尾形真理子のレビュー一覧
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「恋と食」 がテーマの、小説新潮に掲載された短編を収録したアンソロジー。甘やかで幸せなだけのお話が一編もなくて逆に楽しめた。
一穂ミチさんは、淡白な味を好む淡白そうに見えるカップルのまったく淡白ではない情念のお話。言われてみればポン酢ってしびしびしてるかも。
古内さんは、計算だけではないけど計算も働かざるを得ない大人の恋愛の話。旨味調味料はハマると駄目になる気がして避けて生きてます。
君嶋さんはこの中で最もオーソドックスな恋愛小説。キュンとします。
錦見さんの短編は語り手が料理上手なだけあって一番美味しそうな料理が登場した。不思議なお話で、恋愛だったの??という感想。
奥田さんは毒親を捨てる -
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Posted by ブクログ
ネタバレ結婚3年目の福吉ひかり、子ども食堂を利用する小学4年生の立花莉里、パラリーガルの水戸知歌。
ひかりと知歌は姉妹、その母親が子ども食堂を手伝う美智子。ひかりの夫と莉里の母親が不倫、知歌は父親が不倫の末に家を出て別居している事を嫌悪しながらも、自分も同じ事をする。知歌の相手は女優の戸鳥青子の夫であり映画監督。青子の親友、ヨウは高校時代の同級生と不倫からの略奪愛、その同級生が美智子の夫でありひかりと知歌の父親。
そんなに身近に全員集合するなんて実際あったら怖い。
青子の、現実なのに女優っぽいところは鼻につくけど、どうしてこんなにいい人でいられるのだろう。
『取り返しはつくかつかないかではなく、つけて -
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Posted by ブクログ
登場する女性の各々、弱さもあるけど芯のあるしたたかな部分があってすごい。きちんとその心の内を言葉にして行動にして相手と向き合おうとする姿勢が良かった。
本作の感想とは少し逸れるけど養子縁組について分からないことがあって調べるきっかけにもなった。
医療行為や延命などに関わる判断は親族に限られている。法律上で同性婚が認められていない日本では、身内として正当性を持つ手段が養子縁組しかないことから、ヨウと淳弥は養子縁組を選択。身内と認められるためには必然的に"親と子"の関係性に振り分けられる。
そして養子縁組のあれこれを調べるまで、現行民法では一度養子縁組を選択するとそれを解消 -
Posted by ブクログ
理由もなく恋愛小説を買うのはすごく久しぶりで(理由があるとするなら、今私が恋をしているからかもしれない)、いつもミステリ小説しか読まないからこそ、この曇りのない眩しい話にすごく心が踊った。難しい言葉も難しい漢字もなくて、でも唯一無二の言葉で溢れていて、本当に文章を書くのが上手い人はこんな風な話を書くんだなと思った。節々に散りばめられたフレーズが、素敵な言葉ばかりで、細部までこだわりが及んでいるところが、まるで洋服みたいだと思った。私も、毎朝服を選ぶ時に考えてしまう人がいる。少し悔しいけど、読んでいて何度もその人が頭をよぎった。頑張ってみるか、と思ってしまった。素敵な小説に出会えて幸せ。この作者