【感想・ネタバレ】骨折のレビュー

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Posted by ブクログ

フランシスを初めて読む方にもお薦めの一冊。
競馬厩舎を営む厳格な父の元を出奔した主人公が、骨董商として成功し、大人になってから戻ってきます。
病に倒れた父に代わって、厩舎を任され、不安顔の従業員を何とか取り仕切りますが、そこへ難題が!
マフィアの首領が溺愛する息子の願いを叶えるために、最高の馬で最高のレースに出すように脅迫してくるのです。
二組の父と息子の関係が面白く、若くて思い切りハンサムで傲慢な息子が騎手として次第に成長していく姿は魅力的。
主人公の愛人ギリイの大人な態度も素敵です。

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2010年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

競馬シリーズ10作目。

二組の父と息子の話。
息子をコントロールしようとする父親たちと、
父のもとから逃れた息子とその影響下にあることもよくわかっていない息子。

車の事故で骨折をした父の代わりに、
厩舎を管理することになったニールは、突然誘拐される。
経験のない若者を騎手として優勝馬に乗せてダービーに出せ、と脅される。
厩舎を守るために受け入れたニールだったが、
若者は生意気で鼻持ちならず馬丁頭や馬丁たちともめる。
もちろん、そう簡単に実績のない騎手を優勝場に乗せるわけにはいかず…。

ミステリーというよりは、
若者の父との葛藤、そして成長物語だろう。
父親たちが二人とも死んでしまう、という最後は少し残念だが、
若者が騎手として、自分の足で歩いて行けるようで良かった。

他の小説に出て来たポストオフィスタワーの回転レストランのことが、
ちらっと出て来たのがチャームポイント。

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2023年03月06日

Posted by ブクログ

派手さはないが、渋い秀作。
一行目からの刺激的独白による開幕は、全シリーズ通しての馴染みのものだが、その後の展開は、一人の甘ったれたガキが、誇り高き主人公との関わり合いの中で、人間として成長していくさまをじっくりと描いていくもので、虚飾を剥ぎ取ることでようやく大人への一歩を踏み出すところで小説は終わっている。
やはりフランシスは巧い。

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2014年12月25日

Posted by ブクログ

 以前読んだ時には、スペンサーシリーズの「初秋」に匹敵する、「育成もの」の傑作だと思っていたのだが、今読むとちょっと物足りなさが感じられた。

 主人公は、会社の建て直しを専門としている30代男性。たたき上げではあるが、金持ちである。彼が、事故で入院している父親の厩舎にいるところを拉致され、ある少年を騎手として雇うことを強要されるところから物語が始まる。少年の父親は、まあ暴力団のボスという雰囲気で、子どもを甘やかしその夢を叶えてやろうとするのである。無名の新人をトップクラスの馬に乗せるわけにはいかず、主人公の綱渡りが始まるわけだけど、それが少年の成長と重なり合うところがおもしろい。少年自身が作中で語っているように、少年を間に挟んで、その父親と主人公が戦っているのである。

 うまいなと思うのは、決して屈しない主人公の中に、少年が次第に自分の理想をする男性像を見いだしていくあたりの展開なのだけど、それ以上にうまいなと思うのは、主人公の父親の存在である。主人公の父親も、少年の父親と同じく、きわめて偏屈な暴君であった。ある時期までの主人公は、父親の甘やかされてはいたが自分の意志を許されない存在であり、ちょうど少年と同じ立場にあった。ある時期、主人公はその境遇から自由を求めて飛び出し、自らの力のみで成功を招き寄せたのであり、それが、少年に対する確信を持った「教育」を生み、また小説に奥行きを与えている。

 もちろん、望みを叶えるためなら人の命など何とも思わないような少年の父親との戦いはスリリングである。それを通して、また少年との交流を通して描き出される主人公は、実にりりしくかっこいい。文句なく、おもしろく感動的に読める小説だと思う。

 ちょっと物足りなさを感じるとすれば(いや、8回目くらいに読んで今回初めて感じたのだけど)、主人公がちょっと「できすぎ」ってところかな。後に新たなヒーロー像を体現したシッド・ハレーなどと比べると、差は明らかである。このあたりはやはり、作者自身の物書きとしての成熟を、もう少しあとの作品まで待つべきなのだろう。

 だけど、個人的にはもっとも愛好したフランシス作品のひとつであるのは確か。殺人事件が起きてそれを解決する、というタイプのミステリではないけれど、とてもいい作品なので、たくさん読まれて欲しいと思う。

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2010年11月14日

Posted by ブクログ

10−11
調教師の父親が入院し、素人の息子ニールが、一時的にあとを継がなければならなくなる。マフィアのボスの息子アレサンドロは騎手になりたがるが技量が不足。父親はどんな手を用いても息子の望みをかなえようとする。
アレサンドロは自立の道を選ぶが…
父と息子の葛藤二組。

「「父は、私に、すべてを与えた。」
アレサンドロが父親のことを言った。私なら、自分の父について、なにもあまり与えられなかった、というにちがいない。そして、私は、アレサンドロが愛や憎しみを通じて、一度として彼の父親に感じたことのない感情を、自分の父親に抱いた。
 それは……冷淡な無関心であった。」

佳作です。

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2009年10月04日

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