二次世界大戦時、チャーチル首相を誘拐する特殊任務を受けたドイツ軍部隊が主役。

主役であることもそうだし、ドイツ軍がかなり真っ当な兵士として描かれているのが珍しい。

主人公であるシュタイナ中佐と、アイルランド人のデヴリンがとても魅力的。

歴史から見れば成功しないことが決まっている任務なんて面白いのかと思ったけど、読んで納得。

準備期間も面白いし、失敗が確定してからのシュタイナ中佐の行動がめちゃくちゃカッコイイ。

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2022年06月02日

Posted by ブクログ

冒険小説の古典中の古典。
30年ほど前、大学生時代に読んだ。一気読みだった。今回はジャック・ヒギンズのオリジナル原稿による完全版。
第二次大戦末期、ナチス・ドイツは劣勢な戦況を挽回するために、あっと驚く秘密作戦を計画する。イギリスの田舎町スタドリ・コンスタブルにお忍びでやってくるチャーチル首相を誘拐しようという計画だ。
IRAのリーアム・デブリンとクルト・シュタイナー 中佐が率いるスターリングラードの死闘を生き延びた落下傘部隊の面々は密かにスタドリ・コンスタブルに潜入する。果たして誘拐作戦は成功するのか。

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2020年11月22日

Posted by ブクログ

第二次世界大戦中、ナチスドイツのチャーチル誘拐作戦を描いた冒険小説の名作。

過去に映画を観てストーリーを知っていたが、魅力的な登場人物満載のストーリーであったと発見があり、読んで良かったと思う。

実直的なドイツの職業軍人と官僚的なナチスとの違い、閉塞感のあるイギリスの田舎町などを描いており、中途半端なフィクション戦記物とは一線を画している。

また、主人公のヒーロー的なラストもいいが、補完された切ないエピローグも素晴らしい。

愛弟子とも言える佐々木譲の作品よりは、実際の作戦開始までは、テンポが悪い気がしましたが、読む価値は、衰えいないです。

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2018年03月19日

Posted by ブクログ

旧時代のエンタテインメントであることは否めないけど、この小説が現代の冒険物の雛型のひとつとなっていることを思えば、基軸として押さえておくべき一冊。

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2016年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

冒険小説の金字塔と呼ばれる本書。
第二次大戦末期、敗戦色濃厚なドイツ軍にイギリスのチャーチル首相誘拐のチャンスが訪れる。その任務に従事する落下傘特殊部隊の話。

主人公は珍しく第二次大戦下のドイツ軍将校。
通常、こういった小説でのナチスドイツ軍人は頭のいかれた鬼畜として描かれるが、本書に出てくるドイツ軍人は必ずしもナチスドイツに賛同はしないが、国のために戦う高潔な軍人達として描かれている。

そのため、正義の云々の話ではなくて、純粋に高潔な男の生きざまが描かれている。

前半は中弛みしたが、佳境に入ってからは面白かった。

ちなみにこの話は史実にある程度基づいているらしい

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2014年07月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

非常に映画的な小説。どうかわからないけど、敵方にも味方にもそれぞれいい人間、悪い人間、色々いる、というところがガンダムっぽい。

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2014年01月08日

Posted by ブクログ

おもしろかった! の一言で足りる。いい意味で。
けどそれも味気ないので…と思ったけど新しい読者として何か目新しいことを付け加えることはできなそうだ。シュタイナの勇敢さ、デヴリンと醜い少女とのロマンス……ああ、月並み!

フィクションということを忘れて読んでいたようだ。
読者に親切すぎる後日談だってまったく鵜呑みにしてしまうくらい。
なんで事実だと思ってしまうのだろうか……と考えてみたが、それはやっぱりこの構成のためだろうな。いかにも「騙すぞ!」という感じの。本気さ。そこについつい騙されたくなってしまう……。

精緻な描写の私小説よりも、あきらかなエンターテイメント小説のほうによりリアリティを感じる場合もあるかもしれない。嘘だと思ってはいても好きなものには流されていたいって、人にはそういう困ったところがあるし。たとえフィクションだとしても人間の気高い行動には人をほろっとさせるところがあるのだから。

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2013年12月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

神父が最後に語った衝撃の事実。まさかのチャーチルが替え玉だったとは。もし仮にあそこで彼を撃ったとしても、歴史的には何も変わらないということ。そしてその替え玉を狙ってドイツ軍もそうだし、イギリス軍もそうだし、たくさんの命が失われた。

しかもである。その事実はイギリス軍側にも伝えられていなかったということか。イギリス側の方が一枚上手で、その策略にドイツ側が踊らされた。これはまさにどんでん返しだな。最後にすごい。

これがなかったら、いわゆる戦争ものというか冒険もので、戦争ものの主体を中心としたドイツ軍兵士たちの活躍というか、なんというか、生々しい戦場を描いた話だったんだけど、最後にこれが来ることによって、そもそも戦争ってなんだろうかというか、何かを信じて戦って命をなくすということがなんだろうかというようなところに、ちょっと考えが行く。

正しいと思っていたものが正しくなかったっていうか、そういったのは最後にちょっとびっくりさせられて面白かった。星3.3くらいかな。

シュタイナーとデブリンとモリーのストーリー、その他いろんな人たちのストーリー。でもやっぱり登場人物が多すぎて、途中でなんだかわからなくなってしまったけれども。

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2025年12月01日

Posted by ブクログ

ドイツ軍によるチャーチル誘拐のドキュメント。史実とフィクションを取り混ぜて語る著者の語り口はなかなかに迫真に迫るものがある。

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2018年11月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

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ヒトラーの密命で、劣勢のドイツ軍の落下傘部隊がイギリスに降り立ち、休暇予定のチャーチルを誘拐しようとする話。落下傘部隊シュタイナ中佐やIRAのデヴリンなどを通して使命達成に賭ける人間を描いている。著者曰く50%は証拠書類がある史実らしいが、どこまでかは不明。話の詳細までついて行けない部分も。スパイ活動も交えて着々と準備を進めていくあたりや著者のルポの様子が冒頭と最後にあるあたり、モリィのデヴリンへの想いによる言動などなかなか面白い。続編も気になるところ。シュタイナのチャーチルまでたどり着くも打てなかったあたりと、実は影武者だったりあたりもなかなか面白い。アメリカに亡命したデヴリンの子を産んだモリィは別の人と結婚してるのは現実感。

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2018年07月08日

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