菊池光のレビュー一覧
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第二次世界大戦中、ナチスドイツのチャーチル誘拐作戦を描いた冒険小説の名作。
過去に映画を観てストーリーを知っていたが、魅力的な登場人物満載のストーリーであったと発見があり、読んで良かったと思う。
実直的なドイツの職業軍人と官僚的なナチスとの違い、閉塞感のあるイギリスの田舎町などを描いており、中途半端なフィクション戦記物とは一線を画している。
また、主人公のヒーロー的なラストもいいが、補完された切ないエピローグも素晴らしい。
愛弟子とも言える佐々木譲の作品よりは、実際の作戦開始までは、テンポが悪い気がしましたが、読む価値は、衰えいないです。 -
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作品毎に設定は変えつつも、ディック・フランシスの描くヒーロー像は共通している。己の信条に忠実で、誇り高く、不屈である。それは「偉大なるマンネリズム」ともいえる程で、何らかの形で競馬に関わるプロットに趣向を凝らしてはいるのだが、逆境に立たされた只中で主人公がとる思考と行動は、ほぼパターン化されているといっていい。それこそが、安定した人気を保持し続けた大きな要因であり、読者が求めたものなのだろう。
本作は、主人公をサディスティックなまでに追い詰め、逆境を如何にして乗り越えていくのかに主眼を置いた「競馬シリーズ」の中でも、最も過酷な状況へと追い込まれていく男、元騎手で調査員のシッド・ハレー登場の第 -
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勝って当たり前。圧倒して当然。
こういうのは難しいですね。
ディック・フランシス。邦題は漢字二文字。競馬業界がらみの、大人の男性向け極上ミステリー。
更にその中の、引退した騎手が探偵として難事件に挑む、シッド・ハーレー主人公モノ。
更に、その中の「大穴」(1965年)。
定番中の定番の、名作中の名作。
読んだことなかったんです。
こういうのは難しいですね。却って。自分の中でも妙にハードルが上がってしまって。
と、読み始めてしばらくは思ったのですが…。
いやあ、さすが。面白かったです。
無論こと、まあ、犯罪ミステリーという以上のものではないような小説ですけど、でも面白かった。馬鹿にしたもんじ -
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ネタバレ冒険小説の金字塔と呼ばれる本書。
第二次大戦末期、敗戦色濃厚なドイツ軍にイギリスのチャーチル首相誘拐のチャンスが訪れる。その任務に従事する落下傘特殊部隊の話。
主人公は珍しく第二次大戦下のドイツ軍将校。
通常、こういった小説でのナチスドイツ軍人は頭のいかれた鬼畜として描かれるが、本書に出てくるドイツ軍人は必ずしもナチスドイツに賛同はしないが、国のために戦う高潔な軍人達として描かれている。
そのため、正義の云々の話ではなくて、純粋に高潔な男の生きざまが描かれている。
前半は中弛みしたが、佳境に入ってからは面白かった。
ちなみにこの話は史実にある程度基づいているらしい -
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おもしろかった! の一言で足りる。いい意味で。
けどそれも味気ないので…と思ったけど新しい読者として何か目新しいことを付け加えることはできなそうだ。シュタイナの勇敢さ、デヴリンと醜い少女とのロマンス……ああ、月並み!
フィクションということを忘れて読んでいたようだ。
読者に親切すぎる後日談だってまったく鵜呑みにしてしまうくらい。
なんで事実だと思ってしまうのだろうか……と考えてみたが、それはやっぱりこの構成のためだろうな。いかにも「騙すぞ!」という感じの。本気さ。そこについつい騙されたくなってしまう……。
精緻な描写の私小説よりも、あきらかなエンターテイメント小説のほうによりリアリティを感 -
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馬を運送する会社の社長が主人公。といっても大きな会社ではなく、10人くらいの従業員を抱え、必要があれば自分でも運転をする男だ。彼は、元騎手で引退してこの会社を興した。業務は順調であるが、主人公自身の胸にはまた騎手である若い自分への「未練」が残っていて、そこがちょっと泣かせるところである。本当はもうひとつ泣かせる設定があって、とっくにそれが読後に大きな余韻を残すのだけど、それについてはここで書かない方がいいだろう。
そういった要素もあり、使用人を雇っている立場であるということもあり、いつになく大人の雰囲気を漂わせている主人公である。それがなかなかの魅力で、恋愛シーンひとつにしても抑制が利い