【感想・ネタバレ】さいごの色街 飛田のレビュー

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Posted by ブクログ 2016年05月07日

人間の欲を凝縮している街、飛田。

著者が12年かけて取材した渾身のルポ。

昭和を色濃く残す街であるが、事情がある人が集まり、
外からの人間を拒絶する。
写真を撮ることも簡単ではない街での取材、女性目線からの取材は興味深い。

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Posted by ブクログ 2022年07月19日

正直、著者の生の感情は鼻につく。
けれど、調べられた歴史や語られる取材内容の面白さに、ぐいぐいと読み進めることになった。

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Posted by ブクログ 2022年02月23日

そこは桃源郷か地獄か。

大阪に残る色街、飛田新地。大きな声で語る人がいない、中の人も外の人も語りたがらない飛田について徹底した取材を元に書かれた労作。売買春は悪か、そんな話をするのではない。そこに生きた人、生きる人が口を開いた言葉を記録したものである。

性を売るのは自分の勝手ではないか。そういう...続きを読む意見の人もいるだろう。売春は悪いことだから廃業させなくてはいけない。そういう運動もあるだろう。だけどここに書かれているのは、他に行くことがなくて飛田に来た人がいて、飛田にいる人を蔑視する人がいるかということだ。そして悪いことだから辞めなさいと言って辞められるものではなく、他に生きる術を身につけさせて一人立ちさせるところまでやらないなら、この仕事はなくせないということだ。

あと読み終えて感じたのは、満たされてないことが他人への攻撃性を育てるのではないかということだ。貧しくても満足しているなら、自分を無理矢理持ち上げて、相手を下げる必要がない。近年日本でも海外でも閉塞感からか分断が広がり、自分と異なる者への攻撃が激しくなっているのは、それだけ満たされていない人が増えているからだと思った。

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購入済み

私はすき。

2020年07月18日

飛田新地に興味があるのですが、
女性なので中にはいることが出来ないので
この本で飛田新地の歴史なども知ることも出来て
とてもすきです。

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Posted by ブクログ 2018年04月18日

10年以上に及ぶ飛田での取材に基づいたルポ。筆者は豊中の人で、ところどころ「綺麗な北から、ごちゃついた南への視点」を感じてしまったのは、私の私情からだろうか。貧困の末に飛田でしか生きられない女。非合法と知りながら黙認する社会や男。構造がつらい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年10月02日

「性」を売るということは
そのまま、命を売るということだ――

精神を削り、捨て、私は何も感じてないと
嘘をつき、ついた嘘のぶんだけ消耗し
ひたすらに擦り減っていく。
心も体も。

常に命がけの病気と背中合わせで
守ってくれるものは何もなく、
時として、剣より強いペンにさえ
面白おかしい玩具のように...続きを読む表現される。

なぜ、そこにいるのか?
なぜ、そこでしか生きられないのか?
真剣に向き合っている本。

著者の結論としての
「行くなら金を落とせ」という言葉も
一つの真実だとは思うけれども
命を削って売らなければ
生きられない世の中はどこかが
なにかが、歪んでいるとしか思えない。

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Posted by ブクログ 2015年08月24日

 飛田新地のルポ。10年かけて、紆余曲折ありながら着実に情報を集めて形にした一冊。

 性を搾取する場所があるなんてとんでもないというスタンスで取材をはじめる。しかしそのスタンスが取材を経るにつれてどんどん変容していくところが面白い。

 本書の最後は「興味半分で行くな、お金を落としていけ」と締め...続きを読むる。

 今も昔も女性が色街で働く理由は「お金」である。売りたい側買いたい側が存在し続ける以上このような場所はなくならない。
 
 

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Posted by ブクログ 2014年02月08日

大阪でも有名な「飛田新地」についてのドキュメンタリー。かつて友人に連れられて怖いもの見たさで訪れ、その光景にただ驚くばかりであった記憶がある。この本を読んでからまた行くかと言われると、あとがきにもあった通り物見遊山で行くところではない。表の煌びやかに見える部分に隠されて、裏の知られざる世界があるとい...続きを読むうこと。そこに作者がまあこれだけ取材御法度の街を調べ上げたことに頭が下がる。

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Posted by ブクログ 2014年01月12日

取材禁止の大阪府ミナミの色街・飛田について、様々な資料を調べ、様々な人にインタビューして、細かに書き上げた本。こんなところがあるなんて知らなかった。現代社会の一つの側面が見える。

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Posted by ブクログ 2013年09月14日

飛田ほど異様な街は、この日本にそう多くはない。21世紀の法治国家においてそういう街が公然と存在していること自体が本来おかしな話なのだが、日本一の高さを誇るあべのハルカスの徒歩圏内、住宅地と商店街に囲まれたその領域が放つ異世界感も尋常なものではない。
しかし、そうした異世界も日本の近現代とは無縁でなく...続きを読む、異世界であるからこそかえって社会や制度の変遷に強く影響を受けながら今の姿にたどり着いたのも事実。そして当然そこに住む人働く人がいて、彼らが綿々と紡いできた営みの帰結でもある。飛田を知ることは、日本が歩んだ近現代の歴史の一側面を知ることでもある。ただ性的な関心や倫理的な正義感だけでは語り尽くせない射程を飛田はもっている。
ところが、飛田を知ろうとしても、飛田に関する文献資料はその知名度に比して驚くほど少ない。域内に百数十ある「料亭」はウェブサイトすら持たないし、関係者も多くを語らない。一般的なメディアで飛田が取り上げられることはほとんどない。もちろん域内での写真撮影が厳禁なのはご存知の通り。
そんななかで、10年という長期に渡って広範な文献資料と多くのインタビューを収集し、飛田の歴史からそこに集う人々までを描写した本書は単なるルポとしてだけでなく、日本の近現代を読み解くための資料としての価値も極めて高い。ノンフィクションとしてのつっこみの甘さは指摘されているものの、その後出版された料亭経営者自らによる手記を除けば、ひととおりまとまった唯一の文献であると言える。そして、その存自体が非合法である以上明日すぐにでも消滅するかもわからない飛田の記憶を、散逸してしまう前にこうして残しておくことは意義のある行為だろう。
とはいえ、飛田という土地の異様さや異世界感は、本書を読むよりも実際にその地を訪れた方がよほどよくわかる。飛田の光景を見れば、普段眠っている倫理観や問題意識が湧き上がってくる。日本の近現代を見直すうえで、飛田はいちどは訪れておくべき土地だと思う。

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Posted by ブクログ 2013年09月08日

先月読み終わってから久しく間が空いてしまったが、
これくらい時間が必要だった1冊。

北海道にいた頃は、せいぜい「北方領土問題」と「アイヌ文化」
くらいしか思い浮かばないくらい、
地方の問題というものが身近ではなかった。

こっちにきて、それが現実的に身近に感じることが多くなった。
ニア大阪なので、...続きを読むまだかろうじて全てが直接的ではないものの、
「同和」「民族」そしてこの、本書でレポートされているような世界だ。
それは例えば、主人の実家に帰省する際、
通り道を隔てた地域一帯がそうだと教えられたことに端を発し、
地域を知れば知るほど、そこの歴史が見えてくるような感じである。
そしてそれが、ここで住む時間が長くなればなるほど、
その歴史がいかに複雑で一筋縄ではいかず、
共存することがいかに難しいかを、あらゆる状況から考えさせる。

そんななか、(訂正)2012年ダヴィンチ7月号にて2012年上半期のBOOK OF THE YEARにて本書を知り、今までどこかで触れてはいけないような気持ちになっていたパンドラの箱を、ついに開けてしまったような心境で読み進めていった。

ちなみに、正直あまり触れたくなかったのだが、やはり身近な人間に
聞いてみたくてだんなさんにこの地域のことを尋ねてみたが、
意外にもだんなさんは知らなかった。(あとからあれこれ検索している姿を見て、おいおい、この歳で興味持ってくれるなよ、と内心おだやかではなかったが)そんなものなのかな。

10年にわたって取材されたと言うそれは、
著者は女性なのだか、とにかくよくここまで足しげく通い、まとめてくださったととにかく感服。事実ご自身も何度も、タイプの違う怖い思いを、とにかく何度も体験されているのに、最後まで遣りきり仕上げたこの1冊は、とても価値があるし、だからこそ読み応えのあるものになっていると思います。
女性ゆえに足を踏み込んではいけない場所のようにも思うし、
女性だからこそ、知っておくべき場所なのか。
そこには「男」と「女」がいて、
生きていく人間の姿があります。

とにかく禁断の場所というのは今の時代も変わらないらしく、
そういう意味ではおそらくこの街を、実際歩いてみることはわたしには
なさそうだけど、街を知る貴重な作品だと思います。

興味深く印象的だったのは、229Pの記述。
折りしも「慰安婦問題」で連日名前を聞いていたときだったので、
橋下さんの発言の根幹にある部分を、少しだけ垣間見ることができて
納得するとともに、だからこそもっと丁寧に発言してほしかったと今でも
その考えは変わらない。

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Posted by ブクログ 2017年08月15日

地元・横浜を流れる大岡川沿いの黄金町は、かつて「ちょんの間」と呼ばれる飲み屋が軒を連ねる一大歓楽街だった。「ちょんの間」とは、ちょっとの間で飲み屋の2階で、客と女性従業員がいわゆる男と女の交わりをすることからついた名称。実質的な売買春だ。でもこれがなぜか売買春に当らないことにずっとなっていた。客と従...続きを読む業員はお酒の席で恋愛感情を持ち、そのまま2階でいちゃついて、火がついた二人がコトに及んだだけ、店側は関知していない、という理屈。
 なんだそれ? と誰でも思うが、よくわからないけど、法的には通用するらしい。
女の子を持つ親は、あの辺りには絶対行ってはダメ!とよく言い聞かせていたらしい。とはいえ、横浜では開港150年を前に、一斉浄化作戦が決行され、今じゃ一軒もない。現在は跡地を若手アーティストに安価で貸出し、アートの街へと変貌しつつある。

 いまも、こんな売買春が上のような理屈で行われているのは「飛田新地」だけだ。この本は、さいごの色街の実態を丹念に取材したノンフィクションだ。
 
 遊廓の名残をとどめる街という説明から、花魁文化みたいなのが今もあるのかと思ったが、さすがにそれはなかった。遊廓っぽいというのは「料亭」と呼ばれる建物と、女性が玄関で正座して手のひらを添えて、お辞儀して男性客を迎えるところ。玄関は開け放してあり、男性客は外から女性を選り好みして、気に入れば店に入る。料金などの交渉は、曳き子と呼ばれるおばさんがする。女性が着る服はいたって今風のもの。女性も特別な芸事ができるわけでもないので、風俗で働いている女性と変わらない。違いは本番をするかどうかだけで、現に他の風俗から転職して飛田に来る女性も多いようだ。

 閉鎖的な街だが、著者は12年にわたり取材を続け、少しずつ糸口を見つけて飛田で働く人たちの本音を聞き出していく。

 料亭の経営者と曳き子のおばさんの関係、暴力団との関連性(飛田に暴力団が絡んでいない理由)、地元警察との関係、飛田という街が歩んだ歴史など興味深いが、なにより飛田の街で春を売る女性の声が面白い。なぜかあまり悲壮感がない。借金で首が回らない、金の計算ができないのが共通点みたいだが、経営者と女性たちの関係は概ね良好で、搾取されているという気がない(そこが金の計算ができないということらしいが)肉親に冷たくされた女性たちは経営者に親子のような情も抱くらしい。風俗で働くより、飛田で働く方が肉体的に楽だ、というのもほぼ共通した意見だ。男にはわからないことで、意外だった。

 どこの「料亭」は慢性的な人手不足らしい。だから長く勤めてくれる女性には待遇を良くしている。募集はどこでしているのかというと、男性が読むような週刊誌とか夕刊紙にコンパニオン募集と広告を打ち、電話を待つ。または、パチンコで負けた女性に高利で金を貸して、借金を返せなくなった女性を飛田に紹介する女衒みたいな人もいるらしい。

 著者は地元警察にも取材を申し込んでいる。「売春なのになぜ摘発しないんですか」とストレートに聞いている。でも警察ははぐらかすだけで「一斉摘発は難しい」と言い、時々どこかの料亭を申し訳程度に摘発するだけだ。横浜でできたのだから(というか全国でやったから飛田だけになったのだから)警察が本腰を入れれば飛田も無くせるとは思う。でも完全になあなあの文化ができている。これが良いのか悪いのか… その前に飛田を遊廓の文化を残す街と言っていいのか悪いのか…

 著者は長く取材を続けたから、もしかしたら好意的に見過ぎているんじゃないかと、穿ってみたくもなるくらい、肯定的な意見が多かった。果たしてこれが飛田の全貌なのか、それとも一部なのかは判断がつかない。でも、これを読んだ人は、たぶん「飛田を潰す必要はない」という意見に傾くと思う。

 自分の意見は… 自然に衰退していくのにまかせる。

 読んでいくうちに、おそらくそうなっていくんだろうなと思った。

 

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Posted by ブクログ 2024年04月08日

色街といえば一番に浮かぶのは「飛田新地」。女性が覗いてはいけない男の世界、そんな色街を女性である著者が、取材をし書き上げた一冊。
女性がひとりで歩いていたらドヤされるとか聞くし、取材は困難を極めたことだろう。
お客として行ったことのある人への取材はまあまあ詳しくされているけど、中の人は語りたがらない...続きを読むのか語ることが御法度なのか、飛田の真の姿が見えず少し物足りなさを感じた。
全てを見せないからこその飛田の魅力なのかもしれない。
女の子のいてるお店に上がるのは無理だけど、飛田新地の端に位置する遊郭として使われていた建物を利用した料理屋「鯛よし百番」へは一度行ってみたい。

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Posted by ブクログ 2022年05月07日

可もなく不可もなくといった読後感。
飛田新地については、その多くが真偽不明のトンデモ本か、歴史情緒を醸し出すだけの本であり、この本のように現在進行形の飛田新地を扱った本は稀だとおもわれる。その意味では、一読の価値はある。また筆者に飛田新地に対する特別な先入観が強くない(少なくとも、先入観によって事実...続きを読むが曲げられることがない)ことも、安心して読み進められた要因である。
他方、取材しにくい対象であることもあろうが、関連法案や背景事情をあまりにも下調べせずに取材している様子も赤裸々に書かれており、もう少し何とかなったんじゃないの?と素人ながらに突っ込んでしまう部分があったことも確か。

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Posted by ブクログ 2021年03月15日

井上理津子著「さいごの色街 飛田」という本を読みました。
大阪のある街について深く掘り下げた本は決して多くない(ややこしいので掘り下げにくいのでしょう)のですが、先日読んだ「大阪アースダイバー」同様、この本も結構、頑張って取材している本でした。

飛田をマスコミで取り上げる際、所詮は「きれいごと」に...続きを読む終わるものが殆ど全部。この本も、最初はそういう類かと思っていたのですが、違いました。
文献などの資料で書かれた部分はもちろん、ガードが堅い飛田に体当たり取材して得た貴重な証言なんかもあって、勉強になります。

「飛田新地料理組合」の幹部が貸してくれたテレビニュースのDVDを見たら、差別問題に詳しい桃山学院大学名誉教授の沖浦和光さんが「義理と人情に塗り固まった町」「遊郭には重みがあった。・・・・・(飛田には)遊女の聖性が垣間見える・・・」と発言していて、開いた口がふさがらなかったと、批判をしていました。全編を通じて、決して批判的な本ではなく、告発本でもない。

ただ、行われているのが売春だと分かっていながらなぜ警察からの手入れも受けず、この商売が成り立っているのかという強い疑問は前提に出ていました。そして、「飛田新地料理組合」の顧問弁護士が、橋下徹氏だったことも、「発見」として報告をしていました。

この本で、いろんなことを知りました。
今の飛田の「料亭」は、「アルバイト亭」なんだそうです。
アルサロ(アルバイトサロン)が流行ったのがきっかけでそうなったそうで、バンスで売られてきた女性ではなく、昼間はOLなどがアルバイトで夜に稼ぐところ、といったところでしょう。だから、女の子の斡旋もプロの手によるものでなく、新聞広告で女の子を募集するとのこと。

80点ぐらいの本かな、という感じでした。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年03月05日

あとがきに思っていたことがほぼ全て書かれていた。

純粋な疑問として、なぜ消費センターや警察に相談しないのかと思うことがあったが、私の無知が原因だった。

この世の仕組みから零れ落ちてしまう人たちがいる。
零れ落ちるという言葉が適正ではないかもしれないが。
飛田が舞台なので女性がメインだが、男女問わ...続きを読むず両親などの幼い頃から青年期まで社会とはどんなところかを教えてくれる存在の不足がずっと続いてしまう。
連鎖は一度走り出したら止まらないのかもしれない。

遊郭の成り立ちを知りたいと思い関連する本を読んでいるが、そういう意味では遊郭そのものの成り立ちとは違うが飛田遊郭の成り立ちが参考資料を元にとても丁寧に記されていた。

女性の権利のために戦ってくれた人たちがいる。
その人たちがいてくれたおかげで今日の女性の権利が向上したのも事実。
だが、遊郭でしか働けない、働いたことがない人たちにいきなり「売春をするのは悪いことです、これから遊郭は閉じます」と宣言しても行き場がないのではないかと思っていたので、ページは忘れたが保護施設で娼妓の方がこれからどうするんだと怒鳴り込んだという記述は腑に落ちた。
やはり、行き場のない人たちがおり保護しますと言われても短時間では言い方が悪いが教養は身につかず、結局今まで就ていた仕事に戻ってしまう。
それは仕方のないことだと思う。きっと世間の目も厳しく働き続けるには難しかったのではないかと思った。

売買春が悪、根絶したいとするならばその後の行き場を作ってから取り締まらないといつまで経っても同じことの繰り返しだろうなと。

篠原無然さんのことを知ることができ、いつか記念館を訪れたいと思う。

本当のところはその時代を生きたものですらよくわかっていないのかもしれないなと思った。
結局人が人に話すことには色々なフィルターを通す。
都合の悪いことは記憶の中で薄れていくだろうし、そうでないときっと苦しんでしまう。
歴史は今この瞬間だけが真実で時が経ったものに関しては真実だろうけど、全くの真実とは少し異なるのかもしれない。

p166の喫茶店の方の言葉に不覚ながら涙が溢れた。
「ダメ。もうこんなところへ来たら絶対にダメよ。こんなとこを知ってると言うてもダメ。どこから知られるかわからへんから、もし今後どこかで飛田の話がでたら、『知りませんっていわなダメ。』言うて送り出したげた…」
その地で働いている人がそう言わねばならない世間の目、その目の中に私も含まれている。

お好み焼きのおばちゃんの話で、私自身曳き子のおばちゃんのことを十把一絡げで見ているなと実感してしまった。
おばちゃんもそれぞれ違うのに…

少し下に見てしまう根本的な原因はなんなのか新しく疑問に思った。

著者の胆力、凄いなと途中ハラハラする箇所がありつつとても勉強になった。(ヤクザの事務所のチャイムを押したところは肝が冷えた。)
難しいテーマの取材をし、本を出版していただいたことに感謝しかない。

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Posted by ブクログ 2020年01月30日

女性作家さんが描く色街の真実。
物語の中に出て来る遊郭は知っているが、今でも実在し、しかも女性が突撃取材をすると言うルポタージュは衝撃的。
普通の風俗でも、中でどのようなことが行われているのか、女性が知る由もない。そんな中で法的には違法とされる飛田を包み隠さず、描く今作はまさしく私にとって、知りたい...続きを読む世界だった。
仕事柄、宴会コンパニオンさんと一緒になる機会が多い。その度に自分では出来ないと思う仕事だと思う。コンパニオンと飛田の「女の子」とでは全く事情が違うとは思うけど、やはり飛田の「女の子」も自分では出来ない仕事。
ここ数年で「女の子」の働く理由は変わってきたようだが、作者が取材を続けていた当時は、やはり昔の遊郭同様、自分には逆らえない何かしらの理由で働いていることが多い。戦後、どんなに経済が高度成長を遂げても、変わらない世界があることを知った。
この本が出版されたのは2011年。その後、文庫版にするにあたって、「文庫版あとがき」が追加され、単行本が出た時の感想が付け加えられている。しかし、その中に女性の感想がない。普通の女性がこの作品を読んで、何を感じるか?
私はそれが知りたい。

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Posted by ブクログ 2019年11月04日

貧困の連鎖。生きていくために選択肢は無い。そんな人たち、そんな人たちが生活する町をルポルタージュする。身を守るためにルールを設けて社会を作る。異論を唱えたら町から追い出される。店が更地になり、マンションになる。そして町は他と同様変貌していくのだろう。2019.11.4

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Posted by ブクログ 2019年05月21日

なんでこんな凄いところが日本に残ってるのかという秘密がわかるかと思って読んでみたけどやっぱりわからなかった。残念ながら取材力不足、とも思いましたが、結局書けることと書けないことがあるというのが事実かもしれませんね。

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Posted by ブクログ 2016年05月07日

「東京広しといえどもああいう町はどこにもない。」
ひょんなことから飛田に行き、衝撃を受けた。あんな空気を、今まで吸ったことがなかった。心臓がバクバクした。そして、今まで聞いたこともなかった飛田新地のことを知らないといけないと思い、読んだ本。ブログの面白半分な情報よりは、女性目線、10年かけた取材、と...続きを読むいう所から歴史を知る手がかりになった。
女の子と、やり手婆。風俗というと黒服で強面の男性、という印象だったが、客引きが女性のしかもおばさんであることに驚いて、そこが理解できなかったが、この本を読んで女の子とやり手婆の信頼関係があることを知った。売り、買い。性というものがこういう使い方をされることはやはり嫌悪感を抱くが、飛田という街の生々しさは生きること、を考えさせられる。
「怒ったり、笑ったり、騙したり、騙されたりを、どうしようもなく繰り返す人間の性がむきだしのあの町」
ハリボテのような嘘にまみれたどこにでも蔓延している空虚の街よりも、人間らしいある種のひさむきささえ感じた。

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「ヒトは多面的です。きれい事では済まされない。人間は汚れた部分を持たざるを得ないから、取り巻く社会にも何重もの構造がある。だから、世の中、面白いのだと思いませんか。」

「この商売をして、よかったと思うことは一つもない」と、料亭経営者のマツノさんは言った。「現状満足度はゼロ%や」と、女の子を経ておばちゃんになったタエコさんも言った。それでも、みんな、生きていくために飛田にいる。

「そりゃあ、風俗という選択をしないで人生を送るほうが、女性としては幸せなんだと思いますよ。でも、何かの事情でやむを得ず風俗の世界に飛び込んだのやったら、(風俗の仕事を)ポジティブにとらえて、頑張って一円でもたくさん儲けるほうがいいに決まってますやんか。」

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Posted by ブクログ 2015年12月10日

今後この街はどうなって行くんだろう?徐々にフェードアウトして行くんだろうな。興味本意で見に行くなとは言うもののどんな風景、雰囲気、人達がいるのか見てみたいと思った。

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Posted by ブクログ 2015年12月09日

何よりも女性である著者の得体の知れない執念に驚かされる。7割ほどが無駄足の道程、それを延々と記すとは…。

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Posted by ブクログ 2014年08月29日

高村薫の小説に「飛田新地」って出てきてて、それでなんか興味持って読んだ本。取材に10年以上かけたとか、女性がなかなか足を踏み入れられない場所であるとかヤクザに話しを聞きに行くとか、そういうところはスゴイなあよくやったなあと思うけど、なんだろ、文章が甘いというか、ボカさなきゃいけない部分やらやっぱり踏...続きを読むみ込めない部分やらいろいろあってしょうないんだろうけれど、それでもなんかあんまり世慣れていないお嬢ちゃんがきゃーきゃー言いながら書いてますぅ、みたいな感じがして、そこが残念。

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Posted by ブクログ 2014年04月25日

古色蒼然、いや化石レベルの社会的構造、つまり貧困層を生み出し続ける要因は数百年来なにも変わっていない、むしろ近代以降悪化しているとも思わせるのが、飛田のまちである。
私もかつて仕事で飛田のど真ん中の施設に出入りしていたため、否応にも目にしていた光景。その背後には、こんな状況があるということがよくわか...続きを読むった。
どんな人にも一読を、といいたいが、読後感はまずい。

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Posted by ブクログ 2014年02月16日

なかなか知ることのできない飛田のなかの「彼女たち」の事情や「まわりの人」の素顔、飛田に通う人の横顔などを、著者はじっくり年月をかけて通って浮かび上がらせている。古くから風習や古い建物、昔ながらの闇取引の関係は近代化が進む周囲から断絶しているかに見えるが、「彼女たち」の事情は貧困や教育格差以外の現代ら...続きを読むしいいきさつもあることを知った。女の子を斡旋する女の心情はどんなものかと思っていたが、インタビューを読み、割り切れないところも残っているようだと知って同じ女性として少しばかり救われた気がした。

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Posted by ブクログ 2014年01月26日

女性ライターが長年にわたり飛田を取材した内容をまとめた一冊。飛田の歴史から、内部だけでなく周辺人脈にまでおよぶインタビューも収録。女性なのにかなり深部まで切り込むことに成功した渾身のルポだと思う。飛田管轄の警察に飛田は違法行為をやっているのになぜ取り締まらないのか?と聞きに行ったところが面白かった。...続きを読む別の人の著書だが、「飛田に生きる」、「飛田の子」と併せて飛田三部作として後世に残ってほしい。

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Posted by ブクログ 2013年10月04日

大阪に今もなおある遊廓・飛田について書かれた本。
飛田は、閉鎖的な社会のせいか、著者はインタビューに苦労したようだ。
著者は女性なので、客として行くわけにもいかず・・・。
そういうこともあってか、歯切れが悪いというか、あいまいというか、そんな印象がする本だった。
同じ飛田のことを料亭経営者(男性)が...続きを読む書いた本の方が、よりリアルでおもしろかった。

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Posted by ブクログ 2013年07月21日

飛田って外からはわかりにくい町なんだと思うけど、そこを頑張ってよく取材したなと思います。近代以降の日本でこうゆう業界がどんな歴史を辿ったかってのも勉強になったし。

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Posted by ブクログ 2017年11月09日

大阪市西成区に今なお存在する「飛田」という「色街」があるという。何とかこの街の記録を残したいと、興味を持った作者が2000年からこの街について取材を始めた。

女性である作者にとって、この街の取材はやりにくかったのではないか。
飛田界隈は、昔でいう遊郭というべき性質の街だから、お客様は男性ばかりで、...続きを読む客引きおばさんも女性には目もくれない。店に中に入れないから取材もできない。

そこで作者は男性の知り合いに頼んでお客となって店に潜入し、お店の「おねえさん」から飛田で働くことになった顛末や、飛田での労働条件などの待遇を聞き出してもらうことから始めた。

足掛け12年の取材。そのうちに飛田で知人もでき、飛田を取り仕切る「飛田料理組合」の存在を知る。そこから調べあげたのが飛田の歴史とそこで働く人々の移り変わりだった。
飛田で働くことは戦前は「人身売買」ではないかと言われ、行政が関与して借金を払い、「おねえさん」たちを田舎へ帰したこともあったそうだが、飛田で働く「おねえさん」にはここでしか働けない家庭の事情があり、いつの間にか舞い戻って来たという。

飛田にある店は一応「料亭」となっている。しかし、その2階で行われていることは売春ではないのか。警察はなぜ黙っているのか。作者はそこも鋭く、警察へ取材していた。
警察も分かっているのだが法に触れるところは何もないとし、歯切れの悪い回答だったそうだ。風俗とヤクザという関係も思い当たり、作者は、暴力団にも飛田との関係を取材しに行っている。この飛田に関しては何もないという、ヤクザの回答に拍子抜けたようだったが…。

それにしても今だにこのような街が本当にあるのが不思議な気がした。もちろん、観光客お断り、写真撮影お断りと、特殊な環境をマスコミや興味本位の目から避けているのが、知っている人は知っているのだ。

風俗業は呼び名も形態も多種多様になったのに、場所もやり方も遊郭のままの情緒を残している飛田には、常連客やリピーターが多いという。現在、自主的に働く「おねえさん」たちには、借金のためとか家のために働くという昔のイメージはない。自分の生活のために、この仕事をしているという観念があるのが進歩的だ。

「娼妓」というのは哀しい女と思いがちだが、現代の飛田の「おねえさん」たちはみなたくましい。それぞれが複雑で暗い半生を持っているが、それでも生きていくために働いているのだ。そして、一生懸命にお店のために働く子は「いい子」だからとお店の主人にかわいがられ、そこそこに安定した暮らしを与えてもらえるという。

21世紀における亡霊のような存在の色街「飛田」の物語だったが、ここでもまた印象深かったのは『女性の生き抜く力』だった。
飛田の「おねえさんたち」にもルポライターとして必死の取材をした作者にも同じように、図太く生きるしたたかさを感じた。

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Posted by ブクログ 2015年02月05日

遊廓の名残りをとどめる、大阪・飛田。社会のあらゆる矛盾をのみ込む貪欲で多面的なこの街に、人はなぜ引き寄せられるのか?取材拒否の街に挑んだ12年を綴る。
ダ・ヴィンチの上半期エッセイ・ノンフィクションジャンルで堂々の1位になっていて気になって読んでみた。
内容はすごい。正直女性がここまで乗り込んで取材...続きを読むできたのは著者の並々ならぬ執念があったからこそだとは思うし、絶対に知ることができないだろうなと思う飛田の「中」を紹介しているという意味では価値がある。無駄に下世話な話ではないし、飛田に対し良いとか悪いとか極端な意見を述べていないのも良かった。ありのまま、ただ飛田を知りたいだけだから。
一番心に残ったのはやっぱり曳き手のおばちゃんの話。振り返ってこの道を選んで良かったなんて思わない人生。それでも選ばざるを得なかったという事実。その道を蔑む権利なんて私たちの誰にもないと感じました。飛田にいる人だって、好きで選んだわけではないのだと。ここで生きて行かなければいけない社会を作ってしまった私たちに、女の子やおばちゃんは関係ない話ではない。今まで遠いと思ってた世界がガラリと変わった。それはこのルポルタージュが大きな役割を果たしたと言えると思う。
ただ、人として取材対象者に対しだまし討ちのような事を繰り返すのはどうかと思う。もちろん踏み込んだ取材をするためには必要かもしれないけど、嘘をついたことを平然と書き綴るのは頂けない。協力者に対し、もっと敬意を払うべき。内容だけなら星5つなんですけどねえ。

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Posted by ブクログ 2016年10月18日

なんだか題名と表紙に騙されたみたい・・・
昭和情緒のこるはんなりした・・・そうかん違いした私も悪いのですが、
さいご、どころか現在進行形の風俗店街なんですね。

体当たりルポルタージュってことで評価はいたしますが、
なんだか後味は良くない。なぜかと言えば、ウソつきながら取材したってこと、あからさまに...続きを読む書いてあるし。

井上さんももうこの街には関わらないって言ってることだからいいのですが、もう足踏み入れられないですよ、コレでは。

女の子たちのこれからに幸あれと祈ります、ってコレじゃァ私も上から目線。スミマセン。

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