井上理津子のレビュー一覧
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『ほどなくお別れです』を読んだ後、葬儀社の人達の仕事を知った。けれど、それ以外にも葬送に関わる人達がいる。
様々な死に方をした人がいる。望むと望まざるに関わらず、人間の体は亡くなった時から腐敗が始まる。亡くなってすぐに葬儀が行われ、荼毘に付される方はいい。亡くなって、すぐに見つけてもらえず腐敗が進んだご遺体、事故や災害でまともな状態ではないご遺体。それを復元し、家族に最後のお別れをさせてあげられるのが復元師、エンバーマーと言われる人達だ。著者の井上さんは、彼らに取材し、その仕事ぶりも、彼らの仕事に対する意識の高さもていねいに書かれていた。
エンバーミングは、アメリカで南北戦争の際、亡くなった兵士の遺体を遺族の元に長距離搬送する必要があったことから広まったという。遺体の一部に小切開を施し、端的に言うと、動脈に衛生保全液を注入し、静脈から血液を排出することにより、遺体の腐敗を遅らせるという仕組みになっている。
現在ではアメリカとカナダで七割以上、北欧とイギリスでも六割以上の遺体に施術されているという。時々テレビで有名な人が亡くなった時、葬儀が何日間にもわたって行われる事がある。あれはしっかりエンバーミングされているのだなと納得だった。
もうひとつ目からうろこだったのは、火葬場で働く人達についての取材だった。
私は今まで何度も収骨を経験してきたのに気づかなかった。井上さんも書いているけれど、今どきの火葬場では炉前で火葬開始のスイッチを押せば、人手を要することなく遺体は自動的に焼かれるものだと思っていた。
「最初の十分ほどで棺が焼けて、ご遺体がむき出しになります。バーナーが頭の上にあるので、先に頭部の方から火葬が進むんです。炉の中を火が回りますが、下半身のほうの火はどうしても弱いので、頭の側にある小窓からデレッキを入れて、ご遺体の脇の下に当てて、手前に持ってくるんですね。」ちなみにデレッキとは、先端部分がL字に曲がった鉄の棒のこと。そして、私達が収骨しやすいように焼け残ったお骨を並べて下さっているのだ。
私達は故人の思い出の品々を棺に入れ、花で埋める。でもそれはかえって、火葬を燃えにくくしてしまっているらしく、きれいに火葬してあげるなら、何も入れない方がいいと言われていた。でも、それはそれで遺族としてはやっぱり棺の中は故人の好きなもので埋めてあげたいし、私は好きな本と、好きな花に囲まれて火葬してほしいなと思う。
今まで知らなかった仕事師について知る事が出来て面白かった。生々しい描写もあって、賛否両論かもしれないけれど、こういう仕事があるということを知るのもいいかもしれないと思う。 -
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葬儀に関わる仕事をしている方々にスポットを当てたルポルタージュ。
葬儀業界への就職を希望する専門学生、湯灌や復元、エンバーミングを行う人たち、火葬場で働く人たちへの丁寧な取材を読む事ができる。
特に衝撃だったのが、ご遺体の復元をされる際に、本来であれば感染防止のためにゴム手袋をしなければならないのに、ご家族の前だからという理由で素手で復元作業を行い、その都度ひっそりと消毒液に手を浸していた場面。これはもう本当に素晴らしいプロ意識だと感じた。
ご遺体を背負って運んだり、湯灌や復元の際にご遺体に話しかけながら作業を行ったり、こんな仕事だからと見下されたり、火葬場で喉仏がないと怒鳴りつけられたり、様々なエピソードから「人の死」というタブー視されがちな部分にまつわる仕事について考えさせられた。
正直この本を読むまでは、人は亡くなったらその瞬間で終了だと思っていたが、その後もこんなにも尽くしてくれる人たちがいるのだと思うと、真の意味の孤独死なんて存在しないんじゃないのかという希望を抱かせてくれる本だった。 -
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「保護猫が店員」の猫本専門の本屋さん。
行ってみたい!
閉店する本屋が増えている中で、
「本×○○」のユニークなお店が増えるのは楽しい。
ビジネスと趣味と社会貢献を並行するのは、
なかなか難しいと思う。
たくさんの出会いとつながりがあり、
素晴らしい本屋になった。
「めがねこ」ぜひ読みたい!
本好きは猫好きが多い気がする。
文豪も猫を飼っている人が多いし。
ナカムラクニオ著「猫思考」がおもしろい。
猫は、媚びない。
猫は、他人(猫)と比べない。
猫は、我が道を行く。
猫は、孤独を愛する。
猫は、自分の感性を信じる。
猫は、ポジティブ思考。
猫は、群れない。
猫は、名誉なんて気にしない。
猫は、まったり日向ぼっこをすることに罪悪感を感じない。
愛猫6匹を眺めながら、猫になりた~い、といつも考える。 -
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普段、全く意識していなかった葬送の仕事。葬儀社、エンバーマー、火葬炉で働く人々など、壮絶な仕事の姿が書かれていた。
うつ病で何度も死にたいと思う経験をしたが、死んだ後自分がどう送られるのかを考えたことがなかった。本著で書かれた葬送の仕事師たちの思いの中で送られるのなら、死ぬこともそう悪くないなと思った。一方で遺族のことを考えると、死ぬときはできるだけきれいに死にたいもんだと思うようになった。
死を身近に感じることができる一冊。
いかに自分が死んだ後のことに無知だったかを思いしらされた。身近なひとたちの死は避けられない。だからこそ生きている今を大切にすることと、死んだ後にどのような思いで弔うかにも想いを馳せることは大切なように思える。
葬送の仕事師たちの言葉から、生きることと死ぬことは続いているのだということをつくづく思い知らされて、生きていることに清々しさを感じることができたように思う。 -
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ある日ふと目に留まり、
気になっていたものの手に取るまでに
ある程度の月日を要する。
購入したのは父が亡くなり10年目の年。
読み始めるまでに時間がかかる。
大事な大事な友人が亡くなり、
この本からまた遠ざかりたくなったが
「読まなければならない」ある日ふとそう思った。
葬儀社社員、湯灌師、納棺師、復元師、
エンバーマー、火葬場職員…
旅立ちを支える人たち。
彼らは日々「死」と真正面から向き合い、
悲しみに打ちひしがれる遺族だけではなく
亡くなった人にも寄り添う。
きれいな遺体ばかりではない。
家族や友人に囲まれて旅立つ人ばかりではない。
どんな場合であろうと、真摯な姿勢は変わらない。
そこに仕事と割り切っている人はいないのだ。
「辛くて読めないかもしれない」
そう思っていたわりに比較的冷静に読み進められたけど、
火葬場職員の話のところは相当苦しかった。
火葬場のひんやりとした空気、
さらに冷たい炉前に並ぶ無機質な火葬炉。
全て鮮明に残っていて、
何度か本を閉じては開くの繰り返し。
「きれいに焼く」
言葉だけ聞けば過激でもあり誤解され、
不愉快に思う遺族もいるだろう。
でもそうじゃない、わたしも今だからこそ、
その言葉の本当の意味と重みがよくわかる。
火葬場職員の方々を考えてみたことがあっても
わたしは浅いところしか考えてなかった。
こんなにも沢山の「作業と苦労」があったなんて。
そして職員たちの思いの強さも
わたしの想像をはるかに超えていた。
火葬場職員だけじゃない。
葬送を生業としている人たち。
彼らがこれほどの想いだったなんて。
この本を読まなければわたしはずっと
気づけないまま、知らないままだった。
「死」を語ることはタブーとされている風潮は
今だに根強いと感じる場面も少なくない。
でも「生」と「死」は切り離すことはできない。
この本を「読んでみて」など決して言えないし、
言う意味もないと思う。
必要な人には自然と手に取る時がくるかもしれないから。
父が亡くなった頃、映画『おくりびと』が大ヒットした。
どんなに好きな俳優が出ていても
「絶対観られない、観たくない」と拒絶したし
この先も観ることはない。
だからこそ、この本を読むことができて本当に良かった。
父を大事に送ってくれた
葬送の仕事師たちに感謝しながら。
父、祖母、叔母、そして友人を想いながら。
追記。
大人の事情、取材相手に対する誠実さなのだろう、
取材先の歴史なども詳しく書かれている。
それがやや過剰な印象。
同じ書くにしてももう少しシンプルな書き方だと
気持ちがぶつ切りにならず、
入ったまま読み終えることが出来たように思う。
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「猫」×「本屋」×「コーヒー」の「猫本屋」の話・・・となったら読まずにいられません。
世間もネコブームですが、我が家も末娘を中心にネコブームです。
この本は
・保護猫が「本屋の店員」として常駐
・店内の本はすべて「猫本」
・収益の一部を「保護猫団体」に寄付
・資金の一部はクラウドファンディング
・住宅の片隅を店舗に
というユニークな特徴を持った「Cat's Meow Books」という本屋さんが、どうやって開業し、運営したのか、ホントだったら聞きにくいお金のリアルな話も含めての裏話満載の本です。
最近、特定のテーマに特化した本屋さんや、本を売るだけでない別のサービス(カフェ併設や雑貨販売をしたり、イベントを行ったりなど)といった本屋さんが増えてきています。
こういう時代の流れなら自分も本屋さんやってみたいな、なんてちらっと思ったりもしましたが。
なかなか難しいようです。仕入れひとつとっても本の流通ルートは特殊なので。
まぁ難しいから、こういうおもしろい本が出てきてくれたんですけどねw
実際、本当に「本屋を開業したい!」と思っている人にとっては参考になるかもしれません。
ちなみに、猫本の売れ筋はやはりあの絵本たちだったと知り、納得。
「11ぴきのねこ」シリーズ
「ノラネコぐんだん」シリーズ
やっぱ鉄板なのね、このシリーズはww -
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尼崎で助産院をやっていて、著者もそこで子どもを産んだという助産師・前田たまゑさんの一代記。戦時中や戦後のベビーブーム、出産の場の主流が病院に移ったり、開業して理想のお産を求め実践したりという具合に、めまぐるしく流れていく時代のなかをいきいきと飄々と生き抜いた人物の記録として面白かった。
出産周辺のはやりすたりの激しさがまた面白い。前田さんが助産に携わっていた50年ほどの間に、出産の場所は自宅から病院へと移ったし、そのなかでもウーマンリブの風潮と相まって助産院での自由な出産が見直されたり、また、かつて自宅出産の時代は男性が普通に産み部屋にいたというのもびっくり(テレビや映画のそういうシーンでは「男の人はあっちの部屋で待ってて」みたいなことが多かったから)。助産の立場でありながら受胎調節や家族計画を勧めることへの違和感や、陣痛促進剤を簡単に使ってしまったり会陰切開を当たりまえのようにやる産科医療への疑問・不信、またそうしたことを当然ととらえてしまう助産師仲間への憤りなど、あけすけに話してくれている内容は、一助産師の経験や考えに過ぎないけれど、通説となっている表の助産の歴史より濃くて豊かで貴重な記録といえる。
しかし、初版時は改題されたこのタイトルときたらひどいもんだ。まあ、このタイトルゆえに手に取ったんだけど、前田さんが遊廓近くの産院にいたのなんて、見習いの頃の2、3年のことじゃないか。それを前面に出すのってちょっと不誠実。ちょっと苦しいけど、「遊廓の産院から(キャリアがスタートした)」という意味合いか? -
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元気だった母の大やけどから、いきなり始まる両親の介護、そして見送りまでの4ヶ月間。
親譲りの「開けっぴろげ」な性格のリッちゃんは突然始まったこの状況への困惑、怒り、感謝、後悔、揺れ動く自分の気持ちをあからさまなほど正直に綴る。「百人いれば百通りの親の見送り方がある。」と言われる。つまりこの本は、たったひとつの個人的ケースに過ぎないのだ。
だけど、その個人的なエピソードのひとつひとつが、読者である「私」の記憶を激しく刺激する。見知らぬ人から掛けられた労いの言葉や、ちょっとした親切に救われたこと。すれ違う思いや、ゆっくりと坂道を下るように「死」へ近づいている母と現実の生活‥そのほか登場人物の名前を始め様々な共通点があり、込み上げる思いに何度も涙が溢れた。 -
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遊郭の産院というタイトルから、遊郭近くの助産院で働いていた方についての本かと思ったのですが、そうではなく。
遊郭近くの婦人科から、助産師を目指した方の話でした。
戦中、戦後の日本史と、出産の歴史を感じられる本です。
昔の人は、本当に良く働いていたこともわかります。
辛くても耐える、とか言葉にすると当たり前なのかも知れませんが、その辛さが重い。
医学が、人間という生き物の全てをわかっているわけではないな、と感じることが多いので
西洋医学以前の、歴史に出産のノウハウがあって当たり前だし
生き物としての出産
日常生活としての出産
と感じられる本でした。
タイトルは「さいごの色街飛田」が好評だった、井上理津子さんの文庫化なので、そこからの購買を引っ張ったんでしょう。
とても面白く、引き込まれてページを追いました。 -
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ネタバレ店長、店員猫は全員保護猫。人間の店主は伝説のリブリオバトラー。
2018年の出版だから、今から10年くらい前の話。猫本だけを集めた「Cat's Meow Books」は「猫が本屋を助け、本屋が猫を助ける、というお店」というコンセプトを明確にしたお店。準備段階から、このコンセプトは揺らぐことがなく、そのコンセプトを実現していく中で様々な繋がりが生まれ、とても素敵な空間ができていきます。
企画段階から、物件探し、リフォーム、品揃え、資金のことと、開業からの営業成績。これから書店をやりたい、という方には具体的でとても役に立つ本になっています。
10年ほど前の本ですが、今でも完全に有効です。