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Posted by ブクログ
競馬シリーズ17作目。
とうとう、でました。
イギリスならではの王室メンバー。
チャールズ国王の戴冠式と見たばかりだったので、
「王子」の登場にも違和感なく読めた。
眼鏡使用が禁止されたため騎手をやめざるを得なかったランドルは、
王子みずから、
義弟である伯爵がモスクワでのオリンピックに無事出場できるよう、
調査してほしいと頼まれてしまい、断れず引き受けてしまう。
伯爵と騎手仲間のドイツ人の男が心臓まひで亡くなる間際で残した
「アリョシャ」という謎の言葉を手掛かりに、
モスクワに向かうランドル。
尾行、監視、盗聴といかにも冷戦中のモスクワらしいモスクワで、
新聞記者や競馬関係の人々に話を聞き始める…。
ミステリー小説というよりかはスパイ小説かも。
何度も襲われたし、
探偵でもないのにかなり危険な橋をわたっていた。
しかも、伯爵一人の問題を解決するだけではなく、
テロの計画をつきとめるとは、かなりスパイっぽい。
耳おおいのついた毛皮帽のひもはあごの下で結ぶと、
弱虫と思われる、というのは知らなかった。
Posted by ブクログ
共産主義国家ソ連が地図から消えてずいぶん経つ。冷戦を背景にしたスパイ小説を今読むと、なんとなく現実のことのような気がしなくて不思議だ。むしろ、ファンタジーのような気さえしてくる。
フランシスの小説のいくつかには情報小説的な一面もあって、共産主義国家というものを一般人の視点からレポートしてくれていて、新鮮な驚きがたくさんある。どちらかといえば憂鬱なものが多いのだけど。
そういう憂鬱な、息が詰まるような重苦しい世界の中で、馬を愛する気持ちがいわば心と心をつなげるパスポートになるという設定が美しい。ふたつの異なる世界が出会い敵視があり、その中に小さな共通語を発見し交流が始まる。普遍性を持つ物語なのではないだろうか。
その他にも、テロリズムが取り上げられるなど、フランシスの作品としては異例な要素がたくさんある。小説としてのレベルを考えるなら、苦し紛れではなく意欲作と言うべきだろう。もちろん、主人公に襲いかかる肉体的な危機をはじめとする、いつものフランシス節も魅力もたっぷり盛り込んである。
ただし、全体としてはちょっと理屈に走っている部分があるような気がするし、テーマを露骨に語り過ぎている気もする。毎度お楽しみの恋愛話も、あまり後味がいいとはいえない。全体としてどうも爽快感に欠けるのだ。
フランシス作品の入門書とはとても言えないけれど、ちょっとした変化球としては魅力的なのではないかと思う。