深沢七郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
戦国時代。江戸の士農工商というカースト制度が、各身分を分離する以前、このころは、農民が領主のためにいくさに参戦し、死に、あるいは手柄を立てて褒美をもらったものらしい。
この小説に出てくる農民の一族は、武田信玄の一族のために戦い、死ぬ。あるいは富裕になりすぎて妬まれ殺されたり。やがては武田氏の敗退とともに、追い詰められることになる。
それでも彼ら農民は領主にさからうでもない。黙々と肉体を捧げ、黙々と死んでゆく。この無限の繰り返しが、妙に日本人的であるとともに、不気味な生の成り立ちをイメージさせる。
最後の方で末子が
「この土地の者は、みんなお屋形様のおかげだ」
と言いだし、周囲の者たちは