あらすじ
独自の死生観で人生を看破したエッセイ集。
1956年、処女作『楢山節考』でセンセーショナルな作家デビューを果たした著者が、世間の常識とは一線を画した視点で、折々の思いを綴ったエッセイ集。
単純明瞭に自らの生を生きる――簡単そうで実は至難きわまりない生き方を貫き、その結晶とも言える作品は当時の文壇にも、三島由紀夫はじめ多くの関係者に多大な衝撃を与えた。
「流浪の手記」、「子供を二人も持つ奴は悪い奴だと思う」など自選の全28編を収録。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
深沢七郎のエッセイ集。思いを迸らせるわけでもなく、斜に構えるでもなく、自然と出てきたという趣の言葉が並ぶが、その言葉が不思議で奇妙な味を持っている。「屁は生理作用で胎内に発生して放出されるもので、人間が生まれることも屁と同じように生理作用で母親の胎内に発生して放出されるのだと思う。私は一九一四年一月二十九二値、山梨の方田舎町ー石和に屁と同じ作用で生まれた。人間は誰でも屁と同じように生まれたのだと思う。」というのは、著者が紡ぐ言葉にも言えそうな気がする。
「私は手紙をもらったり、会って話したりすることは四季に咲く花をながめるのと同じで『いまはきれいだが、あとではシボんでしまうんだ』とそんなつもりだった」とそんな風にとんでもないことを言っているようで、何も悪びれたところ、かっこつけたところがない。そこに、このエッセイ集の不思議な魅力がある。