深沢七郎のレビュー一覧

  • みちのくの人形たち

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    どこか小島信夫の作品に近いエネルギーを感じた。
    悪文とも言えるバラバラな文章に独特の引力があり魅力的。
    土着の気味悪さや暗さで統一感ある作品集、とても好み。
    表題作と『秘儀』は名作。

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    2022年12月23日
  • 言わなければよかったのに日記

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    多分、最初に読んだのは中学生の頃だと思う。
    きょう、奈良の「ふうせんかずら」で発見して嬉しくなったので、即決で入手した。

    冒頭の正宗白鳥先生との思い出が、とにかく面白い。
    名前が白鳥だけど庭に池がないとか、同時代に活躍中の作家について「その人は今生きている人ですか」と尋ねて先生に教わったりといろいろ(本人的には)まずいこといっちゃったなあという思い出が淡々とつづられている。
    読んでいると、深沢さんという人は、自分も含めて周囲の人をみんな好ましく思っていて、とにかく人間が好きなんだな、と思う。
    新潮社のサイトでプロフィールをみると、戦前から活躍するギタリストでもあり、1960年に『風流夢譚』が

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    2021年12月06日
  • 書かなければよかったのに日記

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    また中公文庫で深沢七郎の本が出たから買った。こうやって出てくるものをどんどん買っていくと重複も多く、この随筆集の巻頭「流浪の手記」は結構まえに読んだちくま文庫『深沢七郎コレクション 転』にも入っていた。
     しかし読み終えてからやっと気づいたのだった。深沢七郎の随筆は完全に「話体」であり、読んでいる最中はおもしろく読むけれど、流れゆく川のようなもので、あまり強い記憶を残さない。そのように流転し続ける自然の河川のようなイメージが、作家・深沢七郎の本質でもあるだろう。
     本書の中では、クラシック音楽について言及したところが興味深かった。

    「クラシック音楽は音を楽しむのではなく音楽に思想だとか、感情

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    2019年07月28日
  • 笛吹川

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    戦国時代、山梨県甲府の近くに流れる笛吹川の川沿いに住み、武田家に仕えた百姓の話。時代小説は町民やお役人、武士を描いてるモノばかり読んできた中で、この小説は昔の貧しい百姓の暮らしぶり、人の生き死にが淡々と描かれていると思う。死生観も大きく変わったような気がする。昔々人の死は自然の一部であった頃のお話し。これを読むと数々読んだ養老猛司の著書にシンパシィを感じる。

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    2015年12月01日
  • 庶民烈伝

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    すぐれた小説の条件とは何だろう。
    まず、「機械仕掛けの神」を作品に仕掛けるようではダメだ、と言ってみよう。
    その神は、いろんなことを解決したり先送りしてしまったりするのだが、
    所詮、作者の作った機械による仕掛けにすぎないのだ。
    これに対して、深沢七郎の小説は、「神が仕掛けられた機械」そのものである。
    作者ですら、その神の意図はわからない、という形をとるのだ。
    これは、文学でしか表現できない、ということもできる。

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    2014年01月19日
  • 深沢七郎コレクション 流

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    深沢七郎のちくま文庫場版アンソロジー、この巻は小説集。先日の中公文庫と「みちのくの人形たち」だけが重複している。
    民俗学的なようでいて民俗学でない、虚構の土着性がおもしろい「東北の神武たち」など。
    すこぶる長い「千秋楽」が印象的だった。
    役者の弟子である青年が、初めて舞台に立つことになったと思ったら、それは歌や踊りやヌードなどがごたまぜになったショーで、そこで妙な人物たちと出会い、3ヶ月に及ぶ興行の日々を延々と描いている。最後もオチらしいオチはなく、著者のエッセイのように、はぐらかしてストンと終わってしまう奇妙さ。だがこの長々と書かれた興行記は、深沢七郎ならではの味わいに満ちているし、何故か淡

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    2012年10月08日
  • 笛吹川

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    全体としては淡々としているのに、ぐんぐん読み進んでしまう異様な面白さが凄い!最後のほうの、映像が目に浮かぶような迫力も、物凄い!解説が町田康ですが、思い返せば町田康の『告白』などは、この作品(というか深沢七郎)へのオマージュ(というか影響)のようにも思えてきます。『笛吹川』、素晴らしく面白くて物凄くて、良い作品でした!

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    2012年03月04日
  • 深沢七郎コレクション 転

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    深沢七郎コレクション 転 (ちく 深沢七郎の文章にはものすごいオーラというか、魂というか、とにかくものすごいものがうごめいていると思った。むしろそのうごめいているものがそのまま文章になって跳ねたり跳んだりぐったりしたりしているような・・・。サラッとした「うまい文章」とは真逆の性質だと思った。この本は読んで面白いし、名言だらけでとても良かった。特に『秘戯』には深く感動した。そして解説まで読むと、また別の所から感動が溢れてきて涙が出そうになった。実はエッセイの方はあまり興味がなかったのですが、試しに読んでみて本当に良かった。本当に良い本でした

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    2012年03月04日
  • 笛吹川

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    待望の文庫化。しかも解説は町田康。私の祖母は甲州弁のネイティブスピーカーだったのだが、それを聞いて育ったおかげでこの本の語りにすんなりと入っていけた。祖母には全く感謝することろがなかったが、その点だけは感謝したい。

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    2011年06月07日
  • 笛吹川

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    戦国時代の武田氏支配下の何代にもわたる農民一族のお話。読んでいてびっくりするのが皆普通に生活してて、いきなり死んでいくこと。この会話の意味があとあとこの点と結ばれるんだよね!的なお話じゃなく、普通に死んでいく、あっさりと。お館様におじいを粗相で殺されようが、親戚が皆殺しされようが、世話になった人はお館様のおかげとか言うし、もう皆が個として物語の中で生きているようなそんな凄い小説だった。

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    2025年06月25日
  • 作家と犬

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    犬も猫も好きだけどちょっとだけ犬に軍配が上がるかつて犬と暮らしていた私ですので、どのエッセイも愉しく、胸に沁みました。

    好きな作家さんも多く、以前に読んだことがある文にまた出会えて嬉しい。

    このシリーズは他にも猫、珈琲、酒、おやつ…とまだまだあるようなので少しずつ読みたいな。

    以下好きなエッセイ覚え書き。(一部です)

    犬の生まれ変わりに違いないと熱烈に思っている押井守氏、ノラの犬猫を見かけたら放ってはおけない愛情深い米原万里氏、手塚治虫氏による犬が人間のそばにいる理由を描いた漫画、坂口安吾氏がわがまま檀一雄氏のために秋田犬を無心するお手紙、椎名誠氏の犬の系譜と怒りと悲しみの別れ、深沢七

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    2023年03月06日
  • 庶民烈伝

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    んー、面白い。
    別に唸る様な仕掛けも美しい表現も綺麗な締まりないが、表題通りの、当時の“庶民”の苛烈な生活がつらつらと描かれている。
    序章の、“庶民”の定義を巡った作者と知人とのちょっとおバカっぽい掛け合いも、気が利いていて良い滑走路になっていた。

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    2022年12月15日
  • 笛吹川

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    分かりづらく凄いものを読んでしまった感。
    表題の笛吹川に沿って、武将と農民の六代に渡る盛衰を淡々と見せられてしまう。
    町田康氏の「どうにもならない」というあとがき題が印象的。読後は呆然。

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    2022年11月26日
  • 笛吹川

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    戦国武田氏の支配する甲州が舞台である。この作品はいわゆる戦国物と違い、農民が主人公で、戦乱の中で虫けらのごとく殺されて行ったある一族六代の物語だ。兵農分離が進んでいない甲州では農民が戦に出ており、主家との確執もあって、半蔵の一家では殺された者も多い。しかし、物語の終焉には武田家の滅亡とともに取り立てられた惣蔵、安蔵、平吉をはじめウメ、おけいまで死ぬ。その残酷さにはただただ戦慄を覚えた。

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    2022年09月26日
  • 作家と犬

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    昭和の文豪や現代の人気作家による、犬をめぐる、エッセイ、詩、漫画など48編。さすがに稀代の作家たち。どれも読ませる名文ばかり。

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    2021年10月26日
  • 笛吹川

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    ネタバレ

    最後の数十ページの怒涛のような、しかし妙に静かな一族の死に様に圧倒される。
    作品全体を通して誰も彼も死んでいき、特にその悲哀も語られないままなので、このまま終わるのかしらと思っていたら、息子たちの「先祖代々お屋形様にお世話になったのに」発言である。ゾッとした。なんと人間は矛盾した生き物であることか。

    その淡々とした筆致に全く作為的なものが感じられないのにも関わらず、最後まで読むと恐ろしいほどの完成度に舌を巻いた。これが著者の初長編とは、やはり深沢七郎は怪物作家である……。

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    2020年12月06日
  • 笛吹川

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    ネタバレ

    このころの農民の命の重さが悲しい。親方様に従うのが悲しい。はらはらしながらよんだ。
    お爺が粗相をして殺されたシーンが辛かった。足を怪我して手当じゃなく。汚したとして殺された。 
    最後まで褒美なんて貰えるはずもないものをきたいしてて。辛い。

    すきなのはおけい。おけいがこどもが生まれない理由を責められて暇をいただきやす。とあっさりでていつたとこはかっこよかった。素直で働き者でマッぐな正確がとても羨ましい。

    ボコ。戦。農民。
    巻き込まれてしまうのは弱者。生まれ変わりの考え方が興味深かった。たくさんの人が死んでしまった。死には意味はないかもしれないけど、平和だったら生はまっとうできたのになとおもう

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    2020年11月23日
  • P+D BOOKS 人間滅亡の唄

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    深沢七郎のエッセイ集。思いを迸らせるわけでもなく、斜に構えるでもなく、自然と出てきたという趣の言葉が並ぶが、その言葉が不思議で奇妙な味を持っている。「屁は生理作用で胎内に発生して放出されるもので、人間が生まれることも屁と同じように生理作用で母親の胎内に発生して放出されるのだと思う。私は一九一四年一月二十九二値、山梨の方田舎町ー石和に屁と同じ作用で生まれた。人間は誰でも屁と同じように生まれたのだと思う。」というのは、著者が紡ぐ言葉にも言えそうな気がする。

    「私は手紙をもらったり、会って話したりすることは四季に咲く花をながめるのと同じで『いまはきれいだが、あとではシボんでしまうんだ』とそんなつも

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    2018年10月20日
  • 笛吹川

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    何かの書評で読んで興味を持って購入したのですが、想像以上にのめり込んで一気に読めました。 ただし、文庫で1,400円は高い・・・

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    2015年04月25日
  • 笛吹川

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    戦国時代を舞台にした小説といえば、通常は戦国大名やその家臣の活躍を描いた歴史小説が挙げられるであろう。本作もまた武田信玄軍の一員を主人公にしているのだが、しかしその身分は武士ではなく、みずから軍に加わった農民である。これだけでもめずらしい設定であるといえるが、しかし本作の特異な点を挙げるとすれば、そのようなことではないであろう。とにかく、人が死ぬのである。中上健次の「紀州サーガ」にも似たような、田舎の前時代的な社会を描いているため、系図がないと容易に把握できないぐらい多くの人物が登場するのであるが、その大半がつぎつぎに亡くなってしまう。当時の平均寿命などを考えれば、それはとくにおかしいわけでも

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    2015年05月05日