あらすじ
首相チャーチルを誘拐せよ! ヒトラーの密命をおびて、シュタイナ中佐ひきいるドイツ落下傘部隊の精鋭はイギリスの片田舎に降り立った。使命達成に命を賭ける男たちの勇気と闘志を謳いあげた戦争冒険小説の最高傑作――初版刊行時には削除されていたさまざまなエピソードが追加され、より完全になった決定版。
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Posted by ブクログ
冒険小説の古典的名作.
物語は,歴史に埋もれた驚愕の出来事の手がかりを,作者であるヒギンスが発見する1章で始まり,ヒギンスが主人公たちの後日談を知る20章で結ばれる.
劣勢が明らかになってきたドイツ軍が「チャーチル誘拐計画」を立案する.ここに一癖も二癖もある主人公たちが巻き込まれてゆくのだが,ステレオタイプの「ナチ」的な人物は1人もおらず(いや,主人公たちの”邪魔をする”のはヒムラーやSSをはじめとする典型的な悪党なのだが),彼らはみな血が通った普通の格好いい人たちとして描かれている.オルガンが特技だったり,バードウォッチングが趣味だったり,溺れた地元の子供を助けたりするのだ.
チャーチルが誘拐されたことはない,ということは後の世に生きる我々は知っている.従って,作戦が失敗することは我々みんなが知っているのだが(しかも,とんでもない失敗だったことが20章で明かされる),しかし,プロットの巧みさと,登場人物たちの魅力が,本書を腐朽の名作としている.
Posted by ブクログ
冒険小説、と言われているが、冒険というより『戦争もの』という表現のほうがやはりしっくりくる本。
そして、第二次世界大戦を扱った小説としての、オールウェイズベスト。星5つ。
なお、評者は「その当時の価値観のとおりに描写してるんだから、女性やら外国人やらへの扱いがアレで何が悪い。ポリコレとかいう歴史改ざんは文化への冒涜」という立場である。
そして本作におけるそういう点は、
「変な改ざんをしてないからGood!」
である。
主人公クルト・シュタイナの「軍人とは何か」という筋の通し方が際立つ。
それはやはり、名脇役リーアム・デヴリンの「俺ぁアイルランド人だから、産まれた時からクレイジーなんだ」という人間味(放埓ともいうw)描写があってのことだろう。
次作『鷲は飛び立った』ではほぼリーアムが主役なので、読むのが楽しみである。
Posted by ブクログ
英本土に空挺降下してチャーチルを誘拐するという、ヒトラーの妄想が現実的になる情報が諜報員から伝達される。
これは史実をモチーフにした話なので結果は既に分かっている。
チャーチル誘拐は失敗しドイツは敗戦する。
小説の大半は空挺降下作戦の準備を描いており、それが上手くいくほどにどうしてこれが失敗するのだろうかという好奇心が湧く。
ヒムラーの横槍と部下の道徳心のために作戦は失敗するのだが、失敗してからのドイツ空挺兵たちが実に潔い。
この時代にドイツ兵を明確な悪役として描かなかったというのがすごい。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦の最中、ドイツ軍は落下傘部隊を英国本土に降下させ、時の首相チャーチルを誘拐する作戦を立案します。
この荒唐無稽で無謀な作戦に参加することになったのが、シュタイナ中佐率いる部隊。
歴戦で活躍した英雄ながら、ある事件でユダヤ人少女を庇った格好になり、部隊ごと危険任務につかされ冷遇されていたシュタイナは、「自分は冒険家だ」の言葉とともに、この空前絶後の任務に挑みます。
作戦決行のその日まで、厳しい訓練を繰り返し結束を固めるシュタイナと部下、作戦に関わる他のメンバーの姿に、手に汗握り胸を熱くしながら「がんばれ、がんばれ」とエールを送っている自分がいました。
「鷲は舞い降りた」
部隊が予定どおり、本土への上陸を成功させたという暗号が打電された場面では、思わずガッツポーズを取ったほどです。
ただ、フレデリック・フォーサイスの「ジャッカルの日」で描かれた、フランスのドゴール大統領の暗殺計画同様、チャーチルがドイツ軍に誘拐も暗殺もされなかったのは歴史的事実です。
つまるところ、身も蓋もない言い方をするなら、ここからは「いかに計画が失敗していくのか」という物語なのです。
それでも、彼らの作戦を最後まで読み終えて、どこか清々しい気分で拍手を送りたい気持ちになること請け合いです。
スリルあり、ロマンスあり、人間ドラマありの彼らの冒険を、ぜひとも、多くの方々共有してほしいと思います。
Posted by ブクログ
冒険小説の金字塔と呼ばれる本書。
第二次大戦末期、敗戦色濃厚なドイツ軍にイギリスのチャーチル首相誘拐のチャンスが訪れる。その任務に従事する落下傘特殊部隊の話。
主人公は珍しく第二次大戦下のドイツ軍将校。
通常、こういった小説でのナチスドイツ軍人は頭のいかれた鬼畜として描かれるが、本書に出てくるドイツ軍人は必ずしもナチスドイツに賛同はしないが、国のために戦う高潔な軍人達として描かれている。
そのため、正義の云々の話ではなくて、純粋に高潔な男の生きざまが描かれている。
前半は中弛みしたが、佳境に入ってからは面白かった。
ちなみにこの話は史実にある程度基づいているらしい
Posted by ブクログ
神父が最後に語った衝撃の事実。まさかのチャーチルが替え玉だったとは。もし仮にあそこで彼を撃ったとしても、歴史的には何も変わらないということ。そしてその替え玉を狙ってドイツ軍もそうだし、イギリス軍もそうだし、たくさんの命が失われた。
しかもである。その事実はイギリス軍側にも伝えられていなかったということか。イギリス側の方が一枚上手で、その策略にドイツ側が踊らされた。これはまさにどんでん返しだな。最後にすごい。
これがなかったら、いわゆる戦争ものというか冒険もので、戦争ものの主体を中心としたドイツ軍兵士たちの活躍というか、なんというか、生々しい戦場を描いた話だったんだけど、最後にこれが来ることによって、そもそも戦争ってなんだろうかというか、何かを信じて戦って命をなくすということがなんだろうかというようなところに、ちょっと考えが行く。
正しいと思っていたものが正しくなかったっていうか、そういったのは最後にちょっとびっくりさせられて面白かった。星3.3くらいかな。
シュタイナーとデブリンとモリーのストーリー、その他いろんな人たちのストーリー。でもやっぱり登場人物が多すぎて、途中でなんだかわからなくなってしまったけれども。
Posted by ブクログ
3
ヒトラーの密命で、劣勢のドイツ軍の落下傘部隊がイギリスに降り立ち、休暇予定のチャーチルを誘拐しようとする話。落下傘部隊シュタイナ中佐やIRAのデヴリンなどを通して使命達成に賭ける人間を描いている。著者曰く50%は証拠書類がある史実らしいが、どこまでかは不明。話の詳細までついて行けない部分も。スパイ活動も交えて着々と準備を進めていくあたりや著者のルポの様子が冒頭と最後にあるあたり、モリィのデヴリンへの想いによる言動などなかなか面白い。続編も気になるところ。シュタイナのチャーチルまでたどり着くも打てなかったあたりと、実は影武者だったりあたりもなかなか面白い。アメリカに亡命したデヴリンの子を産んだモリィは別の人と結婚してるのは現実感。