深沢七郎のレビュー一覧

  • 甲州子守唄
    山梨の農村からアメリカに出稼ぎに出て財をなし、戻ってくる長男を中心にした一家の、母から見た戦前戦後の年代記。

    田舎の村の感じがこれでもかと書かれていて怖い。文体も独特で、冗語を多用してキレがないところが、田舎の雰囲気をバッチリだしている。

    主人公や主体といったものを軸にドラマが展開する近代の小説...続きを読む
  • みちのくの人形たち
    不思議な文体に、うねうねと続くトンネルを這っていくような気持ちがした。
    ほの暗い、それでいて湿り気のある、長くて細いトンネル。そこを進んでいくのは、まるで胎内めぐりをしているかのようだ。

    収録されている短編はどれも土着的な色合いが濃く、直接的にはそれらに関係のなさそうな短編でも、不思議と土の匂いが...続きを読む
  • 花に舞う・日本遊民伝 深沢七郎音楽小説選
    深沢七郎の、音楽に関連する小説を集めた短編集。
    深沢七郎は小説を書くよりも前からずっとギターを弾き、歌ったり作曲したりもしていた。彼の音楽上のスタイルはよくわからないが、たぶん、民謡系/歌謡曲系/本来の意味での日本フォーク系だったようだ。
    この短編集に収められている作品には、既読のものもあり、相変わ...続きを読む
  • 庶民烈伝
    深沢七郎のこの本を読みたいなあと思っていたら、ちょうど中公文庫が出してくれた。ありがとう。これからも深沢七郎出して下さい。
    最初の「序章」と「おくま嘘歌」はちくま文庫の『深沢七郎コレクション 転』にも掲載されていたので再読。
    「序章」は「インテリ」や庶民あがりの金持ちとの談話で「庶民とは○○だ」とい...続きを読む
  • 甲州子守唄
    「笛吹川」「千秋楽」などと同様に、延々と流れ続ける無窮の川のような趣の、深沢七郎作品。
    土俗的な「庶民」の生活をたいした起伏もなく描き続けるが、つまらないわけではない。退屈はしない。しかしクライマックスとか、見事着地、といった感の結末もない。
    冒頭、笛吹川岸辺に住む貧乏家族の徳次郎がアメリカへの出稼...続きを読む
  • みちのくの人形たち
    深沢七郎の名作『楢山節考』を読んだのはたぶん高校生の頃で、よく覚えていない。その後見た映画版のほうが印象に残っているくらいだ。
     しかし深沢七郎はどうやら「奇妙な作家」ということで他にも面白い小説をたくさん書いているらしいことは知っていた。
     ようやく43歳を目前にして読んだこの短編集、実に面白い。...続きを読む
  • 甲州子守唄
    相変わらず、自分がこれをどう捉え、どう感じているのかを言い表すことが難しい作品です。
    土俗的な語りと言われているが、素朴とか純真さはあまりなく、登場人物たちはどこまでも現金だ。人々の身も蓋もない本音の部分を包まず見せるからだろうか。母親の息子をみる眼が、最後まで子への無償の愛などからはかけ離れ、何を...続きを読む
  • 笛吹川
    武田信玄ものはいろいろ読んだが、
    この作品は甲斐の国の領民を描いている。
    領民と言っても笛吹川沿いに暮らす最下層の農民たちの
    六代にわたる物語である。
    日常の中に飢えがあり、自然死があり、農民の逞しさあり、
    洪水で家が流される・・・・
    若い時読んだ印象に比べ。、いま再び読んでみると「笛吹川」が問題作...続きを読む
  • 深沢七郎コレクション 流
    この本の一番最後に載っている「みちのくの人形たち」が読みたくて購入した.読みたかった理由は,昔どこかである人が,今まで読んだ中で最も怖いホラーとしてこの話を紹介していたためである.
    この本には6つの話が掲載されている.「東北の神武たち」と「揺れる家」,「千秋楽」,「女形」,「流転の記」,「みちのくの...続きを読む
  • 言わなければよかったのに日記
    軽めのエッセイである。抱腹絶倒とかいてあるけど、さほどおかしいことはない印象。最後の武田百合子さんとの対談も雑談以上のものはなかった。
  • みちのくの人形たち
    タイトルのお話が一番よかった
    暖かいまなざし
    優しい言葉
    さりげないおもてなし
    でも、その裏にある厳しい現実と、
    引き継ぐ思い・・・
    思い
  • 笛吹川
    楢山節考の深沢さん、小説を読むのは7年ぶりくらいか。甲州武田家の盛衰に合わせ、無惨に殺される農民一家。次々に生まれては、次々に殺される。武士の機嫌やなんでもない病気、ちょっとした不注意や勘違いなどで呆気なく死ぬ。知恵も金もツテもない。実際にこんなふうだったんだろうなと思わせるリアリティを感じる。リア...続きを読む
  • みちのくの人形たち
    エディプスコンプレックスの物語ってやつは
    ひっくり返せばライオスコンプレックスとべったり背中合わせだ
    つまり、子殺しの欲望がはじめにあって
    それへの反発から親殺しの欲望も生まれてくるわけだ
    「楢山節考」で親殺しを書いた深沢七郎も
    キャリア末期には、子殺しばかり書いていた
    間引き、去勢、近親強姦などと...続きを読む
  • 庶民烈伝
    面白い。
    序は、まるで『果てしない物語』のよう。

    カフェに置いてあって、まだ少ししか読めていないけど、手元に置いておきたい本。
  • 甲州子守唄
    母の想い、子の想いと考え。
    生活していくために、誠実さを無くしていく時代。

    スッキリしない読後感であるが、そういう時代が確実にあったのだと、気付かされる。
  • 庶民烈伝
    描かれている情景は 宮本常一の「忘れられた日本人」な感じ。近代の日本人というより、山奥で原始的な暮らしをする庶民の滑稽で、哀しい日常を描いている

    見ようによっては 神話に見える。庶民の哀しい現実に 自然調和や社会構造が働いているように見える。庶民の本質として 虚栄心ではない 強情さ を見いだせる
  • 笛吹川
    戦国時代。江戸の士農工商というカースト制度が、各身分を分離する以前、このころは、農民が領主のためにいくさに参戦し、死に、あるいは手柄を立てて褒美をもらったものらしい。
     この小説に出てくる農民の一族は、武田信玄の一族のために戦い、死ぬ。あるいは富裕になりすぎて妬まれ殺されたり。やがては武田氏の敗退と...続きを読む
  • みちのくの人形たち
    【みちのくの人形たち(表題)】
    東北の山村の人たちの丁寧な物腰がすごく怖かった。巻末の解説では、このていねいな人々の描写をものすごくポジティブにとらえているので、僕の読み方がおかしいのか。
    ラスト、人形の意味に気づくシーンは怖さよりも思い浮かぶ情景の迫力に圧倒された。そのくらい、すごい描写。

    【ア...続きを読む